2023/11/30 2024/2/13

外国人ビザ

家族滞在ビザの就労条件や制限とは?外国人が働くための資格外活動許可を解説

家族滞在ビザは就労ビザではないため、原則として収入を伴う事業に関わったり、原則、報酬を伴う就労活動をすることはできません。アルバイトなどの就労を希望する場合は、資格外活動許可を取得するか、就労が可能なビザに切り替えるかのいずれかが必要です。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

家族滞在ビザでは原則として就労できない

家族滞在ビザで就労を希望する場合は、資格外活動許可を取得するか、就労が可能なビザに切り替える必要がある

✓資格外活動許可(包括許可)では、1週間に28時間を超える労働に従事できない

✓客観的に就労時間を把握できないときは、包括許可ではなく個別許可が必要になる

本記事では、家族滞在ビザで就労するときに必要な手続きや就労制限についてまとめました。また、家族滞在ビザで就労許可を得ているときに、よくある質問とその答えについても紹介します。

家族滞在ビザの就労ルールについて知っておくことで、法律に違反することなく働けるようになります。ぜひご覧ください。

1.家族滞在ビザ(在留資格「家族滞在」)とは?

家族滞在ビザとは、就労ビザなど一定の在留資格をもって日本に滞在する外国人が扶養する家族を受け入れるためのビザです。対象者と、家族滞在ビザでできることについて見ていきましょう。

1-1.家族滞在ビザの対象者

家族滞在ビザは、以下の資格で日本に滞在している外国人によって扶養されている配偶者もしくは子に発給されるビザです。日本に滞在する外国人の親を呼び寄せるために家族滞在ビザを取得することはできません

教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、収入を伴わない学術あるいは芸術活動などの文化活動、短期滞在、留学(大学もしくは大学に準ずる機関、専修学校、外国で12年の学校教育を修了した者に対する教育機関もしくは高等専門学校)など

家族滞在ビザによる在留期間は5年以下で、個々の状況に応じて決まります。

1-2.家族滞在ビザの在留期間

家族滞在ビザはの在留期間は多様で、最長5年から最短3ヵ月までの11種類に設定されています。具体的には、5年、4年3ヵ月、4年、3年3ヵ月、3年、2年3ヵ月、2年、1年3ヵ月、1年、6ヵ月、そして3ヵ月の期間があります。

重要な点は、家族滞在ビザの在留期間が、その家族を呼び寄せた扶養者のビザの在留期間と密接に関連していることです。つまり、扶養者の在留期間が終了すると、家族滞在ビザも同時に満了してしまいます。そのため、扶養者の在留資格が失効してしまった場合、家族滞在ビザのみを更新することはできません。

家族滞在ビザは扶養者のビザの在留期間に注意を払い、更新手続きを行う必要があります。

1-3.家族滞在ビザでできること

家族滞在ビザを有している方は、扶養を受ける家族の配偶者あるいは子としての日常的な活動を行えます。たとえば、配偶者であれば家事や育児、子であれば適切な教育機関において教育を受けることが可能です。

そのため、家族滞在ビザでは、原則として収入や報酬を受ける活動に従事できません。収入・報酬が発生する活動をメイン業務とする場合は、家族滞在ビザではなく、就労ビザや就労できる日本人の配偶者等や定住者などのビザへの変更(在留資格変更許可)が必要になります。

2.家族滞在ビザで就労する方法

家族滞在ビザを有している方は、原則就労ができません。

ただし一定の条件を満たせば就労が可能となります。

家族滞在ビザの外国人が就労する場合、どの程度の時間、労働に従事するかによって取得する許可や在留資格が変わります。アルバイトやパートなどの形での就労を希望する方や、正社員として働く場合でも、週28時間以内の労働時間であればは「資格外活動許可」を取得することで就労活動が可能です。。

一方、週28時間を超えるなど就労をメイン活動とする場合は、家族滞在ビザから技術・人文知識・国際業務ビザや経営管理ビザなど就労可能なビザへの切り替えが必要です。

以下、資格外活動許可を得る方法について解説します。

2-1.資格外活動許可を取得する

資格外活動許可とは、滞在資格で許可されている活動以外の活動の許可を受けることです。家族滞在ビザでは、本来ならば、日本での滞在許可を得ている者の配偶者あるいは子としての活動しかできません。しかし、資格外活動許可を取得すると、本来は認められていないアルバイトなどの多くの職種に対応できる就労活動ができるようになります。

資格外活動許可の種類

資格外活動許可には、次の種類があります。

  • 包括許可
  • 個別許可
包括許可

家族滞在ビザを有する外国人が日本において合法的にアルバイトやパートの仕事をするためには、資格外活動の包括許可が必要です。1週間に28時間以内で収入・報酬を受ける活動に従事する場合は、包括許可を申請します。この許可は、勤務先や業務内容について特定の制約を設けず、多くの職種での就労が可能です。

技術・人文知識・国際業務などの就労ビザでは、就労が可能な業務内容(活動内容)が個別に定めれているため、出入国在留管理局から認められた業務範囲を超えて働く場合には、不法就労となってしまいます。

その点、包括許可を得れば、飲食業での接客・配膳や工場のライン作業などの単純作業、訓練で習得する業務、雇用契約に基づく管理職としての活動や個人事業主としての配達などの仕事を含む、様々な活動など多くの業務に従事することができるようになります。ただし、風俗営業や性風俗営業に従事することは許可されていません。また、包括許可での就労は、1週間に28時間内という就労制限があるため客観的に勤務時間を確認できるものでなければなりません。

包括許可を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

(1) 申請人が申請に係る活動に従事することにより現に有する在留資格に係る活動の遂行が妨げられるものでないこと。
(2) 現に有する在留資格に係る活動を行っていること。
(3) 申請に係る活動が法別表第一の一の表又は二の表の在留資格の下欄に掲げる活動(「特定技能」及び「技能実習」を除く。)に該当すること。(注)下記2(1)の包括許可については当該要件は求められません。
(4) 申請に係る活動が次のいずれの活動にも当たらないこと。
 ア 法令(刑事・民事を問わない)に違反すると認められる活動
 イ 風俗営業若しくは店舗型性風俗特殊営業が営まれている営業所において行う活動又は無店舗型性風俗特殊営業,映像送信型性風俗特殊営業,店舗型電話異性紹介営業若しくは無店舗型電話異性紹介事業に従事して行う活動
(5) 収容令書の発付又は意見聴取通知書の送達若しくは通知を受けていないこと。
(6) 素行が不良ではないこと。
(7) 本邦の公私の機関との契約に基づく在留資格に該当する活動を行っている者については,当該機関が資格外活動を行うことについて同意していること。

引用元:出入国在留管理庁HP 資格外活動許可について

個別許可

個別許可とは、収入・報酬を受ける活動に従事する時間を客観的に確認することが困難な場合に申請する許可です。時給や週給などで報酬が支払われないときは、個別許可が必要になります。たとえば、個人事業主として活動する場合や、客観的に勤務時間を確認するのが困難なケースです。個別許可は、主に報酬の形態や勤務内容が包括許可の範疇に含まれない際に求められます。

個別許可の特徴は、具体的な就労先や業務内容が明確に指定される点です。この許可では、単純労働に分類される職種(例:スーパーでのレジ業務、工場での作業)は認められません。また、一度許可された就労先や業務内容を変更する場合には、改めて許可を申請する必要があります。

資格外活動許可の申請書類

資格外活動許可(包括許可)を申請するときは、「資格外活動許可申請書」を入国管理局に提出します。申請書は入国管理局でも受け取れますが、出入国在留管理庁のホームページや以下からでもダウンロードできます。

一方、資格外活動許可(個別許可)を申請するときは、「資格外活動許可申請書」に加え、以下の書類が必要です。

  • 活動内容や活動時間、報酬などについて説明する書類
  • 個人事業主として働く場合は、事業の運営にかかる計画を説明する書類

なお、上記の書類はいずれも形式が決まっていません。わかりやすくまとめて提出しましょう。

出入国在留管理庁|資格外活動許可申請書

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2-2.就労可能なビザに切り替える

就労時間が1週間に28時間を超えるときや、滞在の主な目的が就労となるときは、家族滞在ビザから適切な就労ビザに切り替えることが必要です。

事業を経営する場合

個人事業主として小規模な事業を運営する場合なら資格外活動許可の範囲ですが、法人を設立したり従業員を雇用したりする場合は「経営・管理ビザ」が適切です。経営管理ビザは学歴、実務経験がなくても500万円以上の出資と、独立した事業所の確保、継続的な事業計画があれば、経営管理ビザ取得の可能性があります。

企業に就職する場合

企業に就職し、正社員として週28時間以上の就労を行うのであれば、「技術・人文知識・国際業務」ビザが適切です。技術・人文知識・国際業務ビザに変えるには、大学卒以上の学歴、10年以上の実務経験のいずれかを有し、専門的知識を生かした仕事に就く必要があります。

学歴、実務経験がなく企業に就職する場合

大学卒以上の学歴、10年以上の実務経験がない外国人が、家族滞在ビザの資格外活動の範囲(週28時間)を超えて就労する場合には、下記のビザへの変更が検討できます。

定住者ビザ

日本の義務教育を修了している外国人が資には、高校失業後に就労を希望する場合「定住者」ビザに変更できる可能性があります。定住者ビザは就労制限がないため、自由に就労することが可能になります。

定住者ビザの取得条件は以下の通りです。

  • 日本の義務教育(小学校及び中学校)を修了していること
  • 日本の高等学校を卒業していること又は卒業見込みであること
  • 家族滞在ビザを持っている、または留学ビザを持っていて家族滞在ビザの要件を満たしていること
  • 入国時に18歳未満だったこと
  • 就労先が決定(内定を含む)していること
  • 住居地の届出等、公的義務を履行していること

大学進学を目指しつつ、学費を稼ぐ目的で就職を希望する場合も、「定住者」ビザへの変更が可能です。

特定活動ビザ

日本の義務教育を修了していない外国人が高校卒業後に就労を希望する場合には、「特定活動」ビザに変更できる可能性があります。特定活動ビザは個々の活動内容に応じて許可される特殊な在留資格で、認定された就労活動を行うことができます。このビザに変更できる条件は以下の通りです。

特定活動ビザの要件は以下のとおりです。

  • 日本の高等学校を卒業しているか、卒業見込みであること
  • 扶養者が日本に身元保証人として在留していること
  • 家族滞在ビザを持っている、または留学ビザを持っていて家族滞在ビザの要件を満たしていること
  • 入国時に18歳未満だったこと
  • 就労先が決定(内定を含む)していること
  • 住居地の届出等、公的義務を履行していること
  • 高校に初めから入学しているか、途中から編入学した場合は日本語能力試験N2程度の日本語能力(又はBJTビジネス日本語能力テスト400点以上)を有していること

3.家族滞在ビザで就労するときのよくある疑問

家族滞在ビザで就労するときのよくある質問とその答えをまとめました。法律を遵守して働くためにも、ぜひ参考にしてください。

3-1.包括許可の就労時間28時間を超えた場合は?

資格外活動許可(包括許可)を取得すると、1週間に28時間以下の労働に従事できるようになります。万が一、違反すると雇用者側に3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、あるいは両方が課せられます。

また、労働者側もビザの更新時や変更申請の際、資格外活動許可違反を理由に不許可になる可能性がでてきてします。最悪のケースでは、不法就労は日本国内からの退去強制となる可能性もあります。退去強制されてしまうと、その外国人はその後5年間、日本に入国ができなくなってしまいます。

そのため、就労時間の管理は慎重に行う必要があります。

3-2.包括許可でどの程度の収入が見込める?

収入の制限はないですが、1週間28時間以内の労働時間に制限があります。

アルバイトやパートで働く場合、最低賃金に近い賃金が予想されます。令和5年10月以降の最低賃金は全国平均1,004円のため、1週間で28時間×1,000円=28,000円程度、4週間では28,000円×4=112,000円程度の収入を見込めます。

参考:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」

3-3.扶養者と離婚した場合は?

家族滞在ビザは、日本に一定の資格で在留している者の配偶者あるいは子として扶養されているときに発給される滞在資格です。

扶養者と離婚した場合は、滞在資格の要件を満たさないため、家族滞在ビザの資格がなくなるだけでなく、資格外活動許可も適用されなくなります。引き続き日本での滞在や就労を希望する場合は、在留資格を変更することが必要です。

3-4.個人事業や業務委託で働ける?

個人事業主で「客観的に稼働時間を確認することが困難」な場合、あるいは業務委託契約や請負契約等で「標準的に従事することとなる労働時間が明確でない」場合は、包括許可ではなく個別許可が必要になります。事業内容や事業計画がわかる書類を作成し、個別許可を申請しましょう。

3-5.家族滞在ビザの外国人を採用するときの注意点は?

不法就労にならないように、在留資格と在留期限を在留カードで確認することが必要です。包括許可を取得している外国人に関しては、週に28時間を超えないようにシフトを調整しましょう。

4.まとめ

本記事では、家族滞在ビザを有している方が就労するときに知っておきたい事柄について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。

家族滞在ビザでは原則として就労できない

家族滞在ビザで就労を希望する場合は、資格外活動許可を取得するか、就労が可能なビザに切り替える必要がある

✓資格外活動許可(包括許可)では、1週間に28時間を超える労働に従事できない

✓客観的に就労時間を把握できないときは、包括許可ではなく個別許可が必要になる

家族滞在ビザは就労ビザではないため、無制限で働けるわけではありません。就労時間が規定を超えると、懲役刑や罰金刑の対象となります。法律を遵守するためにも、家族滞在ビザの就労ルールについて正しく理解しておきましょう。

資格外活動許可を取得するときや滞在資格を切り替えるときには、提出する書類も多く、手続きが煩雑になることがあります。難しいと感じるときは、専門家に依頼するのもひとつの方法です。

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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