【2023年】親族後見は8割超認められる?2022年成年後見統計データからみる最新の成年後見利用状況

裁判判断基準

2023年3月に、最高裁判所事務総局家庭局から令和4年1月から12月までの1年間における,全国の家庭裁判所の成年後見関係事件(後見開始,保佐開始,補助開始及び任意後見監督人選任事件)の概況として統計データが公表されました。また、2022年5月18日の厚生労働省の専門家会議でも最新の成年後見利用状況や取り組みが報告されています。

2019年3月18日最高裁から後見人には「身近な親族を選任することが望ましい」との考え方を示したというニュースが報道されたこともあり、親族後見人の運用状況に変化があったのかという点について、相続や生前対策にかかわる専門家は知っておきたい情報です。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

  • 成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立件数は合計で39,719件(前年は39,809件)であり、対前年比約0.2%の減少となっている。
  • 成年後見等の申し立ての原因と動機は認知症で預貯金の解約がトップ
  • 専門家の後見人等への就任割合が全体の約8割と高いが、そもそも親族後見希望者は全体の約23.1%と少ない
  • データから逆算すると、親族後見人の認容率は約88.7%。高い割合で親族後見が認められている。
  • 親族後見のうち、後見監督等選任率は約16.6%、成年後見制度支援信託・預貯金の利用率は約37.2%。残り約4割超は親族での単独後見が認められている可能性がある

今回の記事では、成年後見事件の統計データの概況からみる現在の成年後見運用と親族後見人の選任状況についてお伝えします。

2019年3月18日付け最高裁の親族後見への方針変更の内容

司法書士や弁護士が成年後見人として多く就任している実情の運用の見直しのため、2019年3月18日の厚生労働省の第2回成年後見制度利用促進専門家会議にて、最高裁判所が下記の考えを明らかにしました。

最高裁と専門職団体との間で共有した後見人等の選任の基本的な考え方
◯本人の利益保護の観点からは,後見人となるにふさわしい親族等の身近な支援者がいる場合は,これらの身近な支援者を後見人に選任することが望ましい
◯中核機関による後見人支援機能が不十分な場合は,専門職後見監督人による親族等後見人の支援を検討
◯後見人選任後も,後見人の選任形態等を定期的に見直し,状況の変化に応じて柔軟に後見人の交代・追加選任等を行う
(厚生労働省第2回成年後見制度利用促進専門家会議「資料3適切な後見人の選任のための検討状況等について」から引用)

そして、この見解を2019年1月に各家庭裁判所に通知し、各家庭裁判所では、中央での議論の状況等を踏まえ,自治体や各地の専門職団体等とも意見交換の上,検討を進めていくという形で、今に至っています。

【令和4年1月~12月】家庭裁判所の成年後見制度運用状況

では、現状の成年後見制度の運用状況はどうなっているのか、最新の令和4(2022)年1月~12月の成年後見事件の概況及び2021年3月29日に開催された第7回成年後見制度利用促進専門家会議の配布資料から見ていきます。

1.成年後見関係事件の申立件数の推移

成年後見制度の利用件数はこの2年は増加傾向にありますが、令和4(2022)年では39,719件と全体の申立件数は対前年比約0.2%の減少となっています。任意後見監督人の選任申立件数が前年に比較すると約12.1%とに増加しています。

任意後見監督人選任が増加した理由としては、法務省が令和3年及び令和4年に行った、任意後見監督人が選任されていない任意後見契約について、契約締結後3年半以上経過している委任者(本人)及び受任者計約18万人に対して「任意後見監督人の選任の申立てを促す文書」の送付したことなどの影響が考えられます。
参考:成年後見制度利用促進に係る取組状況等について(法務省)

〇 成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立件数は合計で39,719件(前年は39,809件)であり、対前年比約0.2%の減少となっている。
○ 後見開始の審判の申立件数は27,988件(前年は28,052件)であり、対前年比約0.2%の減少となっている。
○ 保佐開始の審判の申立件数は8,200件(前年は8,178件)であり、対前年比約0.3%の増加となっている。
○ 補助開始の審判の申立件数は2,652件(前年は2,795件)であり、対前年比約5.1%の減少となっている。
○ 任意後見監督人選任の審判の申立件数は879件(前年は784件)であり、対前年比約12.1%の増加となっている。
(成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―から引用)


(成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―から引用)

2.成年後見制度全体の利用者数

成年後見制度全体の利用者数は令和4年(2021年)12月末時点でも245,087人と増加傾向にあるものの、その利用者数は推計される認知症高齢者や知的障碍者、精神障碍者に比べると少ない状況です。

(成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―から引用)

成年後見利用者数
第7回 成年後見制度利用促進専門家会議 成年後見制度利用促進に関する現状(概要)より引用)

3.申し立ての原因と動機は認知症で預貯金の解約がトップ

成年後見申し立ての原因ときっかけは、認知症・金融機関での預貯金の解約がトップの状況です。

○ 開始原因としては、認知症が最も多く全体の約63.2%を占め、次いで 知的障害が約9.4%、統合失調症が約8.7%の順となっている。

○主な申立ての動機としては,預貯金等の管理・解約が最も多く,次いで,身上保護となっている。


(成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―から引用)

このような認知症による口座凍結の問題から、2019年2月18日に全国銀行協会が発表した代理権がない親族との取引指や任意代理取引の考え方が発表されたという経緯があります。

この発表では、認知症に伴う口座凍結の対応としての基本は、成年後見制度の利用、もしくは、任意代理人制度の活用などを述べており、例外的なケースとして代理権がない親族からの取引行為に応じる方法を紹介しています。しかしながら、原則は後見制度の利用としているため、今後もこの認知症による預金凍結の問題については、成年後見制度での主要な原因、動機になりそうです。

全国銀行協会の考え方については、別の記事で詳しく解説していますので、こちらを確認してみてください。

高齢者の預貯金払戻しルールが変わる!?相続専門家が知っておきたい全国銀行協会の金融取引の考え方とは?

4. 専門職が成年後見人等になるケースは全体の約8割を占める

親族以外の専門家等が成年後見人等に選任されたものは,全体の約80.9%を占めており(前年約80.2%),専門家が親族が成年後見人等に選任されたケースより上回るという状態は平成24年(2012年)から続いています。

○ 成年後見人等(成年後見人、保佐人及び補助人)と本人との関係をみると、 配偶者、親、子、兄弟姉妹及びその他親族が成年後見人等に選任されたものが全体の約19.1%(前年は約19.8%)となっている。
○ 親族以外が成年後見人等に選任されたものは、全体の約80.9%(前年は約80.2%)であり、親族が成年後見人等に選任されたものを上回っている。
○ 成年後見人等と本人との関係別件数とその内訳の概略は次のとおりである。
関係別件数(合計) 39,564件(前年39,578件)
親      族   7,560件(前年 7,852件)
親  族  以  外  32,004件(前年31,726件)
うち 弁 護 士   8,682件(前年 8,208件)
司 法 書 士  11,764件(前年11,969件)
社会福祉士   5,849件(前年 5,754件)
市民後見人     271件(前年   320件)


(成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―から引用)

5.市区町村長申し立てが前年より増加している

成年後見の申立人の数字ですが、親族ではない市区町村長申し立て数が9,229件(前年9,185件)より約0.5%増加しています。後見等申立の全体の割合でいうと、約23.3%を占めており、申立人が最も多く、次に多いのが本人であるという状況です。つまり、本人の身の回りを見ている親族ではなく第三者である市区町村長が申し立てが増えていること、そして、後見人として第三者後見人が増えている状況から、財産管理を任せる親族がいない、申立てに協力する親族がいない方の利用が増えていることが読み取れます。

○ 申立人については、市区町村長が最も多く全体の約23.3%を占め、 次いで本人(約21.0%)、本人の子(約20.8%)の順となっている。
○ 市区町村長が申し立てたものは9,229件で、前年の9,186件(前年全体の約23.3%)に比べ、対前年比約0.5%の増加となっている。
(成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―から引用)


成年後見制度利用促進に係る取組状況等について(最高裁判所)より引用)

つまり、専門家が関与している割合、件数が増えているのは、財産管理を親族に任せないという家庭裁判所の運用というよりも、むしろ親族が関与しない本人申立てや市区町村長申し立てが増えているといったことが背景にありそうです。その結果、親族が成年後見人候補者となる案件は今後更に減少していく可能性が高く、親族以外の第三者後見人が占める割合が更に増加していく可能性が高いことが予想されます。

6.成年後見人等による不正案件の状況

成年後見制度がスタートした当初は、本人に近い親族が後見人になるケースが多くを占めていました。
本人のことを理解している身近な親族が後見人となることで身上監護をスムーズにできるというメリットの反面、問題となったのが、後見人による本人の財産の使い込みです。マスコミ報道では専門職の不祥事が取り上げられますが、下記表のとおり親族後見による不正案件が多くを占めています。

この問題を解決するために平成24年(2012年)から後見制度支援信託という制度が開始されました。また、専門職など第三者後見人の選任割合が親族後見人の選任割合を上回ったのも親族後見による不正案件が増え始めたのも平成24年(2012年)からです。

(裁判所HP:後見人等による不正事例(平成23年~令和4年まで)から引用)

この結果、第三者後見人の選任割合増加と成年後見制度支援信託・預貯金の活用など不正防止に向けた裁判所の取り組みの結果、平成26年をピークに不正の件数が減少を続けています。

令和4年(2022年)の成年後見概況から推察する親族後見人の運用状況

2019年に最高裁から後見人には「身近な親族を選任することが望ましい」との考え方を示したことから親族後見人についてどのような変化があったのでしょうか?2021年の成年後見事件の利用概況から親族後見人の選任状況を検証してみます。

1.親族後見希望者は、全体の約23.1%しかいない

家庭裁判所は令和2年2月から初めて、成年後見申し立て時に親族を成年後見候補者として申立書に記載されている事件数の割合を公表しています。このデータは親族後見人を家庭裁判所がどの程度の割合で認めたのか推察するにあたって活用できるデータです。

令和4年(2022年)後見開始,保佐開始及び補助開始の認容で終局した各審判事件のうち,親族が成年後見人等の候補者として各開始申立書に記載されている事件は,終局事件全体の約23.1%となっており、令和3年(2021年)については、約23.9%という状況です。

(成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―から引用)

令和4年における認容で終局した後見開始、保佐開始及び補助開始事件(36,923件)のうち、約23.1%(前年は約23.9%)が申立書に親族の候補者が記載されています。つまり、申立人が親族後見人を希望する案件は全体のわずか約23.1%に過ぎないということがわかります。

後見申立等の申立類型として本人及び市区町村長申し立てが増えている背景もあるのですが、そもそも親族を後見人候補者として申し立てている事案が少ないのが現状です。このことも、専門家が後見人として約8割選任されていることと関係がありそうです。

2.親族後見人候補者の認容率は約88.7%

次に、親族後見人を候補者として記載した場合における、親族後見人が認められた割合を検討していきます。
ケースによっては、当初申立書に親族後見人候補者の記載がなく、家庭裁判所における選任の過程で親族後見人が選任された例外的な事例もあるかもしれませんが、一般的には親族後見人候補者がある場合に親族後見人が選任を検討するという行程がほとんどです。そのため、計算上親族後見人が選任されたケース全てで親族後見人候補者記載があるとの前提で検証します。データから逆算して概算計算すると、2022年においては約8,529件が親族後見人を候補者として申し立てをした事件数に近いと考えられます。

36,923(令和4年の総数)×約23.1%(令和4年:親族の候補者あり)≒約8,529

そのうち、実際に親族が成年後見人として選任された事件数は7,560件です。このことから、親族後見人が認められた割合は約88.7%ということがわかります。かなりの高い割合で親族後見が認められている実情がわかります。

7,560(親族後見人)÷約8,529(親族候補者概算)≒約88.7%(親族後見人認容率)

財産が多岐にわたる、構成が複雑、親族間で対立があるなどの事情など親族後見人を選任すべきでないと認められる事情がない限り、親族後見候補者が概ね後見人に選任されているものと考えられます。

我々専門家の認識について、今までの親族後見人や障碍者の親を成年後見人とする成年後見申し立てをしても親族や親が成年後見人等となれない認識は改めるべきです。家族関係や財産状況が多岐にわたるなどの要素がなければ、希望した候補者が成年後見人等に就任出来る状況ということを認識しておくべきです。

親族後見における後見監督人と後見制度支援信託の利用率

家庭裁判所ごとに運用は異なりますが、家庭裁判所が一般的に親族を後見人として選任するための条件として、下記のものがあります。

・本人の推定相続人から同意があること
・親族後見人候補者の年齢、居住環境、資産状況、経歴などに問題がないこと
・管理する財産が少ない
・管理する財産が多い場合(目安:1000万円~)には、後見制度支援信託又は後見制度支援預貯金を利用する、もしくは成年後見監督人を選任する

ポイントは、①後見人候補者の適性があり親族からも同意を得ていることと、②管理財産が多い場合には、家庭裁判所の指示がなければ引き出すことができない後見制度支援信託又は後見制度支援預貯金を利用するか、成年後見監督人の選任を受けることです。

後見制度支援信託・後見制度支援預貯金と成年後見監督人の選任実績等から、実際の親族後見人の運用状況を推察してみます。

統計

1.親族後見での監督人選任率は約16.6%

認容で終局した後見開始,保佐開始及び補助開始事件のうち,成年後見監督人等が選任されたものは1,256件です。

○ 認容で終局した後見開始、保佐開始及び補助開始事件(36,923件)のうち、成年後見監督人等(成年後見監督人、保佐監督人及び補助監督人)が選任されたものは1,256件であり、全体の約3.4%(前年は約3.2%)である。
(成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―から引用)

財産状況が多岐にわたるなど事案によっては、専門家を成年後見人等に選任した事件についてさらに監督人として専門家を選任するケースもたまにありますが、親族後見での専門家を監督人として選任するものがほとんどのケースです。

ここでは、計算の便宜上、後見監督等≒親族後見として考えて、親族後見に対する後見監督割合を計算してみます。その結果は、成年後見監督人選任率は約16.6%であり、監督人等が選任される割合は意外と少ないことがわかります。

1,256(後見等監督案件)÷7,560(親族後見人)≒16.6%(監督人選任率)

2.親族後見での成年後見制度支援信託・預貯金の利用率は約37.2%

次に、後見制度支援信託・預貯金の利用状況については2021年の実績ですが、、後見制度支援信託等の利用状況等について-令和3年1月~12月-が公表されています。同データによると、全国の家庭裁判所における後見制度支援信託及び後見制度支援預貯金の2021年新規利用者数は2,924名、累計利用者数33719名となっています。

○ 令和3年1月から12月までの1年間に、後見制度支援信託が新たに利用された(後見人が代理して信託契約を締結した)成年被後見人及び未成年被後見人の数は
1,011人、信託財産額は約417億4600万円であり、信託財産額の平均は約4129万円となっている。
○ 令和3年1月から12月までの1年間に、後見制度支援預貯金が新たに利用された(後見人が代理して預貯金契約を締結した)成年被後見人及び未成年被後見人の
数は1,913人、預入れ財産額は約527億5000万円であり、預入れ財産額の平均は約2757万円となっている。
○ 平成24年2月から令和3年12月までの後見制度支援信託の累計利用者数は28,273人、後見制度支援預貯金の累計利用者数(ただし、平成30年1月以
降)は5,446人であり、信託及び預入れ財産額の累計は約1兆1090億7500万円となっている。
(後見制度支援信託等の利用状況等について-令和3年1月~12月-)

後見制度支援信託等は親族後見で活用するケースが多く占めています。ここでは、計算の便宜上、後見制度支援信託等≒親族後見として考えて、親族後見に対する後見制度支援信託等の割合を2021年のデータで計算してみます。その結果は、後見制度支援信託等利用率は約37.2%であり、監督人等が選任される割合よりも多いことがわかります。

2,924(2021年:後見制度支援信託等利用数)÷7,852(2021年:親族後見人数)≒37.2%

年度は異なるのですが、家庭裁判所の現状の状況として、親族後見における管理財産が多い場合には後見監督等よりも後見制度支援信託等を活用するケースが多いことがわかります。親族後見人が選任されたケースで、全体の約53.8%が成年後見制度支援信託又は監督人選任されるケースとなっており、残り4割超の親族後見については、(管理財産額が少ないケースなど)後見監督及び後見制度信託等を利用していないことがわかります。

まとめ

  • 成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立件数は合計で39,719件(前年は39,809件)であり、対前年比約0.2%の減少となっている。
  • 成年後見等の申し立ての原因と動機は認知症で預貯金の解約がトップ
  • 専門家の後見人等への就任割合が全体の約8割と高いが、そもそも親族後見希望者は全体の約23.1%と少ない
  • データから逆算すると、親族後見人の認容率は約88.7%。高い割合で親族後見が認められている。
  • 親族後見のうち、後見監督等選任率は約16.6%、成年後見制度支援信託・預貯金の利用率は約37.2%。残り約4割超は親族での単独後見が認められている可能性がある

最高裁の親族後見の見直しを受けて、2022年の家庭裁判所における運用状況を分析すると、親族後見の認容率が約8割超となっていることがわかりました。そして、市区町村長申し立てが増えていること、親族がそもそも後見人となることを希望していないことから、専門家の後見人等への就任割合が上昇している傾向です。親族間で意見対立がある、財産管理を見守る親族がいないなどの事情により、専門家が後見人等として選任されているケースが多そうです。

このことは、成年後見は使い勝手が悪いと専門家をはじめ、一般の方にも認識が増えてきたことから、財産管理等見守る親族がいない場合の手段として、成年後見の活用する傾向になってきたからかもしれません。

専門家として、また、後見制度で親族が後見人に選任される可能性が高まったことを頭に入れて、財産管理ができる家族がいる場合といない場合とで対策をどのようにとればよいのか改めて対策方法を考えていく必要がありそうです。

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