生前対策・家族信託コンサルタント 司法書士の斎藤です。
平成31年2月1日に戸籍法部会第12回会議において、「戸籍法の改正に関する要綱案」が決定されたというニュースがありました。
◆戸籍証明書、提出不要に結婚・年金受給など
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40768920R00C19A2EA3000/?n_cid=SPTMG002
◆相続時の戸籍謄本集め1カ所で請求OKに24年から手続き簡略化
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO42198260Y9A300C1PPD000/
5年後のことになりますが、2024年に士業・専門家の業務で携わる比重が多い、戸籍謄本、相続人確定作業が大きく変わる内容です。2019年、2020年と相続法改正、遺言保管制度の創設と改正が目白押しですが、更に続いていきます。
今回の記事は下記のとおりです。
- そもそも相続人確定のための戸籍請求とは?
- 戸籍法改正の予定とその内容とは!?
- 戸籍謄本の添付省略、マイナンバーの紐づけは!?
一体どのように変わっていくのでしょうか?是非、改正に伴って自分たちの仕事をどのように変えていくか。考えながら読んでみてください(^^)/それでは、どうぞ。
そもそも相続人確定のための戸籍請求とは?
相続手続における、相続登記、相続税申告、金融機関での払い戻し手続きや、遺言作成、信託契約書作成などなど。
生前対策業務を行うには、相続人を確定させる必要があります。相続人が確定しないと、法律関係を確定させることができないからです。
戸籍は、「筆頭者」の本籍地である市町村の役所に請求しなければなりません。そして、本人の転籍、婚姻、離婚、コンピュータ化に伴う様式変更など、様々な事由によって戸籍が新たに作成されるのです。
戸籍には原則、作成された期間中の情報しか記載されません。過去に出生、離婚、養子縁組したなどの情報はその当時の戸籍を確認しなければわからないため、死亡時の戸籍から遡りながら、全ての役所から取り寄せるという手間な作業が発生します。
転籍など繰り返している人などは、数か所の役所で取り寄せる必要があるため、場合によっては戸籍を全て揃えるために1~3か月かかることもあります。
しかも、戸籍を一つ一つ専門的な知識をもとに戸籍を読み込まなければならないため、士業事務所でいうと、専門的な知識を有するスタッフの育成と人的なリソースが必要なため、ここに業務効率化の壁が立ちはだかります。
戸籍法改正の予定とその内容とは!?
戸籍法の改正は今国会に提出される予定で要綱案が決定されました
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04600030.html
戸籍の広域交付制度が新設され、今までは、本籍地の役所で請求又は一部の地域だけですが、コンビニで現在戸籍を請求することができました。これを、全国の市区町村の役所で現在戸籍と除籍を取り寄せることができます。
呼び方も、今までは戸籍謄本、除籍謄本と呼んでいましたが、改正されたのちは、今後は戸籍証明書、除籍証明書と呼ぶそうです。僕も、この要綱案を読み解いていて、“???”という疑問点がたくさんつきましたが、他の制度を応用していることに気付きました。
不動産関係の仕事をしている方だとよく取り扱っている登記情報です。
登記情報も以前は登記簿が帳簿(バインダー)時代には、不動産の所在地を管轄する法務局でしか、請求できませんでした。(今でもコンピュータ化前の閉鎖謄本は、現地の法務局でしか取得できません)
しかし、今では登記所間がネットワークで連携しており、どこの法務局でも全国の不動産の登記事項証明書を取り寄せることができます。従前は登記簿謄本といっていましたが、(名前の名残は残っています)現在では登記記録のデータ化に伴い、登記事項証明書といいます。
この流れと同じく戸籍も戸籍謄本から戸籍証明書にかわっていくということです。
戸籍法の改正に関する要綱案では、“磁気ディスクをもって調整された戸籍又は除かれた戸籍の副本は、法第8条第2項の規定に関わらず、法務大臣がこれを保存するものとする。”と記載されています。今までは、市区町村が戸籍の正本を法務局が副本を管理していましたが、このデータを法務大臣が保存するものとされています。
データ化されていることから、登記事項証明書と同じく、戸籍証明書も全国の市区町村で、取り寄せすることができるという流れです。請求する際は、マイナンバーカード等の写真付き身分証明書の提示の上、請求することになるようです。
資格者が職務上請求する場合の取り扱いなどはこれから詰めていくのでしょう。
しかし、今後、最寄りの役所で、登記事項証明書と同じく役所の職員と相談しながら1つの窓口ですべて完結する時代が訪れます。
被相続人の出生から死亡までの戸籍や相続人の戸籍というように、今まで取り寄せるのにものすごく時間がかかっていた作業が1日で終わるようになるのでこれは、士業・専門家も一般の方にとっても効率化が図れ、便利になります。
手続きが必要な法務局、金融機関などの最寄りの市役所で戸籍を収集して、そのまま手続きができるといった利用も想定できます。
戸籍謄本の添付省略、マイナンバーの紐づけは!?
役所同士で情報が交換されるので不動産登記続きにおける会社謄本などの取り扱いと同様に、婚姻届けなど戸籍謄本の提出が要求される手続きにおいても、戸籍謄本を提出が不要となっています。
また、電子的な戸籍証明情報も発行できるようです。
電子的な戸籍証明情報がどういう取り扱いになるかは、今後の動向次第。(登記情報提供サービスの照会番号と同じ??)しかし、今後の活用方法次第では、効率化できる部分が多くなってくると思います。
マイナンバーと紐づけするかという部分については、要綱案では、個人番号(マイナンバー)を利用しないと明記されています。
個人的には、紐づけたほうが、相続手続き、申告、すべての手続きについて2年前エストニアも見てきました。
徹底的な効率化が図れるので、役所の無駄な仕事も減っていいと思うのですが、マイナンバーを利用せず、所要の整備を行うようです。いずれの改正も、従前どおり、役所から取り寄せした戸籍の読み解き、相続関係図の作成などは行う必要はあります
我々専門家にとってみれば、格段に業務効率が図れるようになるし、従前の登記情報の改正と同じく、調べる作業の時間短縮が図れる分、お客様とのコミュニケーションや面談などにあてることができ、より本来やるべき業務に集中できる時間をつくれそうです。
まとめ
- 戸籍法の改正により2024年以降、収集業務がどの役所でもできるようになり利便性が確実にあがる
- 実際の実務での運用はこれから整備されていく
- 効率化した時間を本来業務に充てられるようになる
次回をお楽しみに。
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