2023/7/6 2023/7/6

外国人の法人登記

外国人も日本で会社設立できる!必要書類と取得方法、登記の流れ

外国人も日本で会社設立が可能です。しかし、必要書類が少々異なることはあります。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

✓ 国籍に関係なく会社設立の方法は同じ

✓ 外国人が経営者・管理者になるには、「経営・管理ビザ」が必要なことがある

✓ 印鑑証明書がないときはサイン証明書で代替できる

✓ 出資金を外国の銀行に払い込むときは、日本国内の支店に限られる

本記事では、外国人が会社を設立するときの方法や必要書類についてまとめました。外国語の書類を提出するときのルールについても紹介します。

手続きの流れや必要書類を事前に知っておくことで、スムーズな会社設立が可能になります。ぜひご覧ください。

1.外国人・日本人の別なく会社設立方法は同じ

会社設立の方法は、代表者の国籍と無関係です。ただし、在留資格の種類によっては、会社を設立しても日本国内で経営者になれないことがあります。会社を設立し、なおかつ経営するために必要な条件について見ていきましょう。

1-1.外国人が会社設立する条件

以下の資格を有する外国人は、会社設立や経営者になることに対して一切制限を受けません。

  • 日本人の配偶者等
  • 永住者
  • 永住者の配偶者等
  • 定住者

 

会社の形態も制限を受けないため、日本人と同様に、好きな形態で法人設立が可能です。

一方、上記のいずれにも該当しない場合も、会社設立は可能です。しかし「経営・管理ビザ」以外の在留資格で日本に滞在している場合は、日本国内において経営者にはなれません。また、支店長や取締役などの管理者として日本国内で会社にかかわる場合でも、「経営・管理ビザ」を取得することが必要です。

1-2.会社経営が可能な「経営・管理ビザ」の取得方法

会社の経営に必要な在留資格を得ていない場合は、「経営・管理ビザ」を取得します。「経営・管理ビザ」を取得するためには、3つの条件を満たしたうえで、入国管理局に「経営・管理ビザ」の申請をおこなうことが必要です。

  • 事業所を確保すること
  • 資本金が500万円以上あること、もしくは2名以上の常勤従業員を雇用すること
  • 事業に安定性と継続性があることを示すこと

 

通常は、「経営・管理ビザ」を取得する前に会社を設立しておきます。この場合の会社は、バーチャルではなくリアルであることが求められます。また、自宅と同一住所の場合も、事業所とは認められないことがあるため注意が必要です。

事業所を確保したうえで、資本金として500万円以上を出資していることが求められます。資本金が500万円に満たないときは、常勤の従業員を2名以上雇用することでも代替できます。ただし、従業員は以下のいずれかの資格を有しなくてはいけません。

  • 日本人
  • 日本人の配偶者等
  • 永住者
  • 永住者の配偶者等
  • 定住者

 

「経営・管理ビザ」の申請手続きをすると、事業に安定性と継続性があることも確認されます。たとえば事業所を短期契約で借りているときは、継続性がないと判断されるため「経営・管理ビザ」を取得できないかもしれません。また、事業計画書が妥当性の低いものであるときも、安定性・継続性に問題があると判断される恐れがあります。

1-3.管理者として働く場合の「経営・管理ビザ」の取得方法

外国人が会社経営者ではなく、取締役、部長や支店長など出資をしていない雇われる形での管理者として採用する場合においても、「経営・管理ビザ」は必要です。事業の管理者として従事する場合には経営・管理ビザの下記要件に加えて、

  • 事業所を確保すること
  • 資本金が500万円以上あること、もしくは2名以上の常勤従業員を雇用すること
  • 事業に安定性と継続性があることを示すこと

 

次の二つの要件を満たす必要があります。

  • 経営・管理において3年以上の実務経験がある
  • 同業務に従事する他者と同程度の給与を受け取る

 

1-3-1.経営・管理において3年以上の実務経験がある

事業の経営や管理を3年以上おこなった経験があることが必要です。なお、大学院で経営や管理を専攻した場合は、その期間も含められます。

1-3-2.同業務に従事する他者と同程度の給与を受け取る

同じ業務をおこなう日本人と同程度、あるいはそれ以上の給与を受け取っていることも必要です。「経営・管理ビザ」の申請の際には、給与明細書などの給与がわかる書類も提出します。

2.外国人が会社設立する際の必要書類

会社設立の必要書類を紹介します。いずれも日本人・外国人ともに同じ書類ですが、代替書類を提出できるものもあります。

2-1.登記申請書

会社設立登記の申請書は日本語でも外国語でも問題ありません。ただし、外国語で作成するときは、日本語訳をつけることが必要です。

2-2.定款

会社のルールや規則を「定款」としてまとめます。株式会社を設立するときは、定款を公証人に認証してもらったうえで提出します。

2-3.資本金払込証明書

資本金を払い込み、金融機関で「資本金払込証明書」を発行してもらいます。なお、資本金を払い込む金融機関は、以下のいずれかでなくてはいけません。

  • 日本の銀行
  • 外国の銀行の日本国内支店

 

会社の発起人の口座が日本の銀行のものでないときは、日本の銀行に口座を持つ協力者に取締役になってもらうことも検討できます。また、海外から上記の銀行に資本金を払い込むときは、レートを証明する書類も必要です。

2-4.就任承諾書

「就任承諾書」とは、会社の取締役に就任したことを示す書類です。ただし、発起人が会社を設立するときは就任承諾書の提出は不要です。

2-5.発起人・取締役の印鑑証明書かサイン証明書

発起人と取締役の印鑑証明書が必要です。印鑑証明書がないときは、「サイン証明書」を提出します。サイン証明書は大使館で取得できます。

2-6.代表社印の印鑑届書

代表社印の「印鑑届書」を提出します。印鑑届書は代表社印を法務局に登録することで発行できます。

3.外国人が会社設立する手続きの流れ

会社設立の流れを紹介します。なお、設立の流れも、日本人・外国人の区別はありません。

3-1.基本事項と会社印の作成

会社の基本事項(事業内容、資本金、事業所など)を決めます。また、法務局に届け出る会社印も作成しておきます

3-2.定款作成

基本事項を定款にまとめ、株式会社の場合は公証役場に提出し認証を受けます。定款のフォームは決まっているため、司法書士などの専門家に依頼するとスムーズに作成できます。

3-3.資本金の払込

資本金を日本国内の銀行に払い込みます。この際、忘れずに「資本金払込証明書」を作成します。

3-4.会社設立登記

会社設立の必要書類をすべてまとめて、法務局で会社設立登記をおこないます。株式会社の場合、資本金額の0.7%が15万円未満のときは15万円、資本金額の0.7%が15万円以上のときは資本金額の0.7%を納付します。

参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」

3-5.経営・管理ビザの取得

会社を設立後、経営に必要な「経営・管理ビザ」を取得するため、入国管理局へ申請を行います。経営・管理ビザが許可されれば、一連の手続きは完了です。

4.まとめ

本記事では、外国人が会社を設立するときに知っておきたい事柄について解説しました。

内容をまとめると、以下のとおりです。

✓ 国籍に関係なく会社設立の方法は同じ

✓ 外国人が経営者・管理者になるには、「経営・管理ビザ」が必要なことがある

✓ 印鑑証明書がないときはサイン証明書で代替できる

✓ 出資金を外国の銀行に払い込むときは、日本国内の支店に限られる

外国人も会社を設立できますが、経営者になるためには在留資格が限られます。また、印鑑証明書が準備できないときはサイン証明書で代替できるため、日本に滞在していない方も会社設立が可能です。

手続きが難しいときや日本に居住していない場合などは、信頼できる人物や代行業者を選び、手続きを代行してもらうのもひとつの方法です。

この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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