2024/2/13 2024/4/7

外国人の不動産・ビジネス

外国人が日本の不動産を購入するときの税金はどうなる?注意点を解説

日本の不動産市場はその透明性と安定性で世界的にも評価が高く、投資家だけでなく、居住目的で日本に住むことを考えている外国人にとても魅力的な選択肢です。

しかし、外国人が日本で不動産を購入する際には、税金を含むいくつかの注意点があります。

今回の記事のポイントは下記の通りです。

✓ 国内居住の外国人、海外居住の外国人ともに、日本人と同様に不動産を購入することができる

✓ 外国人が不動産購入時にかかる税金としては、印紙税、登録免許税、そして不動産取得税があり、要件を満たすと軽減措置を適用することができる

✓ 外国人が不動産を所有する場合の税金としては、所得税、住民税、固定資産税がある

✓ 賃料所得がある場合の所得税は、日本国内居住の外国人は日本人と同様だが、海外居住の外国人については賃借人が賃料支払いの際に源泉徴収が必要となるケースがある

✓ 住民税は、国籍にかかわらず毎年1月1日時点に日本に住所がある外国人に対して課税される

✓ 海外居住の外国人が不動産売却するときには、買主が個人で居住用不動産を1億円以下で購入したなどの要件を満たす場合を除き、買主は売却代金の10.21%を源泉徴収する必要がある

✓ 海外居住の外国人は税金の納付などの手続きを行うために税務署、市区町村に対して納税管理人の届出を行う必要がある

今回の記事では、外国人が日本の不動産を購入する際の税金処理について、そしてその際に留意すべきポイントについて詳しく解説していきます。外国人が日本で不動産を安心して購入し、所有するための基本を押さえておくことが重要です。

1.外国人も日本の不動産を購入できる

日本では、国籍や居住地、外国人が持っているビザの種類にかかわらず、外国人も土地や建物を所有することができます。この点は、外国人に対して不動産取得を厳しく制限する国々と比べると、大きな利点と言えるでしょう。日本の法律は、外国人が不動産を購入する際に、国内の居住者と同等の扱いを保証しています。これにより、外国人投資家や日本で生活を始めたいと考えている外国人にとって、日本の不動産市場へのアクセスが容易になっています。

1-1.外国人も日本の不動産の売買、贈与、相続ができる

不動産を所有することのできる自由度は高く、所有権に期限が設けられていないため、売買、贈与、相続など、不動産に関する取引を行うことが可能です。また外国人であっても、不動産取得時には日本人と同様の税金が適用されるため、不動産を購入したからといって追加の税負担を負うことはありません。

1-2.外国人が日本国内に中長期滞在するにはビザ(在留資格)が必要

外国人が不動産を購入したとしても、日本に中長期滞在できるビザや永住権の取得に直結するわけではないことに注意が必要です。日本で不動産を所有していることは、ビザや在留資格には直接影響しません。

そのため、日本で長期間滞在する予定がある場合は、不動産の購入とは別に、適切なビザや在留資格を取得する必要があります。この点を踏まえつつ、日本の不動産を購入する際の税金やその他の法的要件について、しっかりと理解しておくことが大切です。

2.外国人が不動産購入時にかかる税金

外国人が日本で不動産を購入する際、日本人と同様、様々な税金の支払いが必要となります。特に理解しておくべき主要な税金には、印紙税、登録免許税、そして不動産取得税があります。これらの税金は、国内居住、海外居住にかかわらず、不動産取引の手続きを進める過程で発生します以下、これらの税金について詳しく見ていきましょう。

2-1.印紙税(契約書や領収書に必要な印紙税)

印紙税は、不動産売買契約書や建築工事の請負契約、住宅ローンの契約書、領収書など、特定の文書を作成する際に必要となる税金です。契約、金額の内容に応じた収入印紙を文書に貼付し、その上から押印(印鑑がない外国人はサイン)することで税金を納付します。

印紙税の額は文書に記載されている金額によって異なり、文書を作成した人が支払う必要があります。なお、文書ではなく電子データで作成した場合には印紙税の支払いは不要す。

一般的には、不動産仲介会社が不動産取引時に用意するので、収入印紙代は、不動産仲介会社に支払うことが多いです。

国税庁HP|印紙税額一覧表

2-2.登録免許税(不動産登記で必要な税金)

不動産を購入し、外国人が購入した不動産を登記する際に発生するのが登録免許税です。この税金は、土地や建物の登記を行う際に必要となり、登記の種類や対象となる不動産の評価額、借入金額に基づいて計算されます。

なお、登録免許税は不動産取引を担当する司法書士に対して登記費用の一部として支払いをし、司法書士を通じて税金が納付されます。

不動産登記の種類と登録免許税額の計算方法

不動産取引に基づき、登記される不動産登記の種類と登録免許税額の計算方法は下記のとおりです。

表題登記(非課税)

新築建物の完成後に行う登記で、建物の基本情報を登記簿に記載します。なお、この表題登記については登録免許税は課税されません。

所有権保存登記(固定資産評価額×0.4%)

所有権の確定を目的とした登記で、表題登記の後に行います。

所有権移転登記(固定資産評価額×2%)

不動産の売買が行われた際に、所有権を売主から買主へ移転するための登記です。

抵当権設定登記(債権額(借入金額)×0.4%)

住宅ローンなどの借入れに際して不動産を担保に設定する際に行う登記です。

登録免許税の軽減措置

登録免許税にも軽減措置が設けられることがあり、新築住宅の保存登記や中古住宅の移転登記、抵当権の設定登記などで税率が軽減される場合があります。これらの軽減措置は、住宅取得を促進する目的で設けられています。

例えば、新築住宅の所有権保存登記に対しては、特定の条件を満たす場合に軽減税率が適用され、登録免許税の負担が大幅に減少します。また、中古住宅の移転登記や抵当権設定登記においても、条件を満たせば軽減税率が適用されるため、不動産取得時のコスト削減に繋がります。

税務署|土地の売買や住宅用家屋の所有権保存登記に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ

2-3.不動産取得税

不動産取得税は、新築や増築、改築のほか、土地や建物の購入・交換・贈与によって不動産を取得した場合に課税される税金です。この税金は、取得した不動産の固定資産税評価額に基づいて計算されます。

不動産取得税の計算方法

基本的に、不動産取得税は固定資産税評価額に一定の税率を乗じた額で計算されます。例えば、2024年1月現在、住宅や土地に対しては3%の税率が適用されることが多く、住宅以外の家屋には4%の税率が適用されます。ただし、特定の軽減措置が適用される場合、税率が低くなることもあります。

不動産取得税の軽減措置

不動産取得税には、新築住宅及びその敷地、または中古住宅及びその敷地に対する税額の軽減措置があります。新築住宅が一定の要件を満たす場合、固定資産税評価額から特定の控除額を差し引いた上で税率を適用することにより、実質的な税額が軽減されます。中古住宅についても同様の措置があり、建物や土地の取得による負担を軽減することが可能です。

東京都主税局|不動産取得税

印紙税、登録免許税、不動産取得税及びその軽減措置は、不動産取引において重要な費用の一つです。外国人が日本で不動産を購入する際には、これらの税金の存在を理解し、適切な資金計画を立てることが重要です。また、軽減措置の適用条件や期間は変更されることがあるため、最新の情報を確認し、不動産取得のタイミングや条件を検討する必要があります。

不動産取得時には、不動産専門家や税理士と相談することで、より具体的なアドバイスを得ることができます。

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3.外国人が不動産を所有する場合の税金

日本で不動産を所有する外国人は、不動産を購入し、所有している間も、さまざまな税金が発生します。主に、所得税、住民税、固定資産税の三つが重要な税金として挙げられます。

これらの税金は、不動産の所有や利用状況に応じて課税されるため、日本に居住している外国人はもちろん、海外に居住している外国人も関係する場合があります。以下で、これらの税金について具体的に見ていきましょう。

3-1.所得税

所得税は、不動産から得られる賃料などの所得に対して課税されます。不動産を所有しているだけでは所得税は発生しません。不動産を賃貸し、そこから不動産所得が発生した場合や、不動産を売却して譲渡所得が生じた場合に、所得税の課税が発生します。日本国内に居住する外国人は、日本と海外のすべての所得に対して課税されますが、海外居住の外国人は日本国内で発生する所得のみが課税対象となります。

なお、日本と海外の二重課税となっている税金については、国家間の租税条約や外国税額控除によって税金負担を軽減することができます。詳細は税理士に確認が必要です。

外国人の場合の賃料所得の取り扱い

日本国内居住の外国人と海外居住の外国人とでは、賃料所得の取り扱いが異なります。

日本国内居住の外国人

日本国内の不動産から生じる所得に対しては、日本人と同様の所得税の取り扱いです。

海外居住の外国人

海外居住の外国人については賃借人は日本国内の不動産についての賃料の支払いの際に、所得税及び復興特別所得税額(20.42%)を源泉徴収をしたうえで、支払う必要があります。なお、土地、家屋等を自己またはその親族の居住の用に供するために借り受けた個人が支払うものについては、賃料からの源泉徴収をする必要はありません。

海外居住の外国人の源泉所得税は、最終的に確定申告したうえで清算され、海外居住の外国人と日本国内居住の外国人は同額の所得税額を負担します。

3-2.住民税

住民税は、国籍にかかわらず毎年1月1日時点の住所地で一定額以上の所得があれば課税されます。住民税については、所得割と均等割があります。

外国人の場合の住民税の取り扱い

日本に居住している外国人と海外居住の外国人とでは、住民税の取り扱いが異なります。

日本国内居住の外国人

日本人と同様に所得に応じて住民税が課税されます。

海外居住の外国人

所得割は毎年1月1日現在において日本に住所がある者に課税されるため、海外に居住している外国人には所得割は課税されません。ただし、日本国内に自己の居住目的の家屋を所有している場合、均等割が課税されることがあります。

3-3.固定資産税

固定資産税は、不動産の所有者に対して課税される税金です。この税金は、所有者が日本国内に居住しているか海外に居住しているかにかかわらず、毎年1月1日時点での不動産の所有者に対して課税されます。そのため、国内居住、海外居住の外国人いずれも毎年1月1日時点で不動産を所有していれば課税される税金です。

固定資産税の支払いは、毎年4月から6月頃に役所から送られてくる納税通知書に基づき、年4回に分けて納付されます。外国人が日本に居住していない場合でも、後述する納税管理人を通じてこれらの税金の納付や必要な手続きを行います。

固定資産税は不動産購入時に売主と買主で日割り清算する

固定資産税は1月1日時点の所有者に年度分の税金が課税されるため、不動産の売主が全額支払う必要があります。不動産の購入年度分は不動産売買代金支払日(決済日)に売主・買主間で日割り計算をして支払います。翌年度以降から、買主である外国人が単独で支払います。

4.外国人が不動産売却時にかかる税金

不動産売却時には、売却時の利益に対して、所得税と住民税から構成される”譲渡所得税”が課されます。日本に居住する外国人も、日本非居住の外国人も、税金の計算方法は同じですが、納税の方法に違いがあります。

以下では、不動産売却時にかかる税金について、税率と日本居住の外国人、海外居住の外国人に分けて解説します。

4-1.不動産譲渡所得税の税率と納税

譲渡所得税の税率は、不動産を所有していた期間によって異なります。

  • 短期譲渡所得(所有期間5年以下):39.63%(所得税が30.63%、住民税が9%)
  • 長期譲渡所得(所有期間5年超):20.315%(所得税が15.315%、住民税が5%)

上記のとおり、所有期間が5年超か以下かによって変わります。

日本居住の外国人

”日本に居住”している外国人は、不動産を売却した後、日本人と同様に確定申告を行い、所得税を納税する必要があります。

この日本居住者の判断は、日本に「住所」を有する方や、1年以上継続して日本に「居所」を有する方を指します。「住所」とは、個人の生活の本拠地を意味し、「居所」とは、実際に居住している場所を指します。

海外居住の外国人

日本に住所がない外国人、または不動産売却時点で1年間継続して日本に居住していない外国人は、日本非居住者として扱われ、売却代金から源泉徴収されます。源泉徴収の税額は売却代金の10.21%です。このため、実際に手元に残る金額は売却代金の89.79%となります。

ただし、売却代金が1億円以下で購入者が個人、かつ自分や親族のために居住用不動産を購入する場合は、源泉徴収の対象外となります。

4-2海外居住の外国人の確定申告と精算

海外居住の外国人であっても、源泉徴収された税額と最終的に納めるべき税額との間で差額が生じる場合があります。この差額は、確定申告を通じて精算されます。源泉徴収額が最終的な税額を下回る場合は、不足分を追加で納税し、逆に上回る場合は超過分が還付されます。

外国人が日本で不動産を売却する際は、税務に関する正しい知識を持ち、適切な手続きを行うことが重要です。特に日本非居住者の場合は、源泉徴収に関するルールを理解し、必要に応じて確定申告を行う必要があります。不明点があれば、税務専門家や不動産取引をサポートする専門家に相談することをお勧めします。

5.海外居住の外国人は納税管理人の選任が必要

海外居住の外国人が日本で不動産を所有したり、不動産の売却や賃貸などを通じて所得を得る場合には、納税管理人の指定が必要です。海外在住の外国人が直接税務署や市区町村での納税手続きを行うことができないためです。

納税管理人は、法人でも個人でも構いません。納税管理人は、税金の管理と納付を代行し、非居住者に代わって必要な税務手続きを行います。

5-1.税務署での手続き

海外に居住する外国人が不動産の賃料収入がある場合や不動産を売却した場合など、税金の納付や還付金の受け取りを行うために、納税管理人を定める必要があります。

納税管理人が決まった際には、納税地を管轄する税務署に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出し、納税管理人を解任する際には「所得税・消費税の納税管理人の解任届出書」の提出が求められます。これらの届出により、納税管理人が変更された場合も含め、税務署は納税管理人に対して納税に関する通知や書類を送付します。

5-2.市区町村での手続き

住民税、不動産取得税や固定資産税に関しても、納税管理人の選任は同様に重要です。不動産所在地の地方公共団体に対して、納税管理人の選任を通知する必要があります。納税管理人は、各種税金の納税通知書の受領や納税、必要に応じた還付金の受領を代行します。

納税管理人を設定し、適切な届出を行うことで、納税義務者は海外に居住しながらも日本国内での税務手続きをスムーズに行うことが可能となります。

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6.まとめ

✓ 国内居住の外国人、海外居住の外国人ともに、日本人と同様に不動産を購入することができる

✓ 外国人が不動産購入時にかかる税金としては、印紙税、登録免許税、そして不動産取得税があり、要件を満たすと軽減措置を適用することができる

✓ 外国人が不動産を所有する場合の税金としては、所得税、住民税、固定資産税がある

✓ 賃料所得がある場合の所得税は、日本国内居住の外国人は日本人と同様だが、海外居住の外国人については賃借人が賃料支払いの際に源泉徴収が必要となるケースがある

✓ 住民税は、国籍にかかわらず毎年1月1日時点に日本に住所がある外国人に対して課税される

✓ 海外居住の外国人が不動産売却するときには、買主が個人で居住用不動産を1億円以下で購入したなどの要件を満たす場合を除き、買主は売却代金の10.21%を源泉徴収する必要がある

✓ 海外居住の外国人は税金の納付などの手続きを行うために税務署、市区町村に対して納税管理人の届出を行う必要がある

日本で不動産を購入し、所有するためには、各種の税金がかかります。不動産を取引するにあたって、どのような税金がかかるか理解したうえで資金計画をたてることが必要です。また、日本国内の納税手続きを行う納税管理人の選任もあわせて検討する必要があります。

適切な専門家と相談しながら、日本の不動産購入の検討を進めてみてください

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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