2023/5/23 2024/5/2

外国人の不動産登記

外国人の不動産登記|外国人や海外居住者が不動産売買する際の登記手続や必要書類、注意点を説明

日本の法律では、外国人や海外居住者も不動産の取得が認められています。
不動産を取得したときは、法務局で登記手続きをしなくてはいけません。
今回の記事のポイントは以下のとおりです。

✓ 外国人・海外居住者も不動産の売買や登記手続きは可能

✓ 在留資格や居住地によって不動産登記に必要な書類が異なる

✓ 海外在住の外国人が日本の不動産を購入するには、売買契約及び残代金決済の代理人の選任が必要となる

✓ 海外在住者の不動産売買後の手続きは、納税管理人と買主の外為法の報告が必要

✓ 外国人の不動産登記では2024年4月1日から氏名について、カタカナや漢字などを用いるほか、ローマ字(大文字)も併記されたうえで登記される

✓ 2024年4月1日から海外居住日本人、日本に住所がない外国人及び外国法人については、国内連絡先(国内連絡先がない場合には、ない旨)が、日本で会社法人等番号を有しない外国法人については、設立準拠法国(法人を設立した国)が登記される

✓ ローマ字併記、国内連絡先、設立準拠法国の登記にはそれぞれ必要書類が定められており、宣誓供述書の準備もあるため、不動産登記にあたって司法書士への事前確認が必要

✓ 登記識別情報は再発行できない。特に海外在住の外国人が登記識別情報を紛失すると不動産売却手続きができなくなってしまう可能性もあるため、慎重に保管する必要がある

✓ 非居住者や外国法人から不動産を取得するときは源泉徴収が必要

本記事では、外国人や海外居住者が不動産を購入・売却をするときに知っておきたいことをまとめました。
登記時に必要な税金や、後日必要になる税金についても紹介します。
正しい手続きを行い、正しく税金を納めることで、スムーズな不動産売買が可能になります。
ぜひご覧ください。

目次[表示]

1.外国人・海外居住者も不動産購入・登記は可能

かつては外国人による日本の不動産売買を制限する法律はありましたが、1945年以降は撤廃されています。そのため、現在では日本の不動産は国籍や居住地を問わず誰でも売買することが可能です。

不動産を取得した後は、速やかに法務局で「不動産登記」をしなくてはいけません。不動産登記に必要な書類は、在留期間の長さや居住地などによって異なります。

2.外国人・海外居住者が不動産登記するときの必要書類

外国人や海外居住者が不動産登記をするときに必要な書類は、日本に在住している日本人が不動産登記をするときの書類と同じく、以下のとおりです。

  • 住民票
  • 印鑑証明書・印鑑(現金で購入する場合は不要)

しかし、外国人や海外居住者は「住民票」「印鑑証明書」「印鑑」がないケースが多くもあります。居住期間や居住地によっては住民票以外の書類を提出することになるため注意しましょう。外国人、海外居住の日本人ではそれぞれ必要書類が異なります。

2-1.外国人:中長期在留者の場合

①住民票

次の在留資格を持っている場合や立場の方は、日本人と同様に住民基本台帳の記録され、住民票が作成されるため、住民票を発行することが可能です。現金で購入するときは住民票、金融機関で融資を受けて購入するときは住民票と印鑑証明書・印鑑が、不動産登記の必要書類となります。

  • 「技術・人文知識・国際業務」「経営管理」などの就労できる在留資格
  • 日本人の配偶者等
  • 定住者
  • 永住者
  • 留学

②印鑑証明書

日本で住民票があれば、印鑑登録が可能であるため印鑑証明書の発行が可能です。印鑑及び印鑑証明書を持っていない場合は、署名(サイン)を認証した宣誓供述書を代わりに提出できます。

不動産登記において、宣誓供述書は署名(サイン)が本人のものであること、氏名や住所を証明する書類として用いられます。在日大使館・領事館や自国又は居住国の公証人に発行してもらうことが可能です。

2-2.外国人:短期在留者・海外居住者の場合

①住民票

短期在留者や海外に在住している外国人は、日本の住民票を持っていないことが一般的です。住民票の代わりとして、次のいずれかの書類を提出しましょう。

  • 駐日領事館、本国又は居住国の行政機関、公証役場等で作成された宣誓供述書及び旅券(パスポート)のコピー
  • 本国又は居住国の住民票に相当する書類
宣誓供述書及び旅券(パスポート)のコピー

本国又は居住国の公証役場で宣誓供述書を作成した場合には、住所を証明する宣誓供述書に加えて、旅券(パスポート)のコピーに原本と相違がない旨を記載し、外国人本人が署名することが必要です。

本国又は居住国の住民票に相当する書類

本国又は居住国(本国又は居住国の州その他の地域を含む。)の政府(領事を含む。)が作成した日本の住民票の写し(原本)に相当するものが該当します。

例えば、韓国の住民登録証明書や台湾の戸籍謄本は、住民票相当書類として使用できます。いずれの書類も、住所と氏名、生年月日などが明記され、なおかつ本人に間違いない旨を記載されていることが必要です。

②印鑑証明書

署名(サイン)を認証した宣誓供述書を代わりに退出します。中長期在留者と同様に、在日大使館・領事館または本国の公証人に認証してもらったものを使います。

印鑑証明書を発行している国であれば自国の印鑑証明書を取得します。

2-3.日本人:海外在住者の場合

①住民票

日本に住民票がないときは、現在居住している国の日本領事館もしくは大使館で発行された在留証明書を提出します。日本の在外公館の所在地と離れている場合等には、外国の公証人の認証による宣誓供述書を住民票の代わりに提出します。

②印鑑証明書

印鑑証明書の代わりに、居住地の日本大使館で署名(サイン)証明書書を取得します。

なお、居住地が日本の在外公館の所在地と離れている場合等、領事が作成した署名証明(サイン証明)を取得困難な場合には、外国の公証人が作成した署名証明(サイン証明)を添付して登記申請をすることも可能です。

日本人が取得できる署名(サイン)証明書には「形式1」と「形式2」の2種類の形式があります。
どちらが必要かは、提出先の金融機関や司法書士など提出先の意向によるので、予め確認が必要です。

「形式1」

在外公館が発行する証明書と申請者が領事の面前で署名した書類(登記委任状、遺産分割協議書など)を綴り合わせて割り印を行うものです。

私文書に間違いなく本人が署名(サイン)したことが証明されます。

「形式2」

申請者の署名を単独で証明するものです。
署名(サイン)証明書が単独で発行されるため(印鑑証明書と同じイメージ)、署名(サイン)証明書に記載された署名(サイン)が本人ものであることは証明してくれますが、登記委任状など書類そのものに本人が署名(サイン)したことについては、「形式1」と異なり領事が証明してくれません。

「形式2」でも不動産登記手続きは可能ですが、「形式1」のほうが書類に署名(サイン)をしたことが証明されることから、実務では「形式1」を求められるケースがあります。

なお、海外在住の外国人が売主、買主となる際の不動産売買の注意点については、下記の記事で詳しく解説していますので確認してみてください。

3.外国人・海外居住者が不動産登記する流れ

登記に必要な書類を準備した後で、不動産登記を行います。
不動産登記の手順は日本在住の日本人も外国人・海外居住者も同じで、以下のとおりです。

  1. 売買契約・残代金決済の代理人を定める
  2. 不動産の売買契約
  3. 代金の支払い
  4. 不動産登記の申請手続き
  5. 納税管理人を選任する
  6. 外国為替及び外国貿易法(外為法)による届出をする

それぞれの手順を説明します。

3-1.売買契約・残代金決済の代理人を定める

海外在住の外国人や日本人が日本の不動産を売買するには、日本に来日して手続きを行うほか、代理人を選任して売買契約書・重要事項説明書を任せることができます。特に、日本での滞在期間が短い場合や、海外在住のまま不動産の売買手続きをするには代理人の選任が有効です。

海外在住の外国人が売買代金を支払うためには、残代金決済の代理人が必要

不動産取引では、契約時に手付金を払い、後に残金を支払って物件を引き渡すことが一般的です。この支払いは通常、売主の銀行口座への振り込みによって行われます。しかし、海外に在住する外国人の場合、多くは日本の銀行口座を持っていないため、海外からの送金が必要になります。

海外から日本への送金は、到着日の調整が難しく、送金した金額から海外からの送金手数料が差し引かれるなど、売主や不動産仲介会社などに支払う代金額と支払日が確定できないという問題が生じます。日本で残代金決済を確実に行うためには、残代金決済の代理人を定めておく必要があります。海外在住の外国人が事前に代理人の銀行口座に送金し、後に代理人から売主や不動産仲介会社などに支払うことで円滑な取引が可能です。

海外在住の外国人が買主となる場合には、自国の銀行口座から代理人に多額の金銭を振り込むことになるため、国際取引に精通した代理人を選任することが重要です。

残代金決済の代理人は、購入後の不動産登記手続きを行う司法書士がおすすめです。司法書士は登記に必要な書類の確認と代金の支払いを一括して対応することができます。弊社では、司法書士事務所を併設し、海外在住の外国人が安心して取引できるよう残代金決済の代理人として不動産購入のサポートをさせていただいています。

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3-2.不動産の売買契約

不動産会社で売買契約を締結します。売買契約の代理人を定めていれば、代理人が代わりに契約手続きを行います。
売買契約の際には、代理人の委任状のほか、住民票や住民票相当書類、印鑑、印鑑証明書か署名(サイン)証明書が必要となるため準備しておきましょう。

金融機関からの融資が難しい

外国人でも、日本の銀行で住宅ローンを利用することは可能です。

ただし、返済に関するリスクを考慮して、多くの金融機関では借り手の永住権の有無や日本での居住歴などを審査の際に重視します。その結果、日本国籍を持つ人と比べて、外国人が住宅ローンの審査をパスするのは一般的に難しいとされています。

そのため、外国人が日本の不動産を購入する際には、貯金や自国からの送金で一括払いすることが必要となるため、一括して購入できる資金の準備をしておきましょう。

3-3.代金の支払い

売買契約の際に手付金を支払い、契約後に代金の残額を支払うと取引は完了します。自国から代金を送金する場合は、時間がかかることもあるため、残代金決済の代理人を選任しておきましょう。売買契約の条件が履行され、不動産登記に必要な書類が確認できた段階で、代金の支払いを行います。

3-4.不動産登記の申請手続き

法務局で不動産登記の申請手続きをします。

不動産登記の手続きは司法書士に代行してもらうことが一般的です。その場合は、司法書士へ支払う報酬が別途発生します。

なお、2024年4月1日から、詳細は後述しますが、法令改正、法務省通達により、海外居住日本人、日本国内に住所がない外国人、外国法人についての登記の取り扱いが変わりました。

3-5.納税管理人の選任

不動産を売買する際、納税管理人の選任する必要があります。

不動産を売買した場合には、買主は不動産取得税や固定資産税の納付、さらには不動産を売却した際の譲渡所得の申告が必要です。日本国内でこれらの手続きを行うために納税管理人を選任して、税金の管理と申告を行います。

納税管理人は日本在住の知り合いや税理士、不動産会社を選任することが一般的です。

3-6.外国為替及び外国貿易法(外為法)による届出をする

海外居住の外国人(非居住者)が日本の不動産を購入する場合は外国為替及び外国貿易法(通称「外為法」)による”資本取引”に該当します。

非居住者は日本国内の不動産を購入した日から20日以内に日本銀行を経由して財務大臣に対して報告義務を負います。具体的には取得者の氏名・住所・国籍、不動産の取得の対価、不動産の内容、その他関連する事項を所定の報告書式に従って報告する必要があります。

ただし、この報告は投資目的で取得した場合に提出する必要があり、以下のいずれかに該当する場合には、提出が不要です。

  • 非居住者本人又は当該非居住者の親族若しくは使用人その他の従業員の居住用目的で取得した場合(別荘やセカンドハウスは、「居住用目的」には該当しないため、届出が必要)
  • 非居住者本人又は当該非居住者の親族若しくは使用人その他の従業員の居住用目的で取得した場合(別荘やセカンドハウスは、「居住用目的」には該当しないため、届出が必要)
  • 日本国内において非営利目的の業務を行う非居住者が、当該業務遂行のために取得した場合
  • 非居住者本人の事務所用として取得した場合
  • 他の非居住者から取得した場合

なお、この報告は日本国内の代理人によっても行うことができます。

日本での不動産売却手続きの流れについてはこちらの記事も参考にしてみてください(外部サイトに遷移します)。

4.外国人が不動産登記するときの注意点

国籍や居住地に関わらず、不動産登記の手続きは基本的な部分は同じです。しかし、海外居住の日本人、日本に住所を有しない外国人、外国法人については、特有の登記事項と必要書類が求められます。

次のポイントに注意して、手続きを進めていきましょう。

  • 外国人個人が所有者となる不動産登記のおける氏名は、日本語に加えてローマ字を併記する
  • 海外居住の日本人、日本国内に住所がない外国人及び外国法人については、国内の連絡先等が登記事項となる
  • 日本で会社法人等番号を有しない外国法人については、設立準拠法国が登記事項となる
  • 外国語で作成された文書には和訳文を用意する
  • ローマ字併記、国内連絡先、設立準拠報国の登記にはそれぞれ必要書類が定められており、宣誓供述書の準備もあるため、不動産登記にあたって司法書士への事前確認が必要
  • 登記識別情報は再発行できない

それぞれのポイントを説明します。

4-1.外国人個人の氏名が日本語表記のほか、ローマ字表記が併記される

2024年4月1日から法令改正、法務省通達により不動産登記において、不動産所有者となる外国人個人の日本語表記(「カタカナ」、「漢字」のいずれか)表記での氏名の登録のほか、ローマ字(アルファベット大文字)が併記されます。併記されるローマ字は、所有権の登記の登記事項ではなく、外国人の氏名を補足する事項として登記されます。

中国人や韓国人など、外国人の氏名が漢字表記されている場合であっても、ローマ字氏名を併記されます。

外国人個人の所有権の登記がローマ字併記の対象となる

登記できる不動産の権利としては、所有権、地上権、賃借権、抵当権、根抵当権などがありますが、ローマ字併記の対象は外国人個人の所有権のみです。所有権以外の権利については、日本語表記のみしかできません。

また、外国法人が所有者となる場合でも、ローマ字併記は認められません。

所有者としての日本語の表示方法

所有者としての登記は、漢字によって表記される一部の国の外国人(中国・韓国など)を除き、住民票や旅券(パスポート)等においてローマ字によってその氏名等が表記されている場合であっても、アルファベットをカタカナによる表記に変更したうえで、登記手続きをしなければなりません。また、氏名の間にスペース(空白)を入れることもできませんので、氏名をつなげて表示するか、「・」「、」などを入れて区切る形で表記します。

一般的にはパスポートや在留カードなどの身分証明書に記載されている名前に従って、カタカナ表記に変換して登記されます。ただし、登記をする際には単純にカタカナ表記にするだけではなく、日本の氏名表記と同様に、「姓→名」の順に表記が必要です。

たとえば、「Elon Musk」であれば、アルファベットでは登記できないため、「マスク、イーロン」「マスクイーロン」「マスク・イーロン」などとカタカナに変えて登記します。

ミドルネームについては、適宜、入れることも省略もどちらも可能です。もし、ミドルネームを入れるのであれば、「Elon Reeve Musk」のであれば、「マスク・イーロン・リーヴ」「マスク・イーロン」などの表記が可能です。

補足事項としてのローマ字の表示方法

不動産の所有者である所有権登記名義人の氏名の表音をローマ字で表示したものに限られ、ローマ字以外の文字又は記号による表示は認められません。ローマ字氏名は、原則として全て大文字で表示され、ローマ字氏名の氏と名の間にはスペースを付すこととし、「・(中点)」等の記号による区切りは使えません。

また、ローマ字氏名は、日本での登記と同じく、「氏」→「名」の順に従って登記します。 母国語による所有権の登記名義人の氏名に「Ⅲ」、「Ⅳ」又は「Ⅸ」等のローマ数字が含まれる場合には、当該ローマ数字について「I」「V」又は「X」等のローマ字を組み合わせて表示することも可能です。

令和6年3月22日付け法務省民二第552号通達より引用

ローマ字氏名を証明する情報が必要となる

外国人個人が所有者となる不動産登記においては、それぞれのケースに応じてローマ字氏名を証明する書類が必要となります。

  • 中長期在留者の外国人:住民票の写し(ローマ字氏名が記載されているもの)
  • 短期在留者・海外居住者の外国人:ローマ字氏名が表記されたページが含まれているパスポート(旅券)の写し

パスポート(旅券)は、 ①登記申請の受付の日において有効な旅券の写しであること、②ローマ字氏名並びに有効期間の記載及び写真の表示のあるページの写しが含まれていること、③旅券の写しに原本と相違がない旨の記載及び登記名義人となる者等の署名又は記名押印がされていることが求められます。

なお、住民票、パスポート(旅券)がない外国人の場合には、所有者となる外国人ローマ字氏名、当該ローマ字氏名が当該者のものであることに相違ない旨及び旅券を所持していない旨が記載された本人の署名又は記名押印がされた上申書を用意する必要があります。

4-2.海外居住の日本人、日本国内に住所がない外国人及び外国法人については、国内の連絡先等が登記事項となる

2024年4月1日から日本国内の連絡先が登記事項となりました。海外居住日本人、日本に住所を有しない外国人及び外国法人が不動産の所有者となる場合に、具体的には下記の通りです。

  • 国内に住所を有しない所有権の登記名義人がいる場合、国内における連絡先となる者の情報(個人の場合は氏名及び国内の住所、法人の場合は名称、国内の住所又は国内の営業所、事務所の所在地及び名称、会社法人等番号がある場合はその番号)が登記事項として登記される
  • 国内連絡先となる者がいない場合は、”国内連絡先となる者がない旨”を登記する
  • 2024年4月1日時点に登記されている外国人及び法人については、国内連絡先(ない場合も含む)を記録する変更登記を申請できる

(令和6年3月22日付け法務省民二第551号通達より引用)

海外在住日本人、外国人、外国法人は日本国内の連絡先を定める

日本国内の連絡先としては、親族や友人の他に、不動産業者、司法書士、税理士といった第三者の指定も可能です。また、日本国内の連絡先がない場合でも、その旨の登記が必要です。

通常、納税管理人をこの役割に指定することが推奨されます。法務省の通達では、日本国内の連絡先に求められる責任の範囲について具体的な言及はありませんが、この連絡先は主に、不動産の管理や境界の確認、隣接する不動産所有者からの連絡受け取りなど、所有者が明らかでない場合の問い合わせ窓口として機能することが期待されています。

外国人の国内連絡先事項の証明情報が必要となる

国内連絡先となる者がある場合、その氏名等を証する情報や、その承諾書が必要です。具体的に下記の書類が必要です。

  • 国内連絡先事項を証明する書類
  • 国内連絡先となる者の承諾書及び印鑑証明書
  • 国内連絡先となる者がいないときは、その旨を記載した外国人又は法人の上申書

以下、解説します。

国内連絡先事項を証明する書類

国内連絡先を登記するための国内連絡先事項を証明する書類としては、下記のいずれかが必要となります。

  • 国内連絡先の氏名又は名称及び住所が記載された印鑑証明書(弁護士又は司法書士の職印証明書も含む)、住民票の写し、戸籍の附票の写し
  • 国内連絡先の法人の登記事項証明書(会社法人等番号を提供したときはその番号を提供すれば省略可)
  • 営業所等を国内連絡先事項とするときは、営業所等の所在地及び名称が記録されたホームページの内容を書面にプリントアウトした用紙(ほか、営業所等が記載された書籍、書面、公的書面のコピーも可)に、国内連絡先となる者の営業所等であることに相違ない旨の記載及び国内連絡先となる者の署名又は記名押印したもの
国内連絡先となる者の承諾書及び印鑑証明書

国内連絡先を登記するためには、国内連絡先となる者の承諾書及び印鑑証明書が必要となります。

  • 国内連絡先となる者が記名押印した承諾書
  • 国内連絡先となる者の印鑑証明書(連絡先が法人の場合には法人の登記事項証明書も必要、ただし、連絡先が国内法人の場合は会社法人等番号提供で法人の登記事項証明書、印鑑証明添付省略可能)

法務省HP:令和6年4月1日以降にする所有権に関する登記の申請について:承諾書の記載例から引用

国内連絡先となる者がいないときは、その旨を記載した外国人又は外国法人の上申書

所有権の登記名義人となる外国人、外国法人が”国内連絡先となる者がない”旨を記載した上申書を作成し、その署名又は記名押印をしたものを提出します。なお、この上申書には印鑑証明書を添付する必要はありません。

4-3.会社法人等番号を有しない外国法人は、設立準拠法国が登記事項となる

2024年4月1日からは、会社など法人が不動産の所有者となる場合には、会社法人等番号が登記事項となりました。なお、会社法人等番号を有しない(日本国内で外国会社の登記がされてない)外国の法律に基づいて設立された外国法人が不動産の所有者となる場合には、法人設立をした国(設立準拠法国)が登記事項となりました。

(令和6年3月22日付け法務省民二第551号通達より引用)

外国法人の設立準拠法国の証明情報が必要となる

設立準拠法国を証明する情報としては、下記のいずれかの書類が必要となります。

  • 設立準拠法国政府の作成に係る住所を証明する書面
  • 設立準拠法国政府の作成に係る書面等の写し等(政府作成書面等)

上記の書類は、外国法人が所有者となる不動産登記における住所証明情報(外国法人の会社謄本に相当する書面、宣誓供述書及び外国法人の名称の記載がある設立準拠法国の政府の作成に係る書面等)も兼ねます。

詳しくは、下記のページでも解説しています。

政府作成書面等において、当該法人の設立準拠法国が明記されていない場合であっても、当該法人の住所がある外国と政府作成書面等を作成した外国が一致する場合であって、その国の名称を法人識別事項として登記申請書の内容としたときの当該政府作成書面等は、設立準拠法国を証する情報として用いることができます。

4-4.外国語で作成された文書には和訳文が必要

外国語で作成された書類を登記で用いる場合には、その翻訳者の署名又は記名押印がされた和訳文も併せて添付する必要があります。翻訳者は本人でも第三者でも構いません。

なお、必ずしもその全文を翻訳する必要はなく、証明に関係する部分を除き、訳文を記載した書面に翻訳を省略した事項を記載することにより、翻訳を省略することができます。

4-5.海外居住日本人、外国人、外国法人が所有者となる際の登記の必要書類

これまで述べてきた通り、2024年4月1日から海外居住の日本人、外国人又は外国法人が所有者となる登記手続きにおいては、外国人のローマ字併記、国内連絡先、設立準拠法国の登記事項のほか、住所証明情報の取り扱いも改正されます。

そこで、ケースによっては異なりますが、一般的には登記にあたって、通常の登記手続きにおいて必要な書類に加えて、下記の書類を用意することになります。

国内在住の外国人

  • ローマ字氏名が記載された住民票

海外居住の日本人

  • 国内連絡先事項の証明情報+国内連絡先の承諾書(連絡先が国内法人の場合は会社法人等番号提供で法人の登記事項証明書、印鑑証明添付省略可能、連絡先が個人の場合は印鑑証明書添付)
  • 国内連絡先がない場合には上申書(日本人が署名又は記名押印、印鑑証明書不要)

海外居住の外国人

  • 宣誓供述書+パスポートのコピー(原本証明必要)
  • 国内連絡先事項の証明情報+国内連絡先の承諾書(連絡先が国内法人の場合は会社法人等番号提供で法人の登記事項証明書、印鑑証明添付省略可能、連絡先が個人の場合は印鑑証明書添付)
  • 国内連絡先がない場合には上申書(外国人が署名又は記名押印)
  • 外国語文書の和訳文(証明に関係する部分以外は翻訳省略した旨を記載すれば、翻訳の一部省略も可)

外国法人(日本の会社法人等番号がない外国法人)

  • 宣誓供述書+外国法人の名称が記載された設立準拠法国政府作成の会社謄本等のコピー(原本証明必要)
  • 国内連絡先事項の証明情報+国内連絡先の承諾書(連絡先が国内法人の場合は会社法人等番号提供で法人の登記事項証明書、印鑑証明添付省略可能、連絡先が個人の場合は印鑑証明書添付)
  • 国内連絡先がない場合には上申書(外国人が署名又は記名押印)
  • 外国語文書の和訳文(証明に関係する部分以外は翻訳省略した旨を記載すれば、翻訳の一部省略も可)

上記は一般的なケースの目安となる書類です。ケースにより必要書類は異なるため、司法書士への事前確認をしておきましょう。

4-6.登記識別情報は再発行できない

不動産の売買が行われ、所有権移転登記が完了すると、新しい所有者の名前が記載された登記識別情報が発行されます。この情報は、将来その不動産を売却する際などに必要となりますが、もし紛失してしまった場合、再発行はできません。

日本国籍を持つ人の場合、不動産を再度売却する際には、事前通知や本人確認情報の作成を通じて対処できます。しかし、外国人、特に在留カードや特別永住者証明書を持っていない場合、本人確認情報を作成することが困難になり、最悪の場合、不動産の売却ができなくなる可能性もあります。

そのため、登記識別情報は極めて重要であり、紛失しないよう慎重に保管する必要があります。海外に在住する外国人や不動産の不動産購入に携わる方は、登記識別情報は大切な情報のため亡くさないようアドバイスをしてください。

5.外国人・海外居住者が不動産登記するときにかかる税金

不動産登記をするときは、国籍や居住地に関わらず次の税金が課せられます。

  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 不動産取得税

それぞれの税金を支払うタイミングを紹介します。

5-1.印紙税

不動産の売買契約書を作成するときに、取引額に応じて印紙税が発生します。
ただし、電子書類として契約書を発行するときには印紙税は不要です。

5-2.登録免許税

不動産登記のときには登録免許税が必要です。法務局で支払います。

種類 本則 軽減措置
土地 取得 2.0% 1.5%(※1)
建物(住宅用家屋) 新築 0.4% 0.15%(※2)
中古 2.0% 0.3%(※2)
建物(住宅用家屋以外) 新築 0.4%
中古 2.0%

※1 2026年3月31日まで
※2 2027年3月31日まで

参考:国税庁|土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ

5-3.不動産取得税

不動産取得税は、不動産を取得したときに支払う税金です。
不動産のある自治体から後日納付書が送付されます。

税額は不動産の固定資産税評価額の4.0%ですが、軽減税率3.0%が適用されています。
また、新築住宅や住宅用地を取得するときは、特例措置が適用されることもあるため確認しておきましょう。

6.外国人・海外居住者が不動産を売却する際には、買主に発生する源泉徴収義務に注意

外国人や海外居住者が所有する不動産を購入するときは、源泉徴収義務が発生します。注意すべき点を説明します。

6-1.非居住者または外国法人が売主の際は源泉徴収が必要

非居住者か外国法人から不動産を購入するときは、源泉徴収が必要です。所得税の申告漏れを防ぐために、不動産の買主が代金支払金額から、所得税の源泉徴収相当額を差し引いて売主に売買代金を支払います。
そして、源泉徴収相当額を買主が税務署に支払う必要があるのです。

なお、非居住者とは、日本に住所がなく現在まで1年以上日本国内に居住していない人や、海外に1年以上滞在している人のことをいいます。
外国人に限られず、長期転勤のため海外に居住している日本人も含むため注意が必要です。
また、外国法人とは日本国内に視点を有するかどうかにかかわらず、日本国内に本店や主たる事務所のない法人外該当します。

6-2.非居住者または外国法人が売主でも源泉徴収が不要となるケース

次の条件をすべて満たす場合は、非居住者や外国法人から不動産を購入するときでも源泉徴収は不要です。

  • 不動産の価格が1億円以下
  • 購入者が個人で、かつ自己あるいは親族の居住用に購入すること

6-3.源泉徴収額の計算方法

上記の条件を満たさないときは、源泉徴収が必要です。
源泉徴収税率は10.21%のため、89.79%を売主に支払います。

例えば、3億円の不動産を非居住者や外国法人から購入したときは、3億円×10.21%=3,063万円を源泉徴収税として納付し、残額の2億6,937万円を支払います。

国税庁|No.2879 非居住者等から土地等を購入したとき

7.まとめ

本記事では、外国人や海外居住者が不動産を取得するときに知っておきたい事柄について解説しました。
内容をまとめると、以下のとおりです。

✓ 外国人・海外居住者も不動産の売買や登記手続きは可能

✓ 在留資格や居住地によって不動産登記に必要な書類が異なる

✓ 海外在住の外国人が日本の不動産を購入するには、売買契約及び残代金決済の代理人の選任が必要となる

✓ 海外在住者の不動産売買後の手続きは、納税管理人と買主の外為法の報告が必要

✓ 外国人の不動産登記では2024年4月1日から氏名について、カタカナや漢字などを用いるほか、ローマ字(大文字)も併記されたうえで登記される

✓ 2024年4月1日から海外居住日本人、日本に住所がない外国人及び外国法人については、国内連絡先(国内連絡先がない場合には、ない旨)が、日本で会社法人等番号を有しない外国法人については、設立準拠法国(法人を設立した国)が登記される

✓ ローマ字併記、国内連絡先、設立準拠法国の登記にはそれぞれ必要書類が定められており、宣誓供述書の準備もあるため、不動産登記にあたって司法書士への事前確認が必要

✓ 登記識別情報は再発行できない。特に海外在住の外国人が登記識別情報を紛失すると不動産売却手続きができなくなってしまう可能性もあるため、慎重に保管する必要がある

✓ 非居住者や外国法人から不動産を取得するときは源泉徴収が必要

外国人や海外居住者も、日本に居住する日本人と同じく不動産を購入することは可能です。
また、購入後は法務局で登記手続きを行うことも、国籍や居住地に関わらず同じです。

ただし、不動産登記に必要な住民票がない場合は、適切な住民票相当書類を準備する必要があります。
また、売買契約や融資を受けるときには、印鑑証明書代わりになるサイン証明書が必要です。正しく準備して、スムーズな不動産登記を実現しましょう。

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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