2024/3/5 2024/3/5

外国人ビザ

配偶者ビザに就労制限はある?就労に関するメリットや注意点を解説

配偶者ビザには就労制限がないため、職種や雇用形態、就労時間を自由に選択できます。ただし、国際結婚をしただけでは配偶者ビザが得られるわけではなく、ビザの取得や変更が完了した後に就労するようにしなければなりません。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

✓配偶者ビザには就労制限がない

✓配偶者ビザは他の就労ビザのように制約はなく、会社経営もできる

配偶者ビザには期限があり、更新申請をしなければならない

配偶者ビザの取得要件として婚姻の実態と世帯収入があるため、要件を満たすか確認が必要

本記事では、就労制限のない配偶者ビザのメリットや他のビザとの違い、そして注意点についてまとめました。

配偶者ビザの就労について事前に知っておくことで、自身のライフスタイルに合わせた働き方が可能になります。ぜひご覧ください。

1.配偶者ビザは「就労制限がない」ビザ

配偶者ビザを取得するケースとしては、下記があります。

  • 国際結婚を通じて日本人のパートナーと生活するために配偶者ビザを取得した場合
  • 日本で永住権を有する外国人(永住者)と結婚し配偶者ビザを取得した場合
  • 日本人、永住者の子

配偶者だけでなく、その子も対象となるため、正式には「配偶者等ビザ」といいます(この記事では、わかりやすく解説するため、一般的に用いられる「配偶者ビザ」と表記して以後、解説します)。

いずれのケースでも、配偶者ビザを取得した外国人ついて、就労に関する制限は存在しません。ただし、国際結婚をしたからといって自動的に配偶者ビザが得られるわけではないため、必ず配偶者ビザの取得や変更が完了してから就労するようにしなければなりません。

就労制限がないということは、職種や雇用形態、就労時間を自由に選択できることを意味します。パートタイムでの勤務も、正社員としての勤務も、さらには経営者としての活動も可能です。また、働かないという選択も可能です。雇用する側にとっても「就労できるビザかどうか」といった疑問を抱くことなく採用できる利点があります。

1-1.ビザの「就労制限」とは

就労制限は「制限なし」「一部制限あり」「就労不可」の3つの種類に分けられます。これらの制限は「在留資格を区別し、外国人の在留後の活動を明確にして管理を適切に行う目的」と「国内における雇用環境のバランスを維持する」ためのものです。

「在留資格」は29種類あり、それぞれに日本での活動範囲が規定されています。これには「就労の可否」や「どのような業務に従事できるか」などが含まれています。これらの規定が就労制限です。就労制限は、外国人が日本での生活と仕事を適切に行うための重要なガイドラインとなっています。

1-2.就労制限がない在留資格場合

「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4つの在留資格は、就労に関する制限は存在しません。これらの在留資格は、日本と深いつながりをもつ外国人や法的地位を有する外国人に許可されます。

永住者 永住者は、在留期間に制約がなく、就労に関する制限も存在しません。ただし帰化とは異なり、永住者は依然として外国籍を保持しているため、選挙権や戸籍などを有することはできません。これらは、永住者が日本での生活と仕事を自由に選択し、自分のライフスタイルに合わせて働ける一方で、一部の権利については制限があることを示しています。
日本人の配偶者等 日本人の配偶者等は、日本人の配偶者やその実子、特別養子が取得可能な在留資格です。この在留資格は就労制限がないため、どのような業務でも就労時間に制限なく働くことが可能です。在留期間は5年・3年・1年・6か月と設定され、更新することによって長期間にわたり在留できます。
永住者の配偶者等 永住者の配偶者等は、永住者の配偶者や永住者の子供として日本で生まれ、引き続き日本に滞在する外国人が取得する在留資格です。在留期間は5年・3年・1年・6か月と設定されています。日本人の配偶者等と同じく、更新することによって長期間にわたり在留できます。
定住者 定住者は、法務大臣が特別な事情を考慮して、一定の在留期間において居住を認められた在留資格です。具体的には、難民や日系三世などが「定住者」の該当者です。在留期間は、5年・3年・1年・6か月または法務大臣が個別に指定する期間(最長5年)で在留が許可されます。

一方で「技術・人文知識・国際業務」や「技能」などの在留資格は、在留資格の範囲内での就労が許可されています。たとえば、工場の製造ラインでの製品のパッケージングや運送・配送業務などは「在留資格の範囲内での就労、特定の業務」に該当しないため、就労に就くことはできません。もし、これらの業務に従事していた場合、「資格外活動」を行っているとみなされ、違法就労となります。

また「留学」の在留資格をもつ外国人留学生や配偶者に扶養される「家族滞在」の在留資格を有する配偶者は、日本での就労は許可されていません。ただし「資格外活動の許可」を出入国在留管理庁から得ていれば、週に最大28時間までの範囲でアルバイトが可能です。

家族滞在ビザでは就労制限がある

就労ビザで日本に在留する外国人が、その配偶者者や子と生活をするためのビザとして、家族滞在ビザがあります。

外国人が就労ビザ等で日本に滞在しており、その家族が家族滞在ビザにより日本で生活する場合、在留カードには「就労不可」と明記されます。ただし資格外活動の許可を取得すれば、週に最大28時間のパートタイムやアルバイトが可能となります。

たとえ資格外活動の許可を得たとしても、パブやスナック、風俗営業などでの就労は許可されていません。さらに、年収がおおよそ130万円を超えると、制限を遵守していないと判断され、日本での滞在資格を失う可能性もあるため注意が必要です。

このように、日本人、永住権がある外国人という身分に基づき、一緒に生活できる配偶者や子のための配偶者ビザと異なり、就労ビザで呼び寄せる家族滞在ビザでは、就労制限があります。配偶者ビザと家族滞在ビザでは就労制限の違いがあるため、注意が必要です。

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2.配偶者ビザの就労に関するメリット

配偶者ビザを有する外国人配偶者は、就労に関する制約がありません。そのため、どのような職種でも、どのような契約形態でも、何時間でも働くことが可能です。さらに、自身でビジネスを立ち上げることも自由です。配偶者ビザの就労に関するメリットは、次の5つになります。

  • どのような職種の仕事でも就労できる
  • パートやアルバイトとして就労できる
  • 学歴や実務経験がなくても就労できる
  • 会社を経営できる
  • 就労するか、しないか任意に判断できる

それぞれについて、詳しく解説します。

2-1.どのような職種の仕事でも就労できる

一般的な就労ビザは、技術・人文知識・国際業務の分野に対応しています。これには「エンジニア」「マーケティング担当者」「海外取引担当者」「デザイナー」「語学教師」「翻訳者・通訳者」などが該当します。

これらの職種は、大学などで習得した知識を活用する仕事、または外国人としての特性を活用する仕事です。そのため、単に労働力不足を補うための単純労働を目的とした就労は許可されていません。一方の配偶者ビザには、そういった制限がありません。

2-2.学歴や実務経験がなくても就労できる

「就労ビザ」を取得するためには、一定の学歴や10年以上の実務経験、または国際的な実績が必要となります。学歴でいうなら日本または海外の大学を卒業し「学士号」を取得していること、または日本の専門学校を卒業し「専門士」の称号を得ていることなどが挙げられます。

一方の配偶者ビザを持つ外国人配偶者は、これらの学歴、実務経験、実績の要件がなくとも制約なく就労が可能です。

2-3.パートやアルバイトとして就労できる

アルバイトを目的として就労ビザを取得できることは、ほとんどありません。一般的な就労ビザは1年・3年・5年の期間で在留が許可され、安定した就労が要件とされます。アルバイトやパートのような不安定な雇用形態では「中長期にわたって安定した就労」が前提となる就労ビザの取得は難しいといえます。

一方の配偶者ビザを有する外国人配偶者は、パート・アルバイト・契約社員であっても働くことに制限はありません。もちろん、正社員としての就労も可能です。ライフスタイルや子供の成長状況に応じて、さまざまな働き方を選べます。

2-4.会社を経営できる

「経営管理ビザ」の取得には、日本国内に事業所を設け「出資金が500万円以上または日本に住む2人以上の常勤職員が必要」であったり、経験や管理の経験が必要であったりとクリアすべき要件が数多くあります。

一方の配偶者ビザの場合は、たった一人の起業で資本金が1円でも問題なく自宅をオフィスとして活用することもでき、日本人と同様にビジネスを展開できます。

2-5.就労するか、しないか任意に判断できる

配偶者ビザを有する外国人は、就労しない選択も可能です。外国人が日本に滞在するためには、なんらかの目的が必要であり、各ビザがその目的を反映しています。配偶者ビザは、日本人との結婚と同時に日本での生活を目的としており、就労は任意です。

一方の就労ビザは、特定の会社で働くことを目的としています。したがって、就労を辞めた場合その目的が失われ、他のビザに変更するか帰国しなければなりません。配偶者ビザには「生計要件」があるものの、夫または妻のどちらかが収入を得ていれば「生計要件」という目的は満たされています。

3.配偶者ビザの取得に関する注意点

配偶者ビザは就労制限が存在しないため、たとえば風俗業界で働くことも可能であり、それが直ちにビザ違反とはなりません。ただし、そうした事実が在留期間の更新において不許可の原因となる可能性があります。

また、収入がないにもかかわらず扶養に入っていない場合は、働いていない配偶者の収入についても審査が行われますその際、収入がないと判断された場合には、世帯全体の収入に問題がないとしても、配偶者ビザでの長期滞在が認められないこともあるため注意が必要です。

3-1.国際結婚後に配偶者ビザに変更しないと就労制限がなくならない

配偶者ビザを取得すれば、就労制限なく働くことも可能ですが、国際結婚をしても自動的に配偶者ビザが得られるわけではありません。とくに日本で就労ビザを得て働いている外国人が日本人と結婚した場合、その就労ビザを配偶者ビザに変更申請する必要があります

または、配偶者ビザへの変更申請をせずに就労ビザのままでいることも可能です。ただし、就労ビザは特定の職種でしか働けないといった制限があるため、就労ビザで許可されている仕事以外の仕事を希望する場合は、配偶者ビザへの変更申請が必要です。

3-2.婚姻の実態と世帯で生計立てられる収入が必要

配偶者ビザは、日本人の配偶者や日本に永住する外国人の配偶者が取得できる在留資格です。このビザは就労制限がないため、多くの配偶者ビザ取得者が日本のあらゆる雇用形態で働いています。しかし、配偶者ビザで就労する際には、いくつか注意すべき点があります。それは「婚姻の実態」と「世帯で生計を立てられる収入があるかどうか」です。以下に詳しく解説します。

婚姻の実態

配偶者としてのビザの取得には、日本人または永住者との結婚が必要条件です。この結婚は、同居と相互扶助を基にした社会的に認められた夫婦の共同生活を意味します。ただし夫婦としての実際の生活がない、いわゆる「偽装結婚」の場合、配偶者等ビザの取得は認められません。

在留資格を取得するためには、結婚証明書などの書類の提出が必要です。事実婚のように、書類で婚姻関係を証明できない場合、配偶者ビザの取得は困難です。

出入国在留管理庁に対しては、単に結婚したというだけでなく、夫婦としての生活の実態を証明資料とともに示す必要があります。提出した書類に疑義がある場合、家庭訪問などの実地調査が行われることもあります。

世帯で生計を立てられる収入

配偶者ビザであれば、必ずしも就労する必要はありませんが、配偶者ビザを継続していくためには、世帯全体で生活費をまかなえるだけの収入が必要です。もし、夫婦双方が無職で収入源のない場合、日本での生活継続が困難とみなされ、ビザの更新が認められない可能性もあるため注意が必要です。

配偶者ビザを継続していくために必要な収入額は公開されていませんが、一般的には年間240~300万円が目安とされています。ただし、親が裕福であるなど、夫婦生活の維持が可能であることを証明できれば、この目安を満たしていなくても配偶者ビザの取得が可能となる場合もあります。

3-3.配偶者ビザには期限がある

「日本人の配偶者等ビザ」の在留期間は、5年・3年・1年・6か月です。在留期間は、配偶者との結婚期間や生活の安定性などを考慮した上で、出入国在留管理庁による総合的な審査により決定されます。

そのため、必ずしも希望する在留期間が許可されるわけではありません。最長期間の5年は、すべての人が取得できるわけではなく、長期間にわたる婚姻関係と日本での安定した夫婦生活を続けている人が得られやすい傾向です。

一方の最短期間の6か月は、現在配偶者と別居中で離婚調停中の人が更新申請を行うケースなどが当てはまります。

4.まとめ

本記事では、配偶者ビザにおける就労について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。

✓配偶者ビザには就労制限がない

✓配偶者ビザは他の就労ビザのように制約はなく、会社経営もできる

配偶者ビザには期限があり、更新申請をしなければならない

配偶者ビザの取得要件として婚姻の実態と世帯収入があるため、要件を満たすか確認が必要

国際結婚後には配偶者ビザに変更し、就労制限がなくなってから新たな仕事を決めるようにしましょう。また、配偶者ビザには在留期限もあるため注意が必要です。更新の際には婚姻の実態や世帯での収入が問われるため、普段の生活においては収入や生活面について常に念頭においておくようにしましょう。

また、手続きに必要な書類がそろわない場合や、自力で更新手続きをすることが難しいと感じる場合もあるかもしれません。難しいと感じるときは、ビザ取得・更新の専門家に依頼するのもひとつの方法です。

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この記事の監修

斎藤 竜(さいとうりょう)

司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士

斎藤 竜(さいとうりょう)

相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。

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