2025/8/5 2025/10/29

外国人ビザ

経営管理ビザはレンタルオフィスでも取得できる?審査基準と注意点を解説

日本での起業を目指す外国人起業家にとって、「事業所」の確保は経営管理ビザ申請の重要なステップです。しかし、2025年10月16日の法改正により、求められる事業規模が大幅に引き上げられ、それに伴い事業所に求められる基準もより厳格なものへと変わりました。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

✓ 経営管理ビザの取得には、事業の実態を示すための厳格な事業所要件が必須。

✓  2025年10月の法改正で、資本金3,000万円、常勤職員1名以上の雇用が義務化され、事業所もその規模に見合ったものが求められるようになった。

✓ 自宅と事務所を兼用することは原則として認められなくなった。 

✓ レンタルオフィスを利用する場合、壁で区切られた独立した個室であり、かつ常勤職員が勤務できるだけの広さがあることが重要。 

✓ バーチャルオフィスやフリーデスク型コワーキングスペースは、事業の実態がないと見なされ、認められない。

今回の記事では、新しい制度下でレンタルオフィスが経営管理ビザの要件を満たすかどうか、その具体的な条件と注意点を専門家が解説します。

1.経営管理ビザの基本要件と「事業所」要件

2025年10月16日の法改正により、経営管理ビザの取得要件は根本から見直されました。「事業所」の要件を理解するためには、まずその前提となる新しい基本要件を知る必要があります。

  • 事業規模:
    資本金3,000万円以上 かつ 常勤職員1名以上の雇用が必須。
  • 経営者の経歴
    3年以上の経営経験または修士以上の学位が必須。
  • 事業計画
    中小企業診断士など専門家の確認が必須。
  • 日本語能力
    申請者または職員がN2相当以上の能力を持つことが必須。

この中でも特に重要なのが、「資本金3,000万円、常勤職員1名以上」という新しい事業規模です。事業所の審査は、この大規模な事業を運営するのにふさわしい場所かどうか、という視点で厳しく行われます。

1-1.入管法における「事業所」の定義と解釈

日本の入管法において「事業所」は、「事業活動が継続的に行われる場所」と定義されています。この定義は、その後の全ての要件の根拠となるため、非常に重要です。この基本的な定義から、入国管理局がオフィススペースを審査し解釈する際に指針とする3つの主要な原則が導き出されます。

  • 実体性
    オフィスは、単なる郵便物の受取場所や名目上の登記場所ではなく、事業活動が実際に運営される場所であることを明確に示す必要があります。これは、事業計画に記載された特定の事業活動を行うために、そのスペースが適切に設備され、準備されている必要があることを意味します。
  • 独立性
    事業は、他の事業や居住スペースから物理的に明確に区別され、独立した空間を占有する必要があります。この原則は、特に共有オフィス環境を検討する際に重要であり、申請者の事業領域が明確に区画されていることが不可欠です。
  • 継続性
    オフィスは、継続的かつ進行中の事業活動を円滑に行うために必要な設備、インフラ、および環境を備えている必要があります。この要件は、事業の長期的な運営能力とコミットメントを強調します。

1-2.なぜ「事業所」が厳しく見られるのか

入国管理局が事業所の審査を厳格に行う主な理由は、ビザ制度の健全性を確保し、不正な利用を防ぐことにあります。

  • ペーパーカンパニーや不正企業の防止
    審査の厳しさは、ビザ取得のみを目的とした「ペーパーカンパニー」や不正な事業の設立を未然に防ぐことを目的としています。事業所は、事業が真に合法的な運営を行う意図があるかどうかの重要な指標となります。
  • 真摯な事業意図の証明
    実体のある、独立して確認可能なオフィススペースは、申請者が日本で合法的な事業を設立・運営することに対する真摯な意図とコミットメントを示す具体的な証拠となります。これは、起業家が物理的な拠点に実際に投資していることを示します。
  • 事業拠点としての証拠
    オフィスは、事業が運営される物理的な拠点として機能します。そのため、入国管理局が提案された事業の運営上の現実性と実現可能性を検証する上で、重要な証拠となります。

入国管理局が事業所に対して「実体性」「独立性」「継続性」をこれほどまでに強調する背景には、ビザ制度全体の整合性を維持するための重要な役割があると考えられます。

入国管理局は、オフィスを単なるチェックリストの項目としてではなく、ビザ制度の悪用を防ぐための重要な関門と捉えています。その厳格な要件は、真に活動的な事業運営以外の目的でビザカテゴリーを悪用する可能性のある申請者を排除するために設計されています。

特に新制度下では、3,000万円もの資本を投下し、常勤職員を雇用する事業が、実体のないレンタルオフィスや狭小なスペースで行われることは不自然であると判断されます。事業所は、その事業規模に見合った実態を備えているかどうかの、最も分かりやすい指標となるのです。

したがって、申請者は単に住所を確保するだけでは不十分であることを理解する必要があります。その特定の事業活動のための正当かつ完全に機能する拠点であることを、能動的かつ説得力をもって示すことが求められます。オフィスが事業の運営上の現実を真に反映していることを積極的に構築し、提示する必要があります。

2.レンタルオフィスの種類と特徴:ビザ申請との関連性

各レンタルオフィスの形態が、「資本金3,000万円、常勤職員雇用」という新しい事業規模に対して適切かどうか、という視点で再評価する必要があります。

2-1.サービスオフィス

サービスオフィスは、家具や設備が完備され、受付サービス、会議室、高速インターネット、光熱費などの共有アメニティが含まれることが一般的です。多くの場合、追加の管理サポートサービスも提供されます。

  • ビザ適合性
    適切な条件を満たせば、最も現実的な選択肢です
    独立した個室
    施錠可能なプライベートオフィスであることは絶対条件です。最も重要なのは、申請者の事業が、その事業運営のために排他的に利用できる、施錠可能な個室スペースを確保していることです。これは、サービスオフィス施設内の他の事業からの「独立性」を示す上で極めて重要です。共有デスクやオープンフロアの配置では、一般的に不十分と見なされます。
    適切な広さ
    重要なのが広さです。経営者と常勤職員が最低でも2名、問題なく業務に従事できるだけのスペースが確保されている必要があります。あまりに狭小な一人用の個室では、事業規模との整合性が取れないと判断されるリスクが高まります。
    郵便物受取・電話応対サービス、常駐スタッフ
    受付・電話応対は実体性の補強要素として有利ですが、法定必須ではありません。サービスオフィス施設に常駐の管理または受付スタッフがいることは、事業拠点の信頼性と運営上の現実性を高めます。これは、専門的で継続的に管理された環境を示します。
    法人名義での契約
    契約は設立した法人名義で行う必要があります。サービスオフィスの賃貸借契約は、提供される専用スペースを明確に指定し、かつ、個人の申請者名義ではなく、新たに設立される日本法人の名義で締結されていることが重要です。

2-2.バーチャルオフィス

バーチャルオフィスは主にビジネスアドレスを提供し、郵便物処理や電話応対サービスを伴いますが、申請者向けの物理的で専用の執務スペースは提供しません。

  • ビザ適合性
    認められません。
  • 不適合の理由
    物理的な事業スペースが存在しないため、「実体性」の要件を全く満たしません。3,000万円規模の事業が住所レンタルだけで運営されることはあり得ないと判断されます。

2-3.コワーキングスペース

コワーキングスペースは、オープンな共有ワークスペースであり、柔軟なデスク、共有エリア、協力的な環境が特徴です。通常、プライベートな専用オフィスは提供されません。

  • ビザ適合性
    原則として認められません。
  • 不適合の理由
    フリーデスク型の契約では、「独立性」が確保できません。ただし、同施設内に常勤職員と経営者が執務できるだけの十分な広さを持つ、施錠可能な専用個室を契約する場合は、「サービスオフィス」と同様の扱いで認められる可能性があります。

2-4.シェアオフィス

「シェアオフィス」という用語は広範に使用され、サービスオフィスやコワーキングスペースと混同されることがあります。しかし、ビザ申請の目的においては、その設定が「専用の施錠可能なプライベートスペース」を提供できるかどうかが決定的な違いとなります。

  • ビザ適合性
    名称ではなく、契約形態によります。
  • 判断基準
    上記と同様、施錠可能なプライベート個室で、かつ事業規模に見合った広さがあれば認められる可能性があります。単なるデスクの共有であれば認められません。

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3.レンタルオフィスで経営管理ビザを申請する際の具体的な注意点とリスク

レンタルオフィスを利用して経営管理ビザを申請する際には、入国管理局の厳格な審査を通過するために、いくつかの具体的な注意点とリスクを理解し、適切に対処する必要があります。

3-1.「独立性」「継続性」「実体性」の確保

前述の通り、「独立性」「継続性」「実体性」の3つの原則は、ビザ申請の成否を分ける極めて重要な要素です。レンタルオフィスを利用する場合でも、これらの原則を積極的に証明するための戦略が必要です。

  • 独立性
    申請者の専用スペースが、その事業の領域として明確に識別可能で、他と区別されていることが不可欠です。これは、共有デスクや区画されていないオープンなワークスペースを避けることを意味します。個室を借りる場合は、それが明確に区画されていることを確認してください。
  • 継続性
    オフィスが継続的な事業運営のために真に設備されていることを示す必要があります。これには、信頼性の高いインターネットアクセス、専用のビジネス電話回線、業務を遂行するための適切な家具などの必須インフラが含まれます。
  • 実体性
    これは最も重要であり、具体的で検証可能な証拠が必要です。具体的な証明例としては、以下が挙げられます。
    ○看板: レンタルオフィスが許可する場合、会社の名称がオフィスの入り口、または建物の入口に明確に表示されていることは、信頼性を大幅に高めます。
    ○事業活動の証拠: 発行された請求書、顧客やサプライヤーとの契約書、オフィス住所が記載された名刺、プロフェッショナルなウェブサイト、オフィス所在地を明確に記載した会社案内などを提出します。

特に重要なのが「常勤職員が実際にそこで働ける環境か」という点です。机や椅子、PCなどが経営者と職員の人数分用意されていること、それぞれの執務スペースが確保されていることを、写真などで明確に示す必要があります。看板や郵便受けに会社名が表示されていることも、事業の実体性を補強する重要な要素です。

3-2.賃貸契約書・登記上の注意点

レンタルオフィスを利用する際の契約書にも注意を払う必要があります。

  • 法人名義での契約
    オフィスの賃貸借契約は、個人の申請者名義ではなく、新たに設立された日本法人名義で締結されていることが必要です。 もし最初の賃貸借契約が個人名義で締結された場合(例:会社設立前)、個人から法人への正式な転貸借契約が絶対に必要となります。しかし、これは手続きを複雑にし、入国管理局からは法人との直接契約に比べて好まれない傾向があります。
  • 登記住所との一致
    賃貸借契約書に記載された正確な住所は、法務局に提出された法人登記の住所と一致している必要があります。
  • 事業目的の明記
    賃貸借契約書には、賃貸物件が「事業目的」で使用されることが明確に記載されているべきです。これにより、スペースの意図された使用目的が明確になります。

3-3.過去の経営管理ビザ不許可事例

オフィススペースに関連する経営管理ビザの却下理由には、共通して繰り返されるパターンがあります。下記のような事例です。

  • 極めて稀な例外条件を満たさない純粋なバーチャルオフィスのみに基づく申請。
  • 「実体性」を欠くと見なされたオフィス。例えば、家具がなく、スタッフの存在を示す兆候がなく、実際の作業が行われている証拠がない空のオフィススペース。
  • 賃貸借契約書、法人登記、事業計画など、提出された様々な書類間の住所の不一致や内容が矛盾している。
  • 記載されたオフィス所在地での定期的な物理的プレゼンスや継続的な事業活動を証明できないこと。
  • 住居(自宅兼事務所)を事業所として使用しようとするが、その分離と専用の事業利用に関する明確かつ説得力のある図面や写真がない場合。

4.まとめ

✓ 経営管理ビザの取得には、事業の実態を示すための厳格な事業所要件が必須。

✓  2025年10月の法改正で、資本金3,000万円、常勤職員1名以上の雇用が義務化され、事業所もその規模に見合ったものが求められるようになった。

✓ 自宅と事務所を兼用することは原則として認められなくなった。 

✓ レンタルオフィスを利用する場合、壁で区切られた独立した個室であり、かつ常勤職員が勤務できるだけの広さがあることが重要。 

✓ バーチャルオフィスやフリーデスク型コワーキングスペースは、事業の実態がないと見なされ、認められない。

事業所の選択は単なる形式的な手続きではなく、日本での経営管理ビザ申請を成功させるための極めて重要な要素です。どのような事務所を選択するかは、入国管理局が定める「実体性」「独立性」「継続性」という厳格な要件を綿密に考慮して行われる必要があります。

特定の条件(専用スペース、サービス)を満たすオフィスが、最もおすすめです。対照的に、純粋なバーチャルオフィスやコワーキングスペースは、一般的には、ビザ却下のリスクが極めて高いです。専門家との相談を通じての事業計画書や事業所関連の書類作成、準備を推奨します。

経営管理ビザ取得を円滑に進めていくためには、専門家への相談をしていくことが重要です。高いリスクと入国管理局による運用を考慮すると、行政書士などの専門家からの専門的な支援を受けていくことが必要です。

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に移住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

【主なサポート実績】
年間100件以上の会社設立、不動産・法人登記をサポート。
アメリカ、中国、韓国など、20カ国以上の外国人の不動産取引、起業を支援。
IT、飲食、貿易、コンサルティングなど、多岐にわたる業種の設立実績。

司法書士・行政書士として、会社設立の登記手続きから経営管理ビザの取得、その後の役員変更や増資まで、ワンストップでサポートできるのが強みです。まずはお気軽にご相談ください。

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