2024/7/3
2024/7/3
外国人ビザ
就労ビザの「技術・人文知識・国際業務」とは?就労できる職務や職業を解説

技術・人文知識・国際業務ビザは、理・工学の技術や法律・経済などの人文知識、通訳などの国際的な業務に携わる専門家が対象です。本記事では、具体的な職種例や取得要件、申請手続きの流れを解説し、必要書類や審査期間についても解説します。
今回の記事のポイントは以下のとおりです。
✓「技術・人文知識・国際業務」ビザは「自然科学」「人文科学」「異文化に基づく業務」に従事する外国人に適用される
✓技術分野は、コンピューター技師・システムエンジニア・自動車設計技師・機械工学技術者など、理系職種である ✓人文知識分野は、企画、営業、経理などの事務職である ✓国際業務分野は、翻訳・通訳・語学の指導などである ✓ビザ取得要件は「大学卒業または日本の専門学校卒業以上」「学歴・職歴と業務内容に関連性がある」「日本人と同等以上の給与水準」「就業先企業の経営状態が良好」なことである ✓申請に必要な書類は申請者と就業先に関するもの2種類がある ✓就業先企業は4つのカテゴリーに分類され、提出書類がそれぞれ異なる ✓申請手続きは「海外からの招へい」「国内の留学生の雇用」「国内転職」で異なる ✓ビザの在留期間は5年・3年・1年・3か月のいずれかである ✓在留資格の審査期間は、一般的に1か月程度とされているが、実際にはケースによって大きく異なる |
技術・人文知識・国際業務ビザは、日本での就労を希望する外国人にとって重要なビザの一つです。このビザは、理工系の技術者や企画・営業・経理などの事務職、通訳などの業務に携わる専門家が対象であり、日本の経済や文化への貢献促進が目的です。
本記事では、技術・人文知識・国際業務ビザに関する基本情報から具体的な職種例、取得要件、申請手続きの流れまでを詳しく解説します。さらに、申請に必要な書類や審査期間、許可されないケースについても触れ、スムーズなビザ取得のためのポイントを紹介します。
1.就労ビザの「技術・人文知識・国際業務」とは
「技術・人文知識・国際業務」は、日本における外国人向けの専門的就労ビザの一種です。通称「技人国(ギジンコク)」ビザとして知られるこの在留資格は、海外の「ワーキングビザ」に相当します。
この資格の主な目的は、外国人材の専門知識や技術を日本社会に活かすことです。自然科学や人文科学の専門知識、あるいは外国文化に関する深い理解が求められる職種に適用されます。
「技術」「人文知識」「国際業務」の3つの要素で構成されるこのビザは、単なる労働力不足解消のためではなく、高度な専門性を有する外国人が技術者やオフィスワーカーとして日本で働くための在留資格です。
在留資格の期間は5年・3年・1年・3か月のいずれかで、更新回数に制限はありません。
2.技術・人文・国際業務ビザで認められる業務・職種の例
「技術・人文知識・国際業務」は、自然科学や人文科学の知識・技術、または異文化に基づく思考や感受性を必要とする業務に従事する外国人が取得する在留資格です。
ここでは「技術」「人文知識」「国際業務」の3つの区分について、それぞれ解説します。
- 技術
- 人文知識
- 国際業務
外国人のこれまでのキャリアと、これからの業務が関連しているかどうかが重要なポイントです。申請の許可を得やすくするため、あらかじめ業務内容や職種を把握しておくようにしましょう。
2-1.技術
理学や工学などの自然科学分野の技術や知識が必要な業務に従事する活動を指します。
求められる本人の経歴は以下の通りです。
- 関連する技術や知識の分野を専攻して大学を卒業、またはそれと同等の教育を受けたこと
- 日本の専門学校の専門課程を修了していること(修了に関しては、法務大臣が定める要件に該当する場合に限る)
- 大学や日本の専門学校などで関連分野の専攻期間を含む、10年以上の実務経験があること
具体的には、コンピューター技師・システムエンジニア・自動車設計技師・機械工学技術者など、理系職種が含まれます。
2-2.人文知識
法律学、経済学、社会学などの人文科学分野の技術や知識が必要な業務です。具体的には、企画・営業・経理・コンサルタントなどの事務職が該当します。
これらの業務は「単純労働」とは異なり、一定以上の水準のスキルがもとめられるものの、非常に高度な専門知識までは必要ないとされています。また、日本人と同等額以上の報酬を受けることが条件です。求められる経歴は、前述の2-1.技術と同様です
2-3.国際業務
外国文化に基づいた思考や感受性が求められる業務に従事する活動を指します。
本人に求められる経歴は、以下のとおりです。
- 翻訳・通訳・語学の指導・広報・宣伝・海外取引業務・ファッション・インテリアデザイン・商品開発などの業務に従事すること
- 従事予定の業務に関連する分野で、3年以上の実務経験があること。ただし、大学卒業者が翻訳、通訳、または語学指導の業務に従事する場合はこの限りではない
- 日本人が同じ仕事をする場合に受ける報酬と同等以上の報酬を受けること
本人に求められる経歴は、技術・人文知識とは異なります。
3.技術・人文知識・国際業務ビザを取得するための要件
技術・人文知識・国際業務ビザの取得には、次の要件があります。
- 大学卒業または日本の専門学校卒業以上である
- 学歴・職歴と業務内容に関連性がある
- 給与の水準が日本人と同等以上である
- 就業先の企業の経営状態が良好である
以下で、それぞれについて解説します。
3-1.大学卒業または日本の専門学校卒業以上である
前述の本人に求められる経歴は下表のとおりです。
技術・人文知識 | 国際業務 |
|
|
「専攻した分野」と「これからの業務」が関連しているかを確認し、その証明として成績証明書と卒業証書を用意しておきましょう。対象は、大学、短大(日本または本国)、日本の専門学校(母国の専門学校は該当しません)です。
3-2.学歴・職歴と業務内容に関連性がある
技術・人文知識・国際業務ビザの審査において、学歴と業務内容の関連性は重要な要素です。大卒者に比べ、専門学校卒業者は通常より厳密な審査を受けます。基本的に、従事予定の業務に必要な知識や技術を専攻していることが重要です。
関連性の判断は最終的に入国管理局の審査官に委ねられます。科目名だけでなく、実際に学んだ内容を具体的にアピールすることが重要です。
3-3.給与の水準が日本人と同等以上である
技術・人文知識・国際業務の在留資格取得には、外国人従業員に対する公平な待遇が不可欠です。特に、給与面での平等性が重要です。
外国人であることを理由に給与を低く抑えることは、法律で禁止されています。同一労働同一賃金の原則が適用され、日本人従業員と同等かそれ以上の給与を支払わなければなりません。
雇用契約書には、日本人従業員と同等の給与額を明記し、入管に提出するようにしましょう。
3-4.就業先の企業の経営状態が良好である
技術・人文知識・国際業務の在留資格審査では、雇用企業の経営状態も重要な評価対象です。入国管理局は、企業の事業の安定性と継続性を慎重に判断します。
通常、審査のために決算書の提出が必要です。健全な経営状態の企業であれば問題ありませんが、大幅な赤字決算など経営の安定性に疑義が生じる場合は、より厳密な審査が行われます。
ただし、赤字決算が即座にビザ発給拒否につながるわけではありません。事業計画書などを通じて、今後の黒字化へのビジョンを明確に示すことにより、審査をクリアできる可能性があります。新設会社の場合も同様のアプローチが有効です。
4.技術・人文知識・国際業務ビザ申請の必要書類
提出書類は、申請者に関するものと招聘機関(雇用主など)に関するものに分かれます。雇用主は、企業規模に応じて4つのカテゴリーに分類され、必要な書類も異なります。
表にまとめると、以下のとおりです。
区分
(所属機関) |
カテゴリー1 | カテゴリー2 | カテゴリー3 | カテゴリー4 |
日本の上場企業や国・地方公共団体、独立行政法人などが該当。具体的には、大規模な企業や社会的信頼がある団体、日本政府に認められた企業など。 | 1.前年度の給与所得の源泉徴収税額が1,000万円以上の団体や個人。
2.カテゴリー3に該当し、在留申請オンラインシステムの利用申請が承認されている機関。 |
前年度の給与所得の源泉徴収票などが提出された団体や個人であり、カテゴリー2以外。 | カテゴリー1から3に該当しない団体や個人。 | |
申請人に関する資料 | 1.在留資格認定証明書交付申請書
2.写真(縦4cm×横3cm) ※申請前3か月以内に正面から撮影された無帽、無背景で鮮明なもの。 3.返信用封筒(簡易書留用) ※返信先住所を明記し、簡易書留に必要な分の切手を貼付したもの。 5.専門士または高度専門士の学位を証明する文書 ※学歴要件が専門士または高度専門士の場合 6.派遣契約に基づいて就労する場合(申請人が被派遣者の場合) 申請人の派遣先での活動内容を明らかにする資料(労働条件通知書(雇用契約書)等) |
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7.申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料
(1)労働契約を締結する場合 (2)日本法人である会社の役員に就任する場合 (3)外国法人内の日本支店に転勤する場合及び会社以外の団体の役員に就任する場合 8.申請人の学歴及び職歴その他経歴等を証明する文書 (1)履歴書 (2)学歴または職歴等を証明する文書 |
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招聘機関(勤務先会社等)に関する資料 | 4.四季報の写し、または日本の証券取引所に上場していることを証明する文書の写しなど | 4.前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写しなど | 4.前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) | ー |
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9.登記事項証明書
10.事業内容を明らかにする資料 11.直近の年度の決算文書の写し。新規事業の場合は事業計画書 |
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12.前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする次のいずれかの資料
(1)源泉徴収の免除を受ける機関の場合 外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料 (2)上記(1)を除く機関の場合 給与支払事務所等の開設届出書の写し 次のいずれかの資料 (ア) 直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるものの写し) (イ)納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料 |
以下で、それぞれについて詳しく解説します。
4-1.カテゴリーごとに必要書類が異なる
招聘機関(勤務先会社等)は規模に応じて4つのカテゴリーに分けられ、それぞれ異なる書類が必要です。カテゴリーの区分は以下の通りです。
カテゴリー1 | カテゴリー2 | カテゴリー3 | カテゴリー4 |
日本の上場企業や国・地方公共団体、独立行政法人などが該当。具体的には、大規模な企業や社会的信頼がある団体、日本政府に認められた企業など。 | 前年度の給与所得の源泉徴収税額が1,000万円以上の団体や個人。カテゴリー3に該当し、在留申請オンラインシステムの利用申請が承認されている機関。 | 前年度の給与所得の源泉徴収票などが提出された団体や個人であり、カテゴリー2以外。 | カテゴリー1から3に該当しない団体や個人。 |
規模が大きく社会的信用のあるカテゴリー1や2の企業は、提出書類が少なくて済みます。一方のカテゴリー3や4の企業は、多くの書類を用意する必要があるため、余裕を持って準備することが重要です。
4-2.申請人に関する資料
申請人に関する資料は、下表のとおりです。
カテゴリー1 | カテゴリー2 | カテゴリー3 | カテゴリー4 |
1.在留資格認定証明書交付申請書
2.写真(縦4cm×横3cm) ※申請前3か月以内に正面から撮影された無帽、無背景で鮮明なもの。 3.返信用封筒(簡易書留用) ※返信先住所を明記し、簡易書留に必要な分の切手を貼付したもの。 5.専門士または高度専門士の学位を証明する文書 ※学歴要件が専門士または高度専門士の場合 6.派遣契約に基づいて就労する場合(申請人が被派遣者の場合) 申請人の派遣先での活動内容を明らかにする資料(労働条件通知書(雇用契約書)等) |
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7.申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料
(1)労働契約を締結する場合 労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書 1通 (2)日本法人である会社の役員に就任する場合 役員報酬を定める定款の写し又は役員報酬を決議した株主総会の議事録(報酬委員会が設置されている会社にあっては同委員会の議事録)の写し 1通 (3)外国法人内の日本支店に転勤する場合及び会社以外の団体の役員に就任する場合 地位(担当業務)、期間及び支払われる報酬額を明らかにする所属団体の文書 1通 8.申請人の学歴及び職歴その他経歴等を証明する文書 (1)履歴書 (2)学歴または職歴等を証明する文書 |
学歴に関しては、専攻内容と就職先での職務内容の一致が求められます。そのため、卒業証明書や成績証明書による専攻内容の確認が不可欠です。
一方、高卒など学歴要件を満たさない場合は、多くの職種で10年以上、一部の職種では3年以上の関連職務経験を要します。その場合、過去の勤務先から実務経験を証明する書類の取得が必要です。
ただし、大卒以上の方が通訳・翻訳や語学指導の業務に就く場合は、専攻内容と職務内容の一致や実務経験がなくてもビザの取得ができます。
4-3.就業先に関する資料
外国人を雇用する企業に関する必要書類は、以下のとおりです。
カテゴリー1 | カテゴリー2 | カテゴリー3 | カテゴリー4 |
4.四季報の写し、または日本の証券取引所に上場していることを証明する文書の写しなど | 4.前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写しなど | 4.前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) | ー |
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9.登記事項証明書
10.事業内容を明らかにするいずれかの資料 11.直近の年度の決算文書の写し。新規事業の場合は事業計画書 |
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12.前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする次のいずれかの資料
(1)源泉徴収の免除を受ける機関の場合 外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料 (2)上記(1)を除く機関の場合 a.給与支払事務所等の開設届出書の写し b.次のいずれかの資料 (ア) 直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるものの写し) (イ)納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料 |
4-3-1.職務の内容を証明する書類
就労ビザの申請過程では、基本的な申請書類に加えて、雇用企業に関するものがあります。特に、外国人材の職務内容を証明する書類は重要です。
具体的には以下のようなものが含まれます。
- 事務所や事業所の写真:会社が実際に事業を行っている証拠資料
- 取引契約書のコピー:会社規模に関わらず、安定した業務があることの証明
- 商品案内パンフレット:外国人材が携わる事業内容を説明するもの
- 労務契約書:給与や労働時間だけでなく、具体的な職務内容も記載されているもの
これらの書類は、申請者の就労の正当性と必要性を入国管理局に示す重要な役割を果たします。
4-3-2.就業先の基本情報や経営状況が確認できる書類
カテゴリー1と2は、「四季報」や「前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し」などの資料により、就業先の基本情報や経営状況を確認できます。
一方、カテゴリー3と4では、就業先情報を証明するために以下の資料が必要です。
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 登記事項証明書
- 事業内容を明らかにする資料:勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が詳細に記載された案内書、もしくは勤務先等の作成したそれに準ずる資料
- 直近の年度の決算文書の写し(新規事業の場合は事業計画書)
なお、カテゴリー4は「前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)」を提出できない招聘機関のため、法定調書合計表を提出できない理由を示す次の資料が必要です。
- 源泉徴収の免除を受ける機関の場合:「外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料」
- 源泉徴収の免除を受ける機関以外の場合:「給与支払事務所等の開設届出書の写し」と次のいずれか
「直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるものの写し)」
「納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料」
5.技術・人文知識・国際業務ビザを申請する方法と流れ
就労ビザの申請手続きは、外国人をどこから呼び寄せるかによって申請手続きが異なります。ここでは、次の3つのケースについて解説します。
- 海外から招へいする場合
- 国内の留学生を雇用する場合
- 国内の会社から転職してくる場合
各ケースで必要な書類やプロセス、所要時間は異なるため、状況に応じた適切な対応が必要です。
5-1.海外から招へいする場合
外国人材の雇用が決定した後、適切な手続きを踏むことが重要です。まずは、雇用契約書を書面で取り交わす必要があります。その際、外国人の顔写真、卒業証明書、履歴書も併せて入手しておきましょう。これらの書類は、後の就労ビザ申請時に入国管理局への提出が必要です。
雇用契約書締結後、入国管理局への「在留資格認定証明書」(証明書)申請が可能です。この審査には通常1〜3か月かかりますが、書類の不備があるとさらに時間を要する可能性があるため、慎重に確認をしましょう。
証明書が発行された後、外国人本人へ送付します。その後、本人が自国の日本大使館でビザ(査証)を申請します。この手続きには2週間から1か月半ほどかかるのが一般的です。
最終的に、ビザを取得して日本に入国する際、入国管理官から「在留カード」が発行されます。この在留カードの取得をもって、就労ビザ申請プロセスは完了です。
5-2.国内の留学生を雇用する場合
日本国内の留学生を新卒採用する場合、就労ビザの手続きは比較的簡素化されています。これらの学生は既に在留カードを所持しているため、面接時にその確認が必要です。
留学生の在留資格は通常「留学」または「特定活動(就職活動)」です。内定後、雇用契約書を締結し、入国管理局で「在留資格変更許可」を申請します。この手続きは本人が行うことも可能ですが、複雑な場合があるため、企業の担当者の同行が推奨されます。
申請から結果が出るまでは通常2週間から1か月程度です。許可が通った後、入国管理局で新しい在留カードを受け取ります。この新カードの取得をもって、就労ビザの手続きは完了です。
5-3.国内の会社から転職してくる場合
日本で就労中の外国人が転職する際に必要な手続きは、新しい職務の内容によって異なります。
転職後も業務内容に大きな変更がない場合、現在の在留資格を継続して利用できます。この場合、就労ビザの再申請は不要であり、転職者が入国管理局に「所属(契約)機関に関する届出」を提出するだけで手続きは完了します。
ただし、新しい業務が現在の就労ビザの範囲内かどうか不確かな場合は、法務省で「就労資格証明書交付申請」を行うことが賢明です。これにより、適法であることを確認できます。
一方、転職に伴い業務内容が大きく変わる場合は、「在留資格変更許可」の申請が必要です。これは、新しい職務に合わせて在留資格を変更する手続きです。
6.技術・人文知識・国際業務ビザ審査にかかる期間
在留資格の審査期間は、一般的に1か月程度とされていますが、実際にはケースによって大きく異なります。法律上、3か月以内に審査を終えることが義務付けられていますが、2週間で終わる場合もあれば、2〜3か月かかることもあります。
審査期間は申請の種類によって異なります。通常は「更新」の審査期間が最も短く、「変更」がそれに続き、「認定」が最も時間を要する傾向があります。また、申請企業の信用度や申請者本人の状況なども審査期間に影響します。
さらに、入国管理局の繁忙期も考慮する必要があります。例年2月から5月頃は申請が集中するため、この時期の申請は処理に時間がかかる傾向があります。
7.技術・人文知識・国際業務ビザ申請が許可されないケース
就労ビザの申請が不許可となる主な原因は以下の三点に集約されます。
1つ目に、業務内容と学歴の不一致です。「技術・人文知識・国際業務」ビザでは、専門教育で得た知識と実際の業務内容の関連性が重要視されます。この関連性が認められない場合、不許可となる可能性が高いです。
2つ目に、資格外活動の制限を守らない場合があります。留学生や家族滞在者などが、許可された週28時間(長期休暇中は1日8時間)を超えてアルバイトをしていた場合、就労ビザの申請が却下されることもあります。雇用主は採用前に、応募者が法令を遵守していたかを確認することが重要です。
3つめに、申請内容の虚偽です。学歴や職歴などの情報に虚偽があった場合、当然ながら不許可となります。意図的でない誤記載であっても同様の結果になる可能性があるため、申請書類の作成には細心の注意が必要です。
これらの点に留意し、正確かつ誠実な申請を行うことが、就労ビザ取得の成功につながります。
8.まとめ
本記事では、就労ビザの「技術・人文知識・国際業務」について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。
✓「技術・人文知識・国際業務」ビザは「自然科学」「人文科学」「異文化に基づく業務」に従事する外国人に適用される
✓技術分野は、コンピューター技師・システムエンジニア・自動車設計技師・機械工学技術者など、理系職種である ✓人文知識分野は、企画、営業、経理などの事務職である ✓国際業務分野は、翻訳・通訳・語学の指導などである ✓ビザ取得要件は「大学卒業または日本の専門学校卒業以上」「学歴・職歴と業務内容に関連性がある」「日本人と同等以上の給与水準」「就業先企業の経営状態が良好」なことである ✓申請に必要な書類は申請者と就業先に関するもの2種類がある ✓就業先企業は4つのカテゴリーに分類され、提出書類がそれぞれ異なる ✓申請手続きは「海外からの招へい」「国内の留学生の雇用」「国内転職」で異なる ✓ビザの在留期間は5年・3年・1年・3か月のいずれかである ✓在留資格の審査期間は、一般的に1か月程度とされているが、実際にはケースによって大きく異なる |
技術・人文知識・国際業務ビザは、日本で専門的な業務に従事する外国人のための重要なビザです。このビザは、技術分野・人文知識分野・国際業務分野の職種で働くことを認めており、具体的にはITエンジニア・通訳・コンサルタントなどが該当します。
取得要件としては、「大学卒業または日本の専門学校卒業」「学歴・職歴と業務内容の関連性」「日本人と同等以上の給与水準」「雇用する企業が健全な経営状態であること」が求められます。申請には、職務内容や企業の基本情報を証明する書類が必要です。
申請方法は、「海外からの招集」「国内留学生の雇用」「国内転職」の場合で異なり、それぞれの申請手続きを進める必要があります。
また、手続きに必要な書類がそろわない場合や、自力で更新手続きをすることが難しいと感じる場合もあるかもしれません。難しいと感じるときは、ビザ取得・更新の専門家に依頼するのもひとつの方法です。
まずは採用したい外国人の状況(在留資格、学歴等)を確認し、入念な準備をしたうえで申請に臨みましょう。
この記事の監修

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)
相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。