2023/12/27 2024/3/9

外国人ビザ

日本人の配偶者ビザから永住権を取得するには?要件と必要書類を解説

日本人又は永住権を有する外国人と結婚した外国人は配偶者ビザを取得できます。しかし、今後も日本で生活し続けることを考えると、永住許可を得て、永住者ビザに切り替える方が多くのメリットがあります。

今回の記事のポイントは、下記のとおりです。

永住権(永住者ビザ)とは、無期限に日本で滞在できる外国人の権利

✓永住者ビザは日本人・永住者の配偶者としてではなく、本人の身分を保証するビザであるため、婚姻状況の変化にかかわらず安定した身分を維持できる

✓配偶者ビザから永住者ビザへの切り替えは、一般的なビザからの永住権許可よりもハードルが低い

✓永住権を取得するためには、世帯収入や居住・在留歴、善良な素行や義務の履行などさまざまな要件を満たす必要がある

身元保証人となる配偶者が義務を履行していることも大切

日本人又は永住者(永住権を有する外国人)の配偶者ビザを持っている人が永住者ビザを取得する場合は、一般的なビザからの切り替えよりも要件が緩和されています。本記事では、配偶者ビザから永住者ビザへ変更する要件とメリットについて解説します。

1.永住権とは?

永住権とは、外国人が期間の制限なく日本で滞在できる権利です。職種や業種など就労に関する制限がなく、日本人とほぼ同様に生活できます。永住権を取得することで在留資格は「永住者」となり、このビザを「永住者ビザ」と呼びます。

永住権(永住者ビザ)を有する外国人については、日本国内の活動の制限がなく、一般の就労ビザや許可されないような仕事(単純作業、肉体労働、水商売)なども法律違反がなければ就労可能です。

ただし、国籍は元の国のままであり、日本での在留資格を持つ外国人としての扱いとなります。日本に国籍がないため、選挙権はありません。永住者は在留期限が無制限のため、在留資格の更新手続きは必要ありません。

2.配偶者ビザから永住権を取得するための要件

日本人・永住者の配偶者ビザから永住者ビザに切り替えるには、以下の要件を満たさなければなりません。以下では永住権を得るために必要な3つの要件を紹介します。

  • その者の永住が日本の利益になると認められること(国益要件)
  • 独立生計を営む資産や技能を有していること(独立生計要件)
  • 法律や法令を違反していないこと(素行善良要件)

ただし、「日本人の配偶者や子」「永住者の配偶者や子」「特別永住者の配偶者や子」の場合は、これらの中で国の利益要件だけが適用されます。

2-1.その者の永住が日本の利益になると認められること(国益要件)

法務省の永住許可に関するガイドライン(令和5年12月1日改訂)では、国益要件として以下の5つが挙げられています。

  • 引き続き10年以上日本に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
  • 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと
  • 納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。
  • 現在有しているビザについて、最長の在留期間で在留していること
  • 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。

以下、国益要件について、配偶者ビザから永住許可権を取得するための要件と特例を解説します。

配偶者ビザにおける在留歴に関する要件と特例

一般的なビザ・在留資格では、原則として日本での在留期間が10年以上であり、そのうちの直近5年以上は「就労資格(技能実習及び特定技能1号を除く)」または「居住資格(活動制限の少ない身分または地位に基づく在留資格)」での在留が必要です。

一方で、配偶者ビザがあれば、この要件をクリアしやすくなっています。配偶者ビザから永住者ビザに切り替えるには、在留期間の特例があります。
実態を伴った婚姻生活が3年以上継続しており、なおかつ引き続き1年以上日本に居住していれば、永住許可申請をすることができます。

つまり、国内、国外での通算婚姻期間が3年以上あり、永住権許可申請時点で日本に引き続き1年居住していればよいということです。

婚姻実態と海外出国

配偶者として日本に住んでいる実態が必要で、別居していて婚姻関係が事実上維持されていない場合は認められません。別居の理由が単身赴任で、月に数日は同居しているなどの合理的な理由がないと、許可が認められません。また、1年のうちに何度も母国に帰っており年間の出国日数が100~150日を超える場合や、3か月を超える中長期の出国をしている場合も、永住権許可は難しいでしょう。

配偶者ビザがなくても、配偶者であれば特例は適用できる

法的な身分として日本人・永住者の配偶者であれば、この特例を適用できます。実際に「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者」のビザ(在留資格)を持っている必要はありません。例えば、「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格で日本にいるものの、日本人・永住者と結婚している配偶者もこの特例の対象に含まれます。

罰金刑、懲役刑など犯罪等の要件

懲役や禁固、罰金などを受けていないことのほか、飲酒運転、無免許運転、20キロを超えるスピード違反、明らかな故意による違反などの交通違反にも気を付ける必要があります。日頃の素行が善良でなければ、永住権は認められません。

過去に禁錮、懲役、または罰金刑を受けた場合、刑の消滅(刑法第34条の2による)や執行猶予期間が経過した後でなければ、永住権の申請を再度行うことが求められます。罰金刑を受けた場合は、その刑の執行完了から5年が経過する必要があります。一方、禁錮や懲役刑を受けた場合は、その刑が終了してから10年が経過する必要があります。

公的義務の履行に関する要件

住民税や健康保険料、年金保険料など、支払うべき税金を納付していない場合は、永住権の取得が難しくなります。滞納や遅延などの履歴も影響するため、申請時に問題がなければいいというわけではありません。住民税は直近3年分、年金保険料は直近2年分をさかのぼってチェックされます会社員のように税金の天引きがなく、自分で納税しなければならない自営業の方は、確実に納税するよう注意が必要です。

在留期間に関する要件

永住ビザの申請には、配偶者ビザの在留期間が3年以上であることが要件の1つです。永住権の申請には、在留資格の最長の在留期間であることが原則ですが、配偶者ビザの場合は最長の5年ではなく3年でも申請が可能になっています。

現在持っている配偶者ビザの在留期限が1年の場合は、まずは在留期限が3年の配偶者ビザの取得を目指しましょう。

公衆衛生に対して悪影響を及ぼす可能性がないこと

感染症に罹患していないなど、公衆衛生に対する問題が存在しないことを指します。

2-2.世帯収入に関する要件

配偶者ビザからの永住許可では、独立生計要件は求められませんが、世帯全体での年収が安定していることは審査の対象の一つです。配偶者が無収入でも問題ありませんが、世帯全体で日本での生活を継続するだけの収入を確保できていなければ、配偶者ビザから永住者ビザへの切り替えは難しくなります。

世帯の人数や構成によって生活に必要な収入の金額は異なり、永住者ビザの取得に必要な世帯収入の目安が公表されているわけでもありません。金額よりも、その世帯が継続して生活できる収入があるかどうかが重視されると考えられます。

目安となる世帯収入

審査の実態としては、単身者の場合年収300万円以上が必要です。扶養する配偶者や子などがいる場合には、扶養者一人当たり50万円が加算されます。例えば、妻を扶養している場合には年収350万円以上、妻と子1名を扶養している場合には年収400万円以上が目安となります。

世帯年収の目安となるため、永住権を申請する外国人が主婦など無職で働いていない場合には、その配偶者の収入で世帯収入の目安を満たしていれば永住許可申請が可能です。

この目安となる世帯年収を満たしていない場合には、不許可となる可能性が高くなります。

2-3.身元保証人に関する要件

永住許可申請には、安定した収入があり納税などの義務を果たしている身元保証人が必要です。

身元保証人は日本人または永住権を持った外国人である必要がありますが、配偶者ビザからの切り替えでは、多くの場合は永住権を申請する外国人の配偶者やその親が身元保証人となります。そのため、外国人配偶者、その親は日頃から、納税や健康保険・年金保険料を適切に納付することも必要です。

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3.配偶者ビザから永住者ビザへ変更する4つのメリット

日本人・永住者の配偶者ビザが日本人又は永住者の配偶者としての身分についての在留資格であるのに対して、永住者ビザは本人の身分についての在留資格です。今後も日本での生活を継続するなら、永住権を取得し永住者ビザに変更することで、さまざまなメリットがあります。以下で詳しく見ていきましょう。

3-1在留期限が無期限になる

配偶者ビザには在留期限の定めがあり、期限内に更新の申請を行う必要があります。しかし永住ビザを取得することで、在留期限の定めがなくなり、更新の手続きを行うことなく日本に滞在できます。ビザを更新するには書類をそろえて入管に出向かなければなりません。更新申請の手間や期限を気にする必要がなくなることは大きなメリットです。

永住者となった後でも在留カードの更新は必要

永住者の在留カードには有効期限があり、7年ごとに更新する必要(永住者が16歳未満の場合、在留カードの有効期間は16歳の誕生日まで)に更新が必要です。有効期限の2か月前から更新手続きが可能です。

永住者の在留カードの有効期限が切れたとしても、在留資格が失効することはありません。強制退去にもならず、帰国する必要もありません。ただし、在留カードの身分証としての使用はできなくなり、有効な在留カードを常時携帯しておくという義務に違反し、不法滞在となってしまいます。そのため、在留カードは7年に一度、更新手続をしておく必要があります。

在留カードの更新は必要ですが、期限が切れるまでに更新を行えば、ビザのように不許可となる心配はありません。

3-2.配偶者との離婚、死別後も在留資格が残る

配偶者ビザは、日本人又は永住者の配偶者としての在留資格です。そのため、配偶者と離婚している場合や死別した場合、在留資格がなくなります。

しかし、永住者ビザを取得すれば、日本人の配偶者であるかどうかは関係なく日本に滞在することが可能です。婚姻の状況が変わっても在留資格を失うことはありません。したがって、永住ビザは状況に関係なく日本に滞在できる安定した在留資格といえます。

3-3.国籍を変更する必要がない

永住者ビザを取得することで、外国人としての身分を保ったまま日本で無期限に滞在できるようになります。国籍を変更する必要がないため、母国に帰らなければならない事情ができても手続きがスムーズです。

なお、日本の国籍を取ることは「帰化」といいます。帰化することで、永住権とともに参政権も認められるなど、日本人と同等の権利が与えられます。しかし、帰化すると母国の国籍を離れなければなりません。国によっては元の国籍に戻ることが難しい場合もあります。さまざまな状況を考えて、国籍を変える必要のない永住者ビザを取得する人も少なくありません。

3-4.社会的信用度が上がる

永住者ビザを持っていることで、社会的な信用度が上がります。多くの金融機関では、外国人がローンを組む場合、きちんと国内で返済できるか、永住権の有無を確認することが一般的です。配偶者ビザの場合、ローンを組んだりクレジットカードを作ったりすることは難しいでしょう。

永住ビザを取得することにより、今後も継続的に日本で暮らすことの証明になるため、社会的な信用度が上がります

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4.配偶者ビザから永住許可の申請と審査期間

永住許可を希望する外国人は、現在の配偶者ビザの在留期間の満了日までに申請する必要があります。

永住許可申請についての審査期間は4~6か月程度です。

他のビザ(在留資格)では、在留期限前に申請受理され、その結果が出るまでに在留期間が過ぎてしまっても、特例期間として在留期限後2か月以内であれば日本国内に在留することができます。しかし、永住許可申請ではこの特例期間が認められていないため、配偶者ビザの在留期限が経過してしまうと不法滞在になってしまいます。そのため、永住許可申請中に在留期間が経過する場合は、在留期間の満了する日までに現在の配偶者ビザの在留期間更新許可申請を別途する必要があります。

5.配偶者ビザから永住許可申請するための必要書類

日本人・永住者の配偶者ビザから永住許可申請するための必要書類は次のとおりです。

  • 永住許可申請書1通
  • 写真(縦4cm×横3cm)1葉
  • 配偶者の戸籍謄本(全部事項証明書)1通 ※日本人が配偶者の場合
  • 配偶者との婚姻証明書 (申請人と配偶者の方との身分関係を証するもの) 適宜※外国人が配偶者の場合
  • 申請人を含む家族全員(世帯)の住民票1通
  • 申請人又は申請人を扶養する方の職業を証明する資料※
  • 直近(過去3年分)の申請人及び申請人を扶養する方の所得及び納税状況を証明する資料※
  • 申請人及び申請人を扶養する方の公的年金及び公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料※
  • パスポート(旅券)又は在留資格証明書(提示)
  • 在留カード(提示)
  • 身元保証に関する資料※
  • 了解書1通

※職業を証明する資料

会社等に勤務している場合

  • 在職証明書 1通

自営業等である場合

  • 確定申告書控えの写し1通
  • 営業許可書の写し(ある場合)1通

その他の場合

  • 職業に係る説明書(書式自由)及びその立証資料

※直近(過去3年分)の申請人及び申請人を扶養する方の所得及び納税状況を証明する資料

住民税の納付状況を証明する資料

  • 直近3年分の住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの)各1通
  • 直近3年間において住民税を適正な時期に納めていることを証明する資料(通帳の写し、領収証書等)

国税の納付状況を確認する資料

  • 源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税に係る納税証明書(その3

その他

  • 預貯金通帳の写し(その他準ずるもの)適宜

※申請人及び申請人を扶養する方の公的年金及び公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料

直近(過去2年間)の公的年金の保険料の納付状況を証明する資料

  • 「ねんきん定期便」(全期間の年金記録情報が表示されているもの)
  • ねんきんネットの「各月の年金記録」の印刷画面
  • 国民年金保険料領収証書(写し)

直近(過去2年間)の公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料

  • 健康保険被保険者証(写し)
  • 国民健康保険被保険者証(写し)
  • 国民健康保険料(税)納付証明書
  • 国民健康保険料(税)領収証書(写し)
    ※ 直近2年間において国民健康保険に加入していた期間がある方は、当該期間分の領収証書(写し)を全て提出してください。
    提出が困難な方は、その理由を記載した理由書を提出してください。

申請される方が申請時に社会保険適用事業所の事業主である場合

  • 健康保険・厚生年金保険料領収証書(写し)
  • 社会保険料納入証明書又は社会保険料納入確認(申請)書(いずれも未納の有無を証明・確認する場合)

※身元保証に関する資料

  • 身元保証書1通
  • 身元保証人の身分事項を明らかにする書類(運転免許証写し等)

参考:出入国在留管理庁HP:永住許可申請1

5.まとめ

本記事では、日本人・定住者の配偶者ビザから永住者ビザへ切り替えるメリットと、永住許可に必要な要件について解説しました。内容をまとめると、以下の通りです。

永住権(永住者ビザ)とは、無期限に日本で滞在できる外国人の権利

✓永住者ビザは日本人・永住者の配偶者としてではなく、本人の身分を保証するビザであるため、婚姻状況の変化にかかわらず安定した身分を維持できる

✓配偶者ビザから永住者ビザへの切り替えは、一般的なビザからの永住権許可よりもハードルが低い

✓永住権を取得するためには、世帯収入や居住・在留歴、善良な素行や義務の履行などさまざまな要件を満たす必要がある

身元保証人となる配偶者が義務を履行していることも大切

配偶者ビザから永住者ビザへの切り替えには、多くのメリットがあります。しかし、そのためにはさまざまな要件を満たさなければなりません。要件についての理解を深め、日頃から気を付けて生活しましょう。

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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