2023/8/17 2024/3/30

外国人の不動産登記

外国人の不動産登記に必要な宣誓供述書とは?その内容と手続きの流れを解説

外国人が日本で不動産取引を行う際には、宣誓供述書の準備が求められることが多くあります。今回の記事では、その重要性と、適切な手続きの方法を理解することで、スムーズに取引を進めるための情報を提供します。さらに、外国人が適切に宣誓供述書を作成・利用するための具体的な方法をお伝えします。

今回の記事のポイントは下記の通りです。

✓ 宣誓供述書とは、外国人が日本で不動産登記を行う際に必要な書類で、本人の氏名や住所などの事実を自己が宣誓する形で証明する

✓ 日本の住民票や印鑑証明書に代わり、公証人が認証した宣誓供述書が外国人の不動産登記において用いられる

✓ 宣誓供述書の作成過程は、必要な情報を準備し、その情報を公証人または在日大使館・領事館の面前で供述し、署名するというステップで作成する

✓ 宣誓供述書の認証場所は、本国の公証役場または日本にある本国の大使館・領事館が該当する

 2024年4月1日から不動産登記における外国人買主の住民票代わりの書類として、本国または居住国の政府が発行した住所証明書類又は公証人認証の宣誓供述書とパスポートのコピーが必要となる

✓ 不動産登記における宣誓供述書に関する手続きは、言語の障壁や手続きの複雑さから司法書士に依頼することが一般的であり、適切なアドバイスと支援を受けることが重要

外国人の不動産登記に必要な宣誓供述書とは何か、その作成方法と手順について解説します。

1.宣誓供述書とは

宣誓供述書は、特定の事実を自己の知識に基づき書き記し、その内容が真実であることを公的な権限を持つ人(大使館の職員や公証人)の面前で誓約する文書です。これは、英語でAFFIDAVITと呼ばれます。この誓約が行われ、宣誓者と同一人物であることが確認された後、認証文や印章が宣誓供述書に添付されます。

1-1.宣誓供述書は不動産登記手続きで必要

日本の不動産登記では、所有権の移転登記などを行う際に、氏名や住所など身分事項や本人の意思を証明する公的な書類が必要となります。具体的には、印鑑証明書、住民票、戸籍謄本、戸籍の附票などがこれに該当します。これらの制度は日本だけでなく、韓国、台湾や中国にも存在しますが、国によって取り扱い方が異なります。印鑑証明書等の制度がある国については、発行国の印鑑証明書等に日本語訳を添付して使用することができます。

印鑑証明書等の制度がない国の外国人が日本の不動産登記を行う際、日本の住民票や印鑑証明書と同様に、その人物が所属する国の官公署が証明した書類が必要となります。さらに、外国の会社、法人が不動産取引の当事者になる場合、その法人の公式な証明書(謄本)が必要です。

例えば、外国人が自国の住民登録証明書を提出したとしても、その証明書が正当なものであるかの判断は難しいです。そこで、不動産登記においては、法務省の先例に従い、外国人が現地の公証役場又は在日大使館で署名を認証した宣誓供述書があれば、それが日本の住民票、印鑑証明書、戸籍謄本、会社謄本等の代わりとなり、登記申請に利用できます。

1-2.宣誓供述書の形式と内容

宣誓供述書は特定の形式を持つ文書で、その中には供述者が真実と認識する事実が詳細に記述されています。内容は供述する事実や状況によって異なる場合がありますが、一般的には以下の情報が含まれます。

  • 供述者の氏名、住所、生年月日、国籍、旅券番号など
  • 証明したい内容の詳細(司法書士への委任内容、売主の登記上の住所が現在の住所と異なる場合、住所変更があれば住所変更の経緯等)
  • 事実が真実であるとの誓約

外国人の母国、会社を設立した国の公証人が作成した宣誓供述書に、供述者が自己の署名を行い、公証人がその署名を認証することで、その文書は公的な信頼性と法的な効力を持つことになります。宣誓供述書は、登記手続きにおいて印鑑証明書と異なり有効期限がないため、海外在住の外国人の来日前に、本人作成してもらい持参して来日するのがおすすめです。

海外の法人に必要な代替書類

海外の法人が不動産の買主又は売主となる場合、会社の代表者は、法人の商号、本店住所(売主の不動産登記簿上の本店住所に変更がある場合には変更履歴)、自分が代表者であることを記載した宣誓供述書を作成し、法人が設立された国の公証人や官公署による認証を受ける必要があります。この宣誓供述書は、日本の会社謄本、印鑑証明書の代替書類として利用できます。

宣誓供述書には、法人と代表者の情報の他、司法書士への委任状や登記原因証明情報の内容を含めることが可能です。これにより、宣誓供述書一枚で委任状、登記原因証明情報、印鑑証明書、会社謄本の役割を果たすことができます。

1-3.宣誓供述書は司法書士と相談しながら作成するのがおすすめ

海外居住の外国人や法人が不動産取引の当事者となる際には、日本国内の手続きとは異なる注意点があります。宣誓供述書の作成と認証、専門家との連携を通じて、必要な書類を適切に準備し、手続きを進めることが重要です。これにより、国際的な不動産取引を円滑に進めることが可能になります。

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2.宣誓供述書作成手続きの流れ

宣誓供述書の手続きを進めるには、以下のものが必要となります。具体的な書類は現地の公証役場によって異なるので事前に確認が必要です。

  • 本人確認書類(パスポートや運転免許証など)
  • 公証人へ提出するための宣誓供述書の原稿
  • 手数料 など

これらを準備した上で、認証の場所として選んだ公証人あるいは日本国内の外国人が所属する大使館、領事館に持参し、供述する事実の詳細を共有し、自分の署名を認証してもらいます。

2-1.宣誓供述書を認証する場所

海外居住の外国人の場合は、本国の公証役場又は官公署で宣誓供述書を認証します。日本国内に来日又は居住している外国人の場合は、日本国内の外国人の国籍の在日日本大使館又は領事館で作成できます。ただし、国によっては在日大使館で対応していない場合もあるので確認が必要です。

問い合わせの中でも多い中国人の方の宣誓供述書ですが、2023年11月7日から在日中国大使館では、外国公文書の認証を不要とする条約の発効により、大使館による領事認証業務を停止しています。そのため、中国国内での公証役場における公証人の認証手続きが必要となります。

2-2.宣誓供述書の作成手順

宣誓供述書の作成手順は以下の通りです。

2-2-1.供述事実の準備

まず、宣誓供述書に記載する供述事実の原稿を作成します。これには、供述者の氏名、住所、職業、そして供述する事実が含まれます。不動産登記に活用する際は、実際に法務局に登記を申請する司法書士に宣誓供述書の原稿作成を依頼したほうが、手続きがスムーズに進みます。

本国の公証人または在日大使館、領事館への連絡

次に、本国の公証人または在日大使館、領事館に連絡し、宣誓供述書作成の意図を伝えます。ここから必要な書類や手続きについての詳細を得ることができます。

本国の公証人または在日大使館、領事館の面前での供述と署名

本国の公証人または在地に大使館、領事館の領事の面前で供述事実を読み上げ、それが真実であることを誓約します。その後、自分の署名を宣誓供述書に行い、公証人または大使館、領事館の領事がその署名を認証します。

2-3.宣誓供述書作成後のステップ

宣誓供述書の作成が完了したら、それを使用して不動産の登記申請を行うことができます。申請は、不動産所在地を管轄する法務局で行います。

宣誓供述書はその原本を登記申請に添付する必要があります。また、宣誓供述書は外国文字で作成されるため、日本で法務局に提出する際は、和訳文をつくり一緒に提出します。

3.2024 年(令和6年)4月1日から買主の宣誓供述書の取り扱いが改正された

2024 年(令和6年)4月1日より、法務局の不動産登記における買主に必要な住民票の代わりとしての宣誓供述書の取り扱いが法務省通達により改正されます。

これまでは外国人の住所が記載された本国公証人又は在日大使館の領事が認証した宣誓供述書が不動産登記申請の必要書類である住所証明情報としての住民票、会社謄本の代わりとして活用されてきましたが、2024 年(令和6年)4月1日からは下記の取り扱いとなります。

3-1.外国居住の外国人(個人)が買主の場合

以下のいずれかの書類を住所証明情報として用意する必要があります。

  • 本国又は居住国の政府の作成に係る住所を証明する書面
  • 本国又は居住国の公証人の認証を受けた宣誓供述書及び旅券のコピー

上記いずれの書面も外国語で作成された書類については、和訳文(証明に関係する部分以外は翻訳省略した旨を記載すれば、翻訳の一部省略も可)も作成必要があります。

以下、詳しく解説します。

本国又は居住国の政府の作成に係る住所を証明する書面

日本の住民票に代わる書類が該当します。

具体的には、本国又は居住国(これらの州など地域を含む)の政府(在日大使館の領事を含む)の作成に係る住所を証明する書面を用意します。

なお、住民票に代わる書類としては、本国又は居住国の政府が作成した住所を証明する電子データをプリントアウトした書面であっても、その国の政府のウェブサイトにより提出された書面に記載された番号を入力してその住所を確認できればその書面をもって代えることができます。

本国又は居住国の公証人の認証を受けた宣誓供述書及び旅券のコピー

本国又は居住国の公証人の認証した宣誓供述書(外国人買主が自分の氏名住所が真実であることを宣誓して署名した文書)に加えて、パスポートのコピーの提出が求められます。なお、パスポートのコピーについては、下記の要件を満たす必要があります。

  • 宣誓供述書が作成された日又は登記申請の受付の日において有効なパスポートのコピーであること
  • 外国人買主の氏名並びに有効期間の記載及び写真の表示のあるページのコピーが含まれていること
  • 宣誓供述書と一体となっていないパスポートのコピーである場合には、パスポートの原本と相違がない旨の記載及び外国人買主の署名又は記名押印がされていること

ポイントは宣誓供述書とセットで、宣誓供述書作成日又は登記申請日のいずれかの日に有効な(外国人本人が原本であることを証明した)パスポートのコピーを用意することです。外国人買主がパスポートを所持していないときは、その旨の上申書及び他の本人確認書面の写し等を添付する必要があります。

やむを得ない事情により本国又は居住国の公証人の認証を受けた宣誓供述書を用意できない場合

やむを得ない事情(本国及び居住国のいずれも公証制度がない、登記名義人となる者が疾病、障害等により本国及び居住国のいずれにも帰国できないといった事情)から、本国又は居住国の公証人の認証した宣誓供述書を取得することができないときは、下記の書類をもって住所証明情報に代えることができます。

  • 日本の公証人が認証した宣誓供述書(外国人買主が、自分の住所について真実であることを宣誓した書面)
  • 外国人買主が本国又は居住国の公証人の認証した宣誓供述書を取得できない旨を記載した上申書
  • パスポートのコピー ※パスポートのコピーの要件は上記本国等の宣誓供述書提出時と同じ(ただし、パスポート以外の代替方法は認められません

3-2.外国法人が買主の場合

以下のいずれかの書類を住所証明情報として用意する必要があります。

  • 外国法人の設立準拠法国の政府の作成に係る住所を証明する書面
  • 外国法人の設立準拠法国の公証人が認証した宣誓供述書及び外国法人の名称が記載されている設立準拠法国の政府の作成に係る書面のコピー

上記いずれの書面も外国語で作成された書類については、和訳文(証明部分以外は翻訳省略も可)も作成必要があります。

以下、詳しく解説します。

外国法人の設立準拠法国の政府の作成に係る住所を証明する書面

日本の会社謄本(商業登記事項証明書)に代わる書類が該当します。

具体的には、外国法人設立をした設立準拠法国(州その他の地域を含む)の政府(設立準拠法国の在日大使館の領事を含む)発行の会社謄本等が該当します。設立準拠法国とは、外国法人の設立にあたって準拠した法令を制定した国(州その他の地域を含む、アメリカなどの場合は州)のことをいいます。つまり、どこの国の法律にもとづいて会社を設立されたかという、”国”の部分です。

なお、会社謄本に代わる書類としては、設立準拠法国の政府が作成した法人住所を証明する電子データをプリントアウトした書面であっても、その国の政府のウェブサイトにより提出された書面に記載された番号を入力してその住所を確認できればその書面をもって代えることができます。

外国法人の設立準拠法国の公証人が認証した宣誓供述書及び外国法人の名称の記載がある設立準拠法国の政府の作成に係る書面のコピー

従前の取り扱いの設立準拠法国の公証人の認証した宣誓供述書に加えて、外国法人の名称の記載がある設立準拠法国の政府作成の書面(会社謄本等)のコピーの提出が求められます。なお、住所は宣誓供述書で証明しているため、設立準拠法国の政府作成の書面は外国法人の名称が記載されていればよく、住所の記載がないもの、政府機関による記載事項の証明文がないもの、電子データを出力した書面でも構いません。なお、書面のコピーについては、下記の要件を満たす必要があります。

  • 宣誓供述書が作成された日又は登記申請の受付の日において有効な書面のコピーであること
  • 宣誓供述書と一体となっていない書面のコピーである場合には、書面原本と相違がない旨の記載及び外国法人の代表者等の署名又は記名押印がされていること

ポイントは宣誓供述書とセットで、宣誓供述書作成日又は登記申請日のいずれかの日に有効な設立準拠法国の政府作成の書面コピーを用意することです。

やむを得ない事情により本国又は居住国の公証人の認証を受けた宣誓供述書を用意できない場合

やむを得ない事情(設立準拠法国に公証制度がない、代表者等が設立準拠法国に居住していない、代表者等が設立準拠法国に住所を有しているものの疾病、障害等により帰国できないといった事情)から、設立準拠法国の公証人の認証したものを取得することができないときは、下記の書類をもって住所証明情報に代えることができます。

  • 代表者等の本国、居住国、又は日本の公証人が認証した宣誓供述書(外国法人の代表者等が、外国法人の住所について真実であることを宣誓した書面)
  • 外国法人の代表者等が設立準拠法国の公証人の認証した宣誓供述書を取得できない旨を記載した上申書
  • 外国法人の名称の記載がある設立準拠法国の政府作成の書面(会社謄本等)のコピー ※会社謄本等コピーの要件は上記外国法人の宣誓供述書提出時と同じ

外国法人の宣誓供述書等は、設立準拠法国を証明する書類を兼ねる

2024年4月1日からは、日本国内に会社がない外国の法律に基づいて設立された法人が不動産の所有者となる場合については、法人設立をした国(設立準拠法国)が登記事項となりました。

(令和6年3月22日付け法務省民二第551号通達より引用)

そのため、設立準拠報告を証明する書類が登記手続きにおいて必要です。住所証明情報として使用する①外国法人の設立準拠法国の政府の作成に係る住所を証明する書面、又は②宣誓供述書及び設立準拠法国政府の作成に係る書面等の写し等(政府作成書面等)が兼ねることになります。

政府作成書面等において、当該法人の設立準拠法国が明記されていない場合であっても、当該法人の住所がある外国と政府作成書面等を作成した外国が一致する場合であって、その国の名称を法人識別事項として登記申請書の内容としたときの当該政府作成書面等は、設立準拠法国を証する情報として用いることができます。

そのほか、海外居住の日本人のほか、日本に住所を有しない外国人及び外国法人について、2024年4月1日から日本国内の連絡先も登記事項として追加されました。詳細は下記の記事で解説していますので、確認しておきましょう。

3.まとめ

✓ 宣誓供述書とは、外国人が日本で不動産登記を行う際に必要な書類で、本人の氏名や住所などの事実を自己が宣誓する形で証明する

✓ 日本の住民票や印鑑証明書に代わり、公証人が認証した宣誓供述書が外国人の不動産登記において用いられる

✓ 宣誓供述書の作成過程は、必要な情報を準備し、その情報を公証人または在日大使館・領事館の面前で供述し、署名するというステップで作成する

✓ 宣誓供述書の認証場所は、本国の公証役場または日本にある本国の大使館・領事館が該当する

 2024年4月1日から不動産登記における外国人買主の住民票代わりの書類として、本国または居住国の政府が発行した住所証明書類又は公証人認証の宣誓供述書とパスポートのコピーが必要となる

✓ 不動産登記における宣誓供述書に関する手続きは、言語の障壁や手続きの複雑さから司法書士に依頼することが一般的であり、適切なアドバイスと支援を受けることが重要

以上のことから、宣誓供述書の作成は外国人が日本で不動産取引や不動産登記を行う上で必要不可欠なプロセスです。しかし、その手続きは一見複雑であり、さらに言語の障壁も存在します。そのため、確実に手続きを進めるためには、専門知識を持つプロフェッショナルのサポートが必要となるでしょう。宣誓供述書作成のための具体的なアドバイスや支援を求めるなら、司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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