2024/2/22 2024/3/17

外国人ビザ

4か月の経営管理ビザで会社設立するには?ビザ取得の流れと注意点を解説

日本で事業を展開したいと考えている海外在住の外国人起業家にとって、俗に”スタートアッププビザ”といわれている「4ヶ月の経営管理ビザ」は、日本の銀行口座への資本金入金や事業所賃貸借契約が不要など、ビザ取得前での資金確保リスクを負うことなく、起業準備ができます。

しかし、この4か月の経営管理ビザを最大限に活用するためには、その取得条件や取得プロセスを正確に理解することが必須です。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

✓2015年4月の入管法改正により導入された4ヶ月の経営管理ビザ(スタートアップビザ)は、日本での会社設立を計画している海外在住の外国人が、会社設立前の準備期間として利用できるビザ

✓1年の経営管理ビザでは、ビザ申請前に資金移動、日本国内の銀行口座への資本金送金、事務所確保など事前に起業準備を済ませておく必要があり、日本国内で事前に起業準備を行う協力者の存在が不可欠

✓4か月の経営管理ビザを取得し来日することで、海外からの資本金の送金を受け取るための個人の銀行口座開設、事務所の確保、会社設立登記などの準備を進めることができる

4か月の経営管理ビザの期限内に、会社設立手続きを完了させ、1年間の経営管理ビザへの更新手続きを行う

✓4か月の在留期間更新時に会社設立後の登記事項証明書の提出ができない場合には、過去に提出した資料との整合性が求められ、整合性がない場合には、更新が不許可となる可能性がある

4か月の経営管理ビザでは、金融機関の一部しか対応できない、物件オーナーの賃貸借契約を認めてくれない可能性もある

✓4か月という短期間での更新手続きの必要性や、その準備にかかる労力を考え、初めから1年の経営管理ビザを申請することが時間や労力の面で効率的な選択となる可能性もある

本記事では、4ヶ月の経営管理ビザについて詳しく解説します。

1.4か月の経営管理ビザとは?

2015年4月の入管法改正により導入された4ヶ月の経営管理ビザ(スタートアップビザ)は、日本での会社設立を計画している海外在住の外国人が、会社設立前の準備期間として利用できるビザです。

1-1.4か月の経営管理ビザでは、ビザ取得前の資金移動が不要

4か月の経営管理ビザ申請時に、日本での事業計画書が適切に作成できれば、経営管理ビザ取得前に、多額の資金の移動を伴う日本国内の協力者の日本の銀行口座への海外送金や、事務所賃貸借契約を事前にするというリスクを避けることができます。

4か月の経営管理ビザ取得後に来日し、海外送金、事務所確保といった資金移動が伴う活動ができるのがこのビザの特徴です。

1-2.1年の経営管理ビザとの違い

通常の経営管理ビザは、1年以上の在留期間で交付され、会社設立後の事業経営に必要な活動ができるビザ(在留資格)です。通常の経営管理ビザでは、ビザ申請前に資金移動、事務所確保など事前に起業準備を済ませておく必要があります。そのため、通常の経営管理ビザでは日本国内で事前に起業準備を行う協力者の存在が不可欠です。

これに対して4ヶ月の経営管理ビザは、来日してからの起業準備を目的としており、日本の会社設立前から活動ができるビザです。

短期滞在ビザ(90日)で起業準備を目的に来日しても、日本での住民票登録ができず会社設立の準備行為ができません。そこで、来日前にこの4か月の経営管理ビザを取得し来日することで、海外からの資本金の送金を受け取るための個人の銀行口座開設、事務所の確保、会社設立登記などの準備を進めることができます。

2.4か月の経営管理ビザのメリット

4か月の経営管理ビザには、下記のメリットがあります。

2-1.住民票、印鑑証明書の登録ができる

通常、外国人が日本で住民票や印鑑証明書を取得するには、中長期のビザと在留カードが必要です。在留カードがなければ住民票登録ができず、住民票・印鑑証明書の取得ができません。住民票、印鑑証明書がないと、日本国内で不動産賃貸借契約や外国人の銀行口座の開設が難しいのが現状です。

4か月の経営管理ビザを持つことで、住民登録を行うことができます。これにより、会社設立や日本での生活において必要な各種手続きがスムーズに行えるようになります。

2-2.金融機関で日本の銀行口座開設ができる

日本での株式会社設立に必要な日本国内の銀行口座に資本金を振り込む必要があり、日本国内の銀行口座を開設するためには3か月を超えるビザを有する外国人が持つ在留カードが必要です。4か月の経営管理ビザでは、在留カードが交付されるため、外国人が金融機関で銀行口座を開設することができます。

ただし、4か月の経営管理ビザで銀行口座を開設できる金融機関は限られているため、すべての金融機関で口座開設できるわけではない点には注意が必要です。金融機関選びには、4か月の経営管理ビザに詳しい専門家と相談しながら進めていきましょう。

2-3.日本の協力者に対する銀行口座への払い込みが不要

1年の経営管理ビザは、外国人が日本で起業する際に日本国内の銀行口座を持っていない場合が多く、外国人はビザ取得と株式会社設立登記の要件の一つである500万円以上の資本金を日本国内の協力者の方の銀行口座に海外送金する必要があります。

4か月の経営管理ビザを利用すれば、事前に外国人本人の銀行口座を用意できるため、このような間接的な方法を取らずに、直接、外国人本人の口座に資本金を振り込むことが可能です。これにより、手続きが簡略化され、協力者に一次的に資本金を預けるというリスクを避けることができます。

資本金500万円の証明は定款等で証明する

4か月の経営管理ビザ申請時に、ビザ申請時に会社設立登記を完了していない場合には、「定款その他当該法人を設立しようとしていることを明らかにする書類の写し」により、設立に際して出資される500万円以上の資本金を証明します。そのほか、ビザを申請する外国人の資金の出所を証明するための収入証明書などを用意します。

2-4.ビザ申請前に事務所の賃貸借契約を行わなくてもよい

経営管理ビザを利用する際、事業の立ち上げにおいて重要なポイントの一つが、事務所スペースの確保です。通常の経営管理ビザでは、ビザ申請前に「独立した事務所の確保」が必要条件とされていますが、4か月の経営管理ビザは事務所の賃貸借契約をビザ取得後に行うことが可能です。

事業所は候補地の物件資料等で証明する

4か月の経営管理ビザ申請時には、具体的な事務所スペースの契約を結んでいる必要はなく、「事務所の候補地に関する資料(場所、広さ、予算等が記載された資料など)」を提出して、証明します。

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3.4か月の経営管理ビザ取得と会社設立手続きの流れ

4か月の経営管理ビザ取得に伴う株式会社設立手続きの流れは次の通りです

  • 定款案を作成する
  • 定款を公証役場で認証する
  • 事業計画の作成
  • 4か月の経営管理ビザを申請する
  • 本国でビザ発給手続き
  • 来日後、会社設立手続きを完了させる
  • 4か月以内に経営管理ビザ1年への更新手続きをする

以下、詳しく解説します。

3-1.定款案を作成する

会社設立の最初のステップは、定款案の作成です。

定款には、商号(会社名)、事業目的、資本金、本店所在地、事業年度、出資者、役員などの基本情報を記載します。資本金については、経営管理ビザ取得の際には、初期に従業員を雇用する予定がなければ、最低500万円以上の出資が必要です。

定款等で資本金を500万円以上として設定する

4か月の経営管理ビザ申請時点では、実際に500万円を日本の銀行口座に送金する必要はありません。ビザ申請時に提出する定款等の書類には資本金を500万円以上と設定し、設定した相当の日本円の金銭は用意はしておきましょう。

3-2.定款を公証役場で認証する

定款を準備した後、会社の本店所在地候補地を管轄する都道府県内の公証役場で、公証人による定款の認証を受ける必要があります。

定款認証時に印鑑登録がない場合には、サイン証明書が必要

海外に居住する外国人の場合、日本の印鑑登録制度がないため、印鑑証明書の代わりにサインを公証するサイン証明書(宣誓供述書)を用意することで、定款の認証手続きを行うことができます。

電子定款であれば、収入印紙代4万円を節約できる

外国人本人が公証役場に直接訪れることが難しい場合は、司法書士や行政書士などの専門家に定款の作成や認証手続きを代行してもらうことが可能です。また、司法書士や行政書士は電子定款作成に対応していることが多いため、電子定款を利用すれば、収入印紙代4万円を節約することができます。

3-3.事業計画書を作成する

次に、事業計画書を作成します。

4か月、1年という在留期間に関わらず経営管理ビザの対象となる事業は、適正に行われ、かつ、安定性及び継続性の認められるものであることが必要です。これらを説明する事業計画書を作成し、出入国管理局に提出します。

3-4.4か月の経営管理ビザを申請する

定款と事業計画書が完成したら、4か月の経営管理ビザを出入国管理局で申請します。この申請には、事業計画書や定款のほか、申請者の経歴や資金力を証明する書類が必要になります。

ビザが認定されると、在留資格認定証明書が交付されます。これを本国にいる申請人に郵送し、受け取った書類と必要書類を、本国の日本領事館でビザの交付を受けて、日本に来日が可能となります。

3-5.来日後、会社設立手続きを完了させる

4か月の経営管理ビザの更新時までに、会社設立にともなう全ての手続きを完了させます。会社設立までには、下記の手続きが必要です。

  • 日本国内での住民票、印鑑登録
  • 日本国内の個人の銀行口座開設
  • 開設した銀行口座に資本金を送金
  • 事務所、店舗の確保(賃貸借契約等)
  • 会社代表印作成
  • 会社設立登記
  • 外為法の届出
  • 開業届の提出
  • 事務所・店舗設備などの準備
  • 許認可取得(必要な場合)
  • 会社経営開始(法人口座の開設、社会保険の加入)

各手続きについては、一般的な1年の経営管理ビザ取得と会社設立手続きとは、住民票、印鑑登録及び経営管理ビザ申請のタイミングが異なりますが、他は概ね同様です。違いは経営管理ビザ取得前ではなく取得後に各手続きを行うという点です。

手続きの詳細については下記のページで詳しく解説しています。

3-6.4か月以内に経営管理ビザ1年への更新手続きをする

4か月の経営管理ビザは、あくまで初期段階の事業準備期間をサポートするためのものです。そのため、ビザの期限内に、会社設立手続きを完了させ、1年間の経営管理ビザへの更新手続きを行う必要があります。

更新手続きには、会社設立後の登記事項証明書、賃貸借契約書、これまでの事業活動の成果、財務状況の報告、今後の事業計画など、会社運営の実績と将来計画を示す書類が必要となります。

更新後は、日本での1年の経営管理ビザを取得し、今後の長期的な事業展開に向けた更なるステップを踏み出すことになります。

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4.4か月の経営管理ビザの注意点

4か月の経営管理ビザ取得は、来日前に事業所、資本金を日本国内に用意することなく取得できるので、起業準備が行いやすいメリットがありますが、実際の申請にあたっては下記の点の注意が必要です。

4-1.事業計画は入念に作りこむ必要がある

4か月の経営管理ビザを取得するには、出入国管理局の審査官に対して、一般的な1年経営管理ビザのものに加えて、下記の要件を満たしていると審査官に提出書類にて証明する必要があります。

  • 日本国内で株式会社等を設立する準備を行う意思があること
  • 株式会社等の設立がほぼ確実に見込まれること

経営管理ビザを取得するためには、日本国内で行う事業計画が現実的であり事業が長期にわたって安定して継続できること、そして、ほぼ確実に日本国内で会社設立を行っていくということを審査官に証明する必要があります。赤字が続き、事業の持続性に疑問があるビジネスモデルでは、経営管理ビザの取得が困難となります。また、4か月の在留期間更新時に会社設立後の登記事項証明書の提出ができない場合には、過去に提出した資料との整合性が求められ、整合性がない場合には、更新が不許可となる可能性があります。

そのため、立ち上げ予定の事業の安定性や持続可能性を裏付けるためには、1年だけでなく、3年間を見越した中長期的な実行可能な事業計画書の提出が求められます。

4-2.4か月の経営管理ビザで口座開設ができる金融機関が少ない

新設された4か月の経営管理ビザは、会社設立前の準備期間に特化したビザとして注目されています。しかし、このビザを持つ起業家が直面する課題の一つに、金融機関での口座開設の難しさがあります。

4か月の経営管理ビザでは、ビザの期間が短く、その後の更新や長期在留が保証されていないため、金融機関によっては口座開設を取り扱っていない場合があります。日本の金融機関は、一般的に長期的な在留資格を持つ外国人や、日本国内で安定した収入があることを口座開設の条件としていることが多いためです。

口座開設をするためには、外国人起業家向けのサービスを提供している金融機関を探すことが重要です。一部の銀行では、外国人の顧客に対して相談窓口を設けており、4か月の経営管理ビザを持つ外国人でも口座開設が可能な場合があります。また、日本で信頼できるビジネスパートナーや専門家の紹介を受けることも、口座開設の道を開く一助となることがあります。

4-3.物件のオーナーが4か月の経営管理ビザでは賃貸借契約を認めてくれない可能性がある

日本で事業を開始しようとする外国人起業家にとって、事業所やオフィスの確保は初期段階で直面する大きな課題の一つです。4か月の経営管理ビザを利用して、このような事業準備を行う場合、物件のオーナーによっては、短期間のビザを理由に賃貸借契約をためらうことがあります。

この問題の根底には、物件オーナーが感じるリスクの存在があります。経営管理ビザの期間が4か月と短いため、事業の継続性や起業家の長期的な在留が保証されていないと見なされることがあります。特に、賃貸契約を結ぶ際には、物件オーナーはテナントが安定した収入を持ち、長期間にわたって賃料を支払い続けることを期待します。しかし、4か月の経営管理ビザでは、そのような安定性や信頼性を証明するのが難しいと判断される場合があります。

この問題を克服するためには、いくつかの対策を講じることが考えられます。一つの方法は、事業計画の具体性と信頼性を高め、物件オーナーに対して事業の継続性と収益性を強調することです。また、日本で信頼できる保証人を設定する、または賃貸保証会社のサービスを利用することで、オーナーのリスクを軽減し、契約成立に向けた信頼関係を構築することも有効です。

さらに、事業計画やビジネスモデルに自信がある場合は、オーナーとの交渉において、ビザの更新や在留資格の変更後のビジョンを共有し、長期的なパートナーシップを提案することも一つの戦略となります。また、物件を仲介する不動産会社や専門家を通じて、外国人起業家に理解のある物件オーナーを探すことも、解決策の一つです。

4-3.4か月以内に経営管理ビザの更新申請が必要

4か月の経営管理ビザを利用する際には、期間内に資本金の確保、会社設立登記、事業所の確保など、ビザ更新時までに事業開始に向けた重要なステップを完了させる必要があります。

この短期間のビザは、特に事業設立の前段階である準備期間に焦点を当てたビザであり、その有効期間はあくまで4か月に限定されています。したがって、事業を本格的にスタートさせるためには、この期間内に次のステップへ進むための更新手続きが求められます。

4か月の経営管理ビザが短期間であるために、ビザ取得後すぐに更新の準備に入る必要がある点は、長期の経営管理ビザとは大きく異なるポイントです。4か月後の更新手続きには、事業計画の具体化や必要な書類の準備など、開業後の手続きが発生してしまい、開業時の負担と労力を要求されてしまいます。

一部では、4か月の経営管理ビザの取得が困難であるとの意見も見られますが、適切な準備と手続きを行うことで、取得することは可能です。しかし、4か月という短期間での更新手続きの必要性や、その準備にかかる労力を考えると、日本国内に協力者がおり手続きがスムーズにできる見通しがあるのであれば、初めから1年の経営管理ビザを申請することが、時間や労力の面で効率的な選択となるかもしれません。

5.まとめ

 

✓2015年4月の入管法改正により導入された4ヶ月の経営管理ビザ(スタートアップビザ)は、日本での会社設立を計画している海外在住の外国人が、会社設立前の準備期間として利用できるビザ

✓2015年4月の入管法改正により導入された4ヶ月の経営管理ビザ(スタートアップビザ)は、日本での会社設立を計画している海外在住の外国人が、会社設立前の準備期間として利用できるビザ

✓1年の経営管理ビザでは、ビザ申請前に資金移動、日本国内の銀行口座への資本金送金、事務所確保など事前に起業準備を済ませておく必要があり、日本国内で事前に起業準備を行う協力者の存在が不可欠

✓4か月の経営管理ビザを取得し来日することで、海外からの資本金の送金を受け取るための個人の銀行口座開設、事務所の確保、会社設立登記などの準備を進めることができる

4か月の経営管理ビザの期限内に、会社設立手続きを完了させ、1年間の経営管理ビザへの更新手続きを行う

✓4か月の在留期間更新時に会社設立後の登記事項証明書の提出ができない場合には、過去に提出した資料との整合性が求められ、整合性がない場合には、更新が不許可となる可能性がある

4か月の経営管理ビザでは、金融機関の一部しか対応できない、物件オーナーの賃貸借契約を認めてくれない可能性もある

✓4か月という短期間での更新手続きの必要性や、その準備にかかる労力を考え、初めから1年の経営管理ビザを申請することが時間や労力の面で効率的な選択となる可能性もある

4か月の経営管理ビザを選択するか、より1年の経営管理ビザを申請するかは、個々の事業計画や戦略、準備の進行状況によって異なります。どちらの選択肢を選ぶにせよ、ビザの種類に応じた準備と計画の重要性を認識し、専門家と相談しながら、4か月又は1年の経営管理ビザを選択すべきか相談しながら手続きを進めてみてください。

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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