2024/2/6 2024/3/12

外国人ビザ

永住権の取得条件とは?申請手続きの流れ、必要書類、注意点を解説

日本の永住権を有する永住者のビザは他のビザ(在留資格)とは異なり、在留活動に制約がなく在留期間も無制限です。日本に長期滞在する外国人の中には、永住権を得たいと望む人が数多くいます。そのような魅力ある永住許可ですが、取得には多くの要件と申請書類が必要であり、多くの時間と労力が必要です

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

✓「永住権」は、日本国籍を持たずして在留期間の制限なしに日本に滞在できる権利を指し、「帰化」や「特別永住者」とは異なる在留資格である

永住権を取得するための永住許可申請をするには「素行善良要件」「独立生計要件」「国益要件」の3要件が必要である

✓永住権を得るためには、通常10年以上日本に滞在している必要があるものの、10年間でなくても永住権を取得できる特例がある

永住許可申請の「10年在留」に関する特例は、日本人との婚姻や難民認定、高度人材外国人などが該当する

永住権を取得すれば、在留期限や就労制限がなくなり、社会的信用が得られるといったメリットがある

「高度専門職」の在留資格を持つ外国人は「親の帯同」を認められているが、永住権を取得する際「親の帯同」の権利を失ってしまうおそれがあるので注意が必要である

永住権を取得していたとしても、出国する際には「再入国許可」に留意しておく必要がある

✓ 永住権の標準処理期間は通常のビザよりも長い4か月とされていますが、一概にはいえず、8か月から10か月かかることもある

本記事では、永住権を取得するための条件やメリット・デメリット、申請の流れと必要書類についてまとめました。永住権の取得条件「10年在留」に関する特例や永住権取得後の注意点も解説しています。

永住権の審査要件を知り、計画的に準備を進められるようにしましょう。

目次[表示]

1.永住権とは?帰化や特別永住者との違い

日本における「永住権」「帰化」「特別永住者」という3つの異なる在留資格について詳しく解説します。それぞれの資格は、日本での生活や就労に大きな影響を与えます。

永住権」は、在留期間の制限なしに日本に滞在できる権利を指し、「帰化」は日本の国籍を取得し、日本人になることです。「特別永住者」は、日本国籍を離脱した外国人が特定の条件下で取得できる在留資格です。

1-1.永住権は在留資格のひとつ

永住権とは、日本国籍を持たない外国人が、在留期間の制限なしに日本で永住することが許される権利を指します。永住権は日本の在留資格のひとつで「永住者」に該当します。

永住権を取得すると、活動の制限がなく職種や業種に関する就労制限も存在しません。ただし永住権を取得するためには、日本の法律を遵守し、税金や年金などの義務を適切に果たすことが求められます。

なお、帰化をした日本国籍を有する人とは異なり、選挙権は付与されず、公務員になることも基本的には許可されていません。

1-2.帰化や特別永住者との違い

永住権と混同しやすいのが「帰化」と「特別永住者」であり、それぞれ以下に定義付けられます。

帰化

帰化とは、日本の国籍を取得し日本人になることを指します。帰化により外国籍は失われ、在留資格制度の対象外となり、在留資格に関する申請の必要はありません。

日本人として社会保障などの権利を享受し、選挙権や被選挙権も有します。ただし日本での二重国籍は認められていないため、日本の国籍を取得する際には、元の国籍を放棄する必要があります。

特別永住者

特別永住者は、日本国籍を離脱した外国人で、1991年の「入管特例法」により在留資格の有する人を指します。第二次世界大戦後、日本が朝鮮半島や台湾から撤退し、朝鮮半島や台湾に住んでいた人々とその子孫が特別永住者の資格を得ました。

特別永住者と永住者の主な違いは、在留カードの有無です。特別永住者には特別永住者証明書が、永住者には在留カードが交付されます。

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2.外国人が永住権を取得するための3つの条件

永住権を取得し、永住者のビザ(在留資格)を得るには、以下の3条件を満たす必要があります。

  • 法律や法令を違反していないこと(素行善良要件
  • 独立生計を営む資産や技能を有していること(独立生計要件
  • その者の永住が日本の利益になると認められること(国益要件

なお、「日本人の配偶者や子」「永住者の配偶者や子」「特別永住者の配偶者や子」に関しては国益要件のみが要件となります。

2-1.法律や法令を違反していないこと(素行善良要件)

素行善良要件として、法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいることが求められます。

重大な犯罪行為、たとえば窃盗や強盗を犯している場合、外国人は日本の永住権を取得できません。また、罰金刑についても注意が必要です。過去に懲役、禁錮又は罰金刑を受けている場合には、刑の消滅(刑法第34条の2)、執行猶予の期間経過後に改めて申請する必要があります。

  • 罰金刑の場合→罰金刑終了後5年経過
  • 禁錮、懲役刑の場合→禁錮、懲役刑終了後10年経過

子供が少年院等に入っている場合

子供の保護処分が継続中は要件を満たしません。

家族全員で永住許可を検討している場合において、子供が少年院等に入っていると、家族全員が素行善良要件を満たしていないと判断されて、不許可になる可能性があります。

交通違反がある場合

スピード違反(一般道での30km/h以上の超過、高速道路での40km/h以上の超過)や飲酒運転、無免許運転などは罰金刑の対象となるため、永住は許可されません。駐車違反やスピード違反のような軽度な違反も、度重なると不許可になる可能性があります。

軽微の交通違反を2回程度起こした場合には、「なぜ複数回違反を犯したのか」という質問に答え、将来的に違反行為をしないという決意を含む手書きの反省の言葉を提出することが求められます。しかし、違反点数が3点に達する場合は、その行為が悪質であると見なされ、さらに詳細な反省と説明を手書きで提出する必要が出てきます。

2-2.独立生計を営む資産や技能を有していること(独立生計要件)

独立生計要件として、日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれることが求められます。

年収は300万円以上が望まれる

求められる年収は単身者の場合、300万円です。年収をチェックされる期間は直近5年間とされています。そのため転職には注意を要します。転職は生活の不安定要素と見られてしまうため、できれば転職してから1年以上経ってからの永住許可申請が無難です。

配偶者や子供などの扶養家族がいる場合、一人あたりの扶養には50万円が上乗せされます。たとえば、配偶者を扶養している状況では、年収が350万円以上が推奨され、配偶者と一人の子を扶養している場合は、年収が400万円以上が基準とされます。

世帯年収の目安となるため、永住権を申請する外国人が主婦など無職で働いていない場合には、その配偶者の収入で世帯収入の目安を満たしていれば永住許可申請が可能です。

ただし、この年収基準は厳格なものではなく、年収基準未満でも育児や介護の休暇を取っていたり、リストラに遭遇したなどの特別な事情があれば、収入減少があったとしても認められる場合があります。

海外にいる両親を扶養している場合

特に留意すべき点は、海外にいる両親を扶養している場合です。海外への送金が記録として提出できない時は、脱税と見なされるリスクがあり、これが国益要件にも影響を及ぼす可能性があります。

経営管理ビザからの永住許可申請の場合

経営管理ビザからの永住許可申請の場合には、経営している会社の安定性や持続性も評価の対象となります。経営している会社の業績が不振である場合には、独立生計要件を満たしていないと判断される可能性があります。

2-3.永住が日本の利益になると認められること(国益要件)

法務省の永住許可に関するガイドライン(令和5年12月1日改訂)では、国益要件として以下の5つが挙げられています。

  • 引き続き10年以上日本に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
  • 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと
  • 公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。
  • 現在有しているビザについて、最長の在留期間で在留していること
  • 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。

以下、詳しく解説します。

引き続き10年以上日本に在留していること

原則として日本での在留期間が10年以上であり、そのうちの直近5年以上は「就労資格(技能実習及び特定技能1号を除く)」または「居住資格(活動制限の少ない身分または地位に基づく在留資格)」での在留が必要です。就労資格と居住資格の合算での10年以上在留でも構いません。

たとえば「留学生」の資格で6年「就労資格」で4年の計10年以上在留していたとしても「就労資格」での直近の在留期間が5年に満たないため、永住は認められません。

再入国許可又はみなし再入国許可で出国した場合

再入国許可やみなし再入国許可を取得して海外に出国した場合、その人の在留資格は引き続き継続しているものと見なされます。しかし、出張などで在留期間の大半を海外で過ごした場合は、日本に実質的な生活基盤がないと見なされる恐れがあります。

このような状況では、長期間の海外滞在の理由、家族関係、財産の状況などを通じて、日本が生活の基点であることを明確にし、将来にわたって日本での生活を続ける意向を主張する必要があります。海外出張の場合は、永住許可申請での添付書類として企業からの正式な出張辞令などをもらっておく必要があります。

罰金刑や懲役刑などを受けていないこと

懲役や罰金などに処されていないことが必要です。公共の利益を害するような行為がないことが求められます。これは善良な行動要件とも関連しています。居住者の過去および現在の在留記録を基に、将来にわたってそのような問題行動が起こり得ないかどうかが検討されます。

公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を履行していること

税金の未納がある場合も永住は認められません。国民健康保険料や年金の支払い義務、出入国管理などの報告義務についても、未納がないか調査されることがあります。これらの税金や社会保険料は、納期限内に支払われている必要があります。

永住権申請時に過去の未払い分を清算しても、適時に履行されていなかったとみなされることがあります。特に多いのが公的年金の未納です。このような場合は、2年間公的年金を支払い続けた上で改めて永住許可の申請を検討すべきです。

再度の申請にあたっては、支払い遅延に対する反省と将来的には期限内に支払うことを約束する内容を、申請者本人が直筆で記した書類を提出することで対応します。

現在有しているビザについて、最長の在留期間で在留していること

最長の滞在期間は5年と定められているビザ(技術・人文知識・国際業務、経営・管理、技能等の在留資格)については、当分の間は「在留期間3年」を持っていれば、5年のほかに、3年も最長の滞在期間として取り扱われています。

永住許可申請中に在留期限が到来する場合には、ビザの更新許可申請が必要

永住許可を申請している最中に現在のビザ(在留資格)の期限が迫ってくる場合は、現行のビザ(在留資格)で在留期間の更新を申請する必要があります。永住許可の申請が進行中であることが、在留期間の更新申請を免除される理由にはなりませんので、この点には注意が必要です。

さらに、在留期間の更新を行い、もし更新された在留期間が2年など、最大の在留期間(例えば5年や3年)に満たない場合、その条件では永住許可の基準の最長の在留期間を満たさなくなる可能性があるため、特に注意が必要です。

公衆衛生に対して悪影響を及ぼす可能性がないこと

感染症に罹患していないなど、公衆衛生に対する問題が存在しないことを指します。

これらの要件を満たせば「永住許可申請」の申請が可能です。

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3.永住権の取得条件「10年在留」に関する特例

永住権を得るためには、通常10年以上日本に滞在していることが必要です。ただし、特定の要件を満たす場合、10年間の滞在がなくても特例として永住権を申請することが可能です。この特例は、以下の5条件のどれかに当てはまる人が該当します。

  • 日本人または永住者の配偶者、子に該当する
  • 「定住者」資格を取得し5年以上在留している
  • 難民認定を受け5年以上在留している
  • 日本への貢献が認められかつ5年以上在留している
  • 高度人材外国人が永住許可申請をする場合

以下で、それぞれについて解説します。

3-1.日本人または永住者の配偶者・子に該当する

「日本人」や「永住者」「特別永住者(在日朝鮮人・韓国人・台湾人)」との結婚が3年以上続き、その間に実際の婚姻生活を営んでおり、日本に1年以上連続して滞在していれば、永住権の要件に当てはまります。また、日本人や永住者の実子等の場合は、日本に1年以上連続して滞在していれば、永住権の要件に当てはまります。

これらに該当する場合「素行善良要件」と「独立生計要件」は必要とされず、「国益要件」のみが求められます。また、配偶者自身は収入がない、又は少なくもよいですが、家族全体での年収は350万円以上などの一定世帯収入は求められます。なお「理由書」については要件とされていませんが、補足資料として役立つため提出することをおすすめします。

3-2.「定住者」資格を取得し5年以上在留している

「定住者」の在留資格を有して5年以上日本に滞在している場合、特例として永住権申請が可能です。「定住者」とは、特定の国からの難民や日系人など、人道的な理由で認定される在留資格を指します。

たとえば「日本人の配偶者等」の在留資格を有していた人が、日本人の配偶者の死亡や離婚などにより在留資格を「定住者」に変更した場合です。このケースでは「日本人の配偶者等」の在留期間を含めて5年以上であれば特例が適用されます。

3-3.難民認定を受け5年以上在留している

難民の認定を受けた外国人は、認定を受けてから5年以上継続して日本に在留していれば、永住権の申請が可能です。難民とは「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の一員」であり、政治的理由で迫害を受ける可能性があり自国を離れている人のことを指します。

難民が「永住権」を取得するためには「素行善良要件」と「独立生計要件」の要件が必要です。ただし「独立生計要件」が満たされていない場合でも法務大臣の裁量により永住許可が認められることがあります。

3-4.日本への貢献が認められかつ5年以上在留している

「外交・社会・経済・文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者」に該当する人が永住許可申請をする場合には、社会生活上問題なく5年以上の滞在で要件を満たすことが可能です。

ここでの5年以上の滞在は、断続的でよいとされています。分野としては「外交分野」「 経済・産業分野」「文化・芸術分野」「教育分野」「研究分野」「スポーツの分野」そのほかの分野として社会・福祉分野の貢献などがあります。

3-5.高度人材外国人が永住許可申請をする場合

高度人材外国人は、特定の専門知識や技術を有する外国人であり、ポイント制に基づく出入国管理の優遇措置が適用されます。

ポイントが70点以上の場合、3年以上日本に滞在している高度人材外国人は、10年以上の滞在要件を満たさなくても永住権を申請することが可能です。さらにポイントが80点以上の場合、永住権取得のための滞在期間は1年以上に短縮されます。

これらの優遇措置は「日本版高度外国人材グリーンカード」と呼ばれています。

4.外国人が永住権を取得するメリット

外国人が日本の永住資格を取得すると、在留資格の更新が不要になり、就業の際の職種制限もなくなるため、日本での生活がより自由になります。永住資格の取得による主なメリットは以下の4点です。

  • 在留期限がなくなる
  • 就労制限がなくなる
  • 社会的信用が得られる
  • 配偶者の死亡後も日本に在留できる

それぞれについて、詳しく解説します。

4-1.在留期限がなくなる

永住権を取得すれば更新申請の必要がなくなり、在留期限を気にすることなく生活できます。永住権以外の在留資格では、5年・3年・1年などの期限が設けられており、その期間を超えて日本に滞在するためには更新申請が必要です。

永住権を得ていれば、更新申請の度に多くの書類をそろえて入管に出向く手間が省け、更新申請が不許可になるといったリスクもなくなります。

永住権があっても、在留カードの更新は必要

永住ビザを持つ外国人も、在留カードの更新が必要です。全ての中長期在留者に与えられる在留カードには有効期限が設けられており、多くの中長期在留資格では、在留カードの有効期限がその在留期限と同じです。しかし、永住者には特定の在留期限はありませんが、在留カードの有効期間があり、7年間有効です(16歳未満の永住者の場合は、16歳の誕生日までが有効期間です)。

在留カードの有効期限が切れる前に更新手続きを行わないと、永住ビザ(在留資格)が無効となり、結果として不法滞在者とみなされるリスクがあるため、永住ビザ保持者は7年ごとの在留カードの更新を怠らないよう注意が必要です。

4-2.就労制限がなくなる

永住権を取得すると、就労時間、雇用形態、職種などを自由に選ぶことが可能です。一般の在留資格では就労に制限があります。たとえば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、外国料理のコックとして働くことや単純労働の職種での就労が許可されていません。

永住権を取得すればこれらの制限がなくなり、自由に事業を始めたり好きな職種についたりすることが可能です。

4-3.社会的信用が得られる

永住権であれば、住宅ローンや融資の審査、不動産の賃貸契約なども日本人と同等に扱われます。また永住権を持つことで、クレジットカードの作成や起業が比較的容易になるという利点もあります。

永住権を取得するためには「日本での長期的滞在」や「法令や納税義務の遵守」「経済的な安定性」などがクリアされていることを意味するため、永住権は他の在留資格に比べて社会的信用度が高いのです。

4-4.配偶者の死亡後も日本に在留できる

永住権を取得していれば、日本人の配偶者との離婚や死別があっても引き続き日本に滞在できます。「日本人の配偶者」の場合、日本人との結婚が続いている限り学歴や職歴、在留期間などの条件を満たさずに取得でき更新審査も厳しくありません。

ただし日本人の配偶者と離婚したり、死別したりした場合は、日本を出国するか「定住者」の在留資格に変更しなければなりません。永住権であれば、日本人の配偶者が亡くなったり離婚したりした場合でも、引き続き日本に滞在することが可能です。

4-5.外国籍を喪失せず、日本に永住できる

永住権を取得しても、もとの国籍は喪失しません。日本国籍を取得(帰化)した場合、元の国籍を放棄する必要があります。母国と日本への出入りが自由にできます。

5.外国人が永住権を取得するデメリット

永住権は、外国人が在留期間を制限されることなく永住でき、活動制限がないため職種や業種などの就労制限もありません。ただし「帰化」とは異なり、外国人として日本に永住する権利を有しているにすぎません。よって「​​在留カード」を所持し、長期間の出国では「再入国許可」を得る必要があります。

5-1.高度専門職の場合親の呼び寄せができなくなる

「高度専門職」の在留資格を持つ外国人は「親の帯同」を認められているものの、永住権を取得すると「親の帯同」の権利を失ってしまうおそれがあります。下記のケースでは一定の条件下で「高度外国人材またはその配偶者の親(養親を含む)」の入国・在留が許可されます。

  • 「高度外国人材またはその配偶者が、7歳未満の子(養子を含む)を育てる場合」
  • 「高度外国人材の妊娠中の配偶者または妊娠中の高度外国人材本人が介護等を必要とする場合」

そのため、親と一緒に在留している高度外国人材は、永住権を取得すると親との同伴が認められなくなる可能性もあるので注意が必要です。

5-2.帰化(日本国籍取得)と比べて参政権がない

永住権と帰化(日本国籍取得)は、それぞれ異なる権利と義務を持つものです。永住権を持つ外国人は、在留期間や就労制限などに制約がなく、日本での生活が自由になります。しかし永住権者はあくまで外国人であり、日本の法律に基づく参政権を持つことはできません。(地方自治体によっては住民投票権を認める場合もあります。)

一方で帰化を選択して日本国籍を取得した場合、日本国民としてのすべての権利と義務を享受でき、これには参政権も含まれます。つまり選挙で投票したり、公職に立候補したりする権利は、帰化して日本国籍を取得した人だけが有します。この点が永住権と帰化の主な違いです。

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6.「永住許可申請」の流れと必要書類

日本での永住権を取得するためには、一定の手続きと必要書類の提出が求められます。しかし永住許可の申請は、複雑で煩雑な手続きであるため、申請前に正しい知識を身につけることが大切です。

またこれらのプロセスは、申請者の在留許可の種類や在留期間、申請者の個々の状況により異なる場合があります。この記事では、永住許可申請の基本的な流れと、申請に必要な書類、申請取次者の条件について詳しく解説します。

6-1.永住許可申請手続きの流れ

書類をそろえる時間や手間がかかり、審査が想定より長引く可能性もあります。まずは永住権を取得できるまでの大まかな流れをつかみましょう。

申請に必要な書類を取得、作成する

まず、必要な書類を確実に集めて申請書類を作成していきます。

永住権を取得するには、現在の在留資格から「永住者」への変更申請をする必要があります。まずは申請に必要な書類を把握しましょう。主な必要書類は後の章で解説します。

必要書類の中には本国から取り寄せるものもあり、取得に時間がかかります。そのため、余裕を持った準備が必要です。審査にあたって電話での確認が行われる場合もありますが、基本的には必要書類の情報のみから審査されます。必要事項が過不足なく伝わるように、書類をしっかりと準備しなければなりません。

審査で不利になる可能性がある場合は「理由書」を作成し、審査において十分な理解を得られるよう明確に記載することが重要です。

管轄の入国管理局に申請する

収集して作成した書類を携え、申請者の居住地を管轄する出入国在留管理局にて永住申請を行います。書類に不備があると申請受理されない可能性があるため、申請前にしっかりと確認を行いましょう。

原則的に本人が申請を行いますが、本人の法定代理人や、一定の条件を満たした取次者も申請可能です。詳しい条件は以下で確認してみてください。

参考:永住許可申請 | 出入国在留管理庁

審査

書類を提出したら、入国管理局による審査に入ります。標準処理期間は通常のビザよりも長い4か月とされていますが、一概にはいえません審査期間は2023年の時点で通常8か月から10か月とされています。審査期間中には、入管から追加の資料や状況説明書の提出を求められることがあります。出入国在留管理局から連絡があった際には、迅速に対応しましょう

ビザの在留期限が近い場合の永住許可申請は注意が必要

永住許可の申請が進行中にも関わらず在留資格の有効期限が迫っている場合は、現在持っている在留資格での期間延長申請が必要です。永住許可を申請している状態であっても、在留期間の更新を怠ってはならない点に留意してください。

申請してから結果が通知されないうちに、在留期間が満了してしまうことも考えられます。期限が近いときは、以下のいずれかの方法を取るとよいでしょう。

  • 永住許可申請と同時にビザの更新手続きも行う
  • あらかじめビザの更新を行ってから永住権の申請を行う

永住許可の審査中に在留期間の更新を行い、その更新された期間が1年など、最大許可される期間(例えば5年や3年)に満たない場合、永住許可の条件を充足していないとみなされる可能性があるため、この点にも特に注意が必要です

通知

審査結果の通知は郵送で届きます。許可の場合は、通知に記載のある持ち物を持参して入国管理局に出向き、永住権の在留カードを受け取りましょう。不許可の通知書には理由が記載されており、より具体的な理由を知りたい場合は一度のみ説明を受けられます。理由をすべて教えてもらえるとは限りませんが、聞いた内容を参考にして再度申請することも可能です。

6-2.永住許可申請の必要書類

現在有している在留資格により申請資料は異なり、4つのカテゴリーそれぞれに別れます。

  • 「申請人の方が、日本人の配偶者、永住者の配偶者、特別永住者の配偶者又はその実子等である場合」
  • 「申請人の方が、「定住者」の在留資格である場合」
  • 「申請人の方が、就労関係の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」、「技能」など)及び「家族滞在」の在留資格である場合」
  • 「申請人の方が、「高度人材外国人」であるとして永住許可申請を行う場合」

それぞれに共通した書類は以下の通りです。

  • 永住許可申請書1通
  • 写真(縦4cm×横3cm)1葉
  • 申請人のパスポート(旅券)又は在留資格証明書 提示
  • 申請人の在留カード 提示
  • 申請人を含む家族全員(世帯)の住民票1通
  • 申請人及び申請人を扶養する方の公的年金及び公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料
  • 身元保証に関する資料(身元保証書、身元保証人の身分証明書など)
  • 了解書 1通

現在保有している在留資格により、必要な申請書類は異なります。また、個々の状況によっても申請書類が変わることもあるため、個別に確認を要します。

参考:出入国在留管理庁「永住許可申請」

6-3.申請取次者の条件

申請人の法定代理人や以下の者は、本人に代わって申請できます。

(1)地方出入国在留管理局長から申請等取次者として認定され、申請人から依頼を受けた以下の者

  • 申請人が経営する機関や雇用先の職員
  • 申請人が研修や教育を受けている機関の職員
  • 外国人が技能や技術、知識を習得する活動を監督する団体
  • 外国人のスムーズな受け入れを目的とする公益法人の職員

(2)申請人から依頼を受けた「地方出入国在留管理局長に届け出た弁護士または行政書士」

(3)申請人が16歳未満か病気等で出頭できないときは、親族や同居者などの地方出入国在留管理局長が認める者

企業や団体の場合は(1)に該当し、本人に代わって申請できます。

7.永住権が取り消されるケース

犯罪を犯し一定の処罰に処せられた場合はもちろんのこと、居住地登録など義務付けられている手続きを怠った場合や、在留カードの更新をしなかった場合には永住許可の取り消しになる場合があります。

そして忘れてはならないのが、日本を出国する際の「再入国許可」の申請です。ここでは「再入国許可」と「虚偽申告」について解説します。

7-1.再入国許可を得ず出国した

何の手続きもせずに日本を出国すると、その時点で在留資格や在留期間は失効します。ただし、事前に再入国許可申請を行えば、出国から再入国までのあいだ在留資格は継続されます。つまり再入国許可申請は、再入国時にあらためて在留資格申請する手間を省くための手続きです。

1年以内に帰国するのが確実なのであれば「みなし再入国許可」を利用できます。これは、1年以内に帰国することを条件に、再入国許可申請をせずに再入国できる制度です。ただし、1年以内に帰国しなければなりません。

参考:出入国在留管理庁「再入国許可(入管法第26条)」

7-2.虚偽の申告をした

申請に際して提出した書類に不正や虚偽があると、永住許可取り消しの可能性があります。永住許可の申請時に不正や虚偽がなくても、永住許可以前の申請で不正や虚偽があった場合も永住許可取り消しの対象です。

また、学歴や経歴の詐称が発覚した場合には、永住権の取り消しのみならず「在留資格等不正取得罪」に問われるおそれもあります。

8.まとめ

本記事では、永住許可申請の要件と注意点についてご紹介しました。要点をまとめると、以下のようになります。

✓「永住権」は、日本国籍を持たずして在留期間の制限なしに日本に滞在できる権利を指し、「帰化」や「特別永住者」とは異なる在留資格である

永住権を取得するためには「素行善良要件」「独立生計要件」「国益要件」の3要件が必要である

✓永住権を得るためには、通常10年以上日本に滞在している必要があるものの、10年間でなくても永住権を取得できる特例がある

永住権の「10年在留」に関する特例は、日本人との婚姻や難民認定、高度人材外国人などが該当する

永住権を取得すれば、在留期限や就労制限がなくなり、社会的信用が得られるといったメリットがある

「高度専門職」の在留資格を持つ外国人は「親の帯同」を認められているが、永住権を取得する際「親の帯同」の権利を失ってしまうおそれがあるので注意が必要である

永住権を取得していたとしても、出国する際には「再入国許可」に留意しておく必要がある

✓ 永住権の標準処理期間は通常のビザよりも長い4か月とされていますが、一概にはいえず、8か月から10か月かかることもある

永住許可申請は日本に滞在する外国人にとっての最終目標とも言える資格です。許可が下りれば、これまでの面倒な更新手続きは必要なくなり、就労制限もなく、日本に無期限に滞在することが可能となります。ただし法律やガイドラインだけでなく、実務上の要件も存在するため、他の在留許可申請と比較して難易度が高いのは確かです。

永住許可申請に向けた準備を一人で進めるのが難しい場合は、ノウハウを有している専門家に頼むのも一つの方法です。

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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