2023/9/5 2023/11/29

外国人の法人登記

外国人の会社設立に必要な日本在留資格とは?法人登記の方法も紹介

日本国籍を有している方なら、日本国内で会社設立する際に条件は課せられません。また、外国籍の方も、在留資格にかかわらず誰でも日本国内で会社設立が可能です。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

✓ 国籍や在留資格を問わず、誰でも日本国内で会社設立できる

✓ 外国人が経営者になるためには、永住者や定住者、経営・管理ビザなどの在留資格が必要

✓ 経営・管理ビザを取得するためには、事業の安定性・継続性や経営者本人の経営能力などが確認される

✓ 会社設立の際には法人登記が必要

本記事では、外国人が会社設立時に必要な在留資格についてまとめました。経営・管理ビザの取得条件や会社設立の流れについても紹介します。

必要な資格や費用を事前に知っておくことで、スムーズな会社設立が可能になります。ぜひご覧ください。

1.ビザのない外国人も会社設立は可能

国籍や在留資格を問わず、日本国内で会社を設立することは可能です。日本国籍の方だけでなく外国籍の方も、留学や技術・人文知識・国際業務ビザで日本に滞在している方も、会社を設立できます。

なお、会社を設立しなくても事業活動は可能です。本記事では外国人が会社を設立する手順や費用なども紹介しますが、難しいと感じるときは個人事業として始める方法も検討してください。

2.外国人が経営者になるときに必要な在留資格

外国籍の方も会社設立は可能ですが、設立した会社に経営者としてかかわるには次の在留資格を有していることが求められます。

  • 永住者・定住者・日本人の配偶者など
  • 経営・管理ビザ

それぞれの在留資格について見ていきましょう。

2-1.永住者・定住者・日本人の配偶者など

次のいずれかに該当する場合は、国籍を問わず、経営者として活動できます。

  • 永住者
  • 定住者
  • 日本人の配偶者など
  • 永住者の配偶者など

2-2.経営・管理ビザ

永住者・定住者・日本人の配偶者など・永住者の配偶者などのいずれにも該当しない場合でも、「経営・管理ビザ」を取得していれば、会社の経営者として活動できます。現在の在留資格が「経営・管理ビザ」以外のときは、入国管理局で「経営・管理ビザ」の取得申請をおこない、在留資格を変更することが必要です。

2-2-1.経営・管理ビザを取得する条件

経営・管理ビザを申請するためには、経営者として働く能力があることと、経営者としてかかわる事業所があることを示す必要があります。次の条件を満たしたうえで、経営・管理ビザの申請をおこないましょう。

  • 事業所がある
  • 資本金か出資の総額が500万円以上、もしくは2名以上の常勤職員を雇用する

また、事業の安定性・継続性や申請人本人の経営能力を示すために、事業計画書や申請人本人の経歴や報酬、職位などを証明する書類の提出も求められます。

3.外国人の会社設立の流れ

外国籍の方は、在留資格によっては経営者として働けない可能性があります。会社を設立するときは、経営者の在留資格に応じたスケジュールで手続きを進めていくことが必要です。

永住者・定住者・日本人の配偶者など・永住者の配偶者などのいずれにも該当せず、経営・管理ビザ以外の在留資格を持つ外国籍の方は、次の流れで会社設立を進めていきましょう。

  1. 会社の基本事項を決定する
  2. 定款を作成する
  3. 資本金を振り込む
  4. 法人登記を申請する
  5. 経営・管理ビザを取得する

各段階に応じてすべき事柄や注意点を説明します。

3-1.会社の基本事項を決定する

まずは会社の基本事項を決定します。少なくとも次の事項は、会社設立前に決めておくことが必要です。

  • 会社の名称(商号)
  • 会社の種類
  • 発起人、発起人ごとの出資額
  • 資本金の金額
  • 本店所在地
  • 役員構成
  • 会社の事業内容・目的
  • 事業年度

会社の種類とは、株式会社や合同会社のことです。会社の種類が異なると、設立手続きや意思決定の手順などが変わります。

上記のすべてを決定した後で、社印を作成しておきましょう。代表者印と角印、銀行印の3つは少なくとも必要です。また、代表者印は登記の際にも使います。早めに作成しておくほうがよいでしょう。

3-2.定款を作成する

基本事項決定後に定款を作成します。定款とは会社の規則や基本事項をまとめた書類のことで、法人登記の際にも必要になります。

なお、定款は公証役場に提出し、公証人の認証を受けることが必要です。認証には1週間ほどかかるため、会社設立日を決めている場合は逆算して計画的に手続きを進めていきましょう。

3-3.資本金を振り込む

資本金を発起人が定めた銀行口座に振り込みます。定款認証後に資本金を振り込むことは基本ですが、認証前であっても会社設立のための出資金と証明できる場合は問題ありません。

なお、資本金の払い込みに使用できる金融機関は、日本の銀行法に規定されている必要があります。発起人の銀行口座が日本の銀行法に規定されていない場合は、発起人自身が日本の金融機関で新たに口座を開設するか、日本の金融機関に口座を持つ協力者に取締役又は発起人になってもらい、その協力者の口座に払い込みます。

また、発起人の銀行口座が日本の銀行法に規定されている金融機関の海外支店のものであるときは、問題なく資本金の払い込みに使用することが可能です。ただし、口座内の資金は外貨となるため、日本円とのレートを証明が必要になります。

3-4.法人登記を申請する

法務局で法人登記を申請します。登記申請日が会社の設立日となるため、日にこだわりがある場合は申請日を調整してください。法人登記の手続きが完了すると、登記事項証明書を取得できるようになります。

なお、法人登記の際には以下の登録免許税の納付が必要です。

会社の種類 登録免許税額
株式会社 資本金の0.7%(資本金の0.7%が15万円に満たないときは15万円)
合同会社 資本金の0.7%(資本金の0.7%が6万円に満たないときは6万円)
合名会社・合資会社 6万円

参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」

3-5.経営・管理ビザを取得する

取締役などの会社経営者が日本国籍を持たず、かつ永住者・定住者・日本人の配偶者など・永住者の配偶者などのいずれにも該当しない場合は、経営・管理ビザを取得している必要があります。

経営・管理ビザとは異なる在留資格を取得しているときは、入国管理局に出向き、在留資格の変更申請をおこなわなくてはいけません。なお、経営・管理ビザの申請の際に、以下の書類提出が必要になることがあります。早めに準備しておきましょう。

  • 役員報酬を定める書類の写し
  • 担当業務や地位がわかる書類
  • 事業所の登記事項証明書
  • 事業所の沿革や組織、事業内容がわかる書類
  • 事業所の常勤職員の住民票や賃金支払いに関する書類
  • 事業所の施設の存在がわかる書類(不動産登記簿謄本や賃貸借契約書など)
  • 事業計画書

4.外国人が会社設立するときに必要な費用

外国人が会社を設立するときには、次の費用が必要になることがあります。

  • 資本金
  • 法人登記費用
  • 在留資格取得費用

それぞれどの程度の金額が必要か、具体的に見ていきましょう。

4-1.資本金

日本国籍を有している場合や、永住者・定住者・日本人の配偶者など・永住者の配偶者などのいずれかに該当する外国籍の方は、1円以上の資本金があれば会社を設立できます。また、経営・管理ビザの在留資格を有する方も、1円以上の資本金で会社設立が可能です。

しかし、これから経営・管理ビザを取得する場合は、500万円以上の資本金を準備することが必要になります。ただし、2名以上の常勤社員を雇用することでも代替できます。

4-2.法人登記費用

法人登記の際に、登録免許税が必要です。会社の種類や資本金の金額によって、6万円もしくは15万円以上の税額が課せられます。

また、登記手続きを司法書士などの専門家に依頼する場合は、専門家報酬も必要です。状況によっても変わりますが、10万~15万円は見積もっておきましょう。

4-3.在留資格取得費用

経営・管理ビザの取得そのものに費用はかかりません。しかし、書類作成などを専門家に代行してもらうと、15万~20万円程度の手数料が必要です。

5.まとめ

本記事では、外国人が会社を設立するときに知っておきたい事柄について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。

✓ 国籍や在留資格を問わず、誰でも日本国内で会社設立できる

✓ 外国人が経営者になるためには、永住者や定住者、経営・管理ビザなどの在留資格が必要

✓ 経営・管理ビザを取得するためには、事業の安定性・継続性や経営者本人の経営能力などが確認される

✓ 会社設立の際には法人登記が必要

経営・管理ビザなどの在留資格がなくても会社を設立できますが、経営者になるためには特定の在留資格が求められます。永住権などの一定の資格がないときは、経営・管理ビザの申請をおこないましょう。

経営・管理ビザの申請や会社設立にはさまざまな書類や手続きが必要です。難しいと感じるときは、専門家に依頼するのもひとつの方法です。

この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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