2023/10/2 2023/12/19

外国人ビザ

外国人の就労ビザとは?全16種の内容と取得方法、注意点を解説

外国人が日本で就労するためには、事前に就労ビザを得る必要があります。就労する業務内容により、就労ビザは16種類に分けられるため、外国人のビザがどの分野に該当するのかを正しく把握しておくことが重要です。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

✓就労ビザとは日本国内で就労をするために必要な在留資格の通称

✓「ビザ」とはいうものの日本への入国許可証であるビザ(査証)とは異なる

✓就労ビザは全16種類

✓就労ビザの取得方法は新規取得と変更申請の2つ

✓就労ビザで働くアルバイトの雇用には就労時間数などの制限がある

✓就労ビザを持つ外国人の給与設定は日本人と同等以上にする必要がある

✓就労ビザの種類によっては特定の業務に従事できないことがある

本記事では、就労ビザの種類とそれぞれの在留期間や職種、就労ビザの取得方法などをまとめました。また、就労ビザで働く外国人の雇用をする際に知っておきたいポイントも解説しています。

就労ビザの種類や手続きの流れを知り、スムーズに外国人従業員の雇用ができるようにしましょう。

1.就労ビザとは?入管法のビザ(査証)との違い

就労ビザとは、外国籍の人が日本国内で就労をするために必要な在留資格の通称です。「ビザ(査証)」という単語が用いられていますが、厳密に言うとビザと在留資格には以下のような違いがあります。

内容 発行元
ビザ(査証) 外国人が日本への入国許可を求める証明書 外務省
在留資格 外国人が日本での在留と一定の活動を認める資格 法務省

ビザは日本への上陸審査に必要なもので、在留資格は日本で目的とする活動をするために発行される資格です。両者をしっかりと区別できるようにしておきましょう。

2.就労ビザ16種

外国人が日本で生活するための在留資格は、30種類以上にもおよびます。基本的に日本で滞在している外国人は、その内どれかの滞在資格に該当し、許可された活動をおこなっています。

なかでも就労が許可されている在留資格は、全16種類です。それぞれの在留資格でおこなえる活動内容や職種例をご紹介します。

2-1.技術・人文知識・国際業務

技術・人文知識・国際業務の在留期間は「5年」「3年」「1年又は3月」です。ITエンジニアから海外取引業務、マーケティング担当者まで幅広い業務をおこなう外国人が該当します。

主な職種は理工系技術者やIT技術者(エンジニア、プログラマー)、デザイナー、外国語教師、コピーライター、通訳などです。

2-2.技能

技能の在留期間は「5年」「3年」「1年又は3月」です。特定の分野に関して、熟練した技能を持つと認められた外国人に与えられる在留資格です。

主な職種としてはパイロットや外国料理のコック・調理師、貴金属加工職人、外国製品の修理技能士、動物の調教師、スポーツ指導者、ソムリエなどが挙げられます。

2-3.企業内転勤

企業内転筋の在留期間は「5年」「3年」「1年又は3月」です。海外にある親会社や子会社から、期間を定めて派遣される転勤者が該当します。

転勤者のなかでも、技術・人文知識・国際業務に該当する活動を行う外国人が企業内転勤の在留資格を申請します。日本での職務内容と外国での職務内容の関連性が求められ、無期限ではなく期間を定めて転勤する必要があります。

なお、事業所で支店長、管理者等の経営又は管理業務に従事する場合には、「企業内転勤」ではなく「経営・管理」の在留資格が必要です。

2-4.経営・管理

経営・管理の在留期間は「5年」「3年」「1年」「4月又は3月」です。日本国内で会社の経営に携わる外国人は、経営・管理の在留資格を取得しなければいけません。

主な職種は企業の経営者や管理者、役員などです。

2-5.教授

教授の在留期間は「5年」「3年」「1年又は3月」です。大学やその他の機関、高等専門学校などで指導にあたる外国人のために発行されます。

就労ビザ教示の主な職種は、大学教授や助教授、助手などです。学生への直接的な指導だけではなく、研究や研究指導も許可された活動内容に含まれます。

2-6.芸術

芸術の在留期間は「5年」「3年」「1年又は3月」です。日本国内で芸術的な活動をするために必要な在留資格で、さまざまな芸術活動が含まれます。

主な職種は、画家や作曲家、作詞家、彫刻家、工芸家、写真家などです。芸術という広い範囲をカバーしているため、職種は多岐にわたります。

2-7.宗教

宗教の在留期間は「5年」「3年」「1年又は3月」です。海外の宗教団体から派遣された宣教師などが、日本での布教活動をおこなうために取得します。

主な職種は僧侶や司教、宣教師などです。

2-8.報道

報道の在留期間は「5年」「3年」「1年又は3月」です。海外の報道機関との契約に基づき、報道活動を実施する外国人がこのカテゴリーに含まれます。

主な職種は新聞記者や雑誌記者、編集者、報道関係者、アナウンサーなどです。

2-9.法律・会計業務

法律・会計業務の在留期間は「5年」「3年」「1年又は3月」です。法律や会計にまつわる士業に就いている外国人は、このカテゴリーに分類されます。

主な職種は外国法事務弁護士や外国公認会計士、弁護士、公認会計士、司法書士、税理士、弁理士などです。

2-10.医療

医療の在留期間は「5年」「3年」「1年又は3月」です。医療に携わっている外国人の中でも、日本の資格を有している場合に在留資格が認められます。

主な職種は医師、歯科医師、看護師、准看護師、薬剤師、保健師、助産師、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、作業療法士、臨床工学技士、理学療法士、義肢装具士などです。

2-11.研究

研究の在留期間は「5年」「3年」「1年又は3月」です。なんらかの研究に携わっている外国人が取得できます。

ただし、研究活動の内容が「教授」に該当する場合は対象外となるため、在留資格の種類を確認することが重要です。主な職種としては、企業の研究者や政府関係機関の研究者などが挙げられます。

2-12.教育

教育の在留期間は「5年」「3年」「1年又は3月」です。学生への指導をする立場にある外国人が取得を認められます。

ただし、大学やそれに準ずる機関での指導は「教授」に含まれる点には注意しましょう。主な職種は、小・中・高等学校や特別支援学校の教師、専修学校または各種学校の教師、それに準ずる教育機関の語学講師などです。

2-13.介護

介護の在留期間は「5年」「3年」「1年又は3月」です。外国人が日本で介護の仕事に従事するために申請をおこないます。

ただし在留資格を得るには、日本の介護福祉士養成施設を卒業したうえで、介護福祉士の資格を取得している必要があります。

2-14.興行

興行の在留期間は「3年」「1年」「6月」「3月又は15日」です。海外からやって来た外国人が日本国内で興行活動をするために申請します。

主な職種は歌手やダンサー、ファッションモデル、俳優、プロスポーツ選手、サーカスの動物飼育員、スポーツ選手のトレーナー、振付師、演出家など多岐にわたります。

2-15.特定技能

特定技能の在留資格は、分野によって1号と2号に分けられます。それぞれの在留資格の分野と在留期間は以下のとおりです。

【在留資格】

  • 1号:指定の14業種に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する者
  • 2号:建設及び造船・舶用工業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する者

【在留期間】

  • 1号:1年、6月又は4月
  • 2号:3年、1年又は6月

2-16.技能実習

技能実習の在留資格は、1号から3号に分類されます。それぞれの在留期間は、以下のとおりです。

  • 1号:法務大臣が個々に指定する期間(1年を超えない範囲)
  • 2号:法務大臣が個々に指定する期間(2年を超えない範囲)
  • 3号:法務大臣が個々に指定する期間(2年を超えない範囲)

職種に関しては、受け入れ先となる企業によって異なります。

3.就労ビザの取得方法は2パターンある

就労ビザの取得方法は、新規申請と変更申請の2パターンに分けられます。

  • 就労ビザの新規申請(海外から日本で働く場合)
  • 在留資格の変更申請(在留資格を切り替える場合)

状況によって手続きの流れが異なるため、外国人がどちらに当てはまるかを事前に把握しておくことが大切です。

就労ビザの新規取得と変更申請の違いを解説します。

3-1.就労ビザを新規に取得する際の流れ

外国人が来日して新たに就労を始める際には、受け入れ先の企業側が代理人として就労ビザを出入国在留管理局へ申請する必要があります。主な申請の流れは次のとおりです。

  • 在留資格認定証明書交付申請
  • 在留資格認定証明書が代理人に交付される
  • 在留資格認定証明書を外国人本人に送付
  • 外国人本人が在留資格認定証明書を在外日本公館で提示しビザ(査証)を申請
  • 在外日本公館にてビザ発給

就労を希望している本人はまだ海外にいるうちに手続きを進めなければならないため、企業が代わりに手続きをおこないます。一般的な手続きにかかる時間は、1~3ヵ月程度です。

3-2.在留資格を変更する際の流れ

在留資格を変更して就労ビザを取得する場合は、原則本人が出入国在留管理局へ申請します。申請の流れを確認しておきましょう。

  • 在留資格資格変更許可の申請
  • 結果が通知される
  • 在留カードを受け取る

在留資格変更申請は、留学生が就職をし在留資格を変更する際などが該当します。

4.就労ビザを持つ外国人を雇用する際の注意点

企業が就労ビザで働く外国人を雇用する場合は、以下のポイントに注意する必要があります。

  • アルバイト雇用には条件がある
  • 給与は日本人と同等以上に設定する
  • 就労ビザの種類により活動内容は限られる

受け入れ先企業が就労ビザに関する情報を正しく把握しておくことで、予期せぬトラブルを防ぐことができるでしょう。

4-1.アルバイト雇用には条件がある

就労ビザを取得しているからといって、就業時間に制限がないわけではありません。留学生や家族滞在ビザを取得している外国人にはアルバイトが認められていますが、原則週28時間以内と定められています

ただし、夏休みなどの期間は一日8時間の週40時間以内と変更になる点にも注意しておきましょう。

4-2.給与は日本人と同等以上に設定する

就労ビザを取得している外国人を雇用する際は、日本人と同等以上の給料を支払う必要があります。外国人であるという理由で不当に給与を下げることは、あってはならないことです。

具体的に「いくら以上」という基準が定められているわけではありませんが、業務内容や経験年数が近い日本人と同じ水準で給与を算定していることがポイントです。詳しくは以下の法務省省令から確認できます。

参照:出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(平成二年五月二十四日法務省令第十六号)

4-3.就労ビザの種類により活動内容は限られる

就労ビザの種類によって、従事できる業務にも差が出ます。雇用しようとする外国人がどの種類の在留許可を得ているのかを、確実に把握しておくようにしましょう。

たとえば雇用する外国人の就労ビザが「技術・人文知識・国際業務」や「医療」「教育」の場合は、飲食店のホール業務などの単純作業を任せることが禁じられています。資格外業務のアルバイトに従事するためには、資格外活動許可申請が必要です。

5.就労ビザがなくても就労できる在留資格

日本に滞在する外国人には、就労ビザの取得を必要とせず、フルタイムでの業務が可能な在留資格がいくつか存在します。これらの在留資格を持っていれば、別途の就労ビザ取得なしで、日本人と同様に日本国内での就労に参加することができます。

5‐1.日本人と同様に就労できる在留資格

就労ビザでは終了できる業務の範囲に制限がありますが、下記の在留資格は範囲制限がなく、一般労働や単純労働も可能です。具体的な在留資格としては以下のとおりです。

  • 永住者
  • 定住者
  • 日本人の配偶者やその実子
  • 永住者の配偶者やその実子
  • 特定活動(ワーキングホリデーやその他の活動)

5‐2.資格外活動を得て就労できる在留資格

「留学」「文化活動」「家族滞在」で来日する外国人は就労ができません。外国人留学生や家族として日本に滞在している外国人などの外国人が、出入国在留管理局で「資格外活動許可」を取得すれば、アルバイトが可能となります。

この許可の有無は、在留カードの裏に「許可・原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」と表示されるスタンプで確認できます。ただし、風俗関連の業種は例外として認められていません。

留学生に関しては、アルバイトは通常、週に28時間まで許可されますが、夏休みなどの長期休暇中は、1日8時間、週に40時間まで拡大されます。

働き手不足が顕在化してきた現代において、外国人労働者の力は必要不可欠です。外国人採用のメリットや課題点、手続きの方法などについては、ちらの記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。人材採用事業の専門家が監修をされている記事です。

6.まとめ

本記事では、就労ビザを取得している外国人を雇用するに際して知っておきたいポイントをご紹介しました。要点をまとめると、以下のようになります。

✓就労ビザとは日本国内で就労をするために必要な在留資格の通称

✓「ビザ」とは言うものの日本への入国許可証であるビザ(査証)とは異なる

✓就労ビザは全16種類

✓就労ビザの取得方法は新規取得と変更申請の2つ

✓就労ビザで働くアルバイトの雇用には就労時間数などの制限がある

✓就労ビザを持つ外国人の給与設定は日本人と同等以上にする必要がある

✓就労ビザの種類によっては特定の業務に従事できないことがある

✓永住者、定住者等の一定の在留資格は日本人と同様に職種に関わらず就労ができる

「留学」「文化活動」「家族滞在」で来日する外国人は出入国在留管理局で「資格外活動許可」を取得すれば、アルバイトが可能

ひとえに就労ビザといっても、種類によって許可されている業務内容が異なるため、従業員のビザの内容を正しく把握しておくことが重要です。外国人雇用がなかなか思うように進まない場合は、ノウハウをもっている専門家を頼るのも方法の一つです。

 

この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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