2023/11/28 2024/4/7

外国人の不動産・ビジネス

外国人が不動産を日本で購入するには?手続きの流れや必要書類を解説

日本はその独特な文化、安全性、そして経済の安定性により、外国人投資家から日本の不動産購入に関心を持たれています。しかし、海外在住の外国人が日本で不動産を購入する際には、日本の法律、不動産取引などの各種手続きが存在します。

今回の記事のポイントは下記の通りです。

✓ 国内及び海外在住の外国人も日本の不動産を購入できる

✓ 海外在住の外国人が日本での不動産購入手続きをスムーズにすすめるためには、日本で外国人の対応ができる不動産会社・司法書士が不可欠である

✓ 売買契約などの手続きを行うための来日が難しい場合には、事前に売買契約代理人、決済代理人、納税管理人、不動産登記上の外国人の国内連絡先を決めておくとスムーズに手続きができる

✓ 来日して物件見学する前に、海外在住の外国人に宣誓供述書とパスポートのほかに住所が記載された写真付きの公的身分証明書を持参してもらうと契約時の手続きがスムーズにできる

✓ 不動産登記では、本国の公証人又は在日大使館で認証した宣誓供述書が住民票代わりになる。2024年4月1日からは改正により、本国(又は居住国)の政府発行の住民票又は宣誓供述書とパスポートが住民票代わりとなる

✓ 司法書士を決済代理人としておくと、不動産登記手続きから代金の支払を一括してサポートしてもらえるので便利

今回の記事では、日本の不動産取引の手続きの流れや、代金の決済方法、代理人の選任などの注意点について解説します。

1.外国人も日本の不動産を購入できる

日本では、国内のみならず海外在住の外国人でも国籍や永住権の有無、さらにはビザの種類に関わらず、土地や建物の所有権を取得することが可能です。これは、多くの他国に見られるような外国人に対する厳しい不動産取得規制とは対照的な点です。

外国人が日本で不動産を所有する際には、所有権の期限が設けられていないため、自由に不動産を売買、贈与、または相続することができます。また、不動産取得時には、日本人と同様の税金が適用されるため、外国人であることによる追加の税負担はありません。

しかし、不動産を購入したからといって、自動的にビザや永住権が付与されるわけではありません。日本での不動産所有は、ビザや在留資格に直接影響を与えるものではないため、日本で中長期的に滞在する場合は、適切なビザや在留資格を別途確保する必要があります。

2.外国人が不動産購入をスムーズに進めるための注意点

日本で不動産を購入する際、海外在住の外国人は特に注意すべき点があります。不動産取引は高額で複雑な手続きが伴うため、信頼できる専門家のサポートが不可欠です。

2-1.日本で外国人の対応ができる不動産会社・司法書士を探す

日本には約12万件以上の不動産会社と1万人以上の司法書士が存在します。不動産会社は不動産売買の取次を担当し、司法書士は不動産購入後に必要な登記手続きを担当する専門家です。

しかし、外国人のニーズに特化したサービスを提供している不動産会社・司法書士は比較的少なく、主に東京、横浜、神戸、福岡などの大都市に集中しています。

外国人の不動産購入は、契約書の内容の理解、手続きの専門性、必要書類の準備、海外送金の手続きなど、日本人の顧客とは異なる特有の要件があります。したがって、外国人の取引に精通した専門家を選択することが、スムーズな取引を行う上で非常に重要です。

不動産会社が、売主や関係当事者との関係上変えられないケースもあります。その場合には、海外の外国人取引に精通している司法書士に依頼することがお勧めです。

外国人に対応できる司法書士を利用する利点は、言語の壁を超えて、契約内容や取引の流れ、残代金決済業務を正確に対応することができることです。また、国際的な取引の経験が豊富な専門家から、効率的かつ安全な取引のアドバイスを受けることができます。

専門家を選ぶ際には、会社の実績や規模、外国人顧客に対するサービス内容を事前に調査することが大切です。また、日本の不動産市場に精通している現地の法人やエージェントに相談することも一つの方法です。信頼できる不動産会社・司法書士と連携することで、海外在住の外国人でも日本での不動産購入を安心して進めることが可能になります。

2-2.契約書と登記関連書類の日本語と外国語併記による対応を行う

日本国内の不動産売買において、買主が外国人であっても、契約書・重要事項説明書は通常、日本語で作成されます。しかし、外国人買主が日本語に精通していない場合、契約内容の誤解が生じるリスクがあります。

契約書・重要事項説明書は外国語対応したほうが望ましい

外国人買主の契約書理解トラブルを防ぐために、契約書・重要事項説明書の各条項に外国語の翻訳文を併記するか、別途翻訳された契約書を準備することが望ましいです。この併記は、外国人買主と日本人売主のほか、取引関係者が同じ文書で契約内容を明確に理解するのに役立ちます。

登記関連書類も外国語対応すべき

不動産取引における登記手続きでは、委任状や登記原因証明情報などの書類が必要です。これらの書類も、日本語で作成された後、外国人関係者が内容を完全に理解できるよう、外国語の翻訳文を併記するか、別途翻訳することが重要です。

外国語で作成された文書、例えば宣誓供述書などが法務局に提出される際は、それらの日本語翻訳文の提出が求められます。これは、法的文書の理解と処理の正確性を確保するために不可欠です。

2-3.日本での不動産売買契約に必要な代理人等を定める

日本での不動産売買は、国内在住の外国人のみならず、海外在住の外国人でも可能です。
特に、海外在住の外国人が日本国内での手続きをするには代理人の選任が有効な方法となります。特に、来日が難しい場合や、日本への滞在期間が限られている場合には、代理人を通じて売買契約や関連手続きを進めることが可能です。

その際に、定める代理人及び連絡先として下記の4つを決めておく必要があります。

  • 売買契約代理人
  • 残代金決済代理人
  • 納税管理人
  • 不動産登記上の外国人の国内連絡先

以下、説明します。

売買契約代理人

売買契約代理人は、日本における不動産の売買に際して、購入者または売主の代わりに契約書や重要事項説明書の署名・捺印、物件の鍵の引渡しを受ける役割を担います。この代理人は、特に海外に住む購入者や売主にとって重要な存在であり、売主側との契約の交渉などを任せることができます。

売買契約代理人を選ぶ際には、信頼できる者を選定することが重要です。通常、この役割は信頼できる知人や不動産会社やコンサルタントなどの専門家が担います。売買契約の代理人は契約の詳細を購入者や売主に明確に伝え、必要に応じて説明を行う責任も持っています。海外在住者が日本の不動産取引を行う際には、言語の障壁や日本の商慣習に対応するためにも、売買契約の代理人は非常に重要な役割を果たします。

残代金決済代理人

日本の不動産取引において、特に海外在住の外国人にとって重要なのが、残代金の支払方法の検討と残代金決済業務の代理人の選任です。不動産取引では一般的に、契約時に手付金を支払い、その後に残代金を支払って物件を引き渡す流れとなります。しかし、海外に居住する外国人が日本の不動産を購入する際には、日本の銀行口座がないという問題があります。

不動産購入時には海外からの送金が必要となります。海外送金には、送金日の調整や国際送金手数料が差し引かれるなど、複数の要因が関わります。そのため、正確な支払い額や支払い日が不確定になるリスクが生じます。

残代金決済代理人は司法書士がおすすめ

残代金決済の代理人は、海外在住の購入者からの送金を事前に受け取り、それを売主や不動産仲介会社に確実に届ける役割を担います。これにより、送金の遅延や不足を防ぎ、取引を円滑にすすめることができます。

残代金決済の代理人としては、国際取引に精通した専門家の選任が重要です。特に、購入後の不動産登記手続きも考慮に入れると、司法書士が理想的な選択肢となります。司法書士は、登記に必要な書類の確認と代金の支払いを一括して対応することが可能です。

弊社では、司法書士事務所を併設しており、海外在住の外国人が安心して取引できるようにサポートを提供しています。残代金決済の代理人としての役割を担い、不動産購入のプロセスをスムーズに進めるための手助けを行っています。

このようなサポート体制を整えることで、海外在住者が日本の不動産市場で安心して取引を進めることができます。

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納税管理人

海外在住の外国人が日本で不動産を売買する際、不動産に関連する税金の管理や申告手続きが発生します。

  • 不動産取得税:新たに不動産を取得した際に発生する税金
  • 固定資産税:所有する不動産に対して年間で支払う税金
  • 所得税、譲渡所得税:不動産を賃貸、売却した際に発生する所得に対する税金

これらの税金は、所得や購入や売却時申告が必要となり、所定の期間内に納付する必要があります。

納税管理人の選定

納税管理人は、これらの納税義務を適切に履行するために選任されます。日本に居住していない場合、遠隔地からの税金の管理と申告は困難なため、日本在住の信頼できる知人、税理士、もしくは不動産会社が適任です。

納税管理人を選定する際は、その人物が不動産に関連する税金の納付や確定申告のプロセスを理解している必要があります。日本に信頼できる知人がいない場合は、不動産管理会社や専門の税理士事務所に相談することが有効です。

不動産登記上の外国人の国内連絡先

2024年4月1日から改正法および法務省通達により、海外居住の日本人のほか、日本国内で住所を持たない外国人や外国法人が不動産を所有する場合、日本国内の連絡先となる者の情報が登記事項として追加されました。

近年、国際化の進展で、海外居住の日本人や海外の外国人投資家による日本への不動産投資が増え、不動産の所有者が日本国内に居住しているケースが増加している背景から、不動産の所有者の把握や連絡ととることが困難となることを防ぐ趣旨として改正されました。

日本国内の連絡先の指定

日本国内の連絡先となる者として、日本の親族、知人のほか、不動産関連事業者や司法書士、税理士などの第三者を指定することができます。

一般的には、納税管理人として指定したものを指定しておくのが便利でしょう。法務省通達では、日本国内の連絡先となる方についての責任については言及しておらず、近隣不動産の管理、境界確定、隣地の方に不動産を引き取ってほしい、など所有者がわからないというところでの連絡を受ける立場、各種窓口になることが想定されます。

日本国内の連絡先の登記

国内の連絡先が個人の場合はその氏名と国内住所、法人の場合はその名称と国内住所または営業所・事務所の所在地と名称、会社法人等番号が登記されます。もし、国内の連絡先を設けることができない場合は、「国内連絡先 なし」という情報を登記します。

2024年4月1日現在で登記されている外国人や法人についても、国内連絡先(存在しない場合を含む)に関する情報の追加や変更登記が可能です。

(令和6年3月22日付け法務省民二第551号通達より引用)

2-4.来日して物件を見学する前に宣誓供述書などの必要書類を準備しておく

日本国内で中長期滞在できるビザ(在留資格)を有し、日本国内に居住している外国人については、住民票登録をしている関係から、不動産取引や登記手続きで必要な日本の住民票、印鑑証明書を取得できます。そのため、日本人と同様の必要書類を取得してもらうことで、不動産取引が可能です。

特に海外在住者や中長期滞在できるビザ・在留資格のない外国人が事前に注意すべき重要な点の一つが、住民票、印鑑証明書が用意できないことです。そのため、住民票、印鑑証明書に代わる必要書類の準備が必要となります。

具体的には、宣誓供述書と本人確認書類の準備が必要となります。

宣誓供述書

宣誓供述書は、日本で不動産を購入する際に、現住所の証明とサインの正当性を証明するために用います。これは私署証書(作成者の署名または押印がある文書)であり、公証人の前でその内容の真実性を宣誓し、証書に署名、押印して認証を受ける必要があります。

宣誓供述書の認証は、外国人の本国又は居住国の公証人に依頼することが一般的ですが、日本国内の在日大使館や領事館でも認証を受けられる場合があります。ただし、日本来日時に必要書類が揃っていなく大使館での手続きができない場合もあるため、日本での不動産購入を検討している場合は、来日前に自国又は居住国で宣誓供述書の取得を進めることが推奨されます。

宣誓供述書は来日して不動産契約に署名捺印する際や、売買契約、残代金決済の代理人選任時、登記手続きにおいて使用します。登記手続きでは、印鑑証明書と異なり宣誓供述書の有効期限はないため、来日前に事前に宣誓供述書を作成しておきましょう。

本人確認書類

不動産取引においては、本人確認書類の提出も必須です。

日本での不動産取引においては犯罪収益移転防止法に基づく本人確認が必要です。パスポートには、住所の記載がされていないため、パスポートだけでは本人確認書類とはなりません。パスポートの他に住所が記載されている、他の写真付きの公的身分証明書を持参して来日しましょう。

不動産購入に際しての宣誓供述書や本人確認書類の準備は、専門知識を要することが多いため、専門家のサポートを受けることが有益です。外国人の不動産取引に精通している司法書士や不動産会社の利用がお勧めされます。これにより、宣誓供述書の認証先の選定やフォームの作成など、複雑な手続きをスムーズに進めることが可能となります。

弊社では、不動産購入にあたって必要な宣誓供述書の作成をサポートしています。お気軽にご相談ください。

2024年4月1日から外国人買主の不動産登記における宣誓供述書の取り扱いが変わる

2024年(令和6年)4月1日から、法務局における買主の宣誓供述書の不動産登記での取り扱いが法務省通達により変更されました。

これまでの取り扱いでは、外国人買主の場合、住所が記載された本国の公証人や在日大使館の領事が認証した宣誓供述書が住所証明書として用いられてきました。しかし、2024年4月1日からは以下の新しい取り扱いが適用されます。

外国に居住する外国人(個人)が買主の場合

買主は以下のいずれかの書類を住所証明として提出する必要があります:

  • 本国または居住国の政府(在日大使館の領事を含む)が作成した住所を証明する書面
  • 本国または居住国の公証人の認証を受けた宣誓供述書とパスポートのコピー

これらの書類が外国語で作成されている場合は、和訳(証明部分以外の翻訳は省略可)も同時に提出する必要があります。

外国法人が買主の場合

外国法人が買主の場合も、以下のいずれかの書類を住所証明として提出する必要があります:

  • 外国法人の設立準拠法国の政府(在日大使館の領事を含む)が作成した住所を証明する書面
  • 外国法人の設立準拠法国の公証人が認証した宣誓供述書と、外国法人の名称が記載された設立準拠法国の政府が作成した書面のコピー。

これらの書類も外国語で作成された場合は、和訳(証明部分以外の翻訳は省略可)の提出が必要です。

やむを得ない事情により宣誓供述書を用意できない場合

本国又は居住国で公証制度がない場合や、疾病や障害等で本国又は居住国に帰国できない場合など、やむを得ない事情により宣誓供述書を用意できない場合には、以下の書類を住所証明情報として用いることができます。

  • 日本の公証人が認証した宣誓供述書
  • 外国人買主または外国法人の代表者が、本国又は居住国の公証人の認証した宣誓供述書を取得できない旨を記載した上申書
  • パスポートのコピー(外国人個人の場合)または外国法人の名称が記載された設立準拠法国の政府が作成した書面のコピー(外国法人の場合)

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2-5.住宅ローンなどの融資利用は日本に中長期滞在できるビザがなければ難しい

日本で不動産を購入する際、外国人が住宅ローンを利用することは一定の条件を満たさなければ難しいケースが多いです。特に、中長期の滞在できるビザ・在留資格がない場合、日本の金融機関からの融資を受けることが困難です。

外国人が日本国内の金融機関で住宅ローンを申請する場合、多くの場合「永住権の保有」が前提条件となります。これは、ローンの返済期間が通常10年以上に及ぶため、在留期間に制限がある外国人は、金融機関がリスクと見なす要因です。

永住権の要件

永住権を得るためには、次のような条件を満たす必要があります。

  • 素行が善良であること
  • 素行が善良であること
  • 独立して生計を営むことができる資産や技能があること
  • 永住が日本にとって利益となること

ただし、日本人や永住者の配偶者、子どもの場合は、一部の条件が緩和されることがあります。

住宅ローンの審査基準

永住権を持つ外国人が住宅ローンを申し込む場合、年齢や収入、勤続年数などの返済能力が重要な審査ポイントになります。一方、永住権がない場合は、より厳格な審査基準が設けられ、日本語の理解能力や日本に永住する配偶者の連帯保証人の要件などが求められることがあります。

代替手段としての母国の金融機関

日本の金融機関の審査が難しい場合、母国の金融機関の日本支店を利用することが一つの解決策です。母国の金融機関では、永住権の有無や言語能力に関わらず、住宅ローンを組むハードルが低くなる可能性があります。また、帰国しても返済に影響が少ないという利点もあります。

このように外国人が日本の金融機関で住宅ローンを組む場合、定住性や収入、永住権の有無などを総合的に検討し、事前に審査の可能性を把握することが重要です。また、永住権を持たない外国人でも、条件を満たせば融資を受けられる可能性のある金融機関も存在しますので、様々な選択肢を検討する必要があります。

3.海外在住の外国人による日本の不動産購入手続きの流れ

日本国内に居住する外国人については、日本人と同様の不動産購入手続きをとることができます。特に、悩ましいのが海外在住の外国人が実際に日本で不動産を購入する際の手続きです。その際の購入手続きの流れは下記の通りです。

3-1.不動産を探す

日本での不動産購入の商慣習は、取引のトラブルを防止するために、通常不動産会社が仲介に入る形で行われます。個人間での直接取引はほとんど行われません。そのため、不動産の売買情報は不動産会社を通じて管理されています。

これらの情報は、不動産会社間のネットワークシステムや、民間の不動産ポータルサイトに登録されており、これらを利用して不動産情報が確認できます。新築マンションのような一部の物件は、販売会社のサイトから直接確認する形式が取られています。

インターネットを活用した物件検索

インターネットを通じて手軽に不動産情報を検索することが可能です。不動産ポータルサイトを活用することで、エリア、予算、間取り、築年数などの様々な条件に基づいて、希望に合った物件を探すことができます。

不動産会社に物件の状況確認し、物件見学を打診する

興味がある不動産がいくつか見つかったら、その不動産を仲介している不動産会社に連絡をします。

インターネットや不動産ポータルサイトで気になる物件を見つけたら、その不動産を仲介している不動産会社に物件の状況を確認し、物件の見学を打診します。

見学を打診する際には、来日するスケジュール調整が必要です。自分の都合の良い日時を不動産会社に伝え、物件の利用状況に合わせて内見の日時を決定します。可能であれば、異なる時間帯に複数回訪問することで、日照条件や周辺の騒音レベルなどをより詳細に確認することが推奨されます。

3-2.来日前に宣誓供述書や本人確認資料を準備する

物件を見学し、購入意向がある場合には、買い付け、購入手続きに進みます。

購入時の手続きのために再来日するのが難しい場合には、売買契約や残代金決済の代理人選任などの手続きができるよう、先述した宣誓供述書と本人確認資料を準備し、来日するようにしましょう。そうすることで、手続きのたびに何度も日本に訪問する必要がなくなり、負担が軽減されます。

3-3.物件を見学し、「買付け証明書」を提出する

物件の見学では、オンラインの情報だけでは分からない物件の細部や実際の雰囲気を確認することができます。この段階で、物件の状態、設備の質、周辺環境、アクセスの良さなどをチェックし、購入に向けた最終的な判断を下すための重要な情報を得ることができます。

「買付け証明書」の提出

物件の見学を行い、購入を決めた場合、次のステップは「買付け証明書」の提出です。この書類は、購入意向を正式に表明するもので、購入者が物件を購入する意思があることを示します。買付け証明書には、購入希望価格や条件などが記載され、不動産会社や売主に提出します。

「買付け証明書」は法的な強制力はない

「買付け証明書」は法的な拘束力・強制力を持つ書類ではありませんが、購入交渉の開始を意味する重要な書類です。この書類の提出により、売主と購入者間での具体的な交渉が開始されます。仮に、提出後に購入をやめた場合でも、違約金等を請求されることはありません。

3-4.手付金、売買代金支払い方法の確認をする

不動産の購入することを決めたら、次に、手付金や売買代金の支払い方法とその後の手続きの進め方を決めていきます。

代金支払い方法の相談・決定

不動産購入時の支払い方法には、現金一括払いや住宅ローンの利用などがあります。特に住宅ローンを利用する場合、ローンの申し込みと承認プロセスを通じて資金の準備を行います。ローンの種類や金融機関によって異なる条件や要件について、詳細な情報を得てから最適な選択を行うことが重要です。

再度の来日が難しい場合の対応(代理人を選任する)

海外在住者などで来日が難しい場合、または日本への滞在期間が限られている場合、代理人を通じて売買契約や関連手続きを進めることが一般的です。

先述した売買契約代理人、残代金決済代理人、納税管理人を決めておきます。

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3-5.重要事項の説明を受ける

物件の概要や権利関係、売買契約解除の場合の規約などが記載された 「重要事項説明書」の説明を受けます。売買契約代理人を選任されている場合には、仲介会社が売買契約代理人に説明することになります。売買契約代理人が海外在住の外国人に対して重要事項説明の報告をします。

3-6.決済代理人に売買代金と諸費用を送金する

売買契約上の手付金、残代金のほか、固定資産税清算金、不動産仲介会社の手数料、司法書士の登記費用に相当する金銭を決済代理人が指定する銀行口座に事前に送金します。また、残代金決済当日までに追加で生じた費用を支払えるよう予備費も含めて送金しましょう。

海外から送金する際は、為替レート変動と振込手数料が差引される可能性があるため、想定する金額よりも若干多めの金額を送金すべきです。

3-7.売買契約書を締結する

重要事項説明を受けた内容に問題がなく、代金の支払方法等が決まったあと、売買契約書を売主と買主間で締結します。海外在住の外国人について売買契約代理人が選任されていれば、売買契約代理人と売主との間で売買契約書を作成します。

手付金の支払い

契約締結時には、物件購入価格の10~20%程度の手付金を支払うことが一般的です。手付金は、購入者が契約を履行する意志があることを示すための保証金であり、最終的な売買代金から差し引かれる形で取り扱われます。手付金は買主又は決済代理人が売買契約時までに支払います。

3-8.司法書士との間で登記に必要な書類の授受と本人確認を行う

不動産購入においては、司法書士による登記手続きが必要です。登記手続きを進めるために事前の準備が必要となり、特に海外在住の外国人購入者との間で、書類の授受や本人確認を代金決済日までに行う必要があります。

海外在住者との書類授受と本人確認

海外在住の外国人が日本の不動産を購入する場合、書類の授受はメールや郵送で行われることが一般的です。これには、購入者の身分を証明する書類や登記に必要な各種書類などが含まれます。この手続きには、通常3~4週間程度の時間がかかるため、購入者は早めに対応する必要があります。

余裕をもったスケジュールを立てることが重要

海外在住者は、書類のやり取りに時間がかかることを考慮し、予定より早めに手続きを開始することが望ましいです。特に、国際郵送の遅延や時差の影響を考慮に入れ、余裕を持ったスケジュールで手続きを進めることが重要です。決済代理人として司法書士を指定しておくことで売買契約前からの事前送金対応と登記必要書類の授受などを一括して任せることができます。

3-9.残代金決済と登記を申請する

全ての売買契約上の条件が整い、登記書類が揃えば、残代金決済と不動産登記申請手続きが可能取ります。

不動産代金の支払日(決済日)になったら、司法書士が不動産の登記簿の情報を確認し、登記することが可能と判断したら、代金の支払いをします。そして、不動産購入の資金を決済し、買主への不動産登記申請を行います。

3-10.外為法の報告を行う

海外に居住している外国人が日本の不動産を購入する際には、外国為替及び外国貿易法(通称「外為法」)に基づく届出が必要になることがあります。この法律は、非居住者による日本国内の不動産購入を資本取引とみなし、特定の条件下で報告義務を課しています。

報告義務の範囲

非居住者が日本の不動産を購入した場合、購入日から20日以内に財務大臣への報告が求められます。この報告は、日本銀行を通じて行われ、購入者の氏名、住所、国籍、支払った対価、取得した不動産の詳細などを含む報告書を提出することが要求されます。

報告が免除されるケース

全ての不動産取引が報告の対象となるわけではありません。不動産の購入に伴う報告は、いわゆる投資目的で取得した場合に提出する必要があり、以下のいずれかに該当する場合には不要です。

  • 非居住者本人又は当該非居住者の親族若しくは使用人その他の従業員の居住用目的で取得した場合(別荘やセカンドハウスは、「居住用目的」には該当しないため、報告が必要)
  • 日本国内において非営利目的の業務を行う非居住者が、当該業務遂行のために取得した場合
  • 非居住者本人の事務所用として取得した場合
  • 他の非居住者から取得した場合

海外在住者の場合、日本国内の代理人(不動産仲介会社や司法書士など)を通じて報告を行うことも可能です。これにより、海外在住者は日本に来ることなく、必要な法的手続きを適切に行うことができます。

3-11.登記識別情報が買主に送られる

不動産の売買が完了し、所有権移転登記が行われた際、新しい所有者には登記識別情報が発行されます。この情報は、不動産の正式な所有者であることを証明する重要な書類であり、将来的にその不動産を売却する際に必要になります。

登記識別情報の再発行はできない

登記識別情報は一度しか発行されず、再発行はできません。そのため、この書類の紛失は避けなければならず、慎重に保管する必要があります。登記識別情報を紛失しても、日本国籍を持つ人は、不動産の再売却時に事前通知や本人確認情報の作成を通じて対応が可能です。しかし、外国人の場合、特に在留カードや特別永住者証明書を持っていないと、本人確認情報の作成が困難になります。その結果、最悪の場合、不動産の売却ができなくなる可能性もあります。

登記識別情報の紛失防止のため、外国人購入者は特に注意が必要です。海外に在住している場合、この書類の保管にはさらに細心の注意が求められます。不動産購入に携わる専門家や関係者は、登記識別情報の重要性について購入者に明確に伝え、適切な保管方法をアドバイスをするようにしてください。

4.不動産取得後の税金や管理費等の支払い

不動産を購入した後、購入者は先述した不動産取得税、固定資産税、所得税など各種税金の支払いと、マンションの場合に発生する管理費や修繕積立金の支払いをしておく必要があります。海外在住の外国人については、これらの手続きを代行してもらうため、納税管理人を選任しておきましょう。

日本国外に居住する外国人の場合、日本国内の税務署からの書類受け取りや税金の納付などは、納税管理人を通じて行う必要があります。この納税管理人は、税務署長、市区町村長に対して納税管理人の届出をし、不動産の税務関連手続きを代行します。

5.まとめ

✓ 海外在住の外国人も日本の不動産を購入できる

✓ 海外在住の外国人が日本での不動産購入手続きをスムーズにすすめるためには、日本で外国人の対応ができる不動産会社・司法書士が不可欠である

✓ 売買契約などの手続きを行うための来日が難しい場合には、事前に売買契約代理人、決済代理人、納税管理人、不動産登記上の外国人の国内連絡先を決めておくとスムーズに手続きができる

✓ 来日して物件見学する前に、海外在住の外国人に宣誓供述書とパスポートのほかに住所が記載された写真付きの公的身分証明書を持参してもらうと契約時の手続きがスムーズにできる

✓ 不動産登記では、本国の公証人又は在日大使館で認証した宣誓供述書が住民票代わりとして取り扱われていたが、2024年4月1日からは改正により、本国(又は居住国)の政府発行の住民票又は宣誓供述書とパスポートが住民票代わりとなる

✓ 司法書士を決済代理人としておくと、不動産登記手続きから代金の支払を一括してサポートしてもらえるので便利

海外在住の外国人が買主となる不動産取引は複雑です。

不動産取得や決済に関しては事前の準備と余裕を持ったスケジュール調整が不可欠です。

外国人の購入サポートについては、弊社で対応しております。不明点や具体的な支援が必要な場合は、お気軽に弊社までご連絡ください。私たちは、不動産取引をスムーズかつ安心して進められるよう全力でサポートいたします。

 

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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