2024/2/29 2024/2/29

外国人相続

韓国籍の相続|韓国法と日本法の適用判断、不動産・預貯金相続手続を解説

日本の不動産や預貯金を有する韓国人が亡くなった場合には、韓国の民法に従い相続財産を相続します。また、遺言で韓国法ではなく、日本法を指定すれば、日本の民法に基づく相続の選択も可能です。韓国と日本の民法の間には、相続の範囲や順位など、多くの違いが存在します。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

✓ 在日韓国人の相続には「韓国」の民法が適用される

✓ 遺言により「日本」の民法での相続手続きを行うことも可能である

✓ 相続の第1順位は、日本においては「子」であるが、韓国では「直系卑属(子、孫、ひ孫等)」である

✓ 韓国民法では、配偶者にも代襲相続の権利がある

✓ 日本の民法では、配偶者と子で相続分はそれぞれ1/2であるが、韓国民法では配偶者の割合は子供の相続分の5割増しである

✓ 在日韓国人の相続登記では、戸籍謄本等による相続関係の証明はできず、それらに代わる書類(家族関係証明書、基本証明書、婚姻関係証明書、養子縁組関係証明書、親養子(特別養子)入養関係証明書、除籍謄本(2007年12月31日以前の身分事項))を提出して相続関係を証明する必要がある

✓ 在日韓国人の韓国国内の財産に対しては、日本と韓国ともに相続税が課税されるが、外国税額控除により、韓国で発生した相続税は日本の相続税の計算過程で控除できる

本記事では、日本在住の韓国籍の被相続人の相続時に知っておきたい準拠法や両国の民法の違い、必要書類についてまとめました。相続における注意点についても解説します。

日本在住の韓国人が被相続人となった場合の韓日両国それぞれの民法規定の違いや手続きの流れ、必要書類などを事前に知っておくことで、相続対策も事前に検討することができます。

1.在日韓国人の相続には「韓国」の民法が適用される

相続は、人々の生活に深く関わる重要な問題であり、そのルールは各国で異なります。とくに在日韓国人の方にとっては、日本の民法と韓国の民法、そのどちらが適用されるのか混同してしまうこともあるかもしれません。

ここでは、在日韓国人の相続について「在日韓国人の相続における準拠法の問題」や「遺言による例外となるケース」を通して、相続に関する法律がどのように適用されるのかについて詳しく解説します。

1-1.在日韓国人の相続における準拠法の規定

外国籍の人が相続手続きを行う際には、準拠法に基づきます。準拠法とは、国際的な私法関係(相続、親族関係、契約など)をどの国の法律に基づいて処理するかを定める法律のことです。日本では「法の適用に関する通則法」が準拠法です。

日本の通則法によれば、相続の準拠法は「被相続人の本国法による」(通則法第36条)とされています。また、韓国の国際私法第49条第1項には「相続は被相続人の死亡時における国籍のある国の法律による」と規定されています。

したがって、在日韓国人の相続手続きは韓国民法に基づいて行われるのが原則です。

1-2.遺言により日本法の相続となるケース

在日韓国人の方は、遺言書への記述により相続に関する準拠法を選択可能です。つまり、遺言書に「相続は日本法に従う」と明記することにより、在日韓国人の相続手続きは日本の民法に基づいて行われます

遺言書が存在しない場合には、相続手続きは韓国の民法に従って行われます。

日本の民法と韓国の民法とでは、「法定相続人」「法定相続分」「遺留分」などの内容が異なるため、相続人や被相続人にとってどの法律が最適かを十分に理解し、適切な選択をしていくことが重要です。

このように、在日韓国人の相続では、原則は韓国法による相続ですが、遺言により日本法による相続を選択することができます。

2.【相続人の範囲と順位】韓国民法と日本民法との違い

韓国と日本は近隣国であり、文化や歴史的なつながりも深い関係性を持つ一方、相続法には大きな違いが存在します。とくに「法定相続人の範囲と順位」「法定相続分」「代襲相続」といった点において、異なるルールが定められています。韓国民法と日本民法との大きな違いは次の3点です。

  • 法定相続人の範囲と順位
  • 法定相続分の割合
  • 代襲相続における違い

それぞれについて詳しく解説します。

2-1.法定相続人の範囲と順位

【韓国と日本の法定相続人の範囲と順位】

順位

韓国

日本

第1順位 配偶者

直系卑属(子、孫、ひ孫等)とその代襲相続人

配偶者

子とその代襲相続人

第2順位 配偶者

直系尊属(父母、祖父母等)

配偶者

直系尊属

第3順位 兄弟姉妹とその代襲相続人 配偶者

兄弟姉妹とその代襲相続人

第4順位 被相続人の4親等(いとこなど)以内の傍系血族 なし

同順位の相続人が数人いるときは、被相続人に最も近い者が相続人となり、同親等の相続人が数人いるときは共同相続となります。例えば、子と孫がいる場合には、子が相続人となり、子が複数人いる場合には子が共同相続人となります。

配偶者

韓国法と日本法ともに、配偶者は、常に相続人となります。

ただし、韓国法では被相続人に配偶者がいる場合、第3順位以下は相続人になりません

配偶者は子などの直系卑属と直系尊属とは共同で相続人となりますが、直系卑属と直系尊属がいないケースの第三順位以下の兄弟姉妹、いとこについては、配偶者がいる場合には法定相続人とはならず、配偶者のみが単独で相続します。

日本法では、配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合には、共同相続となり、配偶者が単独で相続するための遺産分割をするには兄弟姉妹の協力が必要など手続きが複雑になりますが、韓国法では配偶者のみが単独で相続できます。

直系卑属

第1順位の法定相続人については、日本法では「子」ですが、韓国法では「直系卑属」となっており異なっています。

韓国法では、子と孫がいる場合には、先述したとおり被相続人に近い子が相続人(子が複数人いれば、共同相続人)となります。

日本法では、子が相続放棄した場合には、相続放棄した子は最初から相続人ではなかったとみなされ、その子や孫が代わりに相続することはありません。しかし、韓国法では、子全員が相続放棄した場合には、孫が直系卑属として相続する点に違いがあります。

2-2.法定相続分の順位

【韓国と日本の法定相続分の順位】
順位 韓国 日本
第1順位 配偶者 1.5(直系卑属の5割増し)

直系卑属 1.0

配偶者 1/2

子 1/2

第2順位 配偶者 1.5(直系尊属の5割増し)

直系尊属 1.0

※直系卑属と直系尊属がいない場合、配偶者単独相続

配偶者 2/3

直系尊属 1/3

第3順位 兄弟姉妹の人数で分ける 配偶者 3/4

兄弟姉妹1/4

第4順位 相続人の人数で分ける なし

たとえば、夫が妻と子供2人を遺して亡くなった場合、日本法では妻が相続財産の2分の1を受け取り、残り半分は子供が4分の1ずつ分け合います。しかし韓国法では、妻の相続分は子供一人あたりの相続分の1.5倍を受け取れます。

仮に子供が2人いる場合、分配は「1:1:1:1:1.5」となり、妻の取り分は5.5のうちの1.5となり全体の約27%となります。つまり子供の数が多ければ多いほど、妻の相続分は減少してしまいます。

2-3.【代襲相続】韓国民法と日本民法との違い

代襲相続における韓国民法と日本民法との違いは、下表のとおりです。

代襲相続の違い 韓国 日本
代襲相続原因 相続人となるべき子や兄弟の死亡、相続欠格 相続人となるべき子や兄弟姉妹の死亡、相続欠格、相続廃除
代襲相続人 被代襲者の直系卑属および配偶者 被代襲者の子
再代襲 被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合にも認められる 被相続人の子の子(被相続人の孫)、その孫に代襲相続が発生すれば被相続人のひ孫
被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合には認められない

代襲相続人の範囲が日本法と韓国法とでは異なります。以下、解説します。

子の代襲相続

日本法では、被相続人よりも先に子供が亡くなった場合や相続欠格により相続権を失ったときは、被相続人の孫が代襲相続人となります。

一方、韓国法では、「相推定続人である被相続人の直系卑属又は兄弟姉妹が既に死亡したとき、又は相続欠格により相続権を失ったときは、その者の直系卑属と配偶者が代襲して相続人となる。」と規定されています。つまり、被代襲相続人の子(被相続人の孫)と”被代襲相続人(被相続人の子)の配偶者”も代襲相続人となります。そして、代襲相続人となる直系卑属(孫など)がいない場合には、子の配偶者は単独で相続人となります。ただし、配偶者が再婚した場合には、婚姻関係は消滅してしまっているため、代襲相続はできません。

このように、子の代襲相続が発生した場合に、孫だけが代襲相続人になる日本法と、孫と亡き子の配偶者が代襲相続人となる韓国法、というように、代襲相続人の範囲が異なります。

兄弟姉妹の代襲相続

日本法においては、第3順位の兄弟姉妹が相続人となる場合、代襲相続は一代までです。つまり兄弟姉妹がすでに亡くなっていた場合、代襲相続人はその甥や姪です。ただし甥や姪もすでに亡くなっていた場合、その子供は代襲相続人とはなりません。

しかし、韓国法では、代襲相続の世代に制約はなく、兄弟姉妹の直系卑属が代襲相続人となるため、甥や姪の子供も代襲相続人となることもあります。

このように、日本と韓国の民法では、代襲相続に関する規定に大きな違いがあります。相続手続きを進める前に、それぞれの国の法令に基づいて、誰がどのように遺産を受け継ぐのかをしっかりと把握しておくことが重要です。

3.【遺留分と相続放棄】韓国民法と日本民法との違い

遺留分と相続放棄は、相続における重要な位置を占めます。遺留分は、相続人が民法により保証された最低限の相続権を指し、相続放棄は、相続人がその権利の放棄を可能にする規定です。

韓国法と日本法では、これらの取り扱いにおいていくつかの違いがあります。これらは、両国の法律の中でそれぞれに解釈され、適用されます。ここでは、それぞれの違いを詳しく解説し、両国の法律が相続にどのような影響を与えるかについて解説します。

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3-1.遺留分

遺留分とは、相続人に最低限保障される相続財産の一定部分のことです。民法で定められており、被相続人が遺言で法定相続と異なる相続分を決めていたとしても、相続人は遺留分を受け取る権利があります。この権利が遺留分減殺請求権です。

遺留分の意義については日本と韓国双方同じですが、遺留分を受け取る権利のある相続人の範囲については日本と韓国の民法で異なります。

遺留分を有する利害関係人の範囲が韓国法の方が広い

日本の民法では、兄弟姉妹を除く法定相続人に遺留分の主張が認められています。一方の韓国民法では、兄弟姉妹も遺留分を主張する権利があります

遺留分の計算方法は日本も韓国も同じです。相続全体のうち、配偶者と直系卑属は法定相続分の各2分の1、それ以外の相続人は3分の1です。これを総体的遺留分といいます。たとえば相続財産が5,000万円で配偶者と子供がいた場合、総体的遺留分が5,000万円の半分の2,500万円となり、この総体的遺留分を配偶者と子供1/2の法定相続分で分けます。つまり、配偶者・子供とも遺留分が4分の1という計算になります。

3-2.相続放棄・限定承認

韓国法では、相続開始の知らせを受けてから3カ月以内に「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の選択が可能です。したがって、相続開始から3カ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きを行えば、放棄が可能です。

在日韓国人は、日本の家庭裁判所で相続放棄の手続きを行うことによっても、有効に相続放棄できるとされていますが、念のため、韓国の債権者がいる場合には、韓国の家庭裁判所である家庭法院においても相続放棄の手続きをしておいたほうが安心です。なお、相続開始の知らせを受けてから3カ月が経過すると、日本法、韓国法とも原則として相続放棄はできないとされています。

相続を知った日から3カ月以内の手続きが必要

韓国法では、相続開始を知った日から3カ月以内に相続放棄または限定承認を行わない相続人は、単純承認したとみなされます。これは日本の民法でも同様です。しかし、日本法では「相続開始を知ったときから3カ月が経過しても、被相続人に相続財産が存在しないと信じるに十分な理由がある場合、相続財産の一部または全部を知ったときから3カ月以内」であれば相続放棄が可能とされています。

一方、韓国法では、3カ月経過後の相続放棄は認められていません。借金の存在を知っていたか、否かにかかわらず相続を承認したものとみなされます。

3か月経過後は特別限定承認の手続きを行う

韓国法では、3カ月経過後の相続放棄を認めない代わりに「特別限定承認制度」を設け、3カ月経過後の限定承認を可能にしています。多額の負債があることを重大な過失なく知らなかった場合、その事実を知った日から3カ月以内であれば限定承認が可能とされています。

特別限定承認は相続人が複数いる場合でも各相続人が家庭裁判所で単独で申し立てることができ、特別限定承認が認められれば、遺産を超える負債があったとしてもプラスの財産の範囲内で負債を返済すれば残りの債務は免れます。

韓国法では子だけでなく、孫も相続放棄が必要

配偶者と子供たちが全員相続を放棄した場合、日本の民法では第2順位以下の相続人へ相続権が移ります。しかし、韓国法では、配偶者と子供たちが全員相続を放棄しても、第1順位は”直系卑属”と規定されているため、直系卑属である孫(孫が放棄した場合はひ孫)が相続権を持ちますすべての子、孫を含む全ての直系卑属が相続放棄しなければ、第2順位の相続人に相続権が移動しません。

親族が相続を放棄する場合には、日本法よりも多くの親族が相続放棄の手続きを相続順に行わなければなりません。よって、韓国では相続放棄の手続きを行う人数が日本よりも多くなります。

4.韓国籍の方の不動産・預貯金相続手続と必要書類

在日韓国人の方が日本にある不動産や預貯金を相続する場合、通常の相続手続きとは異なる点があります。そこで、在日韓国人の方による不動産・預貯金相続手続きの流れについて以下のとおりまとめました。

  • 遺言書があるか確認する
  • 相続財産の確定
  • 相続人の確定
  • 遺産分割協議をする
  • 不動産の相続登記と預貯金の相続手続き

以下で、それぞれについて詳しく解説します。

4-1.遺言書があるか確認する

相続手続きを始める際、まず「遺言書」の有無を確認します。

遺言書が存在すれば、遺言書の内容が優先されます。自筆遺言書が見つかった場合、開封せずに家庭裁判所で検認を受ける必要があります。検認には、相続人の出生から死亡までの韓国戸籍が必要です。

公証人役場」で公正証書遺言を作成した被相続人の場合、相続人は公証人役場に問い合わせて遺言書の有無を確認できます。遺言書検索システムの利用にも韓国戸籍関連の書類が必要です。また、2020年7月から「法務局」が自筆証書遺言の保管サービスを開始しており、遺言書の紛失や改ざん、盗難の心配がなく、家庭裁判所の検認も不要なため利用者が増えています。

遺言書の有無や内容についての確認が可能です。ただし、検索には相続人であることを証明する韓国戸籍関連の書類が必要です。

4-2.相続財産の確定

通帳、不動産の権利書、郵便物などを確認し、生命保険や有価証券があるかどうかを探してみましょう。プラスとマイナスの遺産を把握した後、相続財産の分割を円滑に進めるために財産目録を作成しましょう。財産目録により、具体的な遺産とプラスとマイナスのバランスが明確になります。

また、韓国では「安心相続ワンストップサービス」を利用して「金融取引」「土地」「自動車などの財産」「未納税額・還付税額」を一括申請で確認できます。ただし「安心相続ワンストップサービス」は、韓国の住民登録番号をもつ者のみが利用可能で、韓国に居住していない在日韓国人などは利用できません。

4-3.相続人の確定

まず相続人を確定するためには、被相続人の生まれてから死亡するまでの韓国における戸籍謄本等の書類を取得し、翻訳して家族関係を確認することが必要です。

韓国の民法によれば、配偶者は常に相続権があり、直系卑属と直系尊属がいない場合、配偶者だけが相続人となります。

また、叔父・叔母やいとこなど、四親等以内の傍系血族が相続人となる可能性もあります。さらに韓国の民法では、代襲相続人にも配偶者が含まれるため、相続人を確定する際には慎重に行わなければなりません。

4-4.遺産分割協議をする

基本的に遺産の分割は「法定相続分」に従いますが、遺言書がない場合は「遺産分割協議」により、すべての相続人が合意すれば誰がどの財産を相続するか決める、遺産分割協議が可能です。協議の内容を記録し、すべての相続人が印鑑証明書とともに実印を押すことで「遺産分割協議書」が完成します。

遺産分割協議が合意に至らない場合は、家庭裁判所に調停をもとめることも可能です。

未成年者と親権者が相続人の場合には特別代理人を選任する

未成年の子とその法定代理人である親が同時に相続人となる場合、子と親の利益が相反(利益相反行為)する可能性があります。そのため、法定相続分とは異なる遺産の分割を検討する際には、特別代理人の任命を家庭裁判所に申立することが必要です。

特別代理人の申立は、未成年者の居住地を管轄する家庭裁判所にて親権者や利害関係人が行います。

4-5.不動産の相続登記と預貯金の相続手続き

不動産の相続登記と預貯金の相続手続きは、相続が発生したときに必要な手続きです。しかし、相続登記や預貯金の引き出しには、さまざまな条件や書類の準備、手続きが欠かせません。

相続に関する手続きは、複雑かつ煩雑なものですが、早めに適切に行うことにより、相続人の利益や相続財産の保全につながります。ここでは、不動産の相続登記と預貯金の手続きや必要書類について解説します。

相続手続をする場所

不動産の所有者が外国人でも、日本国内の不動産の名義変更は、該当する不動産の所在地を管轄する日本の法務局で行います。在日韓国人が所有する日本の不動産の名義変更も同様です。

さらに、預金・有価証券・不動産など、金融機関や登記所から要求される書類はそれぞれ異なります。各金融機関で必要な書類が何かを事前に確認し、それに従って手続きを進めることが重要です。

相続登記と預貯金の相続手続きの必要書類

相続による不動産の名義変更、すなわち相続登記の申請には、被相続人の出生から死亡までを証明する戸籍謄本のほか、被相続人の住民票の除票など、公的な書類の提出が必要です。しかし、日本の戸籍には日本国籍がある日本人のみが登録され、外国籍の外国人は登録されません。

そのため、在日韓国人の相続登記では、戸籍謄本等による相続関係の証明はできず、それに代わる書類を提出して相続関係を証明する必要があります。在日韓国人が被相続人である場合の相続登記では、一般には以下の書類の提出が求められます。

【在日韓国人を被相続人とする相続登記のために必要となる書類】
書類 入手先
家族関係証明書 韓国大使館・領事館:
「家族関係登録簿等に係る証明書(登録事項別証明書)」
基本証明書
婚姻関係証明書
入養関係証明書
親養子入養関係証明書
除籍謄本(2007年12月31日までの分) 韓国大使館・領事館
※2008年1月1日家族関係登録制度に移行する前の戸籍制度時の戸籍謄本
外国人住民票の除票の写し 市町村役場
外国人登録原票の写し(2012年7月19日以前死亡の方) 法務省入国管理局
翻訳文

韓国では、伝統的な戸籍制度の廃止とともに、新しい家族関係登録制度が2008年1月1日に導入されました。この制度は、家族構成の記録方法に大きな変化をもたらしました。

戸籍制度は、家族の身分関係を戸主を中心に一つの記録としてまとめていたシステムですが、2005年の民法改正により戸主制が廃止され、その結果、戸籍制度も廃止されました。2008年1月1日から始まった新しい家族関係登録制度では、個人ごとに家族関係登録簿が作成され、身分関係の変更が個別に記録されます。

家族関係証明書

本人の基本情報(登録基準地、姓名、性別、本(本籍地)、出生年月日、住民登録番号、以下、「基本情報」といいます。)とその家族(父母、養父母、配偶者、子)の基本情報が記載されています。兄弟姉妹の情報は含まれず、その関係を証明するには父母の証明書が必要です。

基本証明書

本人の基本情報に加えて、出生、改名、親権、死亡、国籍の喪失や取得などの身分事項が記載されています。

婚姻関係証明書

本人と配偶者の基本情報に加えて、婚姻や離婚に関する事項が記載されています。

養子縁組関係証明書

本人と養父母の基本情報、養子縁組、離縁、養子縁組の無効や取消に関する事項が記載されています。

親養子(特別養子)入養関係証明書

本人、養父母、親養子(特別養子)、実親の基本情報、特別養子縁組、離縁、養子縁組の無効や取消に関する事項が記載されています。

除籍謄本(2007年12月31日以前の身分事項)

2007年12月31日以前の韓国人の身分関係については、戸籍制度で管理されていたため、新しい家族関係登録簿の作成後は、従来の戸籍は除籍処理されています。2007年12月31日以前の身分事項の証明のため、出生から戸籍制度廃止された2007年12月31日分までは除籍謄本を取得する必要があります。

外国人住民票の除票の写し

在日韓国人も2012年7月9日以降は、日本人と同様に住民票が発行されるようになっています。そのため、2012年7月9日以降に発生する相続の際には、故人の最終住所を証明するために住民票の除票を提出します。

2012年7月9日以前の相続では、外国人登録原票の写しが必要

2012年7月9日以前の相続においては、故人の最終住所地を証明するために外国人登録原票などの提出が必要です。外国人登録法の廃止により、2012年7月9日以降は、市町村が保管していた外国人登録原票を法務省が一括して保管しているため、法務省に対して交付請求します。

上記の他にも、日本人と同様の遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書や固定資産証明などが必要となります。なお、韓国語で作成された文書を法務局など公的機関に提出する際には、日本語の翻訳文も提出しなければなりません。

韓国国内の不動産、預貯金を相続する場合

韓国国内の預金や不動産の相続に必要な書類は、基本的に不動産相続登記のための書類と同様です。日本語の書類には、必ず翻訳が必要です。日本の公的機関が発行したすべての書類は、日本外務省の「アポスティーユ認証(文書が日本の公的機関によって作成されたことを証明する認証)」とその領事館公証附翻訳文が必要とされることがあります。

そのため、各金融機関に対してどのような書類が必要なのかを事前に問い合わせておくことが重要です。また、銀行ごとに所定の様式や取り扱いが異なる点にも注意が必要です。

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5.在日韓国人の財産に対する相続税

日本に住む韓国人の相続は、日本と韓国の両国の法律が絡み合い、複雑な手続きが必要です。とくに、相続税については、両国で異なる課税基準や税率が適用されるため、二重課税の可能性も生じます。

ここでは、在日韓国人の財産に対する相続税について、日本と韓国それぞれの相続税申告と二重課税を調整する「外国税額控除」について解説します。

5-1.日本における相続税申告

被相続人が韓国籍であっても、日本に住民票を有し、遺産の総額が基礎控除を超える場合、日本での相続税の申告が必要です。

日本の相続税は、被相続人又は相続人のとちらかが日本に居住している場合には、日本国内財産だけでなく、海外の財産に対しても課税されます(全世界課税)。

そのため、在日韓国人が亡くなった場合の相続では、被相続人が有していた日本国内と韓国国内の財産ともに相続税が課税されます日本の相続税の算出方法は、被相続人や相続人の住所や国籍に関わらず一定です。

被相続人が韓国籍など外国籍であっても、相続税の計算は日本の民法に基づく法定相続人の数と法定相続分により行われます。

基礎控除額

相続税の基礎控除は、相続税計算における非課税枠のことをいい、課税対象となる相続財産から基礎控除額を差し引くことで、相続税が軽減されます。つまり、基礎控除により課税対象となる相続財産の額がゼロになると相続税は発生しません。

日本における「(海外財産を含む)遺産に対する基礎控除額」は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の計算式により算出されます。

申告期限

日本の相続税の申告は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に行う必要があります。しかし、韓国の戸籍などの必要な書類を集めるのに時間がかかり、期限内に申告ができない場合もあります。

日本の相続税の申告は延期できないため、10カ月以内に間に合わない場合は「未分割申告」を行わなければなりません。未分割申告は、10カ月が経過する前に仮の相続税を計算し、先に納付し遺産分割が確定した段階で「修正申告」や「更正の請求」を行う方法です。

5-2.韓国における相続税申告

被相続人が韓国内に居住していた場合はには、韓国国内及び国外財産が相続税他の対象となりますが(全世界課税)、被相続人が日本に住んでいる在日韓国人など、韓国国外居住である場合には、韓国国内の財産のみが韓国の相続税の対象となります。

韓国の相続税は「遺産課税方式」を採用しており、被相続人が所有していた相続財産全体に対して課税します。そのため、相続人の数や相続の割合に関係なく、被相続人の財産に基づいて税額が決定され、相続人の数による相続税額の変動は生じません

基礎控除額

韓国における「遺産に対する基礎控除額」は、被相続人が韓国居住者の場合は5億ウォン以上となり、非居住者の場合は2億ウォンとなります。これは、在日韓国人の遺産が2億ウォン以下である場合、相続税の申告は不要であることを意味します。

課税標準 税率 累進控除
1億ウォン以下 10%
1億ウォン超〜 5億ウォン以下 20% 1,000万ウォン
5億ウォン超〜 10億ウォン以下 30% 6,000万ウォン
10億ウォン超〜 30億ウォン以下 40% 1億6,000万ウォン
30億ウォン超 50% 4億6,000万ウォン

申告期限

韓国に財産を有する場合、韓国民法に従う相続人は「相続開始日が属する月の末日から6カ月以内に相続税の課税標準課額及び課税標準」を管轄の税務署長に申告する必要があります。ただし、被相続人とすべての相続人が非居住者である場合、申告期限は相続開始日が属する月の末日から9カ月以内です。

一方の日本における相続税の申告は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に行う必要があります。したがって、通常は韓国の相続税の申告期限が先に来ることになります。

5-3.二重課税を調整する「外国税額控除」

被相続人である在日韓国人の韓国にある財産は、日本と韓国の両方で相続税の対象となります。ただし二重課税を避けるために「外国税額控除制度」という仕組みが存在し、これにより税負担が軽減されます。外国税額控除制度は、日本に居住している人が外国の所得税相当の税金を支払った場合に、二重課税を調整するための制度です。外国税額控除により、韓国で発生した相続税は日本の相続税の計算過程で控除できます。

6.韓国籍の方が相続手続きする際の注意点

外国籍でも、日本の法務局で相続登記を行う際には、基本的に同様の書類が必要です。これらの書類には、故人の生涯にわたる身分事項を証明する書類や、新たな登記名義人となる相続人の住所が確認できる公的証明書など多くの書面が含まれます。これらの書類は、銀行の預金解約など他の相続手続きにおいても必要です。

ただし、やり取りが両国にまたがるため、韓国語の読み書きができない場合には、自分で手続きを行うことは困難を極めますそのため、韓国語に堪能で韓国の文化や慣習に精通しており、日本語でも対応できる人に依頼するのがおすすめです。

また、韓国の金融機関や登記所、相続税申告などの手続きにおいて、それぞれの専門家に個別に依頼するのは多くの手間と時間がかかります。韓国と日本の相続に詳しい専門家に一括して依頼するのもひとつの方法です。

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7.まとめ

本記事では、日本在住の韓国籍の方が相続する際に知っておきたい事柄について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。

✓ 在日韓国人の相続には「韓国」の民法が適用される

✓ 遺言により「日本」の民法での相続手続きを行うことも可能である

✓ 相続の第1順位は、日本においては「子」であるが、韓国では「直系卑属(子、孫、ひ孫等)」である

✓ 韓国民法では、配偶者にも代襲相続の権利がある

✓ 日本の民法では、配偶者と子で相続分はそれぞれ1/2であるが、韓国民法では配偶者の割合は子供の相続分の5割増しである

✓ 在日韓国人の相続登記では、戸籍謄本等による相続関係の証明はできず、それらに代わる書類(家族関係証明書、基本証明書、婚姻関係証明書、養子縁組関係証明書、親養子(特別養子)入養関係証明書、除籍謄本(2007年12月31日以前の身分事項))を提出して相続関係を証明する必要がある

✓ 在日韓国人の韓国国内の財産に対しては、日本と韓国ともに相続税が課税されるが、外国税額控除により、韓国で発生した相続税は日本の相続税の計算過程で控除できる

韓国の民法と日本の民法には、いくつもの違いがあります。あらかじめその違いを把握しておき、家族構成を勘案した上でどちらの法を適用するのが有利なのかをシミュレーションしておきましょう。ただし、日本法の適用を受けるには遺言書に「日本法を適用する旨」を記しておかなければなりませんので注意しておきましょう。

また、手続きに必要な書類が揃わない場合や、自力で更新手続きをすることが難しいと感じる場合もあるかもしれません。難しいと感じるときは、国際相続に詳しい司法書士などの専門家に依頼するのもひとつの方法です。

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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