2023/10/30
2025/10/16
外国人ビザ
経営管理ビザの要件緩和は誤り!2025年最新の厳格化内容と対策を専門家が解説
外国人が日本で会社を設立し経営するためには、経営管理ビザが必要です。過去には、外国人起業家を増やすための「要件緩和」や「起業ビザの全国展開」といった予測情報もありましたが、2025年10月16日、結論として要件は緩和ではなく、過去に例を見ないほど大幅に厳格化されました。
この記事のポイントは以下のとおりです。
| ✓経営管理ビザとは、外国人が日本で会社経営や管理職として勤務ができる就労ビザである
✓2025年10月16日、経営管理ビザの要件が「緩和」ではなく「厳格化」される法改正が施行された ✓従来の「資本金500万円」は「資本金3,000万円以上」に引き上げられ、さらに「常勤職員1名以上の雇用」が両方必須となった ✓ 新たに「3年以上の経営経験または修士以上の学位」と「日本語能力」が必須要件として追加された ✓ 事業計画書は、中小企業診断士など専門家による確認を受けることが義務付けられる ✓ 「起業ビザの緩和」は実現せず、起業準備後のビザ取得のハードルはむしろ格段に上がる ✓経営管理ビザの在留期間は原則1年、更新により2年や3年に延長できることもある ✓2024年3月から、有償型の新株予約権の払込金も一定の要件を満たせば、出資金3000万円として認められる |
本記事では、この歴史的な制度改正の正確な内容を、出入国在留管理庁の公式資料に基づき、専門家が分かりやすく解説します。
1.経営管理ビザとは
経営管理ビザ(経営・管理在留資格)は、外国人が日本で会社経営や管理職として勤務するために必要な一種の就労ビザです。以前は「投資・経営ビザ」として知られていましたが、現在では外国の資本が関与していなくても取得が可能となったため、名称が「経営・管理ビザ」に変更されています。
日本国民や永住権を持つ人、日本人の配偶者などの在留資格があれば、国内で自由に会社の経営や役員職につくことができますが、外国人は在留資格に応じてこれらの職に就くことについて制限されています。しかし、経営管理ビザを取得することで、外国人も日本国内で企業の経営者や管理職として働くことが可能になります。
1-1.経営管理ビザの最初の在留期間は原則1年
通常、経営管理ビザの在留期間としては3ヶ月から5年の間の複数の期間が設定されています。申請者の提出した計画や状況により在留期間は決定されますが、初回では1年間が標準的な期間です。
また、ビザの更新に際しても、一般的には毎年の更新が見込まれますが、運営する事業経営状況や経営者の在留履歴、事業の規模などに応じて、更新期間を2年や3年と延長することが許されるケースも存在します。
1-2.経営管理ビザは原則、毎年更新が求められる
外国人が経営管理ビザを取得した場合、基本的には1年更新のビザであるため1年ごとに在留期間の更新手続きが必要になります。更新の都度、書類を用意し提出が必要など、外国人経営者には手続き負担が重い状態となっていました。
2.【2025年新制度】経営管理ビザ取得の5つの新要件
2025年10月16日の法改正により、経営管理ビザを取得するためのルールは見直され、大幅に厳格化されました。「資本金500万円」「学歴・職歴不問」といったこれまでの要件は通用しません。新たに定められた、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。
要件1:事業規模(資本金3,000万円以上および常勤職員1名以上)
事業の安定性を示すための基準が、最も大きく引き上げられました。以前は「資本金500万円」または「常勤職員2名」のどちらかを満たせばよかったのですが、新制度では以下の「資本金3,000万円」および「常勤職員1名以上」の両方を満たすことが必須となります。
3,000万円以上の資本金または出資総額
株式会社であれば資本金の額、合同会社であれば出資の総額が3,000万円以上必要です。個人事業主の場合は、事務所の確保や設備投資など、事業のために投下された総額が3,000万円以上であることが求められます。
1人以上の常勤職員の雇用
上記の資本金要件に加えて、常勤の職員を1人以上雇用することが義務付けられました。この「常勤職員」になれる人には条件があり、以下のいずれかに該当する人に限られます。
- 日本人
- 特別永住者
- 「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」のいずれかの在留資格を持つ外国人
注意:「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザで働く外国人は、この常勤職員の頭数には含まれません 。
要件2:独立した事業所の確保
事業を行うための物理的な拠点を確保することが必要です。この点も厳格化され、原則として自宅と事業所を兼ねることは認められなくなりました 。
バーチャルオフィスや、誰でも利用できるコワーキングスペースの共用エリアも認められません。事業活動に専念できる、明確に区画された独立した空間を、法人名義で契約する必要があります。
要件3:専門家が確認した実現可能な事業計画
事業の安定性・継続性を示す事業計画書が重要であることは従来通りですが、新たにその計画の信頼性を担保するための仕組みが導入されました。
提出する事業計画書は、その計画に具体性があり、実現可能であることを、経営に関する専門的な知識を持つ第三者(専門家)に確認してもらうことが義務付けられました 。施行日時点で、この専門家として認められているのは、以下の国家資格を持つ人たちです。
- 中小企業診断士
- 公認会計士
- 税理士
単に計画を作るだけでなく、専門家を納得させられるレベルの事業計画が求められます。
事業内容や収支見込み、事業計画書などを提出して、適正性、継続性と安定性を示します。ビジネスの実体があり、利益をだし事業継続できるのかという点について出入国在留管理局は審査します。何年にもわたって赤字を出し続けることが想定される会社は認められません。
また、インターネット関連や貿易などのビジネスでは少人数での会社運営も可能です。しかし、飲食店、マッサージ店や小売店などの店舗系ビジネスでは、経営管理ビザにおける経営者は基本的に経営業務を担うことを求められるため、調理や接客対応などの現場労働をすることを想定していません。そのため、店舗系ビジネスでは、現場スタッフを採用する必要があります。
要件4:経営者自身の経歴または学歴
旧制度では問われなかった、申請者自身の経営者としての資質を客観的に証明することが必須となりました。以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
事業の経営または管理について3年以上の実務経験
これには、社長や取締役、部長、支店長といった役職で、実際に経営や管理業務に携わった経験が含まれます。日本国外での経験も対象となります。また、在留資格「特定活動」で行った起業準備活動の期間も、この3年の経験に含めることができます。
経営学修士(MBA)のような経営管理に関連する学位や、これから行おうとする事業の分野(例:IT事業を始めるなら情報科学の修士号)に関する博士、修士、または専門職の学位を取得していることが求められます。日本だけでなく、外国の大学等で授与されたこれに相当する学位も含まれます。
要件5:一定の日本語能力
日本国内で円滑に事業を運営するための能力を示すため、申請者本人または雇用する常勤職員のいずれかが、相当程度の日本語能力を持つことが新たに義務付けられました。
「相当程度の日本語能力」の具体的な基準
「日本語教育の参照枠」という国際的な基準で「B2相当以上」と定義されており、具体的には以下のいずれかに該当することを証明する必要があります。
- 日本語能力試験(JLPT)でN2以上の認定を受けていること
- BJTビジネス日本語能力テストで400点以上を取得していること
- 日本の大学や大学院などの高等教育機関を卒業していること
- 中長期在留者として20年以上日本に在留していること
誰が要件を満たすか
この要件は、申請者自身が満たす必要はなく、雇用する常勤職員が満たしていても構いません。重要な点として、要件1の「常勤職員」とは異なり、この日本語能力要件を満たすための「常勤職員」には、「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザで働く外国人も含まれます。
3.2024年3月から有償型の新株予約権の払込金も資本金として認められる
2024年3月に経営管理ビザのガイドラインが改訂され、有償のJ-KISS型新株予約権を利用した資金調達についても、資本金3000万円の出資として認められるようになりました。有償型のJ-KISS型新新株予約権が経営管理ビザの要件にどのように影響するかを説明しています。
有償型新株予約権(J-KISS型)とは
経営管理ビザの取得を目指す外国人起業家にとって、3000 万円の資金調達は一つの大きなハードルです。
特に日本において事業を行うためには、資本金の調達の他、事業所の確保など、事業規模が一定の基準を満たす必要があります。この点で、有償型の新株予約権であるJ-KISS型が重要な役割を果たします。J-KISS型は、スタートアップ企業が投資家から資金を調達する際に利用される手法で、株式を直接発行する代わりに、将来株式に転換される権利(新株予約権)を有償で提供します。
これにより、スタートアップ企業は厳格な企業価値評価をした上での普通株や優先株といった具体的な株式を直接発行することなく、新株予約権の発行時に資金を調達することができます。投資契約に基づき、特定の条件が満たされた場合(例えば、追加の資金調達が行われるなど)に、この権利が株式に転換されます。
J-KISSは、投資家が将来的に企業の株式を保有する可能性を持つ一方で、初期段階では株式ではなく「権利」としての性質を持つため、企業の資本構成を複雑にしないという利点があり、スタートアップ企業はより柔軟に、そして簡潔に資金調達を行うことが可能となります。
経営管理ビザの資本金3000万円に有償型の新株予約権の払込金が認められる
経営管理ビザを取得するための経営管理ビザの基準には、事業の資本金または出資総額が3,000万円以上であることが求められます。
有償型新株予約権が資本金として認められる要件
株式を発行することなく、J-KISS型新株予約権によって調達された払込金は、次の2つの条件を満たす場合に限り、資本金としての計上が認められます。
- 新株予約権の発行によって得られた払込金が返済義務のないものであること
- 新株予約権が将来権利行使される際に払込資本となる場合及び権利行使されずに失効し利益となる場合のいずれであっても、資本金として計上されること
有償型新株予約権の払込金を資本金とするための必要書類
有償型型新株予約権を利用した資金調達で経営管理ビザの要件を満たすためには、以下の書類が必要とされます。
- 新株予約権の発行に際して締結された投資契約書(J-KISS型新株予約権契約書など)
- 払込金額を証明する資料(通帳の写しや取引明細書の写し)
- 払込金額のうち、経営管理ビザの資本金3,000万円として計上して申請しようとする額について、将来、新株予約権が権利行使された際に資本金として計上することの誓約書等
このように、J-KISS型新株予約権を活用することで、スタートアップ企業は経営管理ビザの資金調達要件をクリアしやすくなるとともに、より柔軟な資金調達が可能となります。
4. 2025年の法改正:「起業ビザ緩和」ではなく「経営管理ビザ厳格化」
2024年年末に報道されていた「2025年からの起業ビザの緩和」や「全国への拡大」という情報は、残念ながら実現しませんでした。実際に行われたのは、その正反対の経営管理ビザの大幅な厳格化です。
「起業ビザ」とは何か?
一般に「起業ビザ」と呼ばれるものには、一部自治体などが実施する「特定活動(外国人起業活動促進事業)」など、起業”準備”のための在留資格があります。これは、本格的な事業開始前に日本に滞在し、会社設立や事務所契約などの準備活動を行うためのものです。
緩和ではなく、ゴールへの道が険しくなった
今回の法改正は、この「準備期間」の後のゴールである経営管理ビザの取得要件そのものを、極めて厳しいものに変えました。
つまり、たとえ起業準備活動が認められたとしても、最終的には資本金3,000万円、常勤職員1名の雇用、3年以上の経営経験といった、非常に高いハードルをクリアしなければ、日本で経営者として活動を続けることはできなくなったのです。
「独立した事業所や出資金なしで起業できる」というのは、あくまで限られた「準備期間」の話であり、その後に続く本格的なビザ取得の道は、以前より遥かに険しくなった、というのが今回の法改正の正しい理解です。
5.まとめ
| ✓経営管理ビザとは、外国人が日本で会社経営や管理職として勤務ができる就労ビザである
✓2025年10月16日、経営管理ビザの要件が「緩和」ではなく「厳格化」される法改正が施行された ✓従来の「資本金500万円」は「資本金3,000万円以上」に引き上げられ、さらに「常勤職員1名以上の雇用」が両方必須となった ✓ 新たに「3年以上の経営経験または修士以上の学位」と「日本語能力」が必須要件として追加された ✓ 事業計画書は、中小企業診断士など専門家による確認を受けることが義務付けられる ✓ 「起業ビザの緩和」は実現せず、起業準備後のビザ取得のハードルはむしろ格段に上がる ✓経営管理ビザの在留期間は原則1年、更新により2年や3年に延長できることもある ✓2024年3月から、有償型の新株予約権の払込金も一定の要件を満たせば、出資金3000万円として認められる |
今回の法改正により、外国人が日本で起業するための環境は、根本から変わりました。「誰でも挑戦できた」時代は終わり、十分な資金力と明確な経営実績を持つ、質の高い経営者のみが受け入れられる時代へと移行したと言えます。
「事業の安定性・継続性」を専門家が認めた事業計画書で示すことが必須となった今、経営管理ビザの取得を目指すには、これまで以上に専門家と連携し、戦略的に準備を進めることが不可欠です。
この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)
相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に移住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。
【主なサポート実績】
年間100件以上の会社設立、不動産・法人登記をサポート。
アメリカ、中国、韓国など、20カ国以上の外国人の不動産取引、起業を支援。
IT、飲食、貿易、コンサルティングなど、多岐にわたる業種の設立実績。
司法書士・行政書士として、会社設立の登記手続きから経営管理ビザの取得、その後の役員変更や増資まで、ワンストップでサポートできるのが強みです。まずはお気軽にご相談ください。




