生前対策提案において押さえておくべき生前贈与のポイントとは!?

生前対策提案を行うお客様のメインとなる資産は不動産が多いですが、その次に留意しておくべき資産が金融資産です。僕自身も生前対策業務に取り組み始めた当初は、家族信託・民事信託も遺言の遺言の延長のように活用していることが多くありました。

どうしても、法務を中心とした相続対策を検討する専門家にとっては意外と税金のことを気にしておらず「詳細は税理士の先生、税務署に確認しておいてください」というようにとるべき対策を考えず、専門外の分野は他社に投げてしまいがちです。
意外とシンプルで重要な相続対策にも関わらず、よくわからないから活用していないということが法務対策を中心とした専門家によくあります

今回の記事は下記のとおりです。

  • 生前贈与をフル活用するポイントは「基礎控除(110万円)」「人数」「年数」の3つ。この3つを意識して早期から取り組むことにより、相続対策の効果が発揮する
  • 生前贈与の注意点として「契約書の作成」「定期贈与とみなされないよう契約日等を変える」「贈与税を支払う」を考慮する
  • 2019年7月民法・相続法改正により、「相続人に対する10年超の生前贈与が遺留分の対象外」になったことにより早期からの対策が税務のみならず法務上も有効となった
  • 遺留分の取り扱い、配偶者への居住用不動産の生前贈与が改正されたが、民法・相続法改正の施行時期に注意が必要

 

今回の記事は、生前対策業務を取り組み始めた専門家向けに生前贈与を用いた相続対策の基本的な考え方と2019年7月改正の民法・相続法改正についてのポイントを紹介します。
これを読むことで、生前贈与提案のきっかけづくりになるはずです。それではどうぞ!!

生前贈与の基本

生前贈与は一般的に自己の財産を無償で他人に譲る行為を指しますが、民法上の贈与行為は契約の一種であり、財産を貰う相手方の承諾がなければ成立しません。

上記の通り、“契約”です。財産を譲る側は「贈与者」、財産を貰う側は「受贈者」という立場になります。

必ずしも契約書を作成しなくても、口頭でも贈与契約は成立しますが、特に相続対策として贈与を行う場合は、きちんと贈与契約を行ったことを税務調査などで後日対応し、証明できるようにするためにも“契約書”を作成しておくことが大切になります。
贈与は無償で行われるものですが、贈与税の負担が発生するので、税務面も留意して行う必要があります。

生前贈与を活用した相続対策の考え方

税務は理解するポイントは、基本的に儲けや利益に対して課税を行うスタンスです。そこで、贈与では財産を貰った側に利益が発生すると捉えて、受贈者側に贈与税が課税されることになります。

ただし必ず税負担が生じるわけではありません。贈与税には基礎控除という仕組みがあり、年間110万円までの贈与であれば贈与税がかかりません。基礎控除は贈与をした人ごとではなく、贈与を受けた受贈者を単位として考えるので、例えば長男が受贈者であれば、最初に父から60万円、次に母から60万円をもらったとすると二人合わせて120万円の贈与を受けたことになります。
そして贈与の合計の金額のうち、120万円(全体額)-110万円(基礎控除)=10万円が贈与税の対象になります。

贈与税は課税対象の価額に応じて10%~55%の一定の税率を掛けて税額を算出するのですが、直系尊属(父母や祖父母など)から20歳以上の直系卑属(子や孫など)への贈与財産は「特例贈与財産」として、それ以外の財産を「一般贈与財産」として扱い、それぞれ別の税率表で計算します。

子に対する贈与がほとんどなので、贈与の対象財産は“特例贈与対象財産”となることがほとんどだと思いますが、後ほど説明しますが、場合によっては、一代飛ばしで孫に贈与する、子の配偶者に贈与するということも手法としてあるので、この場合は、一般贈与財産となる可能性があり、税率が変わる点は注意しておいてください。
税率について詳しくは国税庁のHPで確認できます。

相続税対策として生前贈与を考える時には、上記の「年間110万円」までの基礎控除を有効に活用することがポイントになってきます。

暦年贈与の相続税対策効果

相続税は贈与税とは異なり、被相続人の死亡後に残った相続財産に対してかかるものです。相続税の負担を減らすには、如何にして将来の相続財産を減らすかがポイントです。
ただ消費して減らすのでは浪費になってしまいますが、家族や親族に上手に生前贈与をして、上手に資産承継していくことが可能です。

基礎控除の枠内で少しずつ財産を移転することで、贈与税を回避しつつ、将来の相続財産を減らして相続税対策とすることができます。この時、「年間110万円まで」をフルに活用するには、まずできるだけ早期に財産移転を開始することを意識します。1年では110万円ですが、10年かけて行えば1100万円の財産移転が可能です。

さらに、子や孫などできるだけ多くの相手に移転できれば、その人数分、更に効果を上げることができます。例えば、子2名、孫4名の合計6名に対して110万円、これを10年間おこなえば、「110万円×6名×10年間」=「6600万円」の財産を親から子供に贈与税をかけずに移すことができます。

孫に対する生前贈与はさらに効果が高いものになるので有効です。孫の場合、相続を一世代飛ばせることから相続税の負担もそれだけ回避することができます。
そのため、顧客の家族構成を見て、贈与ができる対象者が多いようであれば、相続財産を減らす効果が大きい、暦年贈与の提案ができるのです。

そして、贈与後に利用予定がないのであれば、その子世代が贈与を受けた金銭をすぐに使わず将来のために運用、資産形成できるよう、子世代のための年金保険、証券、投資用不動産購入など資産コンサルにつなげることもできるのです遺言・信託相談、そこから、暦年贈与提案から、そして資産コンサル提案へとつなげることができます

生前贈与提案を行っていく際の注意すべきポイントとは!?

贈与税の基礎控除を利用して財産を子世代に移していくためには、一定の注意を要します。単純に考えれば毎年110万円を定期的に贈与していけば問題なさそうですが、税務署サイドの視点で考える必要があります「どうすれば課税できるか?」という観点で解釈を行います。
例えば、10年間、毎年110万円ずつ贈与をすると1100万円を移転できますが、税務署はこれを「定期贈与」とみなされる可能性があるのです

定期贈与とは毎年一定の金額を贈与することがきまっている贈与契約です。つまり、「最初から10年分のまとまった金額を贈与することが決まっていたのだから、全体の1100万円をまとめて最初に課税対象とみなします」ということです。
基礎控除が1回分しか使えないことになり、1100万円-110万円=990万円に贈与税がかかってしまうのです。贈与税の基礎控除を活用した生前贈与は、対税務署対策を意識して次のような配慮が必要になります。

①契約書を作成する

最初の項で、贈与契約は口頭でも成立するが書面にすることが大切である旨の説明をしました。
これは契約書が無いことをいいことに、税務署サイドの理論で贈与契約があったとみなすことに対抗するためです。必ず書面の形で契約書を残しておくようにします。

②契約締結日、金額を毎回変える

定期贈与とみなされないためには、毎回の贈与について偶然性をアピールするのが有効です。そのために、贈与契約の締結日を毎年変える、贈与金額も毎年同じ金額ではなく変動させるのが有効です。

③たまに贈与税を支払う

生前贈与は長期間続けることで効果を高めることができますが、先ほど説明した定期贈与と税務署からみなされないために、その間には何度かあえて基礎控除の枠を超えた贈与を行い、わずかな贈与税を納税しておくことも有効です。定期贈与でないことを明確にするため納税の証拠を残します

④相続人に対する相続開始前3年間の贈与に注意する

相続人に対する相続開始前3年間の贈与については、相続税の計算の際に相続財産に組戻して計算しなければならない「生前贈与加算」というルールがあります。

親が亡くなる直前に生前贈与を行っても、相続財産に組み戻されるため、高齢の両親で暦年贈与を活用した相続対策を検討している場合には、相続人ではない子の配偶者、孫などに対して生前贈与を行うなどの検討も行う必要があるので注意してください。こういった点を勘案して、暦年贈与プランを組み立てます

生前贈与に対する2019年7月1日相続法改正点に留意


2019年7月の相続法改正に伴い、生前贈与についての生前対策提案においても一部改正が入っているので注意が必要です。

(1)改正後の生前贈与についての遺留分の取り扱い

・遺留分の計算上で算入できる相続人に対する生前贈与は相続開始前10年以内のものに限られる(改正前は無制限)
➡改正のポイント10年以上前から計画的に生前贈与した財産は原則遺留分の対象となりません

・遺留分の請求によって生じる権利は金銭の支払いのみを求めることができる債権となる
➡減殺請求により、生前贈与された財産、相続した財産が共有とならず、金銭の支払いを求めることができる権利となりました。また、遺贈や贈与を受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合には、裁判所に対し支払期限の猶予を求めることができます

(施行時期)
2019年7月1日法改正後に生じた相続から適用されます。改正以前に発生した相続については適用がありません

(2)婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する取り扱い

婚姻期間20年以上の夫婦が、配偶者に居住の用に供する建物又は敷地を遺贈又は贈与(死因贈与を含む)したときは、特別受益の持戻し免除の意思が推定されます。

(施行時期)
改正前に行われた生前贈与等については適用されないため、2019年7月1日改正後に相続が開始された場合でも、改正前にされた生前贈与については適用がありません。生前贈与は本人の意思を尊重する制度です。そのため、贈与は2019年7月1日以降に行われたもののみが対象となります。

相続法の改正の詳細については別の記事でまとめていますのでそちらを確認してみてください
>>相続法改正!士業・専門家が気をつけるべきポイントとは!?

まとめ

  • 生前贈与をフル活用するポイントは「基礎控除(110万円)」「人数」「年数」の3つ。この3つを意識して早期から取り組むことにより、相続対策の効果が発揮する
  • 生前贈与の注意点として「契約書の作成」「定期贈与とみなされないよう契約日等を変える」「贈与税を支払う」を考慮する
  • 2019年7月民法・相続法改正により、「相続人に対する10年超の生前贈与が遺留分の対象外」になったことにより早期からの対策が税務のみならず法務上も有効となった
  • 遺留分の取り扱い、配偶者への居住用不動産の生前贈与が改正されたが、民法・相続法改正の施行時期に注意が必要

顧客の資産構成と家族関係をヒアリングする、この部分は一般の会社よりも、士業・専門家の信用力をもってヒアリングできる部分ですそして、その信用力を活かし、法務・税務を考慮した顧客ごとの提案をしていく、そんなことが僕らの求められる役割になっていくのでしょう。
相談を受けていると意外と金融資産をお持ちの方が多いです

信託した財産を受託者がそのまま生前贈与することは、受託者の忠実義務に反するため難しいですが、金融資産をそのまま信託や遺言の対象とせず、生前贈与も検討して、併用提案をおこうことにより、節税効果も狙いつつ、資産承継対策そして、資産コンサル提案を行うことができます

金銭については、むしろ当初から信託財産とするのではなく、暦年贈与を行うための原資として本人の財産として残しておく、認知症等で判断能力が衰えてくる見込みがではじめ、暦年贈与ができなくなりつつあるときは、残ったまとまった金銭を追加信託で、信託財産に組み入れるといった選択肢もつくることができます

金融資産が多い方向けの対策の一つとして生前贈与を是非取り入れてみてください(^^)/

次回の記事もお楽しみに!

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