2023/6/9 2024/4/22
外国人の法人登記
外国人を取締役・役員として登記する際の本人確認書類や手続きを詳しく解説
取締役、監査役、執行役などの役員に就任したときは、役員変更登記をする必要があります。外国人(外国籍の方)が役員等に就任するときも同様です。適切な時期に登記手続きをおこないます。
今回の記事のポイントは以下のとおりです。
✓ 居住地にかかわらず、外国人(外国籍の方)も日本の会社の役員に就任できる
✓ 取締役、監査役、執行役など役員に就任したときは、通常は2週間以内に登記手続きが必要 ✓ 本人確認書類として住所、氏名が記載された住民票、運転免許証、マイナンバーカードなどを提出するが、ない場合は自国の宣誓供述書などの書類でも代用できる ✓ 印鑑証明書がないときは、サイン証明書と日本語訳で代用できる |
本記事では、外国人が取締役、監査役、執行役などの役員に就任したときに知っておきたいことをまとめました。登記手続きに必要な書類や、役員になるための在留資格について紹介します。
手続きの内容や必要書類を事前に知っておくことで、スムーズな登記が可能になります。ぜひご覧ください。
1.外国人が会社役員になる手続きの流れ
取締役や役員の指名・就任に国籍は関係ありません。株主総会で決議された場合は、外国人(外国籍の方)も取締役や役員に就任することが可能です。
1-1.日本居住者でも海外居住者でも外国人は日本の会社の役員になれる
国籍に関係なく、株主総会で決議されれば取締役や役員に就任できます。また、居住地も問われないため、日本に居住している外国人はもちろんのこと、海外居住者も日本で会社役員になることが可能です。
1-2.日本に住んでいる外国人を役員にするには在留資格が必要
海外に居住している外国人は、国籍や居住国に関係なく日本で会社役員になれます。
一方、日本居住の外国人は、次の在留資格を持っていることが必要となります。
- 「永住者」「配偶者」などの活動の制限がない在留資格
- 「経営・管理」
- 「技術・人文知識・国際業務」
なお、「経営・管理」は代表取締役(社長)になることが可能です。ただし「技術・人文知識・国際業務」は、代表取締役以外の役員にしかなれないことがあります。会社の規模が小さいときなどは、役員の活動は「経営・管理」に充当しないと判断されることがあるため、注意が必要です。
2.取締役・役員に就任したときは登記が必要
取締役、監査役、執行役など、役員に就任したときは、役員変更登記が必要です。必要書類を準備し、期限内に管轄の法務局で手続きをおこないましょう。
2-1.登記に必要な書類
外国人が取締役になるときは、役員変更登記に以下の書類が必要です。
取締役会を設置した株式会社 | 取締役会のない株式会社 |
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代表取締役に就任するときは、取締役会のある法人でも印鑑証明書もしくはサイン証明書が必要になります。
2-2.登記の期限
役員変更登記は、就任した日から本店の所在地において2週間以内におこなわなくてはいけません。期限に遅れると、100万円以下の過料に処されることがあります。
一方、外国会社の変更登記に関しては、3週間以内が期限となります。日本の法人の役員変更登記と同じく、期限に遅れると100万円以下の過料に処されることがあるため注意が必要です。
なお、外国会社とは外国の法令に準拠して設立された団体のことで、日本国内で設立された株式会社ではありません。外国会社が日本において継続して取引をしようとするときには、日本における代表者を決め、登記をしなくてはいけません。
2-3.登記費用(登録免許税額)
役員変更登記(代表取締役・取締役・役員の変更)は本店所在地の法務局で登記します。その費用は、申請件数1件あたり30,000円です。ただし、資本金が1億円以下の会社に関しては、申請件数1件あたり10,000円の費用が必要になります。
3.外国人が登記時に提出できる本人確認書類
外国人・日本人に関わらず、役員変更登記をするときには取締役、監査役、執行役など役員の氏名、住所が記載された本人確認書類が必要です。なお、再任の場合は不要です。
株主総会議事録又は役員の就任承諾書に記載された役員の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載された本人確認書類を用意する必要があります。株式会社のほか、一般社団法人、一般財団法人、投資法人又は特定目的会社の役員についても、同様に本人確認書類が必要です。
本人確認書類として提出できる書類について説明します。
3-1.日本国内に居住する外国人
日本に居住している外国人は住民票を発行できることがあります。居住地の自治体役場などで住民票を発行しておきましょう。住民票のほか、在留カード、運転免許証、マイナンバーカードなど身分証明書のコピーも利用できます。なお、登記の申請書に印鑑証明書を提出する場合には、印鑑証明書が本人確認書面となるため、別途、本人確認書面を用意する必要がありません。
身分証明書のコピーを提出するときは、表と裏面の両方をコピーし、本人が「原本と相違ありません」と記載して、記名する必要があります。なお、マイナンバーカードについては、住所、氏名、生年月日が記載されている表面のみをコピーし、本人が「原本と相違ありません」と記載して、記名する必要があります。
3-2.海外に居住する外国人
海外に居住している外国人など日本国内の本人確認書類を用意できないときは、次の3つの書類のいずれかを準備します。
- 本国又は居住国(日本以外)の官憲・公証人が作成した役員の氏名と住所が記載された宣誓供述書などの証明書
- 在日大使館の領事が作成した役員の氏名と住所が記載された宣誓供述書などの証明書
- 本国及び居住国(日本以外)の官憲発行に係る取締役・役員個人の氏名、住所が記載された身分証明書などのコピー
※パスポートについては、氏名住所が記載されていれば利用できますが、住所記載がないものは利用できません。
なお、外国語で作成された書類については、日本語訳が必要です。
4.外国人が登記時に提出するそのほかの書類
取締役会のない法人の取締役に就任するときや、代表取締役に就任するときは、以下の書類が必要です。
- 印鑑証明書
- 印鑑証明書がないときはサイン証明書と日本語訳
4-1.印鑑証明書
外国人も、日本国内に居住している場合には、実印の印鑑登録ができます。取締役が居住する自治体で印鑑登録していれば、印鑑証明書を発行できるため、印鑑証明書を発行し、法務局に提出してください。
4-2.サイン証明書+日本語訳
海外居住者など、印鑑証明書の作成が難しいときは、サイン証明書で代替できます。なお、サイン証明書とは取締役・役員の本国官憲によって作成されたものです。
たとえばアメリカ国籍であれば、アメリカ大使館やアメリカ領事館、アメリカ本土の公証人などに作成してもらうことが必要です。日本語訳をつけて提出してください。
5.まとめ
本記事では、外国人が法人の取締役・役員に就任するときに知っておきたい事柄について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。
✓ 居住地にかかわらず、外国人(外国籍の方)も日本の会社の役員に就任できる
✓ 取締役、監査役、執行役など役員に就任したときは、通常は2週間以内に登記手続きが必要 ✓ 本人確認書類として住所、氏名が記載された住民票、運転免許証、マイナンバーカードなどを提出するが、ない場合は自国の宣誓供述書などの書類でも代用できる ✓ 印鑑証明書がないときは、サイン証明書と日本語訳で代用できる |
外国人も、日本に居住しているかどうかに関わらず、取締役、監査役、執行役など役員に就任したときは登記が必要です。また、日本に在住していない場合でも、適切な時期に登記手続きをおこなわなくてはいけません。
登記には住民票や印鑑証明書などが必要になりますが、取得できないときは代替書類でも手続きが可能です。手続きが難しいときや日本に居住していない場合などは、信頼できる人物や代行業者を選び、手続きを代行してもらいましょう。
この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)
相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。