2023/11/2
2024/11/20
外国人ビザ
経営管理ビザでは500万円が必要?資本金の調達方法や注意点を解説

日本でビジネスを始めたい外国人起業家にとって、「経営管理ビザ」は日本で経営者として活動するために必要なビザです。
経営管理ビザの取得には、500万円の資本金が必要とされるなど、一定の要件が定められています。2024年からは資本金なしでも経営管理ビザが取れる、と改正される可能性がありますが、2023年現時点ではこの資本金の調達が外国人起業家にとって大きなハードルになっているため、資金の調達方法や申請時の注意点を正しく理解することが大切です。
今回の記事のポイントは下記の通りです。
✓経営管理ビザとは、外国人が日本で会社を設立したり、日本の会社を経営・管理するために必要な在留資格の一つ
✓外国人が日本で会社を設立し、自ら経営者として活動する場合には、資本金500万円を用意する必要がある ✓会社が常勤の職員(日本に居住する日本人、特別永住者、永住者、永住者の配偶者等、定住者)2名以上を雇用する場合は資本金500万円の要件を免除されることがある ✓外国人が事業の管理者となる場合、外国人本人の500万円以上の出資は不要だが、事業の経営または管理について3年以上の経験、日本人と同等額以上の報酬を受けることといった要件が求められる ✓経営管理ビザの500万円の資本金については、その出所が厳しく審査され、資金があるだけでなく、その資金が適法かつ正当な方法で得られたものであることを証明する必要がある ✓資本金として500万円は、定款認証日以降に口座に入金しておく必要があるが、会社設立登記後はビジネスのために使ってしまっても構わない |
本記事では、経営管理ビザ取得に必要な500万円資本金と注意点について解説します。
1.経営管理ビザとは
経営管理ビザとは、外国人が日本で会社を設立したり、日本の会社を経営・管理するために必要な在留資格の一つです。このビザを取得することで、投資・経営する会社の代表者や経営者として、日本国内で活動することが可能となります。
しかし、経営管理ビザを取得するためには、経営するビジネスが持続可能であること、そして健全な運営が行われることが求められます。これを証明するためには、資本金500万円の調達、事業計画の提出、さらには実際に事業が行われている実態の証明など、いくつかの重要な要件をクリアする必要があります。
2.経営管理ビザ取得で500万円が必要なケース
経営管理ビザを取得するためには、単に日本でビジネスを行うという熱意だけでは不十分です。厳格な審査基準のもと、日本政府は外国人投資家が経済に貢献できる実力と資源を有しているかを確認します。その中で最も重要な要素の一つが「資本金500万円」です。
ここでいう資本金とは、会社設立時に外国人経営者により出資された金銭のことを指し、これが500万円未満の場合、経営管理ビザの取得が難しくなる可能性があります。では、どのような場合にこの500万円が必要とされるのでしょうか? 2つの主要なケースに分けて、その条件を明確にしていきます。
2-1.外国人が日本で会社を設立し、自ら経営者として活動する場合
経営管理ビザの基本的な要件として、外国人が日本に新たに会社を設立し、その会社の経営に携わる場合、資本金として500万円又は後述する2名以上の常勤職員の雇用が必要になります。これは日本の市場で健全に事業を運営し、持続可能な経営が行えるという信頼性を示すためのものです。設立する会社の資本金が500万円以上あると、経営基盤がしっかりしていると判断されやすく、ビザ取得の審査においても有利に働くと考えられます。
2-2.常勤職員2名以上を雇用しない場合
経営管理ビザ取得については、常勤で2名以上の職員(日本人または、特別永住者、永住者、永住者の配偶者等、定住者)を雇用するという要件があります。500万円以上資本金を用意できれば開業当初から社員を雇用せずに、経営管理ビザを取得できます。そのため、リスクを抑え少人数で起業予定であれば、500万円以上の資本金の用意が必ず必要となります。
ただし、飲食店や小売店など店舗系ビジネスにおいては、経営者の役割は経営管理業務を求められることから、実際の調理や接客を担当するスタッフを採用しないと経営管理ビザの取得は認められないため注意してください。
2⁻3.2024年3月から一定の要件を満たした有償型新株予約権の払込金も資本金として認められる
経営管理ビザを取得するための「経営・管理」の基準には、事業の資本金または出資総額が500万円以上であることが求められます。.2024年3月からは、J-KISS型新株予約権によって調達された払込金は、次の2つの条件を満たす場合に限り、資本金としての計上が認められます。
- 新株予約権の発行によって得られた払込金が返済義務のないものであること
- 新株予約権が将来権利行使される際に払込資本となる、または権利行使されずに失効し利益となる場合のいずれであっても、資本金として計上されること
詳細は、下記のページで解説しています。
3.経営管理ビザ取得で500万円が不要なケース
経営管理ビザの申請に際し、500万円の資本金が必ずしも必要ではないケースがあります。これは特定の条件を満たすことで、資金の要件が緩和されることを意味します。以下では、資本金500万円が免除される主要な状況について解説します。
3-1.常勤職員を2名以上が従事する場合
会社が常勤の職員2名以上を雇用する場合も、資本金500万円の要件を免除されることがあります。常勤の職員に該当する者は、日本に居住する日本人、特別永住者、永住者、永住者の配偶者等、定住者です。
職務に応じた給与を設定する必要があり、直接雇用をする必要があります。これらの職員は正社員である必要があり、在籍出向、派遣、請負で勤務する労働者やパートタイマーでは事業所の常勤の職員としてカウントされません。また、労働保険(労災保険・雇用保険)にも加入させる必要があります。
常勤職員を1名のみ従事する場合(資本金250万円程度は用意必要)
経営管理ビザ取得の要件としては、資本金500万円以上又は常勤職員2名以上の従事という2点がありますが、この2点に準ずる規模であれば、常勤職員1名のみの従事でもビザ取得が認められます。ただし、常勤職員1名のみで準ずる規模と認められる場合には、もう1名を従事させるのに要する費用を投資しているような規模が必要となります。具体的には資本金は250万円程度が必要となります。
3-2.外国人が日本の事業の管理に従事する場合
外国人が、日本で役員、部長、支店長や工場長などの事業の管理者となる場合、経営管理ビザ申請者である外国人本人の500万円以上の出資は不要です。これまで説明した資産規模(資本金500万円又は常勤職員2人以上)を満たした会社が存在することが前提ですが、外国人本人については資本金要件はなく、外国人が持つ事業経営または管理に関する経験が審査されます。
具体的には、次の条件を満たす必要があります。
- 事業の経営または管理について3年以上の経験(大学院で経営や管理を専攻した期間を含む)を有すること
- 日本人と同等額以上の報酬を受けること
このように、外国人本人の500万円出資なしで経営管理ビザを取得して管理者として外国人を呼ぶことも可能ですが、3年以上の経営・管理の経験や大学院でのMBA課程の在籍期間などを証明する必要があります。また、報酬も同じ会社内で同じ業務に従事する日本人と同等額以上、又は他の同種企業等における同種業務の日本人と同等額以上の報酬を設定する必要もあります。
4.資本金500万円は出所が調査される
経営管理ビザを申請する際、必要となる500万円の資本金については、その出所が厳しく審査されます。単に資金があるだけでなく、その資金が適法かつ正当な方法で得られたものであることを証明する必要があります。見せ金、すなわち形式的に資金を準備して実際にはビジネスに使用しない場合は認められません。それぞれの場合に応じた対処法と必要な証明について解説します。
4-1.外国人が自分で500万円を貯めた場合 しっかりと証拠を残す
資本金を自己資金でまかなう場合、その貯蓄が合法的な収入から得られたものであることの証明が必要です。給与明細、銀行口座の履歴、源泉徴収票、税務申告書など、資金の蓄積が見られる信頼できる文書を保持し、申請時に提出できるようにしておくべきです。
4-2.親族や知人からお金を借りる場合
資本金を親族や知人から借り入れる場合は、借入れの事実を証明できる書類が求められます。借用書や銀行振込の記録、貸主の銀行口座の履歴などが必要になり、これらの文書は関係者間での金銭のやりとりが合法的であることを証明するために役立ちます。
また、今後無理なく返済ができる返済計画や貸してくれた貸主の資金の出所についても確認される可能性があるので、きちんと資金の借り入れ、返済計画、貸主側の出所についても証明できるようにしておく必要があります。
4-3.海外から送金する場合
海外の銀行口座から日本の口座へ資本金を送金する場合は、送金の記録を残し、その資金の送金過程を示せるようにしておく必要があります。送金時のレートによっては、500万円に満たないこともあるので、500万円以上となるように送金しましょう。送金時の領収書や銀行の取引明細書も重要な証拠となります。
4-4.現金を母国から持参する場合
100万円以上の現金を直接持ち込む場合、税関での申告が義務付けられており、申告しないと法律違反となるため注意が必要です。違反となると経営管理ビザ取得の審査において不利に働くことがあります。持ち込んだ資金に関する申告書は、経営管理ビザ申請の証拠資料として提出することになります。
4-5.留学生が起業する場合
留学生が起業し経営管理ビザを申請する場合、資本金の原資については特に慎重な審査が行われます。留学中の資格外活動による収入が原資になっているのではないかが審査されます。留学ビザは働くことができないビザのため、資格外活動許可で貯めた資金では認められません。そのため、例えば親からの援助による送金など合法的な支援を受けていることを証明する必要があります。送金記録や親からの支援を証明できる通帳のコピー、送金書などが必要です。
5.資本金500万円は、会社設立登記時までに用意が必要
経営管理ビザを申請する上で、資本金として500万円が必要な場合、これは会社設立登記時までに準備し、口座に入金しておくべき金額です。ただし、資金の準備と管理にはいくつかのポイントがあり、これらに注意しなければ、ビザ取得に障害が生じる可能性があります。
5-1.銀行口座に500万円があるだけではダメ
経営管理ビザの申請に際しては、単に銀行口座に500万円があるという証明だけでは不十分です。資本金としての500万円は、会社設立手続き上、資本金を払い込むための発起人名義の日本国内の銀行の銀行口座又は日本の銀行の海外支店(海外支店では新規の口座開設は難しい)の口座を用意する必要があります。
このように、日本国内の銀行口座が基本的には必要となるため、海外に居住する外国人が日本国内の銀行口座を有していない場合には、日本の協力者に発起人か代表取締役になってもらって、その人の口座に資本金500万円を用意する必要があります。
そして、既に資本金用払込口座内に500万円の口座残高があったとしても、それだけでは認められません。この500万円は会社設立のための資本金であることを証明するために、定款認証日以降に、一旦引き出して再度入金する必要があります。
5-2.資本金を海外送金するときは、500万円以上の金額で送金する
送金手数料などが差し引かれた後の金額が500万円未満にならないように、送金額は500万円以上とすることが重要です。送金時の手数料は受け取り側の金額から差し引かれることが多いので、送金額を計算する際にはこの点を考慮に入れなければなりません。
5-3.海外送金は時間が日数がかかることがあるため、事前に送金準備をしておく
海外からの送金は、時に数日間を要することがあります。また、国際送金には複数の銀行が関与することが多く、予期せぬ遅延が生じることも考えられます。そのため、予定日よりも早めに送金手続きを始めることが肝心です。
5-4.会社設立後は、経営管理ビザ取得前にビジネス活動に使える
資本金が確保されたら、その資金は経営管理ビザが発行される前であってもビジネスの運営資金として使用することができます。これにより、ビザ申請中でも事業の立ち上げや初期の運営が可能となります。
6.まとめ
✓経営管理ビザとは、外国人が日本で会社を設立したり、日本の会社を経営・管理するために必要な在留資格の一つ
✓外国人が日本で会社を設立し、自ら経営者として活動する場合には、資本金500万円を用意する必要がある ✓会社が常勤の職員(日本に居住する日本人、特別永住者、永住者、永住者の配偶者等、定住者)2名以上を雇用する場合は資本金500万円の要件を免除されることがある ✓外国人が事業の管理者となる場合、外国人本人の500万円以上の出資は不要だが、事業の経営または管理について3年以上の経験、日本人と同等額以上の報酬を受けることといった要件が求められる ✓経営管理ビザの500万円の資本金については、その出所が厳しく審査され、資金があるだけでなく、その資金が適法かつ正当な方法で得られたものであることを証明する必要がある ✓資本金として500万円は、定款認証日以降に口座に入金しておく必要があるが、会社設立登記後はビジネスのために使ってしまっても構わない |
経営管理ビザの取得には、資本金の準備だけでなく、様々な要件があります。本記事を参考にしていただき、計画を進める中で疑問や不安が生じた場合、専門家のサポートが必要かもしれません。私たちの会社では、経営管理ビザの取得に関する無料相談を実施しています。個別のケースに合わせたアドバイスや必要な手続きの支援を通じて、あなたのビジネスが日本でスムーズに進むよう全力でお手伝いします。
この記事の監修

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)
相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。