2024/3/6
2024/3/6
外国人ビザ
配偶者ビザは離婚したらどうなる?離婚後の手続とビザ変更要件を解説

配偶者ビザは日本人と結婚した外国人が取得できるものであるため、離婚した場合はどうなるのか不安に思う方もいるのではないでしょうか。離婚したがために、直ちに帰国しなければならないわけではありませんが、必要な手続きを行う必要があります。
今回の記事のポイントは、下記のとおりです。
✓配偶者ビザで日本に在留している人が離婚した場合は、14日以内に入国管理局に届け出なければならない
✓届出は入国管理局の窓口のほか、郵送やオンラインでも可能 ✓離婚後も日本で生活していく場合は、再婚して新たな配偶者ビザを取得する、就労ビザを取得する、定住者ビザを取得するという選択肢が考えられる ✓定住者ビザを取得する場合は他のビザと同様に、生計が安定していること、日常的な日本語能力があること、素行が良好であることが求められる ✓婚姻期間がおおむね3年以上であることや、養育する子供がいることも審査上有利に働く |
離婚後も引き続き日本に在留することは可能ですが、手続きや在留資格の変更申請が必要です。配偶者ビザを持っている方が離婚する場合について知っておきたい方は、参考にしてください。
1.外国人配偶者が離婚しても、直ちにビザ(在留資格)がなくなるわけではない
配偶者ビザで日本に滞在している外国人が離婚した場合は、直ちに帰国が必要なわけではありません。入国管理局にて所定の手続きをすることで、6か月間は引き続き在留できます。手続きをしない状態を放置せず、忘れずに手続きを行いましょう。加えて在留資格の変更手続きを行う必要があり、変更できない場合は原則的に帰国となります。
2.配偶者ビザの方が離婚した際の手続き
配偶者ビザで日本に在留している方が離婚した場合は、まず入管に届け出なければなりません。以下では届出の方法と、届け出ない場合の影響を解説します。
2-1.14日以内に入管に届け出る
配偶者ビザを持っている外国人の方が離婚した場合は、14日以内に入国管理局に届け出なければなりません。配偶者に関する届出は義務付けられているため、忘れずに届け出ましょう。
2-2.手続きの方法
最寄りの入国管理局に出向き、在留カードを提示して届出書を記入して提出することで届出ができます。ほかにも、郵送やオンラインでも届出可能です。郵送の場合は届出書とともに在留カードのコピーを同封します。オンラインの場合は出入国在留管理庁の電子届出システムを利用することで、簡単に届出ができます。あらかじめ利用者情報登録が必要です。
2-3.「配偶者に関する届出」を忘れた場合の影響
離婚した場合に届出をしていないと、以降の在留資格の変更や更新で不利益な扱いを受けることが考えられます。在留資格の変更や更新においては、義務付けられている届出を怠っていないことが審査上のポイントの1つであるためです。
加えて、届出を怠った場合は罰金が科せられる可能性もあります。
2-4.離婚後の在留期間:日本に在留できるのは6か月間まで
離婚後、日本に在留することができる期間について、多くの方が疑問を持つかもしれません。特に、日本人や永住者と結婚していた場合、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」としての在留資格を持っていた人々は、離婚により即座に在留資格が無効になるのではないかと心配することでしょう。
法律では、正当な理由なく配偶者としての活動を6ヶ月以上継続しない場合、法務大臣が在留資格を取り消す権限を持っています。この規定により、離婚後6ヶ月間は日本に在留することが可能ですが、この期間中に適切な手続きを行わなければ、在留資格が取り消される可能性があります。
したがって、離婚後に日本で引き続き生活したい場合は、他の在留資格の要件を満たすか確認したうえで、在留資格の変更手続きを迅速に進めることが重要です。離婚により新たな在留資格を申請する必要がある場合、どのような手続きをすれば良いのか、具体的な情報を得るためには、引き続き専門家のコラムや相談窓口を参照してください。この過程で、離婚後も安心して日本での生活を続けるための準備を整えましょう。
3.【ケース別】配偶者ビザの方が離婚した場合の選択肢
配偶者ビザを持っている方が離婚後も日本に残る場合には、在留資格の変更申請をしなければなりません。取得できる可能性のあるビザの選択肢は以下のものがあります。
- 配偶者ビザ
- 就労ビザ
- 定住ビザ
それぞれのビザを取得できるケースについて解説します。
3-1.【日本人または永住者と再婚する】配偶者ビザ
離婚したあとに日本人や永住者と再婚した場合は、新たな配偶者ビザの申請ができます。ただし、民法で再婚禁止期間が定められており、離婚から100日を経過しなければ再婚はできません。再婚するタイミングを検討する必要があるでしょう。なお、2024年4月1日以降は適用されません。
離婚や再婚を繰り返している場合は、偽装結婚が疑われやすいため審査も厳しくなる傾向にあります。
3-2.【一定の業種に就職する】就労ビザ
配偶者ビザから就労ビザに切り替えることも方法の1つです。就労ビザでの在留は、配偶者ビザとは異なる要件を満たさなければなりません。就労ビザによって要件は異なり、学歴が必要なものもあります。
離婚前から続けてきた仕事で就労ビザを取りたくても、業務内容が取得できる就労ビザに該当しないことも考えられるでしょう。就労ビザの対象となる業務ができる仕事に転職することも選択肢の1つです。
自ら経営者として会社を立ち上げ、「経営管理ビザ」を取得する人もいます。比較的ハードルの高い方法です。
3-3.【その他のケース】定住者
日本での結婚生活が長く、離婚後も日本を拠点として生活していきたい場合や、日本人との間に生まれた日本国籍の子供を日本で養育していきたい場合は、定住者の在留ビザを取得できる可能性があります。この定住者ビザは、状況や事情が総合的に考慮され、特別な事情があるとして法務大臣によって認められるものです。
4.配偶者ビザから「定住者」ビザへの変更要件
配偶者ビザから定住者ビザに切り替えるには、以下の要件を満たさなければなりません。
- 独立生計を営む収入がある
- 婚姻期間がおおむね3年以上ある
- 最低限の日本語能力を有している
- 公的義務を適正に履行している
- 婚姻中の素行が良好である
- 日本人との間の子供がいる
以下で、それぞれ詳しく解説します。
4-1.独立生計を営む収入がある
離婚後も日本で生活していくために、十分な収入や資産があることが要件の1つです。離婚する前から継続して正社員として働いている、複数のパートを掛け持ちしているなど、安定して就労している必要があります。離婚に伴い生計を立てられるような勤務先が決まっている場合も、要件を満たすとみなされます。離婚後に就職活動や転職活動をする場合は、迅速な行動が大切です。
4-2.婚姻期間がおおむね3年以上ある
おおむね3年以上の婚姻期間があることも必要な要件です。婚姻期間は実態を伴う期間で判断されます。戸籍上の婚姻関係があったとしても、別居の期間がある場合は婚姻期間としてカウントされません。
ただし、3年という期間は目安です。事情によっては婚姻期間が3年に満たなくても定住者ビザが許可される場合もあります。
4-3.最低限の日本語能力を有している
日本で生活を続けていくためには、日本語能力も不可欠です。明確なレベルが定められているわけではなく、生活する上で最低限の能力があればよいとされています。定住者ビザの審査の中で、面談を求められる場合は、生活状況や個別の事情とともに、日本語能力についても確認されている可能性があります。
4-4.公的義務を適正に履行している
納税や健康保険料・年金の納付など、公的な義務を履行していることも、定住者ビザを取得するために重視されます。加えて、義務付けられている届出を適切に行っているかどうかも重要です。前述したように、離婚した場合には入国管理局へ届け出なければならず、こうした届出が行われているかが確認されます。
4-5.婚姻中の素行が良好である
婚姻中に犯罪行為を行っていないか、風紀を乱すような行動を繰り返し行うなどの事情はないかも審査で確認されます。10年以内に懲役や禁錮、5年以内に罰金が科せられたことがある場合は、素行が善良とは認められません。
4-6.日本人との間の子供がいる
離婚した日本人との間に生まれた子供を日本で養育していく場合は、親権者であることやこれまで子供の世話をしてきたことが要件となります。定住者ビザを申請する外国人は、日本人の実子を監護・養育する者として認められる必要があります。これは日本で生活してきた子供を保護するための、子供の利益を優先した場合の要件といえるでしょう。
5.まとめ
本記事では、離婚した場合の配偶者ビザの取り扱いや必要な手続き、引き続き日本に在留する場合の在留資格について解説しました。内容をまとめると、以下の通りです。
✓配偶者ビザで日本に在留している人が離婚した場合は、14日以内に入国管理局に届け出なければならない
✓届出は入国管理局の窓口のほか、郵送やオンラインでも可能 ✓離婚後も日本で生活していく場合は、再婚して新たな配偶者ビザを取得する、就労ビザを取得する、定住者ビザを取得するという選択肢が考えられる ✓定住者ビザを取得する場合は他のビザと同様に、生計が安定していること、日常的な日本語能力があること、素行が良好であることが求められる ✓婚姻期間がおおむね3年以上であることや、養育する子供がいることも審査上有利に働く |
離婚後も日本で生活する場合には、届出と在留資格の変更が必要です。配偶者ビザは日本人との婚姻関係の上に成り立つため、他のビザに比べると不安定さのあるものです。万一に備えて、離婚となった場合のことも知っておくとよいでしょう。
この記事の監修

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)
相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。