2023/10/2
2024/5/24
外国人ビザ
経営管理ビザの更新とは?条件と必要書類、在留期間延長のコツを解説
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数あるビザの中でも、審査が厳しいと言われているのが経営管理ビザです。外国人が出資し日本で会社を設立した後に最初に取得する経営管理ビザの在留期間が1年が一般的です。そのため、ビザ更新を見据えて経営を進めておかないと、在留期間が短くなったり許可が下りなくなってしまったりすることがあります。
今回の記事のポイントは以下のとおりです。
✓経営管理ビザの在留期間は「3ヶ月」「4ヶ月」「6ヶ月」「1年」「3年」「5年」の6種類
✓3年の在留期間が認められると次に永住ビザ申請がみえてくる ✓経営管理ビザは他のビザに比べて更新時の審査が厳しい ✓経営管理ビザ更新における条件は3つある(1.申請者個人が届出義務等を適正に行っている2.事業者(会社)の義務を履行している3.安定的な事業継続が見込まれる) ✓経営管理ビザ更新に必要となる書類は状況によって異なる ✓直近2年間の事業の安定性や従業員雇用の有無が経営管理ビザ3年取得の目安となる ✓経営管理ビザ3年を所得するために更新理由書を提出し、書き方を工夫するのが重要 |
本記事では、経営管理ビザの更新の注意点と1年から3年への在留期間延長を見据えてすべきことをまとめました。長期の在留期間を認められるために知っておきたいポイントも解説しています。
経営管理ビザの審査要件を知り、計画的に準備を進められるようにしましょう。
1.外国人の経営管理ビザ更新とは
経営管理ビザの在留期間は「3ヶ月または4ヶ月」「6ヶ月」「1年」「3年」「5年」の5種類に分けられます。初めて経営管理ビザを取得した場合の在留期間は、1年が一般的です。
経営している会社の決算内容は、経営管理ビザの更新に大きな影響を与える要素だといえるでしょう。一定期間安定して黒字経営ができている場合は、3年以上の在留期間が付与される可能性が高くなります。
経営管理ビザの更新の結果はそのときの経営状況に左右されてしまうため、できるだけ長期の在留期間を獲得し、永住ビザの申請を準備するのも手です。
4か月の経営管理ビザ(スタートアップビザ)もある
日本で事業を展開したいと考えている海外在住の外国人起業家にとって、俗にスターアップビザといわれている「4ヶ月の経営管理ビザ」もあります。このビザは、日本の銀行口座への資本金入金や事業所賃貸借契約が不要など、ビザ取得前での資金確保リスクを負うことなく、起業準備ができます。
4か月の経営管理ビザの期限内に、会社設立手続きを完了させ、1年間の経営管理ビザへの更新手続きを行う形になります。
2.経営管理ビザ更新時における条件
他のビザと比較して経営管理ビザの更新が難しいと言われているのは、取得の際と同レベルの条件が求められる点にあります。経営管理ビザ更新における主な条件は、次の3つです。
- 申請者の届出義務等を適正に行っている
- 事業者の義務を履行している
- 安定的な事業継続が見込まれる
各条件の内容を確認し、経営管理ビザの更新に備えましょう。
2-1.申請者個人が届出義務等を適正に行っている
申請者がビザの更新や取得を希望する場合、その前提として履行しなければならない義務がいくつか存在します。その中で、注意が必要なのが各種届出義務や納税義務の適正な遂行です。
各種届出義務の履行
当然のことながら、外国人として日本に滞在する際、申請者は入国管理法上の届出義務を適切に遵守する必要があります。これには、例えば、新たに日本に上陸した後の住所の登録や、会社や代表取締役の住所が変わった場合の変更手続きなどが含まれます。
申請者個人の納税
申請者が納税義務を正しく履行しているかは、ビザの審査においても非常に大きな要因となります。ここでいう納税義務とは、会社や法人としての税金だけではなく、申請者自身の所得に対する税金も含まれる点がポイントです。万が一、不注意や誤解から納税を怠った場合、それが後のビザの更新時に大きな障壁となる可能性があるのです。
2-2.事業者(会社)の義務を履行している
経営管理ビザの更新において、申請者の個人的な条件だけでなく、事業者(会社)としての責任や義務が適切に遵守されているかも審査の大きなポイントとなります。
事業所の設置と独立性
ビザ取得者は適切な独立した事業所を確保することが必要です。ここで言う「適切」とは、一時的な契約や仮設の場所ではなく、恒常的に利用される場所を意味します。前回のビザ取得または更新時と同じ事業所であれば特に問題はありませんが、事務所が移転している場合は、新事務所の独立性に関する審査を受ける必要があります。一般的に必要となる書類に追加して、賃貸契約書と平面図、新事務所の写真などの提出を忘れないようにしましょう。事務所の賃貸借契約は会社名義に変更をしておき、家賃は振込など必ず証拠が残る方法で支払うようにしてください。
会社の税務と納税状況
事業者は、日本の税制に基づき、必要な税金を適時・適切に納めることが求められます。これには、法人税、所得税、地方税などが含まれるため、申告や納税の証明書を整備しておくことが重要です。
従業員の社会保険等
従業員を雇用している場合、それぞれの社会保険への適切な加入が求められます。これは正規・非正規の区別なく必要です。また、労働基準法や健康保険、厚生年金などの関連法律に準拠し、従業員の福利厚生を確保することが必須となります。
特に、「経営・管理」ビザを持つ外国人は、自らの事業の税務だけでなく、会社としての義務も適切に履行する必要があります。また、一人会社であっても、社会保険の適切な加入が求められるので注意が必要です。特に外国人従業員の採用に際しては、社会保険労務士とのコンサルティングを検討すると、スムーズな手続きが期待できます。
2-3.安定的な事業継続が見込まれる
最後に忘れてはいけない重要な要件として、事業の安定性があります。運営している会社が黒字決算で一定の売上を継続している場合は、過剰に心配する必要はないでしょう。
経営管理ビザの更新を考える際、最も注目されるのは、外国人が経営する事業の財務状態です。この点では、損益計算書や貸借対照表をもとに、その事業の安定性や持続性が評価されます。ただし、入国管理局は経営管理ビザの更新の判断に際して、一年度(初年度)の決算だけを重要視するわけではありません。実際、事業の特性上、設立後の最初の年度で赤字になることは珍しくありません。そのため、決算書の内容から直近の売上高、債務超過の状況や欠損金の有無などを判断基準として審査されます。
一定の売上
売上の存在は事業が継続している明確な証拠といえます。しかし、売上が300万円以下など、事業に見合った売上がないななどの場合には、事業の実体の確認が求められます。このような状況では、過去1年の事業報告や、今後3年間の予測に基づいた事業計画書を提出することが推奨されます。
売上総利益(粗利益)
売上総利益が2期続けて計上されていない場合、事業をしているのか、という継続性に問題がでます。売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いた利益(粗利益)を指します。これがマイナスとなる状態では、時点で、事業が厳しい状態にあるとみなされ、更新は難しくなります。
したがって、売上総利益を計上するための明確な経営計画が存在しない場合、経営管理ビザの更新は困難になり得るので、慎重な対応が求められます。
債務超過
貸借対照表で「純資産」がマイナス表示になっている場合、その企業が債務超過状態にあると判断されます。一度の赤字決算は更新を拒否される原因とはなりませんが、その背後にある事情や理由、そして今後の見通しは考慮されます。
しかし、専門家からの意見書や具体的な事業計画書を提供することで、事業の継続性を示すことができます。このような場合、事業の状態を正確に把握し、改善策を専門家と共に策定することが求められます。
なお、2期連続して債務超過の状態が続いてしまうような場合には、事業の継続性がないものと判断されてしまうことが多いので注意が必要です。
2-4.経営管理ビザの更新時のその他の注意点
経営管理ビザ更新時に漏れやすい、注意点は次の通りです。更新前に変更等をしておきましょう。
会社名義の銀行口座で資金を管理する
会社名義の銀行口座をつくり、その口座で事業に関する金銭を管理してください。もし、1期目で銀行口座を作れなかった場合には、社長個人の口座を生活費の口座と分けて事業用口座として事業用資金を管理管理してください。
会社登記上の本店住所地と代表取締役の住所を最新の住所にしておく
会社の本店住所や代表取締役の在留カード上の住所が会社登記上の住所と異なっている場合には、事前に変更登記をしておきます。
事業活動に必要な許認可は会社名義で取得しておく
不動産業、人材派遣、古物販売などの許認可事業を行う場合には、必要な許認可を全て会社名義で取得しなければなりません。
3.経営管理ビザ更新時の必要書類
経営管理ビザの更新をスムーズに進めるためには、必要となる書類を事前に確認しておくことが重要です。経営管理ビザは、所属機関の違いによってカテゴリー1から4に分けられます。
今回は一般的な「カテゴリー3」の場合を例に、必要書類を解説します。基本書類だけではなく、ケース別に当てはまる場合に提出すべき書類の内容や注意点を知っておきましょう。
3-1.一般的な必要書類
カテゴリー3における必要書類は、以下のとおりです。
- 在留期間更新許可申請書
- 顔写真
- パスポート及び在留カード
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 直近年度の決算文書の写し
- 住民税の課税(または非課税)証明書及び納税証明書
直近年度の決算文書とは、具体的には損益計算書・貸借対照表・製造原価報告書・株主資本等変動計算書・販売費及び一般管理費の明細などが該当します。
3-2.各ケース別の提出書類
基本書類のほかに、以下のケースに当てはまる場合は書類を追加する必要があります。
- 事務所を移転した場合
- 役員報酬を上げた場合
- 従業員が増えた場合
各ケースの具体的な必要書類と注意点などを解説します。
事務所を移転した場合
経営管理ビザの取得や更新後に事務所を移転した場合は、あらためて事務所が要件を満たしているかどうかの審査を受ける必要があります。提出すべき書類は、次のとおりです。
- 本店移転登記後の登記簿謄本
- 新事業所の賃貸借契約書
- 写真
- 平面図
また、事務所移転後は速やかに本店移転登記をおこない、2週間以内に入管に届け出るのを忘れないようにしましょう。
役員報酬を上げた場合
役員報酬は、会社の経営状態を判断するための1つの材料となります。経営を早く軌道に乗せたいあまりに役員報酬を下げてしまうと、問題なく日本での生活が送れているのか怪しまれてしまう恐れがあります。
経営管理ビザの更新において不利になる可能性があるため、役員報酬は月額20万円以上を目安にしておくとよいでしょう。反対に役員報酬を挙げた場合は、会社に余裕があることをアピールする手段となり得ます。
株主総会議事録を提出し、経営管理ビザの更新を有利に進めましょう。
従業員が増えた場合
飲食店やネイルサロンのような店舗系ビジネスでは、実際に料理をしたり施術をしたりする従業員を確保する必要があります。経営管理ビザの更新において、従業員の確保が難しくなったケースでは、不許可になってしまう可能性が高いです。
一方で従業員が増えた場合は、経営が安定していることを示す証となります。ビザを更新する際には忘れずに関連資料を提出するようにしましょう。
提出すべき書類は、以下のとおりです。
- 従業員との雇用契約書
- 全従業員分の源泉納付書(税務署受付印のあるもの)
- 社会保険に加入していることの証明(社会保険料通知書など)
4.経営管理ビザ「3年」が認められるコツとは
経営管理ビザで3年または5年の在留期間を認められると、その先の永住ビザ申請への第一歩となります。3年のビザを取得するためのコツは、以下のとおりです。
- 直近2年間の事業が安定している
- 従業員を雇用している
すでに認知度の高い会社や大規模な会社を経営している場合以外は、なかなか長期間の経営管理ビザを取得するのが難しいのが現状です。3年の在留期間を認められるためには、ビザ更新を見据えて計画的に事業を展開・管理していく必要があります。
4-1.直近2年間の事業が安定している
直近2年間で一定以上の利益を継続し、債務超過がない状況であれば3年の経営管理ビザを取得できる可能性が高まります。事業が安定していることは、3年以上の在留期間を認められるために欠かせないポイントです。
黒字経営ができているのが理想ですが、見せかけの利益を増やすために役員報酬を減らすなどの策はおすすめできません。役員報酬が極端に安く設定されている場合は、会社の経営が怪しまれてしまう恐れもあるためです。
さらに、経営者として求められる各種税金の支払いや、従業員の社会保険加入手続きなどの基本的な義務を果たしている必要があります。
4-2.従業員を雇用している
経営管理ビザの在留期間3年を認められるためのコツ2つ目は、従業員を雇用していることです。従業員雇用の有無は、雇用保険適用事業所番号で確認されます。
ただし、従業員の雇用に関しては、経営管理ビザ3年を取得するために必須のものではありません。雇用していない会社であっても、事業が安定的に継続することを証明できれば、在留期間3年以上を認められる可能性があります。
たとえば売上を1億円以上出せている場合は、1人会社であっても安定した経営ができているとみなされやすいでしょう。必要に応じて、特許・商標の登録証や信頼度の高い取引先との契約書・請求書などを準備しておくのも手です。
5.経営管理ビザ3年取得にむけ更新理由書を作成する
経営管理ビザ3年を取得するためには、更新理由書作成し、更新理由を具体的に書くことが重要です。そもそも更新理由書自体が経営管理ビザの更新に必須の書類ではありませんが、提出することで長期間の在留期間が認められる可能性は高まります。
経営者として果たす義務をこなし、安定した経営を続けていても、なかなか3年の経営管理ビザを取得できないケースもあるようです。そのような場合は、更新理由書の内容を工夫をすると、長期間の在留期間を認められる助けとなる可能性があります。
更新理由書に記載すべき内容は、次のとおりです。
- 経営者の仕事内容:経営活動をおこなっている証拠を示す
- 今後の中長期の事業計画:3年分程度準備する
- 流動比率(流動資産÷流動負債):業界にもよるが200%以上が目安となる
- 安定した取引先の情報:取引先名・取引年数・年間取引額・取引内容・取引先の概要
6.まとめ
本記事では、外国人が経営管理ビザの更新に際して知っておきたいポイントをご紹介しました。要点をまとめると、以下のようになります。
✓経営管理ビザの在留期間は「3ヶ月」「4ヶ月」「6ヶ月」「1年」「3年」「5年」の6種類
✓3年の在留期間が認められると次に永住ビザ申請がみえてくる ✓経営管理ビザは他のビザに比べて更新時の審査が厳しい ✓経営管理ビザ更新における要件は3つある(1.申請者個人が届出義務等を適正に行っている2.事業者(会社)の義務を履行している3.安定的な事業継続が見込まれる) ✓経営管理ビザ更新に必要となる書類は状況によって異なる ✓直近2年間の事業の安定性や従業員雇用の有無が経営管理ビザ3年取得の目安となる ✓経営管理ビザ3年を所得するために更新理由書を作成し、書き方を工夫するのが重要 |
一時的に経営が苦しい状態にあるタイミングでビザを更新しなければならない場合は、審査を通過するのに困難を伴う可能性があります。経営管理ビザ3年を取得すれば、永住ビザ申請がみえてくるでしょう。
ビザ更新に向けた準備を一人で進めるのが難しい場合は、ノウハウをもっている専門家を頼るのも方法の一つです。
この記事の監修
![斎藤 竜(さいとうりょう)](https://s-legalestate.com/kaigai/wp-content/themes/legal_estate/assets/images/blog/human_saitou.png)
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)
相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。