2023/11/30 2024/2/29

外国人の不動産・ビジネス

外国人が不動産を売却するには?売買契約、登記手続、税金の注意点を解説

外国人(外国籍の方)が不動産を売却する手続きと、日本人が不動産売却する手続きにおいて違いはありません。しかし、外国人は不動産売却に必要な書類を準備できないこともあるため、事前に確認しておくことが必要です。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

✓ 不動産売却の流れ、手続きは、外国人と日本人は基本的には同じである

✓ 契約書、重要事項説説明書、登記関係書類は内容について、外国人・日本人相互間の理解を共通化するため、翻訳文の併記又は別途翻訳した書類の用意をしておくのが望ましい

✓ 海外在住の外国人が不動産売却する際には、売買契約及び残代金決済の代理人を選任しておくと取引が円滑に進む

✓ 不動産売却の際に必要な書類を準備できない外国人は、印鑑登録証明書・住民票に代わる代替書類として宣誓供述書の提出を求められる

✓ 登記識別情報を紛失した場合において、司法書士との対面ができない場合には、事前通知の受取人を司法書士にするのがおすすめ

✓ 日本に居住している外国人は、不動産売却後に確定申告・納税が必要

✓ 非居住者の場合は原則として源泉徴収だが、確定申告は必要

本記事では、外国人が不動産を売却をするときに知っておきたいことをまとめました。
売却するときに発生する税金の種類や、納税の方法についても紹介します。

必要書類を事前に知っておくことで、スムーズな不動産売却が可能になります。ぜひご覧ください。

1.不動産売買の流れ・手続きは国籍問わず同じ

日本の不動産を外国人が売却する際の基本的な不動産売買の流れは、外国人も日本人も基本的には同じです。国籍によって売却・購入の手続きが変わることはないため、売却先・購入元との契約が成立し、登記手続きをすれば完了です。

しかし、外国人は登記手続きに必要な書類を準備できない可能性や、海外に居住する外国人とのコミュニケーション、代理人選任や税務手続きが追加で発生します。たとえば、住民票や印鑑登録証明書などを準備できない、売買契約や残代金決済の当日に来日できないケースも多いでしょう。

後述しますが、適切な書類を準備できないときは代替書類で登記手続きを進めていきます。また、手続きのための来日が難しい場合には代理人の選任が必要です。手続きが複雑に感じるときは、外国人向けの不動産売却サポートを提供している司法書士や不動産仲介会社などを利用し、専門的なサポートを受けることも検討してください。

1-1.外国人が売主の不動産売却手続きの流れ

外国人が日本国内に所有する不動産を売却する際の手続きの流れは下記のとおりです。基本的には日本人の不動産売買取引と流れは同じです。

  1. 不動産査定
  2. 不動産会社との媒介契約
  3. 売却活動
  4. 売買契約代理人・決済代理人・納税管理人の選任
  5. .売買契約
  6. 決済と引き渡し、不動産登記申請

しかし、海外に在住する外国人が来日するのが難しいケースでは、コミュニケーションと手続きを代わりに行う代理人の選任が必要となります。

以下、売買契約関係で必要な対応について解説します。

1-2.契約書等は日本語で作成し、翻訳文も用意する

外国人が売主の場合でも、日本の不動産の売買契約・重要事項説明は、日本人相手の場合と同様に、日本語で行われることが一般的です。しかし、契約相手が日本語を理解できない場合、日本語の契約書のみでは、売主である外国人が契約書の内容を理解していないという、契約上のトラブルが生じる可能性があります。

契約書等には翻訳文を各条項に併記、又は別途用意する

外国人の母国語で契約書・重要事項説明の内容を翻訳した翻訳文を用意することが重要です。翻訳の方法は、契約書の日本語の各条項の該当箇所ごとに、翻訳した英文などを併記する又は別途翻訳した契約書を用意するなどの対応をすることが望ましいです。

契約書に日本語と外国語を併記したほうが、売主が外国人、買主が日本人といったケースでもお互いに契約内容を同じ書類で理解ができるので、おすすめです。

不動産登記関係の書類も翻訳文を用意する

不動産取引においては、登記に必要な書類も重要です。これには、委任状や登記原因証明情報などが含まれます。

日本語で委任状等を作成して外国人のサインをしたものは、法務局で登記に必要な書類として受け付けられますが、これらの文書も、取引相手が日本語を理解していない場合、トラブルが生じる可能性があります。そのため、契約書等と同様に、不動産登記関係書類についても外国人の母国の言語の翻訳文を併記する、又は別途翻訳文を作成する対応が求められます。

また、後述する宣誓供述書などの外国語のみで作成された文書については、法務局において翻訳文をつけることを求められます。

このように、契約書、重要事項説明書、登記関係書類の日本語と外国語の翻訳をおこなうことにより、売主、買主の相互の法的な手続きの透明性と理解が促進され、取引の正確性が保証されます。

1-3.売買契約及び決済代理人を定める

日本の不動産を取引する際、海外に住む外国人は、直接日本に来て手続きを進めるか、または代理人を選任して売買契約や重要事項の説明などを任せることが可能です。日本に滞在する時間が限られている場合や、海外に住みながら不動産取引を行いたい場合には、代理人を立てることが特に有効な方法です。

海外在住の外国人が売買代金を受領するには、残代金決済の代理人が必要

買主からの不動産売買代金の受領には、残代金決済の代理人の利用が有効です。

不動産取引では、契約時に手付金を受け取った後、残りの代金は物件引渡し時に支払われるのが通常です。これらの支払いは、売主の銀行口座へ振り込まれることが多いですが、海外在住の外国人は日本の銀行口座を持っていないことが多く、国際送金が必要になります。

海外への送金では、到着日や送金手数料の問題で、支払額や日付が不確定になり、着金確認ができません。そのため、売主としては、売買代金の確実な受領を保証するために、代理人を設定することが望ましいです。買主は代理人の口座に先に送金し、諸費用精算後に代理人から売主へ送金が行われます。

残代金決済代理人は司法書士が適任

売主が海外在住の外国人の場合、信頼できる代理人の選定が重要です。知人や友人を決済代理人とすることもできますが、司法書士を決済代理人とすることがおすすめです。司法書士は、不動産の登記手続きと代金の支払いを同時に管理できます。そして、決済、不動産登記、諸費用精算後の残金を売主に海外送金するという一連の工程のサポートが可能です。

弊社では、司法書士事務所を併設しており、海外在住の外国人に対して、不動産取引のサポートを提供しています。これにより、売主としても安心して取引を進めることができます。

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2.外国人売主の不動産売却時における登記手続きの注意点

外国人が不動産売却をするときは、次の点に注意しましょう。

  • 印鑑登録証明書・住民票・実印を準備できるか
  • 登記識別情報(不動産権利証)を持っているか
  • 外国人売主側が負担する所有権移転登記手続き関連の費用

いずれも日本人が不動産売却をするときも注意は必要ですが、外国人の場合は規定とは異なる書類を準備する可能性があるため、より一層注意が必要になります。各注意点について詳しく見ていきましょう。

2-1.外国人の住民票・印鑑証明書を用意できない場合がある

外国人が売主となる日本での不動産登記においては、実印と印鑑登録証明書が必要となります。また、登記簿上の住所と現在の住所が異なる場合には、住所の変更の過程を証明する住民票が必要となります。外国人の場合、これらの書類の取得は滞在状況によって異なります。

以下、住民票と印鑑登録証明書を取得できる外国人と、できない外国人のケースを解説します。

住民票・印鑑証明書を用意できる外国人

以下に該当し、日本に住所がある外国人は、日本人と同様に住民票と印鑑登録証明書を取得できます。

  • 中長期在留者
  • 特別永住者
  • 一時庇護許可者または仮滞在中許可者
  • 出生による経過滞在者または国籍喪失による経過滞在者

以下、詳しく解説します。

中長期在留者

日本のビザを有し、在留期間が3か月を超えて、中長期において日本に滞在する(在留カードを持つ)外国人が該当します。日本での就労ビザや配偶者、子などの家族滞在ビザ、配偶者ビザなどの身分系の在留資格を持つ外国人が含まれます。短期滞在ビザでは取得できません。

特別永住者

入国管理特例法により定められている特別永住者の外国人が該当します。

一時庇護許可者または仮滞在中許可者

入国管理法の規定により、船舶等になっている外国人が難民の可能性があるなど一定の条件を満たし、一時庇護許可を受けた外国人や、不法滞在の方が難民認定申請を行い、一定の要件を満たすときに仮に日本に滞在をすることを許可された外国人が該当します。

出生による経過滞在者または国籍喪失による経過滞在者

出生または日本国籍の喪失により日本に在留することになった外国人が該当します。

上記に該当する外国人は、住所を登録した市区町村で住民票の取得が可能です。そして、実印を作成し印鑑登録を行えば印鑑登録証明書も発行されます。

住民票・印鑑証明書を用意できない外国人

一方、以下に該当する外国人は、住民票や印鑑証明書を取得できません。

  • 短期滞在者
  • 海外在住者

そのため、観光目的などの短期滞在者や海外在住者は住民票・印鑑証明書を用意できないため、これらに代わる代替書類を準備する必要があります。

2-2.印鑑証明書・住民票・実印の用意ができない場合の代替書類

印鑑登録証明制度ある台湾、韓国では実印、印鑑証明書を本国で準備ができます。

中国では印鑑を使う商慣習はありますが、印鑑登録証明制度がありません。そのため、中国では印鑑を現地の公証員(公証人)に認証してもらい、その認証分をもって印鑑証明書と代替します。

欧米系の国など印鑑登録制度がない諸外国では、契約は署名(サイン)で行うため、そもそも実印、印鑑証明書を用意することができません。

そのため、印鑑登録制度がない外国人はいずれの書類も別の書類で代替可能です。代わりに準備する書類を紹介します。

印鑑登録証明書を準備できない場合

印鑑登録証明書は、日本で許可されている在留期間が3ヶ月未満の短期滞在の外国人は取得できません海外居住者や短期在住者は、宣誓供述書を作成し、本人の署名について公証人等に認証をしてもらい、印鑑登録証明書の代わりとして提出します。

宣誓供述書は外国人の本国の公証役場、又は官公署において作成します。外国人の国の在日大使館領事部でも認証してもらえる場合もあります。国によって在日大使館で認証するケース、認証しないケースがあるので本国で作成してもらい来日してもらうほうが安心です。

なお、宣誓供述書については印鑑登録証明書と異なり3か月の有効期限はないため、事前に準備して取得してもらった書類で登記はできます。ただし、司法書士や不動産会社、金融機関などの提出先によっては古い宣誓供述書では受付を認めない可能性もあるため、なるべく新しいものを用意しましょう。

実印を準備できない場合

外国人売主が印鑑登録証明書を取得できる実印があれば実印を利用できます。

実印を準備できないときは、サインで問題ありません。ただし、印鑑登録証明書の代わりに宣誓供述書(外国人のサインについて認証)の提出が必要となり、宣誓供述書に記載したサインを登記手続きのときにも記載します。

住民票を準備できない場合

住民票は外国人の売主の住所が登記簿上の住所と異なる場合に必要となる書類です。

日本で許可されている在留期間が3ヶ月未満の外国人は、日本で住民票を取得できません。そのため、短期在住者は本国の住所を示す書類で代替します。たとえば、自国で発行された住民登録証明書や、本国の公証人又は官公署の認証のある宣誓供述書などを使用できます。

海外在住の外国人は、自国で発行された住所変更の履歴を証明する公的文書を提出できないときは、住所の変更履歴を宣誓供述書に記載して認証をしてもらいます。

2012年7月8日以前に、日本に住んで不動産を購入している場合

日本人に住民票を持っている外国人は、登記簿上の住所から住所変更があった場合には住所変更の履歴がわかる住民票が必要です。しかし、2012年7月9日より前に日本で住所変更を行った外国人は、従来の住民票ではなく「外国人登録原票の写し」を取得する必要があります。

2012年7月9日から日本の外国人登録制度が廃止され、住民基本台帳制度への移行が行われました。この変更により、外国人住民も日本人と同じように住民票の交付を受けることが可能になりました。これに伴い、以前に用いられていた「外国人登録原票記載事項証明書」の発行は終了しました。この法改正の結果、2012年7月8日以前の住所変更履歴は現在の住民票には記載されていません。そのため、この期間に日本での住所変更があった外国人は、出入国在留管理庁が管理する「外国人登録原票の写し」を入手することで、その履歴を証明する必要が生じます。

外国の会社が売主の場合には会社謄本の代替書類も必要

会社など法人が売主の場合には、不動産登記において、会社の代表者の資格を証明する会社謄本が必要です。また、法人の本店住所や商号に変更があった場合にも会社謄本が必要となります。

海外の法人が売主となる場合には、会社の代表者がその会社の内容(本店住所など変更があった場合には、変更履歴)、自分が代表者である旨を記載した宣誓供述書を作成し、海外の法人が設立した国の公証人又は官公署に認証してもらうことで宣誓供述書を会社謄本の代替書類として利用することが可能です。

事前に会社の代表者に、法人設立した国の公証役場に訪問してもらう必要があるので、代金決済日などのスケジュール調整をしておく必要があります。

なお、宣誓供述書の中に、会社と代表者の内容のほか、司法書士への委任状、登記原因証明情報の内容を盛り込むことで、1通の宣誓供述書で、委任状、登記原因証明情報、印鑑登録証明書、会社謄本を兼ねさせることもできます。詳しくは、外国人の不動産登記(渉外登記)に詳しい司法書士と相談しながら進めていくのがおすすめです。

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2-3.登記識別情報(不動産権利証)の確認とない場合の対応

不動産取引において重要なのが「登記識別情報」です。これは不動産の権利関係を証明するための重要な情報であり、かつては「不動産権利証」として知られていました。外国人の方は、登記識別情報の再発行ができず、その保管が重要なことを知らないことも多く、紛失してしまっているケースがあります。

売買契約時に、外国人売主が登記識別情報を持っているかの確認が必須です。特に海外在住の外国人が登記識別情報を紛失している場合には、売却が困難になってしまう可能性があります。海外在住の外国人が登記識別情報を紛失した場合の対応としては、下記があります。

  • 司法書士との対面面談による本人確認情報の作成
  • 司法書士を受取人とした事前通知制度の利用

司法書士の本人確認情報の利用や、司法書士を受取人とした事前通知制度の利用方法について解説します。

司法書士の本人確認情報

登記識別情報を紛失したり、そもそも持っていない場合、写真付き公的身分証明書等の提示を受け、司法書士との面談を通じて本人確認を行い、司法書士が作成した本人確認情報を法務局に提出する方法があります。この方法は、司法書士との対面による直接面談を求められ、現時点ではzoom等によるオンラインでの面談方法は認められていません。

そのため、来日できない海外在住の外国人の手続きでは、司法書士の現地への出張費用や日程がかかってしまい現実的ではありません。

司法書士を受取人とした事前通知制度

もう一つの方法は、司法書士を受取人とした事前通知制度を利用することです。この制度は、登記識別情報を紛失した本人に登記された内容に間違いないか法務局から事前に通知が届き、その通知に申出することで登記が受理される仕組みです。

海外居住者については、下記の通達があります。具体的には、宣誓供述書の内容に、司法書士への登記委任に加えて「不動産の管理及び処分に関する権限」と「不動産登記法第23条1項による通知に対して委任者に代わる申し出をする権限」を記載することにより、司法書士を事前通知の受け取り人に指定することができます。

司法書士が事前通知の受取人となり、法務局への申出に対応することで、海外居住者の登記手続きの進行がスムーズになり、取引関係者は安心して取引を進めることができます。

・昭和35年6月16日民事甲第1411号民事局長通達

登記義務者が外国等遠隔の地に住所を有しているため、不動産登記法44条ノ2の規定による申出を3週間内にすることができない場合において、その不動産の管理処分等の権限を授権された代理人が存し、かつ、その授権を公正証書等権限ある官憲の作成にかかる証書によって証明できるときは、その代理人が自己あてに44条ノ2第1項の規定による通知をしてもらいたい旨の申出があるときに限り、その代理人に通知して差し支えない。

・登記研究692質疑応答

登記義務者が日本国外に住所を有している場合、権限を有する官公署の作成に係る証書により、登記申請に関する不動産の管理・処分の一切の権限を与えられたことを証明した代理人をあて先とすることができる。

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2-4.外国人売主側が負担する所有権移転登記手続き関連の費用

書類の準備をした後で、所有権移転登記をおこないます。所有権移転登記とは、不動産の所有権を売主から買主に移転するための手続きです。登記費用は買主が払うことが一般的です。

売却する側が費用を負担するケースとしては、下記のようなものが該当します。

  • 海外在住の売主が代金決済当日に出席できない場合の書類郵送費や送金手数料などの事務手数料
  • 登記簿上の住所が現在の住所と異なるケースにおける、住所変更登記費用
  • 不動産に抵当権など第三者の権利が設定されているケースにおける登記の抹消登記費用
  • 売主側の登記識別情報(不動産権利証)を紛失しているケースの本人確認情報作成費用


3.外国人が不動産売却したときの税金

不動産を売却したときは、売却益に応じた税金を納めなくてはいけません。税金の金額や確定申告については日本人も外国人も同じですが、納税方法が変わります。

日本に居住する外国人と日本非居住の外国人に分けて、確定申告と納税の方法を説明します。

3-1.不動産譲渡所得税の税率は所有期間によって変わる

不動産の売却による利益、すなわち「譲渡所得」には、所得税と住民税から成る「譲渡所得税」が課されます。この税率は、所有していた期間に応じて異なります。

所有期間ごとの譲渡所得税の税率の違い

譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって以下のように異なります。

  • 所有期間5年以下(短期譲渡所得):39.63%(所得税が30.63%、住民税が9%)
  • 所有期間5年超(長期譲渡所得):20.315%(所得税が15.315%、住民税が5%)

譲渡所得税の適用範囲

譲渡所得税は、利益が生じるすべての売主に適用されます。これには日本に居住する外国人だけでなく海外居住の外国人も含まれます。ただし、非居住者や売却した年の翌年1月1日時点で日本国内に住所を有していない人は、上記の住民税の対象外となります。これは、国内外での不動産取引において重要な注意点です。

3-2.日本居住者の場合は確定申告・納税が必要

日本に居住している外国人は、日本人と同じく不動産売却後は確定申告と納税をしなくてはいけません。翌年の確定申告の時期に申告・納税をしましょう。

なお、この場合の居住者とは、日本に「住所」を有する方、または1年以上継続して日本に「居所」を有する方を指します。

「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。一般的には、「住所」は住民票に登録された場所です。

「居所」はその人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所を指します。例えば、単身赴任の人が一時的に生活するアパートや社員寮、一時的に滞在する別荘やセカンドハウスなど、住所ほど生活との密接なつながりがない場所を指します。したがって、「住所」と違い、「居所」は役所などへの届出はされていません。

日本に1年以上居住しておらず、日本に住所もない場合には「非居住者」とされます。次に説明する源泉徴収の対象となるため、注意が必要です。

3-2.日本非居住者の場合は原則として源泉徴収

日本に住所がない外国人と、日本に居住しているけれども、不動産売却の時点まで1年間継続して居住していない外国人の場合は、日本非居住者として扱われます。日本非居住者は、源泉徴収された状態で売却代金を受け取ります。

源泉徴収額は売却代金の10.21%です。そのため、売却代金のうち、実際に受け取れるのは89.79%のみとなります。なお、手数料は源泉徴収の対象とはなりません。

源泉徴収されないケース

日本非居住者の場合でも、売却代金が1億円以下で、なおかつ、購入者が自分もしくは親族のために不動産を購入した場合は源泉徴収されません。

非居住者の税金が源泉徴収されないときの条件

  • 売却代金が1億円以下
  • 購入者が個人である
  • 購入者が自分のため、もしくは親族の居住用のために不動産を購入した
  • 上記の3つの条件をすべて満たす

日本居住者及び非居住者ともに不動産売却にかかる税金は同じです。

しかし、非居住者の不動産売却においては買主が支払う売買代金から源泉徴収されている税額が発生しているため、非居住者が確定申告時に、実際に収める税額との差額を精算する必要があります。

源泉徴収された税額が最終的に納める税額よりも少なければ差額分(不足分)を納税します。逆に、源泉徴収された税額が最終的に納める税額よりも多い場合には、超過額の還付(返還)を受けられます。

正しく税額を計算し、税務署で申告・納税しましょう。

非居住者の確定申告では納税管理人を指定する必要がある

売却者が日本非居住者の場合は、税務署で手続きができません。税金の管理を代理でおこなう納税管理人を決めておき、納税管理人に所得税などの納付手続きをしてもらう必要があります。

なお、納税管理人を決めたときは、税務署に納税管理人の届出をおこなう必要があります。納税管理人を解任するときも、税務署で届出をしなくてはいけません。いずれも正しく税金を納めるために必要な手続きのため、速やかに実施しましょう。

納税管理人を決めずに日本を出国するときは、出国日までに確定申告と納税を済ませておかなくてはなりません。納税管理人を決めずに税関係の手続きをおこなう場合は、早めに税務署で確定申告・納税をしておきましょう。

また、出国日までに確定申告・納税をする場合でも、出国後に何らかの所得が発生し、新たに確定申告・納税の義務が生じることもあります。その場合は、納税管理人を定め、翌年の確定申告の時期に申告・納税をしなくてはいけません。

追加で納付をするときも、納税管理人を決めておくとスムーズな手続きが可能です。日本で不動産の売却をし、日本に居住しない場合や長期間日本から出国する場合は、納税管理人を決めておきましょう。

4.まとめ

本記事では、外国人が不動産を売却するときに知っておきたい事柄について解説しました。
内容をまとめると、以下のとおりです。

✓ 不動産売却の流れ、手続きは、外国人と日本人は基本的には同じである

✓ 契約書、重要事項説説明書、登記関係書類は内容について、外国人・日本人相互間の理解を共通化するため、翻訳文の併記又は別途翻訳した書類の用意をしておくのが望ましい

✓ 海外在住の外国人が不動産売却する際には、売買契約及び残代金決済の代理人を選任しておくと取引が円滑に進む

✓ 不動産売却の際に必要な書類を準備できない外国人は、印鑑登録証明書・住民票に代わる代替書類として宣誓供述書の提出を求められる

✓ 登記識別情報を紛失した場合において、司法書士との対面ができない場合には、事前通知の受取人を司法書士にするのがおすすめ

✓ 日本に居住している外国人は、不動産売却後に確定申告・納税が必要

✓ 非居住者の場合は原則として源泉徴収だが、確定申告は必要

外国人も、日本に居住しているかどうかに関わらず、日本人と同じく不動産売却後は所有権移転登記が必要です。また、売却によって得られた利益については、税金を納めなくてはいけません。

売却時には住民票や印鑑登録証明書などが必要になりますが、取得できないときは代替書類でも手続きが可能です。手続きが難しいときや日本に居住していない場合などは、信頼できる人物を選び、手続きを代行してもらうようにしましょう。

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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