【セミナーレポート】11月開催「最近の裁判例から考える民事信託の契約条項の定め方」

先週、【最近の裁判例から考える民事信託の契約条項の定め方】いうテーマでセミナーを開催いたしました。その内容の一部始終をダイジェストにしてレポートいたします。

※この内容は「リーガルエステート動画セミナー」にてご視聴いただけます。

【セミナーコンテンツ】
・委託者の意思無能力に関する最近の裁判例と留意点
・どちらが優先される?信託法の原則規定(デフォルトルール)と別段の定め
・受託者と受益者の合意で終了するという条項で、
他の信託終了事由は排除されるのか?
・受託者の辞任、解任、信託の変更を例に考える

どちらが優先される?信託法の原則規定(デフォルトルール)と別段の定め

「私はこれまでに高齢者向けの信託会社に8年ほど勤めてそこで信託会社が受託者になる商事信託や一般のご家族が受託者になる家族信託・民事信託の契約書の起案等について携わってきました。そして、今回ご紹介する民事信託の裁判例を踏まえて、なるべくトラブルない形で民事信託を広めていきたいと思っています。ご参加していただいている先生方に裁判例と民事信託の契約条項の定め方の注意点を話していきますのでよろしくお願いいたします。」

という自己紹介の後、いよいよセミナーに入っていきました。裁判例を基に実務的に話すセミナーで、イメージがしやすく非常にわかりやすかったです。

「では次に別段の定め、今回のメインになりますが、そことの関係で問題になった東京地裁平成30年10月23日判決をご紹介したいと思います。

事案はお父さんと子供との間で結んだ家族信託にありました。認知症対策の信託になりまして、信託をした半年後に『やっぱや~めた』というふうにお父様が言い出して、『所有権移転登記は抹消したい』ということで裁判を起こしたという事案になります。
ただ、信託契約の中には“受益者は受託者との合意により信託を終了させることができる”というように書いてあって、これが別段の定めかどうかというのが争点になったという事案です。

~さらに事案の詳細を解説~

そのことの判決内容としては、父親は受益者兼受託者なので、信託法164条1項の原則規定にのっとるとしたら『信託をやめたい』と意思表示をすれば好きな時に終わらせられるということになります。しかし、契約書には“受益者は受託者との合意により信託を終了させることができる”とあって、原則規定を優先すると、上記は無意味なものになってしまうため、信託法164条3項における”別段の定め”になるので164条1項は適用されない、というのが判決になります。

結果として『やっぱや~めた』と意思表示したかもしれないけれど、この信託では164条1項は適用されないので、信託はやめられないというように裁判所は判断しました。こういった信託を”やめられない信託(とまらない信託)”と言います。一旦やったらやめられない、やめたくてもやめられない…と。

ただ・・・」

というようにこの後、原則規定と別段の定めについてどのように対処・留意して進めたらいいのかについて解説いただきました。この部分を深く知っていないと顧客に適切でない信託契約書が出来上がってしまいます。十分に注意したほうがいい部分ですね!

誰のための信託なのか?

「そもそも、受託者は信託から利益を得ることを禁止されています。唯一の例外が”信託報酬”なんですね。

信託報酬を無報酬にする方は多いと思いますが、家族信託の場合はですね。でも、おそらく普通の方が期待しているのは、『期間中は報酬は無報酬だけど、信託が終わった時には最後自分のところに財産がくるだろう』ということを期待して無報酬でいいよと考えている方いらっしゃると思うんですよね。
しかし、それってもともとの原則からすると、おかしいというか…信託法自体はそれを想定していないと言えます。利益がほしかったら信託報酬からしか得られないというのが信託だからです。

また、今回(事例を事前に話しています)の信託がそもそも何のための信託なのでしょうか?対外的にみれば受益者のためと入っていますが…」

とこちらも事例にのっとって

・この条文は本当に適切なのか
・どの部分が争点になりえるのか

というのを丁寧にわかりやすく解説してくださいました。
ついつい依頼者である受託者の希望を叶えようと受益者のための信託であることを忘れてしまいがちです。こちらも信託契約書を作成する方であれば全員が知っておかなければならない内容ですね。


ひな型が出回っている昨今、メリットばかりに目が注目してしまって相談者の希望が叶えられない信託契約書が増えてきています。条項一つで相談者に不利益が出てしまうため、信託契約書作成は細心の注意が必要である、ということを再認識したセミナーになりました。金森先生、ありがとうございました!

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