2024/2/7 2024/2/9

外国人ビザ

帰化申請の手続きガイド│帰化要件や手続きの流れ、注意点を解説

外国人が日本に帰化することで日本の国籍を取得でき、社会保障の権利や参政権を得られます。生涯を通して日本で暮らしたい外国人の方は、永住ではなく帰化を目指すことも多いです。

今回の記事のポイントは、下記のとおりです。

帰化には一般帰化・簡易帰化・大帰化(実例なし)の3種類があり、それぞれ要件がある

✓一般帰化の条件として、①住所要件、②能力要件、③素行善良要件、④生計要件、⑤国籍喪失要件、⑥思想要件、⑦日本語能力要件の7つある

✓日本の住所要件の5年間では、①1回の海外出国期間が3ヶ月を超えていないこと、②1年間における総出国日数が100日から150日を超えないこと、③ 過去3年間にわたり、就労および納税の実績があることが求められる

日本語能力要件として、一般的には小学校3年生程度、日本語能力検定ではN3レベルが目安とされている

✓日本人配偶者の外国人、日本人の子、日本生まれの子、来日して10年経過した外国人については、住所要件が緩和された簡易帰化を申請できる

✓帰化の相談先や申請先は法務局であり、予約が必要

申請に必要な書類は本国から取り寄せるものと国内で準備するものがあり、時間や手間がかかる

初回の相談から審査の結果が出るまでには1年以上かかる場合もある

帰化の申請を行うには、法務局に出向いてやり取りや手続きを行う必要があります。必要な書類も多くハードルが高いため、まずはどのような流れで申請を行うのかを知っておきましょう。

1.【種類別】帰化の申請要件

帰化の種類には普通帰化・特別(簡易)帰化・大帰化があります。それぞれの申請要件を以下で解説します。

1-1.一般帰化の申請要件

普通帰化とは、国籍法で定められている7つの要件を満たした帰化の方法です。普通帰化の申請者は18歳以上かつ日本に5年以上住んでいることを前提として、以下の要件を満たす必要があります。

  • 住所要件(申請までの5年間引き続き日本に住所を有すること
  • 能力要件(18歳以上かつ本国法において成人した年齢であること)
  • 素行善良要件(犯罪歴や納税の状況などから総合的に判断される)
  • 生計要件(生計を1つにする世帯単位で安定した生計を立てていること)
  • 国籍喪失要件(無国籍であること、または本国での戸籍を喪失する(二重国籍とならない)こと)
  • 思想要件(日本政府を暴力によって破壊するような思想を持っていないこと)
  • 日本語能力要件(小学校3年生、日本語能力試験3級程度の日本語の読み書きができること)

日本人との婚姻関係などがなく、就労などのために来日した外国人が日本国籍を取得するための方法です。

住所要件

申請までの5年間引き続き日本に住所を有することが求められます。4年間日本に住んでいて、その後1年間海外に居住し、また、日本に戻ってきて1年間住んだ場合は、”引き続き”日本に住所を有していたことになりません。この場合、日本に戻ってきた時からリセットされて再度5年間の住所を有することが求められます。

さらに5年間の居住期間において、以下の条件を全て満たすことが必要です。

  • 1回の海外出国期間が3ヶ月を超えていないこと
  • 1年間における総出国日数が100日から150日を超えないこと
    ※ただし、出国日数の評価は法務局によって異なる場合があり、将来的に変更される可能性もある点に留意が必要です。
  • 過去3年間にわたり、就労および納税の実績があること(転職の回数は問われない)

能力要件

18歳以上かつ本国法において成人した年齢であることが必要です。以前は20歳以上が基準でしたが、民法の改正により、令和4年4月1日以降は18歳以上に変更されています。

素行善良要件

犯罪歴、交通違反や納税、年金の納付の状況などから総合的に判断されます。5年以内に刑事罰を受けたり、納税等の義務違反がある場合は帰化は認められません。法人経営者や個人経営者は個人の税金のほかに、会社、個人事業の税金の支払いについての義務違反も認められません。

生計要件

生計を1つにする世帯単位で安定した生計を立てていることが求められます。就労からの毎月安定した定期収入があるかを見られます。預貯金がほとんどなくても、帰化申請は受け付けられます。

独身であれば申請者の毎月の収入が20万円であっても認められています。結婚して家庭を持つ場合、生計を立てる者は帰化申請者だけに限らず、配偶者も含めて経済的基準を満たしているならばそれで足ります。扶養する家族が多ければその分目安となる金額はあがります。

一方で、経営する事業が赤字であったり、多額の負債がある状態、無職である、収入が不安定である、または年金の加入期間が不十分な人は、帰化が認められません。

国籍喪失要件

帰化申請者は、自国の国籍を放棄することが求められます。ただし、イランのように国籍放棄を許可しない国も存在します。そういった場合には特例として別の手続きが可能です。さらに、兵役の義務が存在する国の場合は、その国の兵役を完了していないと帰化が認められないことがあります。

思想要件

日本政府を暴力によって破壊するような思想を持っていないということです。テロリストや暴力団構成員などが該当します。

日本語能力要件

国籍法では、日本語能力の要件は明記されていません。しかし、実際には日本語のスキルが非公式ながら重要な要件として扱われ、近年ではこの点に関する審査が特に厳しくなっています。

一般的には、小学校3年生程度、日本語能力検定ではN3レベルが目安とされています。

最近では、履歴書のフォーマットが変更され、使用言語を記載する必要が出てきました。これは申請者の日本語能力を確認するための措置です。特に、読み書きの能力が評価の焦点となっています。

法務局での事前相談時に、担当者の話を日本語でメモする様子などもチェックされ、母国語でメモしている場合は日本語能力が疑問視され、追加のテストを受けることになるかもしれません。日本語でメモを取っているからといって、テストを免除されるわけではありませんが、日々のコミュニケーションでの日本語の使用状況は評価されています。

日本人との結婚後3年(あるいは1年)での後述する簡易帰化申請も、日本語能力がネックになるケースが多いことが指摘されています。

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1-2.簡易帰化の申請要件

日本人配偶者の外国人や、日本人の子、日本生まれの子、来日して10年経過した外国人が帰化する場合は、簡易帰化の対象となります

簡易帰化では、普通帰化に必要な7つの要件のうちいくつかが緩和されます緩和されたとしても、必ず日本語能力要件は求められます。

日本人配偶者の外国人の場合

下記に該当する日本人の配偶者である外国人は、住所要件(5年間日本国内に住所)や能力要件(18歳以上の成人)を満たしていない場合でも、帰化申請できます。

  • 日本人の配偶者で婚姻から3年未満:住所要件5年→3年
  • 日本人の配偶者で婚姻から3年以上経過:住所要件5年→1年

一般的には未成年での結婚はほとんどないため、実際には5年間の住所要件が緩和されています。日本人配偶者は申請時点までの婚姻期間に応じて、5年から1年又は3年に短縮されます。

日本人の子や日本生まれの子の場合

帰化して日本人になった親の子や日本生まれの子が帰化を行う場合には、住所要件(5年間日本国内に住所)や能力要件(18歳以上の成人)、生計要件を満たしていなくても帰化申請ができます。

  • 日本人の子(養子を除く):住所要件5年→制限なし
  • 日本人の養子、かつ、縁組の時、本国法により未成年者であった者:住所要件5年→1年
  • 日本国籍を離脱した元日本人(日本帰化後、日本国籍喪失者を除く):住所要件5年→制限なし
  • 日本で生まれ、出生の時から国籍を有しない子:住所要件5年→3年

下記に該当する子は住所要件のみが緩和されます。

  • 日本国民であった者の子(養子を除く):住居要件5年→3年
  • 日本で生まれた子:住居要件5年→3年

来日して10年経過した外国人の場合

来日して10年経過した外国人の場合には、住所要件が緩和され、3年の就労・納税歴は不要となり、1年の就労・納税歴で足ります。例えば、留学などのビザ(在留資格)で9年、就労ビザで1年、合計10年でも問題ありません。

1-3.大帰化の申請要件

大帰化とは、特別な功労のあった外国人に適用される特別措置です。国会の承認を経て法務大臣が許可することで、7つの要件を満たすことなく日本に帰化できます。ただし2024年現在に至るまで、適用された例はありません。

2.帰化申請手続きの流れ

以下では一般的な帰化申請の流れを解説します。帰化の申請者が15歳以上の場合は本人が、15歳未満の場合は親権者や法定代理人が手続きを行います。法務局に出向いたり多くの書類をそろえたりする必要があるため、心構えをしておきましょう。

参考:法務省「帰化許可申請」

2-1.法務局または地方法務局を予約し相談する

まず、管轄の法務局に予約を取って相談しましょう。2か月先まで予約が取れないこともあるため、早めの相談をおすすめします。

相談の際には、担当者から以下のようなことを確認されます。

  • 申請者の国籍
  • 在留資格
  • 家族構成
  • 生活状況
  • 職歴
  • 来日した経緯
  • 犯罪歴の有無
  • 日本語能力

こうした内容を踏まえて、帰化の要件を満たす見込みがあると判断された場合は、担当者から必要書類について案内されます。まずは本国から取り寄せる書類について説明があるため、しっかりと聞いておきましょう。要件を満たす見込みがないと判断された場合は、次のステップには進めません。

2-2.必要書類を集める

法務局の担当者の指示に従って、必要な書類を収集します。

法務局では「帰化許可申請の手引き」を提供しており、この手引きに従って必要な書類の準備と作成を行います。

書類は原則として二部ずつ(そのうち一部はコピーで問題ありませんが、帰化申請書と添付する写真に関してはコピーではなく原本が必要)を用意します。さらに、提出するすべての書類の原本も準備します。再発行が困難な、原本を提出できない書類(例:パスポート、契約書など)については、事前にコピーを二部作成します。申請時には、これらの原本を提示し、担当者が原本との照合を行います。

以下は、手引きに記載されている必要書類の一部です。

① 帰化許可申請書(写真貼付)
② 親族の概要を記載した書類
③ 履歴書
・最終卒業証明書又は卒業証書
・在学証明書
・技能・資格を証する書面
・自動車運転免許証
④帰化の動機書
⑤宣誓書
国籍・身分関係を証する書面
・本国の戸籍(除籍)謄本、家族関係登録簿に基づく証明書
・国籍証明書
・出生証明書
・婚姻証明書(本人・父母)
・親族関係証明書
・申述書、その他(父母の死亡証明書等)
・パスポート・渡航証明書
・出生届書・死亡届書・婚姻届書・離婚届書(日本での戸籍届書の記載事項証明書)
・その他(養子縁組・認知届・親権を証する書面・裁判書)
・日本の戸籍(除籍)謄本:本人が日本国籍を喪失、父母・子・配偶者・婚約者が日本人・元日本人)
⑦ 国籍喪失等の証明書
⑧ 住民票(申請者、同居者、配偶者)
⑨ 生計の概要を記載した書面
・在勤及び給与証明書(会社等勤務先で証明書したもの)
・土地・建物登記事項証明書
・預貯金現在高証明書・預貯金通帳
・賃貸借契約書
⑩ 事業の概要を記載した書面
・会社等法人の登記事項証明書
・営業許可書・免許書類
⑪ 納税証明書等
【個人】
・源泉徴収票
・確定申告書(控え・決算報告書含む)
・所得税の納税証明書(その1、その2)
・事業税の納税証明書
・消費税の納税証明書
・都道府県・市区町村民税の納税証明書、課税証明書又は非課税証明書
・納付書

【法人】
・確定申告書(控え・決算報告書含む)
・法人税の納税証明書(その1、その2)
・法人事業税の納税証明書
・消費税の納税証明書
・法人都道府県民税の納税証明書、法人市区町村民税の納税証明書
・源泉徴収簿(申請者に関する部分)

⑫ 社会保険料の納付証明書(直近一年分)
・公的年金保険料の納付証明書(年金定期便、年金保険料の領収書)直近一年分
・公的医療保険の納付証明書 ※国民健康保険の場合
・介護保険料の納付証明書 ※該当する場合
⑬ 運転記録証明書(過去5年間)、運転免許経歴証明書(失効した人、取り消された人)
⑭ 自宅、勤務先、事業所付近の略図
⑮ その他(スナップ写真)

本国からの書類は、大使館を経由して取り寄せられる場合もありますが、本国への帰国が必要な場合もあります。法務局では個々の書類の収集方法までは教えてもらえないため、自力で情報を集めて書類をそろえなければなりませんまた、外国語で作成されている書類については、翻訳文を作成する必要があります。時間も手間もかかり、多くの人が挫折するポイントでもあります。

2-3.申請書類を作成する

書類がそろったら、再度法務局に予約を取り確認してもらいます。そろえた書類に整合性がなければ次のステップに進めないため、正確な書類を確実に集めておかなければなりません。問題がないと判断されたら、国内でそろえる書類や帰化許可申請書類についての案内があります。ここからさらに書類を集めなければなりません。申請書類は手引きに沿って、基本的に手書きで記入します。

2-4.帰化申請の必要書類をすべて法務局に持参する

帰化許可申請書類を作成し、必要書類もそろったら、再度予約を取ってすべて法務局に持参します。担当者が確認したのち、署名を行うことで受理されます。ただし、この時点ではあくまでも受理であって、帰化の許可が下りる保証はありません

受理されたら法務省や税務署、警察など各官庁による情報の照会が行われます。

2-5.法務局の面接を受ける

申請書類が受理されてから2~6か月後に、法務局から面接の連絡が入ります。申請者は法務局へ出頭し、帰化する理由や、今までの経歴、職歴、日本への感想、母国の国籍を放棄することへの確認、今後の目標などについて質問されます。また、面接時に日本語テスト(20~30分)程度が行われる場合があります。

配偶者がいる場合は、一緒に出頭しなければなりません。面接のとき以外の挙動も審査の対象として見られています。

2-6.法務局による近隣調査や自宅訪問がある

自宅や職場、近隣への訪問・調査が行われる場合や、職場に在籍確認の電話が入る場合もあります。もし追加書類を求められたら、速やかにそろえて提出しましょう。

2-7.国籍の離脱手続きを行う

日本への帰化が許可される見込みであれば、二重国籍を防ぐために本国の国籍から離脱する手続きが行われます。許可が下りる少し前に、法務局から申請者に連絡が入り、電話や郵送で離脱手続きに必要なやり取りを行います。離脱の手続きに必要な書類は本国によって異なるため、法務局の職員の指示に従いましょう

2-8.許可または不許可の連絡がある

帰化が許可されると官報に掲載されたのち、法務局から電話などで連絡が入ります。許可されなかった場合は、郵送で不許可の通知が届きます。

2-9.法務局で帰化許可通知書と身分証明書を受け取る

許可の連絡の際に伝えられた指定日に法務局へ出頭することで、帰化許可通知書と日本人としての身分証明書を受け取れます

入国管理局には在留カードを返却しなければなりません市町村の役所には、指定日から14日以内に外国人登録証明書を返納するとともに、1か月以内に法務局から受け取った身分証明書を添えて帰化届を提出します

このほか、運転免許証やクレジットカードの名義変更、パスポートの取得など、帰化に伴うさまざまな手続きが必要です。

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3.帰化申請における注意点

帰化申請から結果が出るまでには1年以上かかる場合も多く、その間に住所や家族構成、勤務先などが変わることも考えられます。申請の内容にかかわる場合は法務局に連絡が必要です。追加書類を求められることもあるため注意しましょう。

帰化申請には多くの労力と時間がかかります。要領がわからず挫折する人も少なくありません。自力での申請が難しければ、専門家に依頼することでスムーズな手続きができ、心身の負担が軽減されるでしょう

4.まとめ

本記事では、帰化の種類ごとの要件と申請の流れについて紹介しました。内容をまとめると、以下の通りです。

帰化には一般帰化・簡易帰化・大帰化(実例なし)の3種類があり、それぞれ要件がある

✓一般帰化の条件として、①住所要件、②能力要件、③素行善良要件、④生計要件、⑤国籍喪失要件、⑥思想要件、⑦日本語能力要件の7つある

✓日本の住所要件の5年間では、①1回の海外出国期間が3ヶ月を超えていないこと、②1年間における総出国日数が100日から150日を超えないこと、③ 過去3年間にわたり、就労および納税の実績があることが求められる

日本語能力要件として、一般的には小学校3年生程度、日本語能力検定ではN3レベルが目安とされている

✓日本人配偶者の外国人、日本人の子、日本生まれの子、来日して10年経過した外国人については、住所要件が緩和された簡易帰化を申請できる

✓帰化の相談先や申請先は法務局であり、予約が必要

申請に必要な書類は本国から取り寄せるものと国内で準備するものがあり、時間や手間がかかる

初回の相談から審査の結果が出るまでには1年以上かかる場合もある

帰化申請には時間や手間がかかり、心身の負担も大きなものです。必要に応じて専門家の力を借りながら、一つひとつのステップを確実に進めて帰化を目指しましょう

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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