2024/7/2 2024/7/2

外国人の不動産・ビジネス

外国人でも住宅ローンは組める?永住権の有無など審査の基準を解説

外国人が不動産を購入して住宅ローンを組む際、永住権の有無が大きく影響します。永住権がない場合には、母国の金融機関への申込みや日本人配偶者を保証人に立てるなど、融資を受けやすくするための検討を進めていくことが必要です。本記事ではこれらの方法や審査内容、留意点を詳しく解説します。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

✓ 永住権を持つ外国人は、ほとんどの金融機関で日本人と同様の条件で住宅ローンを組める

✓ 永住権がない外国人でも特定の条件を満たせば住宅ローンを組める

✓ 住宅ローンの申請において、日本語能力が不十分な場合は、困難である

✓ 外国人の住宅ローン審査では、安定した収入や信用情報、健康状態が重要な要素となる

✓ 在留期間が短い場合、住宅ローンの審査が厳しくなる

✓ 外国人が住宅ローンを組む際、保証会社の保証を得られない場合がある

✓ 外国人が住宅ローンを受けやすくする方法には、永住権の取得や収入・自己資金の確保などが挙げられる。

✓ 外国人が住宅ローンを契約する際には、金融機関での口座開設が前提条件となる

✓ 日本入国後6か月未満や日本国内での正規の雇用歴がない場合、口座開設が制限される可能性もある

外国人が住宅ローンを組むことは可能ですが、永住権の有無により状況が変わってきます。永住権を持たない外国人の場合、金融機関の審査はかなり厳しいのが現状です。

永住権のない外国人が住宅ローンを組むことが難しい主な理由は、残債がある状態で帰国するリスクや収入面での不安、保証会社の保証が得られにくいこと、日本語でのコミュニケーション能力への懸念などです。一方で、永住権の取得や日本人配偶者の保証人を立てること、外国人向けの融資に対応している金融機関の利用などにより、住宅ローン融資を受けやすくなります。

本記事では、住宅ローン融資を受けやすくなる方法や審査内容、注意点を詳しく解説します。

1.永住権のない外国人でも住宅ローンは組めるのか

外国人でも不動産を購入するため、住宅ローンを申請できますが、永住許可の有無によって条件が異なります。永住許可を持つ外国人は、ほとんどの金融機関で日本人と同じ条件で審査されますが、永住許可がない場合でも特定の条件を満たせば、ローンが組める場合があります。

日本語能力が不十分な場合、外国語対応ができない金融機関では申請が困難です。重要事項の説明を理解できなければ、契約が成立しないためです。

永住許可を持つ外国人の審査では、安定した収入・勤続年数・信用情報・健康状態などがチェックされます。一方、永住許可がない場合には、本国籍または永住許可を持つ配偶者の連帯保証が求められ、保証人の返済能力も審査の対象となるのが一般的です。

また在留期間が短い場合には、ローン審査が厳しくなる傾向でもあります。それは、住宅ローンが居住を目的とするものであり、返済途中での帰国リスクが懸念されるためです。

2.永住権がない外国人が住宅ローンを組むのが難しい理由

永住権のない外国人が住宅ローンを組むのは、いくつかの理由で難しいとされています。その主な理由は以下のとおりです。

  • 残債がある状態で帰国する可能性があるため
  • 収入面に不安があるため
  • 保証会社の保証がつかないため
  • 日本語でのコミュニケーション能力への不安のため

裏を返せば、これらの懸念を払拭することにより、住宅ローンを組みやすくなることにつながります。以下では、それぞれについて解説します。

2-1.残債がある状態で帰国する可能性があるため

外国人の住宅ローン審査において、帰国の可能性は重要な審査要素です。母国への帰還は自然な選択肢であり、完全に否定はできません。しかし、帰国後の返済停止は、銀行側にとって債権回収を困難にするリスクがあります。

銀行は抵当権設定により保護されますが、海外での債務者追跡には多大な労力を要します。このリスクにより、多くの銀行が外国人向け住宅ローンに消極的です。

2-2.収入面に不安があるため

外国人が住宅ローンを申し込む際、安定した職業の有無は重要な審査要素です。不安定な雇用状況の申請者に対しては、融資に消極的になる金融機関が多い傾向にあります。これは、将来の返済能力に不安があり、債権回収が困難になるリスクを懸念するためです。そのため、安定した職に就いていない外国人は、住宅ローンの申込みを断られる可能性が高くなります。

2-3.保証会社の保証がつかないため

住宅ローンの融資には、多くの金融機関が保証会社の保証を必要とします。しかし、保証会社の多くは外国人を対象外としているため、外国人にとって住宅ローンの利用は困難です。

この問題を解決する方法の一つは、日本人配偶者に保証人になってもらうことです。また、配偶者自身が主たる借入人としてローンを組むことも検討してみましょう。これらの方法は、配偶者の年齢や収入に依存しますが、外国人が住宅購入を検討する際の有力な選択肢です。

2-4.日本語でのコミュニケーション能力への不安のため

日本の金融機関が提供する住宅ローンの契約書は日本語で作成されるため、多くの在日外国人にとって内容を正確に理解するのは困難です。日常会話は問題なくても、契約の詳細を把握するのは、容易ではありません。

金融機関にとっても、契約内容を完全に理解していない相手との取引はリスクが高くなります契約書の翻訳や通訳を提供する方法もありますが、これには時間と費用がかかるため、多くの銀行は外国人向けの住宅ローンの取り扱いを避ける傾向にあります。

3.外国人が住宅ローン融資を受けやすくなる方法

外国人が住宅ローンを組むことは、簡単ではありません。多くの金融機関が、住宅ローン申込の要件として「日本国籍または永住許可の取得」を求めているためです。永住権を持たない外国人への融資は行われないことが一般的です。

逆にいうと、永住許可を得ることにより外国人でも住宅ローンの融資を受けられる可能性が高いことを意味します。永住権は、日本への長期的な在留を希望する外国人が取得できる在留資格の一つです。

3-1.永住権を取得する

永住権を持つ外国人は、在留期間の制限なく日本に滞在でき、職種や業種を問わず就労が認められています。ただし、永住許可の審査基準は厳しく、原則として日本に10年以上在留し一定の条件を満たした外国人が取得可能です。

永住権の取得は容易ではありませんが、いったん取得すれば在留期間の制限なく日本在住が可能であり、活動の制限や職種、業種に関する制限もありません。外国人が住宅ローンを組むためには、この永住権の取得が重要なカギです。

3-1-1.永住権取得の要件

永住権を取得すると在留期間が無期限となり、住宅ローン審査において有利です。取得のためには以下の要件が必要です。

  1. .素行が善良であること
  2. 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
  3. 永住が日本国の利益に合すると認められること

まず法律を守り、善良な生活を送っていることが求められます。また、独立して生計を立てられるだけの資産や技能も重要です。申請者本人の収入が低くても、配偶者の収入が高ければ条件を満たせます。

さらに、日本国の利益に合致することが必要であり「罰金や懲役を受けていない」「税金を滞納していない」「感染症にり患していない」などの項目をクリアする必要があります。

3-1-2.永住権取得の方法

まず前述の要件を確認のうえ、申請に必要な書類を収集します。独立の生計を営むに足りる収入を証明する書類(課税証明書など)や、公的義務の支払い状況(住民税・年金・保険料など)などです。

次に、これらの書類を作成し、添付書類とともに管轄の入国管理局に提出します。審査期間中は、追加の資料や説明を求められる可能性があるため、迅速に対応しなければなりません。

申請から結果通知までは通常4〜8か月程度かかり、全体のプロセスは6か月以上に及ぶことがあります。書類の不備は審査期間の延長や不許可につながる可能性があるため、綿密な準備が必要です。

3-2.収入・自己資金を一定以上にする

就労ビザで働く外国人は、安定した収入や十分な自己資金を確保することで住宅ローン審査を有利に進められます。安定した収入があることで、毎月の返済能力を客観的に示し、銀行の融資リスクを軽減できます。

さらに、自己資金を多く準備すれば、借入額を減らしつつ返済期間の短縮が可能です。銀行にとっては融資金の回収見通しが立てやすくなるため、審査が有利になることがあります。

3-3.保証人に日本人の配偶者を立てる

日本人の配偶者を保証人に立てることで、外国人でも住宅ローンを受けられる場合があります。連帯保証人になるには大きな責任と覚悟が必要であり、借り主と同等の義務を負わなければなりません。

銀行側としては、リスクが軽減されると判断していることが、その理由といわれています。ただし、このような融資を行う銀行は限られているため、事前に確認しておくことが重要です。

3-4.永住権なしでも融資を受けられる銀行を利用する

母国の銀行の日本支店を利用する選択肢もあります。母国の銀行であれば、過去の取引履歴が確認しやすく、日本の金融機関に比べて審査が通りやすい傾向があります。また、帰国後も返済管理がしやすいため、日本の銀行では融資を受けにくい場合でも可能性が開けます。

ただし、適用される金利が日本のものではなく、母国の金利である可能性が高いことに注意が必要です。また、母国の経済状況によっては金利が大きく変動するリスクもあります。急激な金利上昇は返済計画に大きな影響を与える可能性があるため、慎重な検討が必要です。

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4.永住権のない外国人が住宅ローンで審査される基準

住宅ローンの審査基準は、借り手の返済能力を評価するための重要な要素です。その主なものは、以下のとおりです。

  • 本人確認や収入の証明ができる書類の有無
  • 年齢・健康状態
  • 日本での居住年数
  • 勤続年数や収入
  • 借金・借入金の有無

これらの点を踏まえ、事前に準備を進めておくことが重要です。

4-1.本人確認や収入の証明ができる書類の有無

外国人が住宅ローンを申請する際、日本人に比べて多くの書類を必要とします。書類の漏れや不備がないかどうかも、審査のポイントです。

そろえておくべき主な書類は、以下のとおりです。

  • 身分証明書(運転免許証・パスポート・保険証など)
  • 外国人在留カード・特別永住者証明書・外国人登録証明書
  • 源泉徴収票(自営や個人事業主の場合は確定申告書)
  • 納税証明書
  • 返済予定表など住宅ローンに関する資料
  • 取得する物件資料

このように、在留資格を示す書類から納税状況、収入証明にいたるまで、さまざまな書類の提出が求められます。記入漏れや不備があれば、審査が滞る可能性もあります。

外国人が住宅ローンを利用するには、こうした多くの書類をそろえ、丁寧に記入することが重要です。書類不備によるトラブルを防ぐためにも、一つひとつ確認しながら準備することが肝心です。

4-2.年齢・健康状態

日本人と同様に、外国人が住宅ローンを申請する際も年齢と健康状態が審査の重要なポイントです。返済途中で病気や死亡による返済不能のリスクを防ぐため、多くの金融機関で団体信用保険への加入が義務付けられています。

健康状態に問題がある場合、団体信用保険に加入できず、結果的に住宅ローンを借りられません。また、多くの金融機関では完済予定時の年齢を70歳から75歳程度に設定しており、健康な状態で返済を続けられるかどうかも審査されます。

4-3.日本での居住年数

永住権を持たない外国人にとって、居住年数は住宅ローン審査において重要な項目です。多くの銀行は2〜3年以上の滞在を条件としており、長期間の滞在の方がより有利です。一般的には5年以上の滞在が望ましいとされています。

特に永住権がない場合、長期的な居住実績が住宅ローンの審査を通過するための要件とされます。居住期間が短いと、申込みすら受け付けられないことがあるという認識が必要です。

4-4.勤続年数や収入

住宅ローンの審査に通るには、勤続年数2年以上が一般的です。理由は、同じ会社で長く働いている人は安定した収入が期待でき、会社からも信頼されている可能性が高いからです。

個人事業主の場合、営業年数が重視されます。確定申告をしていない場合には、審査に通りません。確定申告書は、収入を証明する公的な書類であるためです。

また、融資額が高額になるほど求められる年収も増えます。年収が高いほど審査は有利ですが、それが一時的なものである場合は審査に通りません。通常、直近2~3年分の年収証明が求められます。

4-5.借金・借入金の有無

住宅ローンの審査においては「返済負担率」が重要です。これは、年収に対する年間の返済支払額の割合を示し、支払額が増えると返済負担率も高くなる傾向です。

返済負担率が高いと、金融機関は貸し倒れリスクを抑えるために、返済負担率が高い人に対する借入可能額の制限を行なったり、場合によっては貸付を断ったりすることもあります。

返済負担率の基準は金融機関によって異なるものの、一般的には30%~35%程度が一般的とされています。返済負担率が高くなってしまった場合には、借入額の見直しや、頭金を多くして返済負担率を下げる対策が必要です。

5.外国人が住宅ローンの契約をする際の注意点

日本で外国人が住宅ローンを組む際、金融機関での口座開設が前提条件です。本人確認書類の準備や在留資格の確認など、細かな要件があるため注意が必要です。ここでは、外国人が日本で住宅ローンを利用する際の口座開設に関する重要なポイントについて解説します。

5-1.金融機関の口座開設が必要

外国人が日本で住宅ローンを契約する際には、金融機関での口座開設に注意が必要です。多くの場合、住宅ローンの返済口座はその金融機関の普通預金口座でなければなりません。したがって、住宅ローンを申し込む際には、当該金融機関の普通預金口座を持っている必要があります。

外国籍の場合、日本入国後6か月未満の場合や日本国内での正規の雇用歴がない場合、口座開設が制限される可能性もあります。

5-2.口座開設するためには、在留資格が必要

外国人が口座開設する際には、本人確認書類の種類に注意が必要です。一般的に、以下の書類が本人確認書類として求められます。

  • 在留カードもしくは特別永住者証明書
  • 運転免許証など

在留カードや特別永住者証明書は、申込書の氏名やつづりが口座開設申込書と一致している必要があります。パスポートは一般的に口座開設の際の本人確認書類としては使用できません住所が記載されていないためです。

6.まとめ

本記事では、外国人が日本で住宅ローンを組む際の審査基準や条件について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。

✓ 永住権を持つ外国人は、ほとんどの金融機関で日本人と同様の条件で住宅ローンを組める

✓ 永住権がない外国人でも特定の条件を満たせば住宅ローンを組める

✓ 住宅ローンの申請において、日本語能力が不十分な場合は、困難である

✓ 外国人の住宅ローン審査では、安定した収入や信用情報、健康状態が重要な要素となる

✓ 在留期間が短い場合、住宅ローンの審査が厳しくなる

✓ 外国人が住宅ローンを組む際、保証会社の保証を得られない場合がある

✓ 外国人が住宅ローンを受けやすくする方法には、永住権の取得や収入・自己資金の確保などが挙げられる。

✓ 外国人が住宅ローンを契約する際には、金融機関での口座開設が前提条件となる

✓ 日本入国後6か月未満や日本国内での正規の雇用歴がない場合、口座開設が制限される可能性もある

外国人が日本で住宅ローンを組むためには、永住権の有無が重要です。永住権を持つ外国人は、通常の日本人と同じ条件でローンを申請できますが、永住権がない場合は条件が厳しくなります。

審査においては、安定した収入と職歴、信用情報、健康状態などがチェックされます。また、日本語能力や滞在歴も考慮され、保証人の有無も重要な要素です。

住宅ローンを申請する際には、あらかじめこれらの条件を満たすための準備を進めておきましょう。

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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