2024/10/30
2025/4/17
外国人ビザ
経営管理ビザ取得のための役員報酬の決め方とは?目安と注意点を解説
経営管理ビザの取得や更新において、役員報酬の設定は重要なポイントです。適切な役員報酬を決めることは、ビザ申請の成功率を高めるだけでなく、日本での安定した生活基盤を築くうえでも欠かせません。
今回の記事のポイントは以下のとおりです。
| ✓役員報酬の変更は、「年1回・事業年度開始から3か月以内」が原則である。
✓役員報酬は、あらかじめ税務署に届け出た額を、一定期間ごとに支払わなければならない。 ✓役員報酬は、独身の場合で月額18万円〜月額20万円以上が目安であり、永住ビザ取得を視野に入れた場合には、月額25万円以上が必要である。 ✓社会保険の未加入や保険料の滞納は、経営管理ビザの更新の際に悪影響を及ぼす。 |
本記事では、役員報酬の適切な決め方や金額設定の目安、注意点について解説し、永住ビザ取得を視野に入れた場合のポイントも紹介します。
1.経営・管理ビザとは
経営管理ビザは、外国人が日本で会社の経営や管理職として働くために必要な就労ビザです。以前は「投資経営ビザ」と呼ばれていましたが、外国資本がなくても取得できるようになったため、「経営管理ビザ」に名称が変更されました。
日本人や永住者であれば、経営や管理職に制限なく就けますが、外国人には在留資格による制約があります。しかし、経営管理ビザを取得することにより、外国人も日本国内での企業経営や管理業務に従事できます。
以下では、経営管理ビザの概要と取得要件について詳しく解説します。
1-1.経営管理ビザの在留期間や更新頻度
経営管理ビザの在留期間は通常、3か月から5年の範囲で許可されますが、初回申請時は1年間が基本です。また、会社設立の準備を行うために来日する場合には、4か月のビザが発給されます。
経営管理ビザの更新時には、事業の安定性や実績に基づき、6か月・1年・3年・5年の在留期間が決定されます。
ただし、一度長期間の在留を許可された場合でも、自動更新されるわけではありません。更新のたびに審査が行われるため、事業の安定性を維持することが重要です。
1-2.経営管理ビザでできること
経営管理ビザを取得すると、日本国内で幅広いビジネス活動が可能になります。新規事業を立ち上げ、自身の可能性を広げるチャンスに恵まれるだけでなく、既存の日本企業に参画し、経営に携わることや事業継承も可能です。
業種に関しても特に制限はなく、法的に認められた範囲であれば、日本人と同様に多様な事業を展開できます。
1-3.経営管理ビザ取得の要件
経営管理ビザの取得要件は、日本で新たに起業する場合と、既存の企業で管理者として働く場合で異なります。それぞれの要件は、以下のとおりです。
1. 日本で起業する場合
- 日本国内に事業所を確保する必要がある
- 常勤の従業員2名以上を雇用するか、500万円以上の資本金を用意する必要がある
- 事業の適正性、安定性、継続性を示すことが重要である
- ビザ申請者自身が、事業経営に携わらなければならない
2. 既存の企業で管理者として働く場合
- 事業の運営や管理に関する3年以上の実務経験(大学院で経営や管理関連の科目を専攻した期間も含む)が必要である
- 日本人と同等以上の報酬を受けることが条件である
- 申請者が企業の管理業務を直接担う必要がある
詳細な要件や申請の流れについては、関連記事をご覧ください。
2.経営管理ビザ取得のための役員報酬の決め方と目安
経営管理ビザを取得するうえで、役員報酬をどのように決定するかは重要なポイントです。会社法では、役員報酬は「定款または株主総会で定める」と規定されています。
実務的には、定款の変更には手間がかかるため、役員報酬は株主総会で決定することが一般的です。そのため、定款に具体的な記載がない場合は、株主総会(合同会社の場合は社員総会)で決議しなければなりません。
ここでは、役員報酬の決定期限や金額の目安について詳しく解説します。
2-1.役員報酬決定の期限
法人の役員報酬は、法人設立から3か月以内にその期の金額を決定し、1か月以内の頻度で同じ金額を決まった日に支払う「定期同額給与」として支給する必要があります。これは、法人が利益を意図的に調整することを防ぐための制度です。
決定した報酬は、法人の口座から役員の個人口座へ振り込み、その履歴を記録することが求められます。このルールを守らない場合、支払った役員報酬が損金として認められず、予想外の税負担が発生する可能性もあるため注意が必要です。
第2期以降も同様に、期首から3か月以内に役員報酬を決定しなければなりません。
2-2.役員報酬の設定金額の目安
経営管理ビザを取得するには、役員報酬を適切に設定することが重要です。報酬を0円にすると、日本での生活が保証できないと判断され、ビザ取得が難しくなります。具体的な金額は個々の状況によりますが、未婚で扶養家族がいない場合は、最低でも月額18万円が目安です。
ただし、最近の物価上昇を考慮すると、都会での生活には月額20万円以上が望ましいでしょう。既婚者や扶養家族がいる場合は、それに応じた高い報酬設定が求められます。
さらに、将来的に永住権の取得を目指す場合は、月額25万円以上の役員報酬を確保することが理想的です。
3.役員報酬の設定時に確認するポイント
役員報酬は、経営管理ビザの取得だけでなく、事業の安定性を示すうえでも重要な要素です。従業員との給与バランス、ビザ取得後の安定的な支払いなど、考慮すべき点がいくつかあります。
以下で、役員報酬を設定する際に注意すべき点を見ていきましょう。
3-1.従業員より少ない給与にしてはいけない
店舗型ビジネスや雇用が必要な業態では、役員報酬を従業員より低く設定しないようにしましょう。役員報酬が少ないと、申請者が実際には事業を行っていないという疑念を招く恐れがあります。経営者が名目上の役職にあるだけで、実質的には社員が経営しているとみなされることがあるため注意しなければなりません。
ビジネスの安定性を示すためには、役員報酬は一般的に社内で最高額であるべきです。これは、経営者が業務を実際に行っていることを証明する重要な要素です。また、外国人を雇用する場合は、日本人と同等以上の給与が求められます。
3-2.経営管理ビザ取得後も定期的に同額を支払うことになる
役員報酬は定期同額給与のため、一定期間ごとに同額の給与を支払う必要があります。このルールは、経営管理ビザの取得後も適用されます。
たとえ売上が不調であっても、役員報酬の支払いは必要です。定められた役員報酬が支払われていない場合、入国管理局の審査において事業の安定性に疑念を持たれたり、日本での生活基盤に関する問題が指摘されたりする恐れもあります。
したがって、経営管理ビザが許可された後も、次回の更新まで役員報酬は定期的に同額を支払うことが重要です。
4.経営管理ビザから永住権の取得も視野にいれる場合のポイント
日本の永住権取得は、経営管理ビザよりも安定的かつ継続的な事業活動を行えるなどのメリットがあるため、将来を見据えて取得を目指す人もいるでしょう。しかし、日本の永住権の取得には、経営管理ビザよりも厳しい条件をクリアする必要があります。
ここでは、永住権取得を目指すうえで、特に重要なポイントについて解説します。
4-1.3年か5年の在留期間のビザを所持する
永住権取得を視野に入れる場合、3年または5年の在留期間を持つ経営管理ビザが必要です。また、引き続き10年間日本に居住し、そのうち直近5年間は就労系在留資格で継続的に働いていることが求められます。
なお、直近5年間の就労系在留資格については、他の就労ビザと組み合わせて、5年の就労経験を満たせます。
経営管理ビザの初回取得時には、多くの場合、1年の在留期間しか与えられません。これは、新規設立の会社では経営の安定性が見込めないためです。
出入国在留管理局は、更新審査において会社の安定性を重視します。連続して2期以上の黒字決算を達成することで、3年の在留期間を取得できる可能性が高まります。
4-2.役員報酬が年間300万円以上である
永住権の取得において、役員報酬は重要な要件です。申請時には直近5年分の年収証明書類の提出が求められるため、計画的に準備を進めるようにしましょう。
就労系在留資格からの永住申請では、年収300万円以上が目安とされています。経営管理ビザを持つ人は、主な収入源が役員報酬となるため、月額25万円以上、年間300万円以上の役員報酬が望ましいといえるでしょう。
4-3.経常損益が黒字である
経営管理ビザから永住権への切り替えを申請する際に、審査で重視される要素の一つは、会社の安定した財務状況です。特に、経常利益が黒字であることは、審査の重要な判断材料となります。
例えば、会社が債務超過に陥ると、経営者が安定した収入を確保できていないと見なされる可能性があります。加えて、経常利益が連続して赤字の場合、役員報酬が引き下げられるリスクも審査で考慮されるかもしれません。
会社の財務状況が債務超過に陥っている場合、経営者である申請者が安定した収入を得ているとは判断されにくいでしょう。したがって、直近2事業年度にわたる経常利益の黒字が望まれます。
4-4.会社として社会保険に加入し納税する
会社として社会保険に加入し納税することは、永住ビザ取得を視野に入れるうえで極めて重要です。まず、厚生年金保険と健康保険からなる社会保険は、役員一人のみの会社であっても強制加入となります。これは、会社が強制適用事業所とされているためです。
社会保険に加入していない場合や保険料を滞納している状態では、永住ビザの申請が不許可となる可能性も高まります。適切に保険料を納めているかどうかは厳格にチェックされ、不履行が判明すれば許可は難しくなるでしょう。
また、社会保険への加入は、経営管理ビザの更新手続きにも大きな影響を与えます。保険料の支払いが滞ると、経営管理ビザの更新も困難になるため、会社設立後はすぐに社会保険の加入手続きを行うことが求められます。
4-5.身元保証人を用意する
永住権申請時の身元保証人は、特別永住者・永住者・日本人のいずれかで、年収300万円以上が望ましいとされています。
保証内容には滞在費や帰国費用の負担、法令遵守の確認が含まれているものの、入管法上、法的責任や経済的賠償は原則ありません。
ただし、道義的責任は存在し、問題発生時に身元保証人としての責任を果たせなかった場合、将来的に身元保証人としての適格性を失う可能性があります。
また、虚偽申請などの意図的な犯罪に関与することは、警察の取り締まりの対象となるため十分な注意が必要です。
5.まとめ
本記事では、経営管理ビザにおける報酬額について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。
| ✓役員報酬の変更は、「年1回・事業年度開始から3か月以内」が原則である。
✓役員報酬は、あらかじめ税務署に届け出た額を、一定期間ごとに支払わなければならない。 ✓役員報酬は、独身の場合で月額18万円〜月額20万円以上が目安であり、永住ビザ取得を視野に入れた場合には、月額25万円以上が必要である。 ✓社会保険の未加入や保険料の滞納は、経営管理ビザの更新の際に悪影響を及ぼす。 |
経営管理ビザを取得し、更新するためには、役員報酬の額とその支給状況が重要です。役員報酬が低すぎると、事業の安定性が不確かだと見なされ、ビザの更新が認められない可能性もあります。
役員報酬は、「毎月決まった金額を支払う」という原則(定期同額給与)を遵守し、会社の業績に関わらず毎月同額を支給することが大切です。特に、将来的な永住権取得を目指す場合は、月額25万円以上の報酬を確保しておくことが望ましいでしょう。
役員報酬の設定やビザ申請の手続きが難しいと感じた場合には、専門家である行政書士に相談することをおすすめします。
この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)
相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に移住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。
【主なサポート実績】
年間100件以上の会社設立、不動産・法人登記をサポート。
アメリカ、中国、韓国など、20カ国以上の外国人の不動産取引、起業を支援。
IT、飲食、貿易、コンサルティングなど、多岐にわたる業種の設立実績。
司法書士・行政書士として、会社設立の登記手続きから経営管理ビザの取得、その後の役員変更や増資まで、ワンストップでサポートできるのが強みです。まずはお気軽にご相談ください。




