2023/8/1 2024/4/22

外国人の法人登記

外国会社の日本における代表者とは?日本法人との違い、要件や登記方法を詳しく解説

外国会社が日本で事業を始めるときは、日本での活動の代表者を決めなくてはいけません。ただし、代表者が誰でもよいわけではありません。法的条件を満たす人物を代表者にする必要があります。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

✓ 外国会社が日本で事業を行うときは、日本における代表者を定める必要がある

✓ 代表者のうち1人以上は、日本国内に住所を有する必要がある

✓ 日本における代表者は、個人でも法人でも構わない

✓ 原則として、代表者が法人登記をおこなう

本記事では、外国会社が日本で活動を始めるために必要な手続きについてまとめました。日本での事業活動の代表者や日本拠点のルールについても紹介します。

日本での活動の条件を知っておくことで、スムーズな事業開始が可能になります。ぜひご覧ください。

1.外国の会社が日本事業を始めるには?

外国の会社が日本で事業を行う手段としては、子会社設立といった形で事業を行う方法と、日本国内で会社を設立せずに、日本に営業拠点を設けて、外国の会社そのものが直接ビジネスを行う方法があります。

外国会社とは、日本以外の国で設立された、その国の法律に基づいて運営されている法人のことを指します。外国会社は、その設立国の商法や法律に従って運営され、外国会社そのものが直接ビジネスを日本国内で行うには、日本における代表者を定めなければなりません。

ここでは、外国会社が日本でビジネスをするにあたり必要なポイントを詳しく解説します。

2.外国会社の日本における代表者とは

日本における代表者とは、外国会社の業務を日本国内で代表し、その権限を行使する責任者のことを指します。代表者は外国会社の名称や契約に署名する権限を持ち、日本国内での取引や法的手続きを行います。

2-1. 日本における代表者の資格

外国会社の日本における代表者には、日本国内に住所を有する個人が指定されることが一般的です。日本の市民権を持っている必要はなく、外国籍の方でも代表者になることができます。ただし、代表者は法的責任を負う重要なポジションであるため、信頼性と適格性が求められます。

2-3.日本における代表者の役割

日本における代表者の主な役割は以下の通りです

  • 外国会社の日本国内での業務全般を代行し、その権限を持つ
  • 日本の法律に基づく契約や法的手続きに署名・調印する
  • 外国本社とのコミュニケーションを円滑に行い、業務の調整をする
  • 法的な義務を遵守し、会社の利益を保護する

外国会社の業務を日本国内で代表し、その権限を行使する責任者として、会社の利益を守るために適切な対応を行う必要があります。

日本国内の複数拠点ごとに代表者を定めた場合

日本国内に複数拠点を有する外国会社が、拠点ごとに代表者を定めた場合においても、対外的には、各拠点の日本における代表者は、日本における業務に関する一切の裁判上、裁判外の権限を有します。

たとえ、内部の規定により各代表者の権限に制限を加えた場合でも、制限の事実を知らない第三者に対して制限があることを主張できません。

2-3.日本における代表者の選定、変更方法

外国会社は、本国の会社法や外国会社の定款など定められたルールに基づいて日本における代表者を選定、変更します。

外国会社は、選任、変更したい代表者の氏名、住所、職務などを定めます。その内容を後述する宣誓供述書にまとめ、法務局に対して外国会社の登記において提出します。

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3.外国会社が日本国内の事業所設置するための要件

外国会社が日本において事業を開始するときは、次の3つの要件を満たすことが求められます。

  • 日本における代表者を定める
  • 外国会社の登記を申請する
  • 財務状況を開示する

各要件と日本における事業所の条件について説明します。

3-1.日本における代表者を定め

日本で事業活動をするためには、日本における代表者が1人以上必要です。この代表者は個人でも法人でも構いません。また、弁護士などの専門家を選定することもできます。

原則として、日本における代表者が外国会社の登記の申請します。ただし、日本における代表者による法人登記の申請が難しければ司法書士に依頼して代理申請してもらうこともできます。

日本における営業所を定めることが一般的

外国会社は、営業所を日本国内に設置しなくても、外国会社の登記をすればビジネスを始められます。ですが、一般的には、ビジネスを行うため、日本国内で事業活動をするための事業所を定め、設置するケースがほとんどです。

3-2.外国会社の登記を申請すること

外国会社の登記をせずに、日本国内で事業活動はできません。日本での事業を開始する前に、外国会社の登記を申請します。

外国会社が日本国内に営業所を設けない場合、登記は日本の代表者の住所を基準に行われます。具体的には、日本における代表者の住所地において外国会社の登記が行われます。一方、外国会社が日本国内に営業所を設ける場合、登記はその営業所の住所を基準に行われます。具体的には、日本国内の営業所の住所地において、外国会社の登記を行うこととなります。

なお後述しますが、法人登記はオンラインでも申請できます。

3-3.財務状況を開示する

日本国内で事業活動をするときは、外国会社の形態が日本における同種の会社又は最も類似する会社が株式会社である場合には、定時株主総会における計算書類の承認と同種の手続き又はこれに類似する手続きの終結後遅滞なく、貸借対照表に相当するものを開示する必要があります。

その場合の登記の際には貸借対照表を開示する方法(ウェブページのアドレス等)を示すことが求められるため、準備しておきましょう。

4.外国会社の日本における代表者が満たすべき要件

外国会社が日本で活動するときは、日本における代表者を定めなくてはいけません。代表者は以下の条件を満たしていることが求められます。

  • 少なくとも1人以上は日本国内に住所があること
  • 個人・法人は問われない

それぞれの条件について解説します。

4-1.少なくとも1人以上は日本国内に住所があること

日本で事業をおこなう際の代表者を決める必要があります。代表者の人数については、とくに決まりはありません。

代表者のうち少なくとも1人以上は、日本国内に住所が必要です。日本に居住している必要はありませんが、住所を有することが条件となります。

4-2.個人・法人は問われない

日本における代表者は、個人・法人を問われません。弁護士など専門家が、日本における代表者を務めるケースもあります。

法人の場合の住所要件

法人が日本における代表者を務める場合は、次の要件を満たすことが必要です。

  • 日本に本店もしくは主たる事業所がある株式会社、持分会社(合同会社等)、一般社団法人または一般財団法人
  • 日本において登記された外国会社
  • 日本において登記されていない外国会社:代表者が日本に住所がなければ、認められません

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5.外国会社の日本における代表者の登記手続き

外国会社が日本で事業活動を開始するときは、法人登記が必要です。法人登記は、オンラインと書面のいずれでも可能です。

5-1.登記事項

外国会社の法人登記では、以下の事項を登録します。

  • 外国会社の設立の準拠法
  • 日本における代表者の氏名と住所
  • 日本の同種あるいは類似会社が株式会社のときは準拠法の規定による公告方法
  • 公告方法として、貸借対照表を電磁的方法により開示するときは貸借対照表に相当する情報が掲載されているウェブページのアドレス
  • 公告方法についての定め(電子公告の場合はWebページのアドレス)

5-2.申請人

法人登記の申請は、本国の代表者ではなく原則として日本での代表者が実施します。ただし、代表者が手続きをできないときは、司法書士などの代理人でも問題ありません。

5-3.提出書類

外国会社の登記では、次の書類を提出します。

  • 本店の存在を示す書面
  • 日本での活動の代表者の資格を示す書面
  • 外国会社の定款に該当する書類の性質を示す書面
  • 公告方法の定めを示す書面
  • 代理人により登記手続きをするときは権限を示す書面

いずれの書類も、外国会社の本国の管轄官庁あるいは在日大使館又は領事の官憲認証が必要です。

宣誓供述書の作成

一般的には、本国の代表者又は日本における代表者が宣誓供述書を作成して提出します。

ただし、その外国会社の設立準拠法において、従業員等が外国会社の登記における登記事項を証明する権限を有する場合には、その設立準拠法の訳文等をあわせて提出することにより受理される可能性があります。

宣誓供述書の作成機関

外国会社の登記で提出する書面は、本国の管轄官庁又は日本における領事その他権限がある官憲の認証を受けた書面が必要です(商登法129条2項)。

具体的には、下記機関にて宣誓供述書を作成する必要があります。

  • 本国の管轄官庁(外国会社の本国(設立準拠法国)での登記・登録を担当する官庁)
  • 本国の公証人
  • 在日大使館の領事

なお、外国会社の登記に必要な宣誓供述書については、代表者の居住国の本国大使館領事等の認証は認められません。本国又は日本国内の在日大使館での手続きが必要となります。

6.まとめ

本記事では、外国会社が日本で活動を始める前に知っておきたい事柄について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。

✓ 外国会社が日本で事業をおこなうときは、日本における代表者を定める必要がある

✓ 日本における代表者のうち1人以上は、日本国内に住所を有する必要がある

✓ 日本における代表者は、個人でも法人でも構わない

✓ 原則として、日本における代表者が法人登記をおこなう

日本における代表者のうち1人以上は日本に住所が必要ですが、日本で事業をおこなうための拠点は日本国内になくても構いません。ただし、日本で事業活動をするためには、法人登記をすることと財務状況を開示することが求められます。

また、日本における代表者は、個人だけでなく法人でも問題ありません。日本国内での手続きをスムーズに進めるために、法律事務所などが日本における代表者になることもあります。手続きなどで迷ったときは、外国会社の日本事業に詳しい司法書士事務所などに相談してみましょう。

この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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