2023/9/5 2024/2/23

外国人の法人登記

外国人の会社設立には銀行口座が必要?必要な場面と口座開設方法を詳しく説明

外国人が会社を設立するときは、1つの障壁となるのが銀行口座の準備、開設が必要です。銀行口座がないと資本金の管理が難しくなるだけでなく、取引相手からの入金・取引先への送金も困難になります。しかし、外国人が法人口座を開設するのは容易ではなく、会社設立の手続きをスムーズに進められないこともあります。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

✓ 外国人が日本国内で会社設立するのあたって必要な銀行口座は、①資本金払込用の口座②会社設立後の法人口座二つ

✓ 会社社設立時には、日本国内の協力者に発起人又は設立時の取締役に入ってもらい、その人の口座を資本金払込用口座とすることが簡便

✓ 法人口座を開設する前に会社設立直後の運転資金管理用の個人口座を開設する必要がある

✓ 法人口座の開設には法人印や定款、事業内容がわかる書類などの提出も求められる

✓ メガバンクの口座開設が難しいときは地方金融機関やネット銀行も視野に入れる

✓ 法人口座開設の際には2~3週間ほどの審査が必要

本記事では、外国人が会社設立する際に必要となる銀行口座の開設方法や必要書類についてまとめました。法人口座の開設が難しいときに検討したいポイントについても紹介します。

手続きの流れや必要書類を事前に知っておくことで、スムーズな口座開設が可能になります。ぜひご覧ください。

1.会社設立時と設立後に銀行口座が必要

会社を設立するとき、また、設立した後も、銀行口座が必要です。主に次の場面で銀行口座が必要になります。

  • 会社設立前後の資本金の管理(出資者(発起人)代表の個人口座)
  • 入金・出金(会社設立後の法人口座)

それぞれの場面を詳しく見ていきましょう。

1-1.外国人が日本で会社設立する場合の流れ

外国人が日本で会社を設立する場合の流れは下記の通りです。

  1. 会社の基本事項を決める
  2. 実印を作成する
  3. 定款作成・公証人による定款認証
  4. 資本金(出資金)を発起人(出資者)代表口座に払い込む
  5. 会社設立登記の申請・開業届の提出
  6. 経営・管理ビザに変更する
  7. 会社設立後に法人口座を開設し、出資金を法人口座に送金する

上記の手続きのうち、4の資本金(出資金)を払い込むための銀行口座と、7の会社成立後の出資金を管理する法人口座の2つの口座が必要です。

1-2.会社設立時の資本金の払込用口座管理

会社設立手続きにおいては、資本金を払い込むための銀行口座が必要です。会社設立登記にあたって、利用できる銀行口座は下記の通りです。

  • 日本国内にある日本銀行の本店及び支店
  • 海外にある日本銀行の支店
  • 日本国内にある外国銀行の日本支店

発起人(出資者)となる海外在住の外国人が、海外にある日本銀行の支店で銀行口座をもっていればその口座を利用可能です。ですが、新規で海外で口座を開設しようとするのは難しい状況です。理由としては、海外にある日本銀行の支店は、日本企業向けの金融サービスを提供しており、現地在住の外国人に対して口座開設サービスを提供していない可能性もあるからです。

海外に居住している外国人は、日本の銀行口座(※)を持っていないケースが少なくありません。口座開設には「日本に6ヵ月以上滞在していること」や「住民票があること」などの条件を課す金融機関も多く、短期滞在で来日した外国人にとっては日本国内における口座開設は難しい状況です。

※日本の銀行の日本国内本支店、日本の銀行の海外支店、認可を受けて設置された外国銀行の日本国内支店のいずれか。日本の銀行の海外支店に入金した場合は、振込日の為替レートによる日本円表記が必要。

日本国内協力者の銀行口座を資本金払込用口座として利用するのがおすすめ

海外居住の外国人が日本に口座を持っていない場合、日本国内の協力者に一部出資をしてもらい発起人となってもらうか、設立時の取締役に一時的に入ってもらう必要があります。発起人・取締役にならずに協力者になってもらうという特例(※)もありますが、後述する会社設立後の法人口座の開設や国内での取り引きについて考えるなら、やはり発起人か取締役になってもらうほうがよいでしょう。

発起人又は設立時取締役となった方の個人の銀行口座を資本金払込用口座として利用することで、会社設立登記ができます。

※特例は、発起人と設立時の取締役の全員が日本国内に住所がない場合に適用される。

資本金の振込方法の注意点

海外居住の外国人が資本金(出資金)を資本機払込用口座に送金してもらう際には、いくつか注意点があります。

定款認証後に資本金(出資金)を送金する

資本金払込用口座内に資本金に相当する残高がある場合でも、一旦引き出してから定款認証後の日付で、資本金として新たに振り込むことが必要です。残高があるだけでは認められません。資本金として振込みをしたという履歴を記録する必要があります。

資本金額以上の金額を送金する

海外から資本金(出資金)を振り込む場合は、手数料に数千円かかることもあるため、資本金額よりも少し多めに振り込むようにしましょう。定めた資本金よりも不足すると会社設立はできません。また、送金に日数がかかることもあるため、余裕を持って早めに振り込むことも大切です。

会社設立後は資本金を自由に使える

会社設立完了後は、その資金を事業運営のために自由に使うことができます。
オフィスの設備購入や広告・マーケティング活動に使うことが可能です。発起人又は設立時取締役の資本金払込用口座から新規で作る法人口座に移す前でも利用可能です。ただし、経費で支払った費用の領収書は保管しておくようにしましょう。

また、経営管理ピザ申請では500万円の資本金の要件がありますが、会社設立後であれば、経営管理ビザ申請前に会社の経費としての使用しても問題ありません。

1-3.入金・出金用の口座

会社設立後は、ほかの事業者と取引をおこなうことで事業活動を進めていきます。そのため、取引先からの入金、取引先への出金に用いるの法人口座が必要です。

また、取引以外においても入出金が発生することはあります。たとえば事業に必要な備品を購入するときには、会社の口座から出金すると経費として計上しやすく、また、会社の資金の流れも把握しやすくなります。

2.外国人による法人口座開設は難しい

実際のところ、法人口座の開設は簡単ではありません。外国人の場合は日本人よりも必要書類が多くなるケースもあり、さらに口座開設が難しくなることもあります。外国人が法人口座を開設するコツや方法について見ていきましょう。

2-1.まずは個人口座を開設しよう

後述しますが、法人口座の開設までには2~3週間ほどかかります。一方、個人口座は経営管理ビザなど日本国内に在留可能なビザを有していれば、開設ができます。個人口座は審査が比較的早く、金融機関によっては最短即日で開設できることもあります。

法人口座を開設するまでの間、会社の資金を管理する口座が必要です。先に法人代表者の個人口座を開設し、運転資金管理に活用しましょう。

2-2.地方の金融機関やネット銀行を検討す

口座開設の際には審査が実施されるため、希望する金融機関で口座を開設できるとは限りません。

口座開設しやすい金融機関は、上から並べると次の通りです。

①インターネット銀行
②信用金庫
③ゆうちょ銀行
④地方銀行
⑤都市銀行

とりわけ日本全国に支店・営業所があるメガバンクや都市銀行は口座開設の申込数、審査事項も多く、法人口座開設は難しい傾向にあります。

メガバンクや都市銀行での口座開設が難しいときは、地方の地方銀行や信用金庫などの金融機関も視野に入れてみましょう。地方銀行や信用金庫なら、柔軟な対応を期待できることもあります。また、ネット銀行も検討してください。申込みから口座開設までの手続きをすべてオンラインでできるため、窓口に足を運ぶ必要がありません。

銀行としては、将来的に融資などの取引ができる企業の口座を開設したいと考えています。そのため、実績がない状況で、本国へ帰国されてしまいかねない経営状況では、銀行口座の開設を断ることが多くあります。

インターネット銀行で口座を開設し、日本での事業の軌道が乗れば信用金庫、地本銀行、都市銀行の口座開設もできるようになります。

2-3.日本在住者が代表取締役の場合は開設しやすい

ネット銀行に限らず、多くの金融機関ではオンラインで口座開設の手続きに対応しています。場所を問わず手続きできますが、「申込者は日本在住であること」「日本に住民票があること」などといった条件を課せられるケースも多く、外国に居住した状態での口座開設は困難です。

そのため、会社設立時は日本在住者の方を代表取締役にしたほうがの会社設立に伴う事務手続きをスムーズに行えるのでおすすめです。

3.外国人の銀行口座開設に必要な書類

法人口座を開設するときは、次の書類の提出が求められます。

  • 履歴事項全部証明書
  • 法人の印鑑証明書
  • 取引担当者の本人確認書類

本人確認書類とは運転免許証やパスポート、個人番号カードなどです。法人代表者や取引担当者が外国籍の場合は在留カードなどの提出も必要になります。

また、業種によっては、行政機関などの許認可や登録を示す書類なども必要です。そのほかにも次の書類の提出を求められることがあるため、準備しておきましょう。

  • 会社の事業内容がわかる書類、URL
  • 実質的支配者を確認する書類

4.外国人の銀行口座開設に必要な期間

金融機関に口座開設を申込むと、個人口座・法人口座を問わず所定の審査が実施されます。法人口座に関しては、審査期間が2~3週間かかることは一般的です。

書類に不備があるときや、審査の過程で追加書類の提出が求められるときは、さらに審査が長引きます。口座開設までに1ヶ月ほどかかることもあるため、会社設立の日が決まっている場合は逆算して早めに申込むようにしましょう。また、正しい書類を過不足なくそろえておくこと、追加書類の提出を求められたときはすぐに対応することも重要です。

銀行口座は会社が営業活動を進めていくうえで欠かせないものです。会社を設立しようと思い立ったときは、資金調達や事業所の選定などに加え、口座開設についても準備していくようにしましょう。

5.まとめ

本記事では、外国人が会社設立のための銀行口座を開設するときに知っておきたい事柄について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。

✓ 外国人が日本国内で会社設立するのあたって必要な銀行口座は、①資本金払込用の口座②会社設立後の法人口座二つ

✓ 会社社設立時には、日本国内の協力者に発起人又は設立時の取締役に入ってもらい、その人の口座を資本金払込用口座とすることが簡便

✓ 法人口座を開設する前に会社設立直後の運転資金管理用の個人口座を開設しておく

✓ 法人口座の開設には法人印や定款、事業内容がわかる書類などの提出も求められる

✓ メガバンクの口座開設が難しいときは地方金融機関やネット銀行も視野に入れる

✓ 法人口座開設の際には2~3週間ほどの審査が必要

法人口座がなくても会社を設立できますが、取引先やほかの金融機関から信用を得るためにも個人口座ではなく法人口座を開設しておきたいものです。紹介した手順や方法も参考にして、早めに法人口座を開設しておきましょう。

会社設立や法人口座開設にはさまざまな書類や要件が求められます。手続きが難しいと感じるときは、専門家に依頼するのもひとつの方法です。

この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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