AI×マーケティングで脱・外注!士業の「そのうち客」育成とリストを活用した集客

最近では、相続や家族信託、生前対策の情報を発信する専門家が急増しました。大手税理士法人や司法書士法人による「相続税申告〇〇万円~」「相続登記〇〇円〜」といった低価格を打ち出した広告も目立つようになり、オンラインでの集客競争は激化しています。

「とりあえず綺麗なホームページを作り、マーケティング会社に言われるがままリスティング広告をかけているが、全く問い合わせが来ない」

「問い合わせが来ても、相見積もりばかりで価格競争に巻き込まれてしまい、手元に利益が残らない」

このように悩んでいる士業の先生方も多いのではないでしょうか。

同じ規模や資本力がない中小の事務所では、大手の「広告費の力」に真っ向から勝負を挑むのは得策ではありません。安定した事務所経営を行うためには、自分の顧客の姿を明確にイメージし、きちんと利益がでる適正価格でサービス提供できる仕組み作りが必要です。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

  • HP制作とWeb広告だけに頼る「今すぐ客」狙いの集客は、競合が多く価格競争に陥りやすい
  • 士業事務所の安定経営には、将来的に依頼へつながる「そのうち客」の育成が必要不可欠である
  • 相談だけで終わらせず、顧客の連絡先(メール・LINE)を取得し「リスト化」することがすべての起点となる
  • 「広く浅いマーケティング知識」を持ちAIを活用すれば、外注費をかけずに自社で追客の仕組みを回せる
  • 取得したリストを「類似オーディエンス」に活用し、商圏を絞ることで劇的にコスパの良い集客が可能になる
  • 今後のAI検索時代を見据え、Googleレビューを獲得してネット上の信用残高を高めることが重要

今回は、適正価格で選ばれるための「そのうち客」の考え方と、AIを活用した自社完結型のマーケティング構築、そして最新の広告手法について深く解説します。

なぜ今、士業経営に「そのうち客」の育成が必要なのか?

新規顧客の獲得を考える際、具体的な顧客像(ペルソナ)の設定に加えて、その顧客が自社のサービス提供にあたり「今すぐサービスが必要な顧客(今すぐ客)」なのか、「今は必要ないが、将来的にサービスを必要とする顧客(そのうち客)」なのかを見極める必要があります。

資本力勝負の「今すぐ客」狙いは価格競争の泥沼へ

親が亡くなって銀行口座が凍結された」「相続税の申告期限が迫っている」「借金で首が回らないので債務整理をしたい」といった、期限や緊急性の高い悩みを持つのが「今すぐ客」です。

この層は、すでにサービスを利用しなければならない状況にあるため、SEO対策やリスティング広告でHPへの流入数を増やし、問合せへの導線を整えれば、無料相談から受任につながる確率は非常に高くなります。じっくり比較検討している時間がないため、「情報検索→商品申込」までの距離が短く、教育や育成のプロセスが不要です。

しかし、ネットで手軽に情報を検索できる現代では、簡単に他事務所と比較されてしまいます。特にWeb広告で「相続 手続き 地域名」「税理士 相続税」などのキーワードを狙う場合、激戦区では1クリック1,000円を超えることも珍しくありません。

多額の広告費をかけて集客しても、最終的に「あちらの事務所のほうが数万円安かったから」という理由で断られてしまえば、利益は圧迫され、終わりのない価格競争の泥沼に陥ります。資本力のない事務所がここで戦い続けるのは、経営上非常に高いリスクを伴います。

競合を排除し「適正価格」で受任できる「そのうち客」の価値

一方、「そのうち客」とは、「将来的に親の認知症対策(家族信託)を考えたい」「いずれは会社を設立して独立したい」「今はまだ元気だが遺言を書いておいたほうがいいのか迷っている」といった、現時点では情報収集をしている状態の顧客です。

すぐには仕事(受任)に直結しませんが、継続的な関係性を築いておくことで、いざ必要になったタイミング(親が倒れた、事業が軌道に乗ったなど)で「そういえばいつも情報をくれる〇〇先生にお願いしよう」と指名で依頼が来ます。

この「指名買い」の状態を作れれば、他事務所と比較検討(相見積もり)されることがありません。結果として、価格競争に陥らず、ご自身の専門性に見合った適正な対価(高単価)で受任できるのが最大のメリットです。 家族信託や生前対策、あるいは税理士や社労士の顧問契約なども、いかにこの「そのうち客」と継続的な接点を持ち、囲い込むかが事務所の安定成長のポイントとなります。

多くの事務所が陥る「マーケティング外注化」の罠と機会損失

「HP制作+リスティング広告」を丸投げするリスク

多くの士業事務所が、集客活動をマーケティング会社やコンサルタントに丸投げしがちです。

もちろん専門家の力を借りること自体は悪いことではありませんが、丸投げしてしまうと「とりあえず綺麗なホームページを作り、そこにリスティング広告をかけて問い合わせを待つ」という画一的な集客動線になりがちです。

マーケティング会社はWebのプロではあっても、士業の実務のプロではありません。その地域における独自の強みや、どの業務でどれだけの利益率が出ているのかを深く理解しないまま、高い費用をかけてシステムを作っても、費用対効果は合いません。

相談だけで終わらせていないか?「顧客情報の取得漏れ」という大損

そして何より、既存の士業の営業活動において最も大きな「機会損失」となっているのが、目の前の見込み客の連絡先を取得していないことです。

せっかく日々の業務において、相続の相談や、様々な取引の立ち会いなどで多くのお客様と会っているにもかかわらず、そのお客様の「メールアドレス」や「携帯電話番号」「LINE公式アカウントへの登録」を促していない事務所が非常に多く存在します。

年間100件の無料相談を無駄にしていたA先生のケース

ここで、ある司法書士のA先生(仮名)の事例をご紹介しましょう。

A先生は、地域貢献も兼ねて公民館などで定期的に「相続・遺言無料相談会」を開催し、年間で約数百件ほどの相談を受けていました。 しかし、来場される相談者の多くは「まだ親は元気だけど、テレビで相続トラブルの番組を見て不安になった」「とりあえず話を聞いてみたかっただけ」という、まさに「そのうち客」でした。

A先生は大変真面目な方で、一人ひとりに約1時間かけて真摯に回答し、「まだ今すぐ何かする必要はありませんよ。何かあったらまた来てくださいね」と名刺を渡して見送っていました。

つまり、相談者の「連絡先(リスト)」を一切取得していなかったのです。

それから3年後。相談者の一人の親が実際に倒れ、いよいよ手続きが必要になりました。その時、相談者はA先生の名刺を紛失しており、名前も正確には思い出せませんでした。

結局、スマートフォンで「地域名 相続」と検索し、一番上に出てきた別の低価格を売りにする事務所に依頼してしまったのです。

もしA先生がこの数百件の相談者のメールアドレスやLINEを取得し、月1回でも「相続お役立ち通信」を送っていればどうなっていたでしょうか。数年後には、その中から数十件の具体的な依頼が「指名」で舞い込んでいたはずです。 これは決して珍しい話ではなく、多くの士業事務所で日々起きている恐ろしい機会損失の典型例です。

AI時代に求められる士業の「広く浅いマーケティング知識」

「そのうち客へのアプローチが重要なのはわかった。でも、定期的にメルマガを書いたりする時間なんてない。最近はAI(ChatGPTなど)が代わりにやってくれると聞くが……」

このように考える先生も多いでしょう。確かにAIは強力なツールですが、ここには大きな落とし穴があります。

ベース知識が「ゼロ」なら、最新AIを使っても成果は出ない

いくらAIが優秀でも、発信する側(経営者側)にマーケティングのベースとなる知識が「ゼロ」であれば、成果は絶対に出ません。

AIに対して単に「相続対策のブログを書いて」とだけ指示(プロンプト)を出しても、AIはネット上の情報をツギハギした、誰もが知っている一般的な当たり障りのない文章(条文の羅列など)しか生成しません。

士業の先生ご自身が、自分のサービスの利用者をしっかりと理解し、「高齢の一人暮らしの母親を実家に残している、都内に住んでいる息子さん」といったように、ターゲット(ペルソナ)を具体的に設定してAIに伝えることが重要です。このように具体的に指示を出すことで、初めてその人の悩みに深く刺さる文章を作ることができます。

逆に、こうしたマーケティングの根本的な発想や顧客への理解がなく、ただAIに丸投げしてしまうと、出力される文章はどうしても薄っぺらいものになります。誰の目にも留まらず、興味も持たれない薄っぺらい内容では、せっかく送ったメルマガやチラシも読まれることなく、そのままゴミ箱行きになってしまうのです。

マーケティング発想×AI活用で高まる生産性

逆に言えば、経営者である先生自身が「浅くても幅が広いマーケティング知識」を持っていれば、AIは最強の「右腕」になります。

例えば、以下のように具体的なプロンプト(指示)を出せるようになります。

【プロンプト例】 あなたは経験豊富な司法書士です。 実家を空き家にしたくないと悩んでいる「50代の長男」に向けて、家族信託を活用した解決事例のメルマガ構成案を作成してください。 以下の要素を必ず入れてください。
・認知症になると不動産が売れなくなるリスクへの共感
・成年後見制度との違い(柔軟な財産管理ができる点)
・当事務所で実際に解決した事例(Aさんのケース)
・最後は無料相談への導線

このように、ターゲットと伝えたいメッセージを明確に設定してAIに指示を出せば、これまで白紙から数時間かかっていた構成案や下書きの作成が、わずか十数分で完了します。あとは先生ご自身の実務経験に基づく微修正(一次情報の追加)を行うだけで、極めて質の高いコンテンツが完成します。

外注費を削減!自社で直接マーケティングを回すメリット

士業の経営者は、本来の専門業務である法律や税務の知識を磨くだけでなく、マーケティングの全体像を把握しておくべきです。

AIという強力なアシスタントを手に入れた今、これまで月に数十万円払ってマーケティング会社に外注していた「コラム執筆」「メルマガ作成」「SNSの投稿文作成」などを、すべて自社内で直接回していくことが可能になります。実際に弊社ではマーケティング領域にて外注費を支払っていません。外注をやめることで、 外注費を大幅に削減できるだけでなく、業者任せではない「先生ご自身の生の言葉と熱量」が反映された情報発信ができ、顧客からの信頼度は格段に上がります。

さらに、自社で直接マーケティングを回す最大のメリットは「高速で試行錯誤ができること」です。自分自身で実際に施策を試し、何が効果があり、何が効果がないのかを即時検証する。そしてAIに相談し、また新たな施策を打つ。このサイクルを圧倒的なスピードで回せるようになります。

もしこれを外注のマーケティング会社に依頼した場合、どうなるでしょうか。業者側での社内調整や確認作業に時間やコスト、手間が余分にかかり、一つの施策を実施して効果を検証するまでのサイクルがものすごく長くなってしまいます。

だからこそ、士業は自分自身で、まずは浅い知識でもいいので幅広いマーケティングについて学びながら、即実践して何度も何度も試し続けることが重要です。かの有名なピカソも、数万点にも及ぶ膨大な作品を生み出し、圧倒的な量の試行錯誤を繰り返したからこそ、後世に高く評価される名作を生み出しました。

現代はAIを活用することで、この「試行錯誤」が誰でも高速に行える時代です。だからこそ、外注任せにするのではなく、自ら即時実行し続けていくべきなのです。

取得したリストが化ける!AI時代の追客・集客の仕組み設計

では、具体的にどのように「そのうち客」を育成し、さらには新規集客につなげていくのか。自社で構築すべき4つのステップを解説します。

ステップ1:顧客情報(メール・LINE)を確実に資産化(リスト化)する

すべての第一歩は、顧客の情報を「リスト」として蓄積することです。

面談や無料相談の終了時、セミナーのアンケート、あるいは日常の電話問い合わせのタイミングで、必ずお客様の連絡先(メールアドレス、LINE公式アカウントの登録、住所など)を取得するフローを事務所内にルールとして構築してください。

「今後の法改正のニュースや、知っておかないと損をする相続の情報を定期的にお送りしますので、よろしければご登録ください」とメリットを提示してお伝えすれば、心理的ハードルも下がり、多くの方は快く教えてくれます。これが将来の売上を生む事務所の「資産」となります。

ステップ2:AIを相棒にしたメルマガ・事務所通信の高速作成術

リストが集まったら、顧客のタイミング(時期)が来るまで定期的に接触を図ります。目安としては月に1〜2回程度、メルマガ、LINE配信、あるいは紙の「事務所通信」を送付します。

ここで先ほどの「AI活用」がフル稼働します。

先生が実務の中で気づいたことや、よくある質問を箇条書きでAIに読み込ませ、分かりやすい文章に整えてもらいます。定期的な情報発信を続けることで、単純接触効果(ザイオンス効果)が働き、顧客との間に「信用」が蓄積されます。

「〇〇先生はいつも有益な情報をくれる専門家だ」というポジショニングができれば、いざサービスが必要になったタイミングで、他社と比較されることなく問い合わせを受けられます。

ステップ3:リストを活用した「類似オーディエンス」で商圏内の見込み客を獲得

実は、取得した顧客リストの活用は、既存客への「追客」だけにとどまりません。最新のWebマーケティングにおいて、このリストは新規集客の極めて強力な武器に化けます。

Facebook(Meta)広告やGoogle広告には、自社が保有する顧客リスト(メールアドレスや電話番号のデータ)をシステムにアップロードして読み込ませる機能があります。

すると、プラットフォームの強力なAIが、その顧客たちとネット上の行動履歴や興味関心、属性が似ている人たち(=類似オーディエンス)を探し出して、ピンポイントで広告を配信してくれます。

さらに、この類似オーディエンスに対して「当事務所(〇〇駅)から半径10キロ圏内」というように商圏(エリア)を絞って配信を設定することができます。

検索キーワードに依存する高額なリスティング広告(顕在層の奪い合い)とは異なり、「自社で実際に相談をしてくれた優良顧客と行動パターンが似ていて、かつ実際に来所できる距離に住んでいる人」に対してアプローチできるため、非常にコストパフォーマンスが高く、確度の高い見込み客(質の高いそのうち客)を新たに獲得できるようになります。

リスト(資産)があるからこそできる、一歩進んだAI広告戦略です。

ステップ4:Googleレビューによる社会的証明とAI検索対策

今後のウェブ集客において欠かせないのが「AI検索」への対応です。

実際に弊社でも、最近問い合わせフォームのアンケート項目(きっかけ欄)に「AI検索(ChatGPTやGemini等)」という選択肢を設けたところ、半年前はあまり数がなかったにもかかわらず、今では全体の1〜2割程度の方が「AI検索で探した」と回答して問い合わせてくるようになっています。

Googleや各種生成AIは、ユーザーの質問に対して、ネット上の評価や信頼性を分析して回答を生成します。AIは「第三者からの評価」を非常に重視するため、日々の相談対応やセミナー終了時、または業務完了時に、お客様からGoogleビジネスプロフィール(Googleマップ)のレビュー(口コミ)を書いてもらう習慣を徹底してください。

質の高いレビューが蓄積されることは、AIからの評価向上(おすすめの事務所として提示されやすくなる)につながるだけでなく、メルマガや類似オーディエンス広告を見て興味を持った「そのうち客」が、最後に先生の名前を検索した際の強力な後押し(社会的証明)となります。Googleレビュー等で背中を押し、相見積もりなしの指名受任へつながります。

まとめ

  • HP制作とWeb広告だけに頼る「今すぐ客」狙いの集客は、競合が多く価格競争に陥りやすい
  • 士業事務所の安定経営には、将来的に依頼へつながる「そのうち客」の育成が必要不可欠である
  • 相談だけで終わらせず、顧客の連絡先(メール・LINE)を取得し「リスト化」することがすべての起点となる
  • 「広く浅いマーケティング知識」を持ちAIを活用すれば、外注費をかけずに自社で追客の仕組みを回せる
  • 取得したリストを「類似オーディエンス」に活用し、商圏を絞ることで劇的にコスパの良い集客が可能になる
  • 今後のAI検索時代を見据え、Googleレビューを獲得してネット上の信用残高を高めることが重要

「今すぐ客」を高い広告費で追い求めてレッドオーシャンで消耗するのではなく、目の前にいる「そのうち客」の情報をしっかりと取得し、AIを活用して効率的に関係性を維持・拡大していく。

この視点が、これからの厳しい時代を生き抜く士業経営には不可欠です。

まずは、自社のサービスがどの客層をターゲットにしているのかを見直し、明日からの面談で「相談に来られた方の連絡先をしっかり残す(リスト化する)」ことから始めてみてください。

そして、経営者自身がマーケティングの基礎知識を持ち、AIを使いこなすことで、高額な外注費をかけずに、高コスパで適正対価の仕事を受注できる仕組みが必ず完成します。

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