AI時代に士業が生き残る道!「地域での信用づくり」戦略とは?

最近、AIの急速な進化や、大手法人・異業種の参入を目の当たりにして、「このままのやり方で自分の事務所は生き残っていけるのだろうか…」と不安を感じることはありませんか?

これまでの士業・専門家は、高度な専門知識と正確な実務処理能力を武器にビジネスを展開してきました。しかし、今やChatGPTなどの生成AIを活用すれば、かつては専門家自身の頭脳と膨大な時間を要した「レベルの高い仕事」でさえ、一瞬で80〜90点のクオリティで出力できてしまう時代です。

例えば、顧客の了解を得た面談の音声・動画記録から打ち合わせの議事録を瞬時に作成し、そのデータを用いて契約書や遺言の条項を自動生成することすら可能です。さらには、過去の事務所資料の雛形を活用して、法務局や裁判所など関係機関に提出する文書を作成したり、顧客への提案書を構成したりといった作業までもが、AIによってあっという間に、かつ高い精度で完結してしまいます。

さらに、金融機関やリーガルテック企業が相続や登記、記帳代行などの分野に次々と参入し、大手法人が多額のネット広告費を投じて全国から案件を獲得しています。業界の垣根は崩れ去り、競争はかつてないほど激化しています。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

  • AIの進化により、80〜90点レベルの実務処理は一瞬で可能になり、知識やスキルでの差別化が難しくなっている
  • 異業種参入や大手のネット広告により業界の垣根がなくなり、同じような情報が氾濫している
  • 誰もが一定レベルのサービスを提供できる時代において、最後に選ばれる基準は「専門家としての信用」である
  • ネット広告に頼る大手の戦略を真似るのではなく、地域密着の「どぶ板営業」による信用構築が重要である
  • AIを「営業時間創出ツール」として徹底活用し、浮いた時間を「人との繋がり(どぶ板営業)」に投資するべき

今回の記事では、「知識や処理能力」だけでは差別化が難しいこれからの時代、我々個人の士業・専門家が生き残り、選ばれ続けるためには何が必要なのかについて解説します。

知識やスキルが「コモディティ化」しつつあるAI時代

私たちが長年培ってきた「専門知識」や「手続きを正確に行うスキル」は、士業にとって最大の武器でした。しかし、その前提が今、変わろうとしています。

AIが80〜90点の実務を一瞬でこなす

私も家族信託の分野では、実務経験がかなり多い方だと自負しています。しかし、実際に最新のAIを使ってみると、その出力レベルの高さに驚かされます。

例えば、「受益者連続型信託において、帰属権利者が先に死亡した場合の予備的条項案を3パターン作成して」と指示を出せば、AIはおおむね80〜90点レベルの条項案を、内容の把握や選択肢の提案とともに一瞬で提示してきます。

これまでであれば、ゼロから新人を雇い、法務や税務の基礎を教え込み、80〜90点レベルの契約書を起案できるようになるまでには、相当な時間と労力、そして教育コストがかかっていました。それが今では、AIという優秀なアシスタントを使うことで、誰でも瞬時にそのレベルに到達できるようになったのです。

「能力値」での差別化が極めて困難に

これはつまり、「業界の誰もが、同じような高いレベルの仕事を提供できるようになった」ことを意味します。

これまでは、「複雑な案件を処理できる」「最新の法務知識を持っている」こと自体が差別化の要因でした。しかし、AIがその知識のギャップを埋めてしまう現在、手続きの正確さや提案の質といった「能力値」だけで他事務所と差をつけることは、難しくなってきています。

顧客から見れば、どの先生に頼んでも同じような、一定以上の高品質なサービスが受けられる状態です。機能的価値での差別化ができなくなると、「価格競争」となってしまいがちです。

情報の氾濫と「大手法人の戦略」の限界

能力の均質化のほかにも、情報の氾濫と異業種の参入がさらに環境を厳しくしつつあります。

今では、金融機関、不動産会社、保険代理店、そしてリーガルテックを標榜する民間会社が、家族信託サポート、相続登記、労務管理など、かつては士業の独占領域だったサービスを堂々と展開しています。

さらに、情報量の爆発的な増加も見過ごせません。スマートフォンとSNSの普及により、誰もが簡単に情報を発信できるようになりました。大きな法人でなくても、ペライチなどで綺麗なホームページを作り、ブログやYouTubeで専門知識を発信できます。

結果として何が起きているか。「〇〇市 相続」と検索しても、どのホームページにも同じような手続きの流れ、同じような料金表、同じような笑顔の写真が並んでいます。情報が多すぎるゆえに、顧客は「どこが本当に良い事務所なのか」を選べなくなっているのです。

ネットと広告だけでは「信用」は作れない

大手法人や民間会社は、この状況を打開するために多額の広告費を投じ、全国規模でネット集客を展開します。サービスの比較が難しいからこそ、価格を下げ、物量で勝負する「規模の経済」を追求しています。

しかし、私たち個人の士業が、大手のこの戦略を真似しても勝ち目はないです。資本力で圧倒されるだけでなく、そもそもネット広告だけでは「信用」を構築することが非常に難しいからです。

「自分の大切な家族の財産を任せる」「複雑な相続の悩みを打ち明ける」といった属人性の高い専門サービスにおいて、顧客が最も求めているのは、安さや規模の大きさではありません。「この人に任せれば安心だ」という、「信用」なのです。

戦うための最強の武器は「地域での信用づくり」

AIによって業務の質が均質化し、ネット上に同じような情報が溢れる中、お客様が最終的に依頼先を選ぶ決め手は何でしょうか。

顧客が選ぶ優先順位は「知っている人・紹介」

人が深刻な悩みを抱えたとき、最初にネットで検索をして情報を集めるのは事実です。しかし、いざ「誰に依頼するか」を決断する段階になると、行動パターンは変わります。

多くの場合、選ぶ優先順位は以下のようになります。

1.自分の身近で詳しい人(過去に依頼したことがある、直接知っている)
2.つながりのある知人・友人・取引先からの紹介
3.(誰も思い当たる人がいなければ)ネットで探す

つまり、ネットで専門家を探すのは「身近に頼れる人がいないから」という消極的な理由であることが多いのです。逆に言えば、地域の顧客にとって「身近で頼れる知っている先生」という立ち位置を獲得できれば、ネットの価格競争に巻き込まれることはありません。

AIを「営業時間創出ツール」として使い倒す

ここまでの話を聞いて、「地域を回って信用を作れと言われても、日々の実務や書類作成で手一杯だ」と思われるかもしれません。しかし、だからこそ「AI」を導入するのです。

AIは「界王拳」。だからこそ「基礎能力」が必須

AIやクラウドツールを実務にフル活用することで、複雑な契約書のドラフト作成、法務リサーチ、定型的な書類作成にかかる時間を劇的に削減できます。私は、AIは能力が高い人が使えばその生産性を5倍、10倍に高められる、まるでドラゴンボールの「界王拳」のようなツールだと考えています。これは単なる「業務効率化」ではなく、「圧倒的な営業時間創出ツール」なのです。

ただし、ここで一つ気をつけなければならないことがあります。それは、AIはあくまで「界王拳(能力の掛け算)」に過ぎないということです。

元の戦闘力がない(基礎となる能力がない)分野で使っても、大した出力を引き出すことはできません。さらに、士業の実務において基礎知識がないままAIを使えば、出力された内容の正誤や法的な妥当性を判断できず、かえって大きなリスクを抱えることになります。AIをフル活用するためには、その前提として、士業としての基礎となる専門能力をまんべんなく学び続ける必要があるのです。

昔であれば、案件をこなすために事務所にこもりきりになったり、スタッフを増員したりする必要がありました。しかし今は、しっかりとした基礎能力を持つ専門家が、少人数でもAIという「界王拳」を駆使することで、高い処理能力を維持できます。

この「AIによって生み出した時間」を、さらに多くの事務作業をこなすために使うのは間違っています。生み出した時間はすべて、外に出て地域の人々と会い、信用を築くための「どぶ板営業」に投資すべきです。

空いた時間で実践する「高付加価値などぶ板営業」とは

では、AIが生み出してくれた時間を使って、具体的にどのような活動をすべきでしょうか。「どぶ板営業」といっても、ただ名刺を配って歩くだけではありません。専門家としての強みを活かした、付加価値の高い関係構築です。

・紹介元候補(不動産会社、税理士、金融機関、介護施設など)への定期訪問
単なる挨拶ではなく、彼らの顧客が抱えていそうな課題に対し、「最近こんな事例がありました」と解決策のヒントを持参します。(※このヒントもAIを活用して素早くリサーチ・作成可能です)
・既存客への追客
一度依頼が終わった顧客に対しても、定期的に近況を伺う手紙を送ったり、法改正の簡単なニュースレター、メルマガを届けたりします。この「忘れられないための努力」が、将来の親族や知人の紹介につながります。
・地域コミュニティでの活動
地域の自治会やシニア向けサロンに出向き、少人数でも無償のミニ勉強会や相談会を開催します。また、商工会議所やライオンズクラブ、ロータリークラブといった地域の団体にも積極的に参加し、地元経営者とのネットワークを築くことも有効です。身近な相談相手として顔を覚えてもらうことが重要です。

こうしたアナログな活動は、手間がかかり効率が悪いため、競合はやりたがりません。しかし、この泥臭い活動の積み重ねこそが、「この地域で〇〇といえば先生だね」という想起を作り出し、「紹介ルート」をつくることができます。

まとめ

  • AIの進化により、80〜90点レベルの実務処理は一瞬で可能になり、知識やスキルでの差別化が難しくなっている
  • 異業種参入や大手のネット広告により業界の垣根がなくなり、同じような情報が氾濫している
  • 誰もが一定レベルのサービスを提供できる時代において、最後に選ばれる基準は「専門家としての信用」である
  • ネット広告に頼る大手の戦略を真似るのではなく、地域密着の「どぶ板営業」による信用構築が重要である
  • AIを「営業時間創出ツール」として徹底活用し、浮いた時間を「人との繋がり(どぶ板営業)」に投資するべき

AIがどれだけ賢くなっても、人間が抱える複雑な感情に寄り添い、「この先生を信じて、家族の未来を託そう」と決断させる『信用』を代替することは絶対にできないからです。

大手法人や民間会社が全国向けのネット広告に資金を投じている今こそ、私たち地域の専門家は原点に立ち返るべきです。AIを「営業時間創出ツール」として使い倒し、そこで生まれた時間を、地域での「どぶ板営業」や「既存客との関係性強化」といったアナログな信用づくりに全振りする。これこそが、これからの時代に選ばれ続けるための唯一の道だと私は確信しています。

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