2025/6/12
2025/10/28
外国人ビザ
赤字決算でも経営管理ビザ更新は可能?条件、必要書類、対策を徹底解説
経営管理ビザの更新時期が近づき、会社の決算が赤字であることに不安を感じている経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。確かに、赤字決算はビザ更新において不利な要素となり得ますが、必ずしも不許可になるわけではありません。適切な準備と対策を講じることで、赤字であっても経営管理ビザの更新が許可される可能性は十分にあります。
今回の記事のポイントは、下記の通りです。
| ✓ 【最重要】2025年法改正と3年間の経過措置を正しく理解し、新基準への適合を目指すことが大前提。
✓ なぜ赤字になったのかを分析し、今後どのように黒字化するかを具体的に記述した事業改善計画書を作成する。 ✓ 改善計画には、資本金3,000万円などの新しい許可基準を将来的にどうクリアするかという視点を盛り込む。 ✓ 増資の証明や新規契約書、専門家の評価書など、計画の実現可能性を裏付ける客観的な証拠資料を積極的に提出する。 ✓ 赤字であっても、税金や社会保険料の完納は絶対条件。法令遵守の姿勢を示すことが不可欠。 |
本記事では、経営管理ビザの更新審査において赤字決算がどのように影響するのか、赤字でも更新許可の余地があるケース、逆に困難になるパターン、そして赤字から逆転して更新を成功させるための具体的な戦略について解説します。
1.経営管理ビザ更新で「赤字」が審査に与える影響とは?
経営管理ビザの更新審査において、会社の財務状況、特に赤字決算は重要な審査ポイントとなります。入国管理局は、申請者が日本で安定的かつ継続的に事業を運営できるか否かを厳しく見ています。
1-1.【はじめに】2025年法改正と「3年間の経過措置」が更新審査の前提に
赤字決算での更新を考える前に、まず大前提として、2025年10月16日に経営管理ビザの取得要件が、資本金3,000万円などに大幅に厳格化されたという事実を理解する必要があります。
この新しい厳しい基準は、主に新規取得者向けのものですが、更新審査においても「事業の安定性・継続性」を測る上での新しいベンチマークとなります。
ただし、既にビザを持っている経営者への急激な影響を緩和するため、2028年10月16日までの3年間の「経過措置」が設けられています。赤字決算の場合、この経過措置期間中にどのように事業を立て直し、将来的に新しい基準を満たせる見込みがあるかを示すことが、更新の絶対条件となります。
1-2.入管が最重要視する「事業の安定性・継続性」の判断基準
経営管理ビザの審査における根幹は、「事業の安定性・継続性」です。これは、申請者が運営する事業が日本経済に貢献し、将来にわたって持続可能であることを意味します。
赤字決算は、この「事業の安定性・継続性」に対する疑念を生じさせる直接的な要因となります。 入国管理局は、単に過去の決算数値を見るだけでなく、その数値が将来の事業運営にどのような影響を与えるかを評価します。
つまり、「安定的かつ継続的に」という言葉が示す通り、将来を見据えた審査が行われるのです。過去の赤字という事実は変えられませんが、それが将来の安定性にどう影響し、それをどう克服していくのか、という点が問われます。
1-3.赤字決算がビザ更新で不利になる具体的な理由
赤字決算がビザ更新において不利に働く理由は多岐にわたります。
会社の事業継続能力に対する疑念
まず、会社の事業継続能力に対する疑念が生じます。赤字が続けば、いずれ事業資金が枯渇し、事業を継続できなくなるのではないかと判断される可能性があります。
経営者としての経営能力が問われる
次に、経営者としての経営能力が問われることもあります。市場調査の不足、ビジネスモデルの欠陥、あるいは不適切な財務管理などが赤字の原因である場合、経営者としての資質が低いと見なされる可能性があります。
経営者自身が日本で安定した生活を送ることが困難になる
さらに重要なのは、会社が経営者を経済的に支えられない場合、経営者自身が日本で安定した生活を送ることが困難になるという点です。これは、経営管理ビザの趣旨に反するだけでなく、場合によっては経営者がビザの範囲外の活動で生計を立てようとするのではないか、という疑念にも繋がりかねません。
例えば、赤字が原因で役員報酬を極端に低く設定せざるを得ない状況は、この懸念を増幅させます。 このように、会社の赤字は単なる財務上の問題としてだけでなく、経営者の在留資格全体の妥当性に関わる問題として捉えられるのです。
2.赤字でも諦めない!経営管理ビザ更新が許可されるケース
赤字決算がビザ更新にマイナスに作用するとはいえ、状況によっては十分に更新が許可されるケースも存在します。重要なのは、赤字の理由と今後の改善見通しを具体的かつ客観的に説明することです。
2-1.開業1年目の赤字:比較的柔軟な審査傾向
特に、会社設立から1年目の決算が赤字である場合は、比較的柔軟に審査される傾向にあります。
設立初期には、設備投資や広告宣伝費、市場開拓のための費用など、先行投資がかさむことが一般的であり、売上が安定するまでには時間を要するため、初年度の赤字は多くの企業で見られる現象です。入国管理局もこの点を理解しており、事業計画に合理性があり、将来的な黒字化への道筋が示されていれば、初回の更新は許可されることが多いとされています。
ただし、この「柔軟な審査」は無条件ではありません。赤字の内容が、典型的な設立初期費用によるものではなく、例えば売上が全く立っていない、あるいは事業活動の実態が乏しいといった根本的な問題を抱えている場合は、1年目であっても厳しい判断が下される可能性があります。赤字の「質」が問われるのです。
2-2.単年度の赤字で債務超過なしの場合
【注意】 以下で解説するケースは、いずれも3年間の「経過措置期間中」における特例的な判断が前提です。この期間中は、赤字の理由や改善計画の合理性が認められれば、更新の可能性があります。
過去に黒字経営の実績がある会社や、十分な内部留保がある会社が、一時的な要因(例えば、新型コロナウイルス感染症のような外部環境の急変 や、一過性の市場の冷え込みなど)により単年度の赤字を計上した場合でも、債務超過(負債が資産を上回る状態)に陥っていなければ、更新が認められる可能性はあります。
この場合も、赤字の理由と今後の改善策を明確に説明することが求められます。債務超過がないという事実は、会社がまだ財務的な体力を有しており、一時的な赤字を乗り越えられる可能性があることを示唆するため、重要なポイントとなります。
赤字は一定期間の収支の問題ですが、債務超過は会社の純資産がマイナスであることを意味し、より深刻な支払い能力の問題を示唆するため、この区別は審査において重視されます。
2-3.新興企業(設立5年以内の非上場企業)の場合
独自の技術や革新的なビジネスモデルを持つ新興企業(設立5年以内の国内非上場企業)の場合、研究開発費や市場開拓費が先行し、設立初期は赤字が続くことも想定されます。
このようなケースでは、将来的に経常利益を生み出す蓋然性の高い事業計画を提出し、その内容が妥当であると判断されれば、赤字であっても経営管理ビザの更新が認められる可能性が高まります。これは、国策としてイノベーションを推進する観点からも、将来性のある新しいビジネスに対しては、短期的な収益性だけでなく、中長期的な成長ポテンシャルも考慮されることを示しています。ただし、その分、事業計画の質や客観的な裏付け(例えば、中小企業診断士による事業評価など)に対する要求は高くなります。
2-4.事業の将来性・改善計画で継続性が認められる条件
どのような赤字の状況であっても、最も重要なのは、説得力のある事業計画書(または事業改善計画書)を提出し、事業の将来性と改善の見込みを具体的に示すことです。
特に新制度下では、この「将来性」には2つの側面があります。
・短期的な黒字化
赤字を解消し、事業を安定軌道に乗せるための具体的な計画。
・長期的な新基準への適合
将来的に、資本金(または純資産)を3,000万円以上にし、常勤職員を雇用するなど、改正後の新しい許可基準を満たすための具体的な道筋。
この両方を事業計画書に盛り込み、入国管理局に事業の継続性を認めてもらえるかが、更新の鍵となります。
3.【要注意】経営管理ビザ更新が困難になる赤字パターン
一方で、赤字の状況や内容によっては、経営管理ビザの更新が著しく困難になるケースも存在します。これらのパターンを理解し、早期に対策を講じることが不可欠です。
3-1.2期連続の赤字決算:審査が厳格化
単年度の赤字であれば、一時的な要因として説明できる余地がありますが、2期連続で赤字決算となると、事業の構造的な問題や経営能力に対する疑念が強まり、審査は格段に厳しくなります。
1年目の赤字は初期投資や市場開拓の遅れで説明できても、2年目も改善が見られない場合、事業モデルそのものに無理があるか、有効な対策が打てていないと判断されやすくなります。
この場合、より詳細かつ実現可能性の高い事業改善計画の提出が必須となります。損失の「傾向」は、一時的な落ち込みよりも深刻な警告と受け止められます。
3-2.「債務超過」の状態:更新への重大なハードル
債務超過とは、会社の負債総額が資産総額を超過している状態、つまり、会社の全資産を売却しても借金を返済しきれない状態を指します。 これは、単なる期間損益の赤字よりもはるかに深刻な財務状況であり、実質的な支払い不能状態を示唆します。経営管理ビザの更新において、債務超過は事業の継続性に対する重大な懸念材料となり、更新不許可のリスクが非常に高まります。
1期目の債務超過と2期連続債務超過の深刻度の違い
1期のみの債務超過であれば、例えば大規模な初期投資や一時的な巨額損失などが原因である場合、増資による資本増強や専門家(中小企業診断士や公認会計士など)による事業再生計画の評価書を提出することで、1年間の更新が認められる余地があります。
しかし、2期連続で債務超過の状態が続くと、状況は極めて深刻です。 この場合、事業の存続自体が危ぶまれていると判断され、大幅な増資による債務超過の解消など、抜本的かつ具体的な改善策が実行され、その証拠が提出されない限り、ビザ更新はほぼ不可能に近いと言えます。
1期目の債務超過は立て直しの機会が与えられる可能性がありますが、2期連続となると、その機会を活かせなかった、あるいは問題がより根深いと見なされ、事業継続能力への信頼は著しく低下します。
3-3.売上総利益がマイナス(赤字)の場合
売上総利益(売上高から売上原価を差し引いた利益)がマイナスであるということは、商品を売れば売るほど損失が出る状態を意味し、事業の根幹に関わる非常に深刻な問題です。
これは、販売価格設定の誤り、仕入れコストの高騰、あるいは提供する商品やサービスそのものに市場競争力がない可能性を示唆します。営業費用や管理費用を考慮する以前の段階で損失が出ているため、事業モデルの抜本的な見直しが不可欠です。2期連続で売上総利益がない場合は、事業の継続性が認められない可能性が非常に高くなります。
売上総利益のマイナスは、例えば高い広告宣伝費が原因で営業赤字になるケースよりも、事業の基本的な収益構造に問題があることを示すため、より根本的な欠陥と見なされる傾向にあります。
赤字状況別・経営管理ビザ更新の可能性とポイント
| 状況 | 更新の可能性 | 主な対策・提出書類 |
|---|---|---|
| 開業1年目の赤字 | 比較的高い | 事業計画書(初年度の赤字理由説明、今後の黒字化計画、新基準への移行計画) |
| 単年度の赤字(債務超過なし) | 条件付きで可能 | 事業計画書(赤字理由説明、改善策、新基準への移行計画)、財務諸表 |
| 2期連続の赤字(債務超過なし) | 厳しい | 詳細な事業改善計画書、(+新基準への移行計画)、具体的な改善策の進捗証明、専門家の意見書(推奨) |
| 単年度の債務超過 | 厳しい | 事業改善計画書(+新基準への移行計画)、増資・資金調達計画、中小企業診断士等による企業評価書面 |
| 2期連続の債務超過 | 極めて厳しい | 大幅な増資による債務超過解消の証明、抜本的な事業再建計画(+新基準への移行計画)と実行証明、専門家の強力なサポートが必須 |
| 売上総利益がマイナス(特に2期連続) | 極めて厳しい | 事業モデルの抜本的見直し、価格戦略・コスト構造の改善計画、増資等による財務基盤強化(債務超過の場合)、新基準への移行計画 |
この表は、赤字の状況に応じた一般的な傾向を示すものであり、個別の状況によって判断は異なります。しかし、自社の状況を客観的に把握し、適切な対策を講じるための一助となるでしょう。
4.赤字から逆転!経営管理ビザ更新を成功させるための具体的戦略
赤字決算という厳しい状況から経営管理ビザの更新を勝ち取るためには、戦略的かつ具体的なアプローチが不可欠です。入国管理局に対し、事業の将来性と経営者の能力を説得力をもって示す必要があります。
4-1.最重要ポイント:専門家を納得させる「事業計画書(改善計画書)」の作成法
赤字の場合、経営管理ビザ更新の成否を分ける最も重要な書類が「事業計画書」です。
2025年10月の法改正により、この事業計画書の重要性はさらに増しました。 なぜなら、新しく経営管理ビザを申請する場合、作成した事業計画書は、中小企業診断士、公認会計士、税理士といった経営の専門家に見せ、その計画が実現可能であることの確認(お墨付き)を得ることが、新たに義務付けられたからです 。
これは、あなたの計画が、最終的に審査する入国管理局だけでなく、まず先にビジネスのプロを納得させなければならないことを意味します。赤字決算からの更新申請においても、この「専門家が納得するレベルの客観性と実現可能性」が、事業の継続性を判断する上での新しい基準となります。
したがって、事業計画書は単なる将来の夢物語ではなく、現状の課題を正確に認識し、それを克服して事業を安定軌道に乗せるための、具体的かつ実行可能なものでなければなりません。
事業計画書に必ず盛り込むべき10の項目(実際は内容に応じて増減)
説得力のある事業計画書には、以下の要素を盛り込むことが一般的です。これらはあくまで基本であり、事業の特性や赤字の状況に応じて、項目を追加したり、特定の項目をより詳細に記述したりする必要があります。
- 事業の概要 : どのような事業を行っているのか、その全体像を簡潔かつ明確に説明します。
- 起業の動機と市場規模 : なぜこの事業を始めたのか、市場の潜在性やターゲットとする顧客層について、具体的なデータや分析を交えて説明します。
- ターゲット顧客と自社の強み : 誰にどのような価値を提供しようとしているのか、競合と比較した場合の自社の優位性は何かを明確にします。
- 主な商品・サービスと販売方法 : 具体的な商品名やサービス内容、それらをどのように顧客に届けるのかを詳細に記述します。
- 取引先(仕入れルート、販売ルート) : 主要な仕入れ先や販売先、提携先などを具体的に示し、可能であれば契約書などの裏付け資料を添付します。
- ここまでの進捗 : これまでどのような活動を行い、どのような成果(または課題)があったのかを客観的に記述します。
- マーケティング戦略 : どのように新規顧客を獲得し、売上を拡大していくのか、具体的なマーケティング手法や販促活動について説明します。
- 赤字の具体的な原因分析と改善策: これは赤字の場合に特に重要な項目です。なぜ赤字になったのか、その根本原因を多角的に分析し、それに対する具体的な改善策を提示します。
- 収支計画書(今後1~3年)と資金繰り、新基準への移行計画 : 今後1年から3年程度の具体的な売上目標、経費予測、利益計画を数値で示し、その達成に向けた資金繰り計画も併せて提示します。現実的で根拠のある数値計画が求められます。そして、3年間の経過措置期間中、またはその後に、資本金を3,000万円までどうやって増やすのか(増資計画など)、常勤職員をどのように採用するのか(採用計画)といった、新しい許可基準へ適合するための具体的なロードマップを提示します。これは、あなたの事業が長期的に日本で継続する意思と能力があることを示す、メッセージとなります。
- 経営者の経営能力・経験 : 経営者自身が持つ関連業務の経験や専門知識、経営スキルなどを具体的に示し、事業を成功に導く能力があることをアピールします。
赤字の根本原因分析と具体的な改善策の提示
事業計画書の中でも、赤字の根本原因を深く掘り下げて分析し、それに対する具体的かつ実行可能な改善策を提示する部分が極めて重要です。
例えば、「コロナ禍で売上が減少した」というだけでは不十分です。コロナ禍という外部要因が、自社のビジネスモデルのどの部分に、どのように影響を与えたのかを具体的に分析し、それに対して「オンライン販売チャネルを強化する」「デリバリーサービスを導入する」「固定費を削減するために店舗規模を見直す」といった、行動レベルでの改善策を示す必要があります。
改善策は精神論ではなく、誰が、いつまでに、何をするのかが明確でなければなりません。
数値目標(売上・利益)とその達成ロードマップ
「経営を改善します」「黒字化を目指します」といった曖昧な表現では、入国管理局を納得させることはできません。具体的な数値目標(例えば、「半年後に月商〇〇万円、営業利益〇〇万円を達成する」など)を設定し、その目標を達成するためのステップを時系列で示したロードマップを提示する必要があります。 各ステップでどのような施策を実行し、それがどのように数値目標の達成に貢献するのか、その因果関係を明確に説明することが求められます。
資金繰り計画と財務健全化への道筋
赤字からの回復過程においては、資金繰りの管理が極めて重要です。事業改善計画を実行するための運転資金はどのように確保するのか、追加の融資が必要な場合はその調達計画、自己資金を投入する場合はその証明など、具体的な資金計画を示す必要があります。
債務超過に陥っている場合は、増資や借入金の返済計画など、財務体質を健全化するための具体的な道筋も併せて示すことが不可欠です。
事業計画書(赤字改善用)の必須記載項目チェックリスト
| 項目 | 記載すべきポイント | 具体例・焦点 |
|---|---|---|
| 赤字の根本原因分析 | 外部要因・内部要因を多角的に分析し、なぜ赤字に至ったのかを客観的かつ具体的に特定する。 | 市場変動、競合激化、コスト構造の問題、販売戦略の不備、予期せぬ事態(災害、パンデミック )など。 |
| 具体的な改善策(新戦略、コスト削減等) | 分析した原因に対し、どのような具体的な行動をとるのか。新規事業、新商品開発、販路拡大、コスト削減策、業務効率化策など。 | 新ターゲット層へのアプローチ、オンライン展開強化、不採算部門の縮小・撤退、固定費の見直し(家賃交渉、人員配置最適化)、仕入れ先の見直しによる原価低減。 |
| 具体的な数値目標(売上、利益) | いつまでに、どの程度の売上・利益を達成するのか。SMART(具体的、測定可能、達成可能、関連性、期限付き)な目標設定。 | 「〇年〇月までに売上高〇〇%増、営業利益率〇%達成」など。その数値目標の算出根拠も示す。 |
| 達成ロードマップ(タイムライン) | 数値目標達成までの各施策の実行スケジュール、マイルストーンを明確にする。 | 3ヶ月後:新商品A投入、6ヶ月後:新規オンラインチャネルB開設、1年後:目標売上達成、といった具体的な時系列計画。 |
| 資金繰り計画 | 改善策実行期間中の収入と支出の見込み、資金ショートを防ぐための具体的な資金調達・管理計画。 | 月次のキャッシュフロー予測、運転資金の確保策(自己資金、融資、補助金活用など)。 |
| 追加融資・増資計画(該当する場合) | 債務超過の解消や事業拡大のために追加の資金調達が必要な場合、その具体的な計画(調達先、金額、時期、使途)と進捗状況。 | 金融機関からの融資内諾、株主からの増資合意、新株予約権の発行計画 など。 |
| 経営者のコミットメントと実行体制 | 経営者自身が事業改善にどのように関与し、責任を持って計画を遂行するのか。社内の実行体制(人員配置、役割分担)も示す。 | 経営者による進捗管理方法、主要会議への参加、従業員のモチベーション向上策など。(経営者が行う業務を明確にする) |
| 裏付け資料・客観的証拠 | 計画の実現可能性を補強する資料(市場調査データ、見積書、契約書案、専門家の意見書など)。 | ターゲット市場の成長を示す統計データ、新規取引先との基本合意書、コスト削減効果を示す見積書、中小企業診断士の評価書 など。 |
このチェックリストは、赤字状況からの脱却を目指す事業計画書を作成する際の指針となります。これらの要素を網羅し、具体的かつ説得力のある内容に仕上げることが、更新許可を得るための鍵となります。
4-2.追加書類で説得力アップ:事業継続性を客観的に証明する
事業計画書に加えて、事業の継続性や将来性を客観的に裏付ける追加書類を提出することで、申請の説得力をさらに高めることができます。
中小企業診断士・公認会計士等による「企業評価書面」の活用
特に債務超過に陥っている場合や、赤字が慢性化している場合には、中小企業診断士や公認会計士といった企業評価の専門家が作成した「事業評価書」や「改善計画の妥当性に関する意見書」などを提出することが極めて有効です。
これらの専門家による客観的な評価は、申請者自身が作成した事業計画の信頼性を補強し、入国管理局の審査官に対して「第三者の専門家もこの事業の再建は可能だと評価している」という強いメッセージとなります。
入国管理局の審査官は法律や行政手続きの専門家ではあっても、必ずしもビジネス分析の専門家ではありません。そのため、日本の国家資格を持つ専門家による肯定的な評価は、審査において有利に働くことが期待できます。
増資、融資実行、親会社支援など資金調達の証明
事業改善計画に増資や新たな融資による資金調達が含まれている場合は、その実行を証明する書類(増資後の登記簿謄本、融資契約書、銀行の残高証明書、親会社からの支援確約書など)を提出します。 これらは、計画が絵に描いた餅ではなく、実際に資金的な裏付けを持って進められていることを示す強力な証拠となります。
新規契約書、業務提携書など将来性を示す資料
新たに獲得した大型契約書、将来有望な企業との業務提携契約書、新製品に対する顧客からの好意的なフィードバックなど、事業の将来性や成長の兆しを示す具体的な資料があれば積極的に提出しましょう。 これらは、事業が停滞しているのではなく、積極的に改善に向けて動いており、実際に成果が出始めていることを示す証となります。
4-3.役員報酬額の適切な設定と説明責任
赤字決算の際に、会社の経費を抑えるために役員報酬を減額することは経営判断としてあり得ます。しかし、役員報酬を月額18万円~20万円未満など、社会通念上、日本で安定した生活を送るには不十分と考えられる水準まで引き下げると、経営者自身の生活基盤の不安定さを理由にビザ更新が不利になる可能性があります。 この更新の際に審査される役員報酬の金額は扶養家族の人数で変動します。
入国管理局は、経営者が日本で適法に生計を立てられるかどうかも審査します。もし役員報酬が極端に低い場合は、その理由(例えば、会社再建までの短期的な措置であること)と、不足する生活費をどのように補っているのか(例えば、過去の貯蓄を取り崩している、配偶者に十分な収入があるなど)を合理的に説明し、その証拠を提出する必要があります。
会社の赤字問題とは別に、経営者個人の生活の安定性も審査対象となることを理解しておく必要があります。
4-4. 【絶対条件】税金・社会保険料の支払義務を完全に履行する
たとえ会社の決算が赤字で資金繰りが厳しい状況であっても、税金や社会保険料の支払いは法律で定められた義務であり、これを怠ることは更新において致命的な欠陥となります。
入国在留管理庁は、更新審査の際に以下の公租公課の履行状況を厳しく確認すると明確に示しています 。
① 労働保険の適用状況
- 雇用保険の被保険者資格取得をきちんと行っているか
- 雇用保険料を正しく納付しているか
- 労災保険の適用手続きは適切か
② 社会保険の適用状況
- 健康保険および厚生年金保険の被保険者資格取得をきちんと行っているか
- 上記の社会保険料を正しく納付しているか
③ 事業所として納付すべき国税・地方税の納付状況
- 法人の場合:源泉所得税、法人税、消費税、法人住民税、法人事業税など
- 個人事業主の場合:源泉所得税、申告所得税、消費税、個人住民税、個人事業税など
事業の赤字は「経営上の課題」ですが、公租公課の滞納は「法令遵守意識の欠如」と見なされます。後者の方が、在留資格の審査においてはより深刻な問題として扱われる傾向にあります。
したがって、更新申請時には、これらの支払いを証明する納税証明書や社会保険料の納付証明書を必ず提出し、経営者として、また日本社会の一員として、果たすべき義務を誠実に履行していることを示さなければなりません。
5.経営管理ビザ更新申請の必要書類:赤字の場合の追加資料も網羅
経営管理ビザの更新申請には、まず基本となる提出書類があり、それに加えて会社の状況(カテゴリー)や、赤字決算といった個別の事情に応じた追加資料の準備が不可欠です。2025年の法改正により、証明すべき項目が増え、提出書類も増えています
5-1.全カテゴリー共通の基本提出書類リスト
会社の規模や状況(カテゴリー)に関わらず、経営管理ビザの更新申請に共通して必要となる基本的な書類は以下の通りです。
- 在留期間更新許可申請書
- 写真(縦4cm×横3cm)
- パスポート及び在留カード(申請時に提示)
5-2.会社のカテゴリー別追加提出書類 (1-4)
上記基本書類に加え、申請する会社がどのカテゴリーに該当するかによって、追加で提出する書類が異なります。カテゴリーは主に会社の規模や納税実績によって分けられます。赤字決算に直面しやすいのは、比較的小規模な企業や設立間もない企業であり、これらはカテゴリー3または4に該当することが多いです。
カテゴリー1・2 (上場企業や源泉徴収税額1,000万円以上の優良企業など)
- 四季報の写しや、前年分の法定調書合計表など、企業の安定性を示す書類。
カテゴリー3 (カテゴリー2を除く、法定調書合計表を提出できる企業)
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)。
- 直近の年度の決算文書の写し(貸借対照表、損益計算書など)。
- 住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの)。
カテゴリー4 (上記のいずれにも該当しない新設法人など)
- カテゴリー3と同様の書類に加え、新規申請時に近い書類(事業内容を明らかにする資料など)の提出を求められる場合があります。
これらのカテゴリーでは決算書や納税証明書の提出が必須であり、赤字の場合はその内容が直接的に審査対象となります。
5-3. 赤字決算時に準備すべき追加資料と2025年10月改正新要件への対応
赤字決算の場合、上記の書類だけでは「事業の継続性」に対する審査官の懸念を払拭できません。事業を立て直す意思と能力があることを積極的に証明するため、以下の追加資料を準備することが極めて重要です。これらは、2025年10月の法改正で新設された要件も意識した内容となります。
① 事業計画書(事業改善計画書)
赤字の場合の申請における最重要書類です。なぜ赤字になったのかという原因分析、具体的な改善策、そして今後1〜3年程度の黒字化への道筋を詳細に記述します。
【新制度のポイント】
新規申請では、この事業計画書に中小企業診断士など専門家の確認が義務付けられました。赤字からの更新という厳しい状況では、必須ではなくても、同様に専門家から「この改善計画は妥当である」という評価書(意見書)をもらい、添付することが申請の信頼性を飛躍的に高めます。
② 経営者の経歴・能力を証明する書類
新制度では、申請者の3年以上の経営経験または修士以上の学位が必須となりました。赤字の今こそ、経営者自身に事業を立て直す能力があることを示すため、これらの経歴を証明する在職証明書や学位証明書を改めて提出し、事業計画書の中で自身の経験がどう活かされるかをアピールしましょう。
③ 新基準への適合に向けた進捗を示す資料
経過措置期間中の更新であっても、最終的には新基準(資本金3,000万円、常勤職員1名雇用など)への適合が求められます。赤字からの改善計画の中に、これらの新基準を将来的にどうクリアしていくかという視点を盛り込み、その進捗を示す資料を提出することは、事業の長期的な継続性を示す上で非常に有効です。
- 資金調達を証明する書類: 増資を行った場合の登記簿謄本、金融機関からの融資契約書、親会社からの支援確約書など。
- 雇用に関する書類: 新たに常勤職員を雇用した場合の雇用契約書や、今後の採用計画書など。
④ 公租公課の支払いを証明する書類
赤字であっても、税金や社会保険料の支払いは絶対的な義務です。これらをきちんと納付していることを証明する納税証明書や社会保険料の納付証明書は、法令遵守の姿勢を示すために不可欠です。
⑤ 事業活動の実態を示す客観的な資料
事業が実際に動いていることを示すため、以下のような資料も有効です。
- 新規取引先との契約書や業務提携書
- 製品やサービスの受注書、納品書、請求書の控え
- 許認可が必要な事業の場合、その許可書の写し
これらの追加書類を主体的に準備・提出することで、赤字という不利な状況を乗り越え、事業を継続する強い意志と具体的な計画があることを入国管理局に積極的に示すことができます。
6.経営管理ビザ更新が不許可になる主な7つの原因と回避策
赤字決算以外にも、経営管理ビザの更新が不許可となる原因はいくつか存在します。これらの一般的な不許可理由を理解し、事前に対策を講じることで、更新の可能性を高めることができます。
6-1.原因1:事業の赤字継続・債務超過
本記事で繰り返し述べている通り、事業の赤字が継続している、あるいは債務超過の状態にあることは、事業の安定性・継続性に重大な疑念を生じさせ、不許可の最大の原因の一つです。
回避策: 説得力のある事業改善計画を作成・提出し、具体的な改善策を実行し、その進捗を証明すること。必要に応じて専門家の支援も活用する。
6-2.原因2:役員報酬が著しく低い
経営者の役員報酬が、日本で安定した生活を送るには著しく低い水準(例えば月額18万円未満など)である場合、経営者自身の生活基盤が不安定であると判断され、不許可の原因となり得ます。
回避策: 社会通念上妥当な水準の役員報酬を設定する。一時的に低くせざるを得ない場合は、その理由と生活費の補填方法(自己資金、配偶者の収入など)を明確に説明し、立証する。
6-3.原因3:経営者自身による現場作業・単純労働
経営管理ビザは、事業の経営または管理に従事するための在留資格です。経営者自身が、調理、接客、マッサージ施術といった現場作業や単純労働に主に従事していると判断された場合、ビザの活動内容に適合しないとして不許可になることがあります。
回避策: 経営者としての本来業務(経営戦略の策定、財務管理、人事労務管理、取引先との交渉など)に専念していることを明確にする。 小規模な会社で一時的に現場作業を手伝う場合でも、それが主たる業務ではないことを説明し、経営活動の記録(会議議事録、業務日報など)を整備する。
6-4.原因4:税金・社会保険料の滞納
法人税、住民税、所得税、消費税などの税金や、健康保険・厚生年金などの社会保険料を滞納している場合、法令遵守意識が低いと見なされ、不許可の有力な理由となります。
回避策: 全ての税金・社会保険料を期限内に完納する。更新申請時には、納税証明書や納付証明書を提出する。
6-5.原因5:事業実態の欠如・活動不振
事務所は契約しているものの、実質的な事業活動が行われていない、あるいは売上が極端に低い状態が長期間続いている場合(正当な理由なく売上ゼロなど )、事業の継続性が疑われ不許可となることがあります。
回避策: 継続的に事業活動を行い、その実績(契約書、請求書、納品書、売上帳簿など)を記録・保存する。一時的な活動不振の場合は、その理由(例えば新型コロナウイルスの影響 )と今後の回復計画を具体的に説明する。
6-6.原因6:必要な許認可の未取得・法令違反
飲食店営業許可、古物商許可、旅行業登録など、事業を行う上で法律上必要な許認可を取得せずに営業している場合、またはその他の法令に違反している場合は、不許可の対象となります。
回避策: 自社の事業に必要な許認可を全て確認し、適法に取得・維持する。その他の関連法規(労働基準法、個人情報保護法など)も遵守する。
6-7.原因7:その他(不法就労助長、事業所の問題など)
在留資格のない外国人を雇用する(不法就労助長)、事業所の実態が不適切(例えば、住居兼事務所で事業スペースと生活スペースが明確に分離されていない 、バーチャルオフィスで実体がないなど)といった問題も不許可に繋がります。
回避策: 従業員の在留資格を適切に管理し、不法就労に関与しない。事業所は、事業活動に適した独立したスペースを確保する。
これらの不許可原因は、それぞれ単独でも問題ですが、赤字決算とこれらの問題が複合的に存在する場合、更新はさらに困難になります。ビザ更新は、単に財務状況だけでなく、事業運営全体の適法性や健全性が総合的に評価されることを肝に銘じるべきです。
7.不安な場合は専門家へ相談:行政書士活用のメリット
赤字決算での経営管理ビザ更新は、通常の更新申請よりも難易度が高く、専門的な知識と経験が求められます。申請書類の準備や入国管理局への説明に不安がある場合は、経営管理ビザを専門とする行政書士に相談することを強く推奨します。
7-1.最新の入管審査傾向を踏まえた的確なアドバイス
入国管理局の審査基準や運用方針は、明文化されていない部分も含め、時として変更されることがあります。経験豊富な行政書士は、最新の審査傾向を把握しており、個別の状況に応じた的確なアドバイスを提供できます。
7-2.状況に応じた最適な書類作成と申請戦略の立案
赤字の理由や程度、会社の規模、事業内容など、状況は一つとして同じではありません。専門家である行政書士は、それぞれの状況を詳細にヒアリングした上で、最も効果的な事業計画書や理由書の作成をサポートし、申請全体の戦略を立案してくれます。
「自身でプラスになる資料を判断し提出していく」という作業は、専門家の知見を借りることで、より的確かつ効果的に行うことができます。
7-3.申請取次による時間と労力の削減
多くの行政書士は申請取次資格を持っており、申請者に代わって入国管理局への書類提出を行うことができます。これにより、申請者本人が入国管理局に出頭する時間と手間を削減できるだけでなく、煩雑な手続きから解放され、事業経営に専念することができます。
赤字という不利な状況を乗り越え、ビザ更新を成功させるためには、専門家のサポートは非常に心強いものとなるでしょう。
8.まとめ
会社の決算が赤字である場合、経営管理ビザの更新は確かに困難を伴いますが、決して不可能ではありません。
重要なのは、赤字の状況を悲観的に捉えるだけでなく、その原因を冷静に分析し、将来に向けた具体的な改善策を策定し、それを説得力のある形で入国管理局に提示することです。
特に、以下の点が成功の鍵となります。
| ✓ 【最重要】2025年法改正と3年間の経過措置を正しく理解し、新基準への適合を目指すことが大前提。
✓ なぜ赤字になったのかを分析し、今後どのように黒字化するかを具体的に記述した事業改善計画書を作成する。 ✓ 改善計画には、資本金3,000万円などの新しい許可基準を将来的にどうクリアするかという視点を盛り込む。 ✓ 増資の証明や新規契約書、専門家の評価書など、計画の実現可能性を裏付ける客観的な証拠資料を積極的に提出する。 ✓ 赤字であっても、税金や社会保険料の完納は絶対条件。法令遵守の姿勢を示すことが不可欠。 |
これらの準備を万全に行い、透明性をもって申請に臨むことが不可欠です。赤字の状況や事業内容によっては、中小企業診断士や公認会計士といった他の専門家との連携も有効となるでしょう。
そして、もし手続きに少しでも不安を感じるようであれば、躊躇せずに経営管理ビザの更新に詳しい行政書士に相談してください。専門家の知見とサポートを得ることで、困難な状況を打開し、大切な在留資格を守り抜く可能性を高めることができるはずです。
この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)
相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に移住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。
【主なサポート実績】
年間100件以上の会社設立、不動産・法人登記をサポート。
アメリカ、中国、韓国など、20カ国以上の外国人の不動産取引、起業を支援。
IT、飲食、貿易、コンサルティングなど、多岐にわたる業種の設立実績。
司法書士・行政書士として、会社設立の登記手続きから経営管理ビザの取得、その後の役員変更や増資まで、ワンストップでサポートできるのが強みです。まずはお気軽にご相談ください。




