渉外不動産登記相談における宣誓供述書の実務と対応方法とは?

最近、事務所の電話を取ったら、やけに流暢な英語で問い合わせが来て「おっと…」って固まること、増えませんでしたか?最近の相談案件は、一筋縄ではいかないことが増えてきています。

「香港に住んでいた父の相続で、日本の不動産が出てきたんですが…」
「シンガポールの会社が日本の会社を買収するので、その担保設定を至急…」
「アメリカのデラウェア州籍の法人が、日本の不動産を信託設定したい…」

もう、法務と税務がぐちゃぐちゃに絡み合った、パズルみたいな案件…。 司法書士の知識だけじゃ、とてもじゃないけど太刀打ちできない。弁護士の先生、税理士の先生の力も借りなきゃ、ゴールにたどり着けない。そんな案件が、増え始めてきています。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

  • 宣誓供述書は、登記先例に基づき、外国籍当事者の住所証明情報や印鑑証明書等を代替する渉外登記実務の要となる書面。
  • 円滑な登記の実現には、本国公証人等による認証が必要
  • 2024年4月の法改正で、買主の住所証明情報には宣誓供述書に加えて旅券等の写し(個人)又は政府作成書面の写し(法人)が必須に。
  • 売主が非居住者の場合、買主が負う10.21%の源泉徴収義務は、決済実務における最重要確認事項の一つ
  • 専門家共通の責務である犯収法上の厳格な本人確認義務の遵守は、渉外登記において特に重要

もはや「渉外案件」は、一部の特殊な事務所が扱う仕事じゃありません。我々すべての専門家にとって、否応なく向き合わなければならない“日常”であり、“現実”になりつつあります。

1.渉外不動産登記における宣誓供述書の基礎実務

まず、宣誓供述書の基本的な概念と、不動産登記実務におけるその役割を再確認します。基礎的な内容を含みますが、実務上の応用や注意点を交えて解説します。

1-1.宣誓供述書(Affidavit)の法的性質と登記実務上の位置づけ

宣誓供述書(Affidavit)とは、供述者本人が、公的な権限を有する者(公証人等)の面前で、記載内容が真実であることを宣誓した書面です。

日本の登記実務におけるその根拠は、法律の条文ではなく、長年の実務から生まれた登記先例(昭和36年2月13日民甲第299号回答など)にあります。これにより、日本の印鑑証明書や住民票等を取得できない外国人のために、それに代わる証明書面として活用されてきました。その本質は、「公証人等の公的機関が、供述者の本人性と署名の真実性を担保すること」にあり、これにより登記の真実性を確保するのです。

1-2.添付書面としての多様な機能

宣誓供述書は、その記載内容を工夫することで、一つの書面で複数の添付書面の役割を果たすことができます。これは、特に海外在住のクライアントにとって、手続きの負担を大幅に軽減する上で極めて有効です。

主な代替機能:

  • 住所証明情報: 買主の住所を証明
  • 印鑑証明書の代替:署名(サイン)が本人のものであることを証明
  • 資格証明情報(会社謄本等)の代替: 外国法人の商号、本店、代表者の資格を証明
  • 登記原因証明情報 兼 委任状: 登記の原因となる法律行為や代理権授与の事実を記載

実務上、これらの機能を一枚に集約する「オールインワン型」は効率的ですが、不備のリスクも高まります。事前に管轄法務局と協議し、案件に応じて書面を分離する判断も必要です

1-3. 宣誓供述書を必要とする国の具体例と比較

宣誓供述書が必要となるのは、主に「印鑑登録制度」が存在しない国の当事者です。

  • 印鑑登録制度がある国・地域(原則、本国の印鑑証明書を使用)
    韓国、台湾、中国(限定的)
  • 印鑑登録制度がない国(宣誓供述書が必要)
    アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ヨーロッパ諸国、東南アジア諸国の多く

公証制度も国によって異なり、大陸法系(ドイツ、フランス等)の公証人は文書内容の適法性まで審査に関与することがありますが、英米法系(アメリカ、イギリス等)の公証人は主に署名者の本人確認と署名の認証に重点を置きます。この違いの理解は、クライアントへの説明において役立ちます

1-4. 宣誓供述書に記載すべき事項の詳細(ケース別)

記載事項は、宣誓供述書にどのような役割を持たせるかによって変動します。登記申請を担う司法書士が、他の専門家とも連携し、必要な情報を漏れなく盛り込んだドラフトを作成する能力が求められます。

【基本記載事項】

・表題 (AFFIDAVIT)
・供述者(Affiant)の特定情報:氏名、住所、生年月日、国籍、旅券(パスポート)番号
・宣誓の文言:「私、[供述者氏名]は、以下の事実が真実であることを厳粛に誓います。」
・供述する事実(後述)
・日付
・供述者の署名
・公証人の認証文言:認証日、公証人の署名、公証人の職印・スタンプ

【ケース別・供述する事実の記載項目】

■個人として利用する場合:
・登記義務者としての本人情報(氏名、住所)
・登記名義人住所から現住所への沿革(住所変更があった場合)
・売却する不動産の表示
・登記原因
・司法書士への委任事項(登記申請、原本還付、登記識別情報受領の権限など)
・宣誓供述書記載の内容が真実であること

■法人代表者として利用する場合:
・法人の正式名称(商号)、本店所在地
・設立準拠法(例:「当法人は、アメリカ合衆国デラウェア州法に基づき設立された法人である。」)
・代表者の資格と氏名(例:「私は、上記法人の代表者であり、当法人を代表して一切の法律行為を行う正当な権限を有します。」)
・本店移転があった場合は、その沿革

住所の表記は、現地の表記方法で正確に記載する必要があります。番地、ストリート名、市、州、国の順で記載するのが一般的です。また、住所変更の沿革を証明する場合、旧住所と新住所、変更年月日を明確に記載し、可能であればその事実を裏付ける公的な書面(公共料金の請求書など)を参考資料として依頼者に準備してもらうと、より正確性が増します。

2.宣誓供述書の認証機関の選択:本国公証人 vs 在日大使館・領事館

認証手続きのマネジメントは、渉外案件における専門家の腕の見せ所です。認証を受けられる場所は、原則として以下の2つです。

(1)当事者の本国または居住国の公証役場(Notary Public)
海外在住のクライアントの場合、これが基本となります。
(2)日本に駐在する、当事者の国籍国の在日大使館・領事館
日本来日中のクライアントの場合に利用できます。

在日大使館での認証は、対応していない国や、対応していてもサービスが限定的な場合があります。

例えば、在日中国大使館・領事館は、ハーグ条約の締結に伴い、2023年11月7日をもって領事認証業務を停止しました。したがって、中国籍の方が日本で宣誓供述書を認証することはできず、中国本土の公証処で手続きを行う必要があります。このように、国別の最新の運用状況を事前に大使館のウェブサイト等で確認することが極めて重要です。

この手続きの流れを依頼者に正確に伝え、実行してもらうことが専門家の重要な役割です。この取得手続きは、外国人在住の公証役場などで行いますが、その所要期間は数日から数週間かかることもあります。

十分な余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。手続きを代行する現地エージェントの利用を検討することも有効な選択肢です。

3.【徹底考察】2024年4月1日改正通達(民二第551号)の読み解き方

令和6年3月22日付の法務省通達による変更点を、専門家としての視点から深掘りします。

3-1. 改正の背景と趣旨:専門家のゲートキーパー機能の強化

今回の改正の主な目的は以下の2点です。

本人特定事項の確認の厳格化

FATF(金融活動作業部会)による対日相互審査の結果等を踏まえ、国際的なマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策(AML/CFT)を強化しています。そのため、従来の宣誓供述書のみでは、当事者の実在性確認が不十分であると指摘されていました。

国内連絡先の把握

「所有者不明土地問題の一環として、海外居住者と連絡が取れなくなる事態を防ぐため、国内における連絡先を登記事項とすることで、円滑な連絡を確保する。」

これは、我々司法書士だけでなく、取引に関わる弁護士、税理士、行政書士といった全ての専門家が、不正取引を水際で防ぐ「ゲートキーパー」としての役割を一層強く求められていることを意味します。

3-2. 個人買主の場合の変更点:宣誓供述書 +「旅券等の写し」

外国に居住する外国人個人が買主となる場合、住所証明情報として以下のいずれかが必要となりました。

(A) 本国又は居住国の政府が作成した住所証明書面(例:中国の居民戸口簿、米国の運転免許証、台湾の戸籍謄本など)
(B) 本国又は居住国の公証人が認証した宣誓供述書 + 旅券(パスポート)その他本人特定事項を確認できる書面の写し

実務上は、政府発行の住所証明書面の取得が難しいケースも多く、(B)のパターンが多用されると想定されます。

【「旅券等の写し」の具体的要件】

・有効期間: 宣誓供述書の作成日、又は登記申請の受付日のいずれかにおいて有効な旅券であること。
・コピーの範囲: 氏名、有効期間の記載、及び顔写真の表示があるページを含むこと。
・原本証明: 宣誓供述書と一体化されていない場合、コピーの余白等に「この写しは原本と相違ありません」という旨の記載と、買主本人の署名又は記名押印が必要。

この「原本と相違ない」旨の証明は、司法書士が代理で行うことはできず、必ず買主本人が行う必要があります。海外のクライアントには、宣誓供述書への署名と併せて、パスポートのコピーへの原本証明の署名も忘れずに行うよう、明確に指示しなければなりません。

3-3. 個人買主:やむを得ない事情による日本国内での認証

本国・居住国での公証人認証が困難な「やむを得ない事情」がある場合、例外的に日本の公証人が認証した宣誓供述書も認められます。

「やむを得ない事情」の例:
・本国及び居住国のいずれにも公証制度が存在しない。
・当事者が疾病、障害、または現地の政情不安等により、本国及び居住国のいずれにも渡航・滞在できない。

この例外措置を利用する場合、以下の3点セットが必要となります。

・日本の公証人が認証した宣誓供述書
・本国等の公証人認証を取得できない旨を記載した、買主作成の上申書
・旅券のコピー(要件は3-2と同様。ただし、この場合、旅券以外の代替書面は認められない)

3-4. 法人買主の場合の変更点:宣誓供述書 +「政府作成書面の写し」

外国法人が買主となる場合、住所証明情報として以下のいずれかが必要となりました。

(A) 設立準拠法国の政府が作成した住所証明書面 (例:各国の会社登記簿謄本など)
(B) 設立準拠法国の公証人が認証した宣誓供述書 + 法人名称が記載された設立準拠法国の政府作成書面の写し

(B)の「政府作成書面の写し」の具体的要件

内容: 住所の記載は不要。法人の名称が記載されていれば足ります。
有効期間: 宣誓供述書の作成日、又は登記申請の受付日のいずれかにおいて有効な書面であること。
原本証明: 宣誓供述書と一体化されていない場合、コピーに「原本と相違ない」旨の記載と、法人の代表者等の署名又は記名押印が必要。

この改正により、宣誓供述書だけで外国法人の住所と資格を証明することはできなくなりました。必ず、宣誓供述書と政府発行の書面(コピー)の2つがセットで必要になる、と理解することが重要です。

3-5.新設された登記事項「設立準拠法国」と「国内連絡先」

① 設立準拠法国の登記事項化

外国法人が所有者となる場合、その法人がどの国の法律に基づいて設立されたかを示す「設立準拠法国」が登記事項となりました。

(登記記録例)「資格 アメリカ合衆国デラウェア州法により設立された法人 代表者 何某」

証明書面: 上記3-4で住所証明情報として提出した(A)または(B)の書面が、設立準拠法国を証する情報を兼ねます。
申請書への記載: 登記申請書の申請人欄に、商号や本店と並べて設立準拠法国を記載します。

② 国内連絡先の登記事項化

海外に居住する個人・法人が所有権の登記名義人となる場合、「国内における連絡先となる者の氏名・名称及び住所」等が登記事項となりました。

連絡先になれる者: 親族、取引関係者、弁護士・司法書士など、連絡の取次ぎが可能な者であればよく、特に資格は問われません。我々司法書士が就任することも可能です。
・証明書面: 連絡先となる者の協力を得られることを証する書面(承諾書など)と、その者の印鑑証明書本人確認情報が必要となります。

(令和6年3月22日付け法務省民二第551号通達より引用)

4.渉外登記における関連実務と留意点

宣誓供述書の手配と並行して、司法書士が留意すべき周辺実務について解説します。

4-1. 犯罪収益移転防止法(犯収法)に基づく本人確認

渉外登記は、犯収法上、特に厳格な本人確認が求められる場面です。

非対面での確認: 海外在住のクライアントとは非対面での取引となることが大半です。犯収法施行規則に定められた方法(例:転送不要の書留郵便に相当する郵送方法、本人確認書類2点の送付を受ける等)を遵守する必要があります。
・外国PEPsの確認: 外国の政府等で重要な公的地位にある者(Politically Exposed Persons)に該当しないかの確認は必須です。
・取引の目的・原資の確認: クライアントの職業や、不動産購入の資金がどのように形成されたかについて、合理的な範囲でヒアリングし、記録化しておくことが求められます。

4-2. 司法書士が押さえておくべき税務知識

登記手続き自体は税理士の業務ではありませんが、決済実務に密接に関わる税務知識は不可欠です。

【最重要】売主が非居住者の場合の源泉徴収義務

買主は、売主が非居住者または外国法人である場合、不動産の売買代金を支払う際に、代金の10.21%を源泉徴収し、国に納付する義務があります。

司法書士の役割: 決済に立ち会う司法書士は、この源泉徴収義務の有無を当事者に注意喚起し、怠った場合のリスク(買主が追徴される)を説明する責務があります。決済金の配分計算において、源泉徴収税額を考慮した計算書を作成する必要があります。
例外: 売買代金が1億円以下で、かつ、買主が自己またはその親族の居住の用に供する場合など、一定の免除要件があります。この要件に該当するかを正確に確認することが重要です。

4-3. 外国語書面の和訳文作成上の注意点

宣誓供述書をはじめ、外国語で作成された全ての添付書面には、その日本語訳を添付する必要があります。

翻訳者: 翻訳者の資格に法的な定めはありません。司法書士自身が翻訳しても構いませんが、専門的な言語の場合は翻訳会社に依頼するのが安全です。
訳文の形式: 翻訳文の末尾に「以上、翻訳した。」という文言を記載し、翻訳者の氏名を記載し、署名又は記名押印します。
翻訳の範囲: 証明に関わる部分は全て翻訳する必要がありますが、定型的な部分については一部省略が認められる場合もあります。事前に法務局に確認するのが無難です。

5.まとめ

  • 宣誓供述書は、登記先例に基づき、外国籍当事者の住所証明情報や印鑑証明書等を代替する渉外登記実務の要となる書面。
  • 円滑な登記の実現には、本国公証人等による認証が必要
  • 2024年4月の法改正で、買主の住所証明情報には宣誓供述書に加えて旅券等の写し(個人)又は政府作成書面の写し(法人)が必須に。
  • 売主が非居住者の場合、買主が負う10.21%の源泉徴収義務は、決済実務における最重要確認事項の一つ
  • 専門家共通の責務である犯収法上の厳格な本人確認義務の遵守は、渉外登記において特に重要

渉外登記は、言語の壁、法制度の違い、物理的な距離など、国内案件にはない多くの困難を伴います。特に最新の法改正への対応は、正確な知識と慎重な手続き進行が求められます。一つのミスが、決済の遅延や登記の却下といった重大な結果を招きかねません。

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