外国人の役員変更登記のポイントと押さえておきたい在留資格とは?

外国籍の方が会社の取締役、監査役、執行役などの役員に就任した場合、通常の登記手続きと同様に、役員変更登記を行う必要があります。該当の役員が外国籍の方の場合でも、司法書士として適切な時期に確実に登記手続きを進めることが求められます。

今回は、外国人が日本の会社の役員に就任する際に必要な登記手続きや、求められる書類、在留資格等について解説します。高単価の業務を受任するために、登記手続きのみではなく、在留資格等の知識も身に付け、総合的なコンサルティング業務を受けられる体制づくりをお勧めします。

記事のポイントは下記の通りです。

  • 居住地に関係なく、外国籍の方も日本の会社の役員に就任可能
  • 取締役、監査役、執行役などの役員に就任した場合、原則として2週間以内に登記手続きが必要
  • 役員変更登記に添付する本人確認書類として、住所・氏名が記載された住民票、運転免許証、マイナンバーカード等を提出。ただし、これらがない場合は自国の宣誓供述書等で代用可能
  • 印鑑証明書がない場合、サイン証明書と日本語訳を提出することで代用可能

1. 外国人が会社役員になる手続きの流れ

取締役や役員の指名・就任には国籍の制限はなく、株主総会で決議されれば外国籍の方も取締役や役員に就任することが可能です。

1-1. 日本居住者でも海外居住者でも外国人は日本の会社の役員になれる

国籍に関係なく、株主総会で決議されれば取締役や役員に就任できます。また、居住地の制限もないため、日本に居住している外国人だけでなく、海外居住者も日本の会社役員になることが可能です。

1-2. 日本に住んでいる外国人を役員にするには在留資格が必要

海外に居住している外国人は、国籍や居住国に関係なく日本で会社役員になることが可能です。一方、日本居住の外国人を役員にする場合は、以下の在留資格のいずれかを有している必要があります。

・「永住者」や「配偶者」など活動の制限がない在留資格
・「経営・管理」
・「技術・人文知識・国際業務」

なお、「経営・管理」の在留資格を持っている場合は、代表取締役(社長)として就任することが可能ですが、「技術・人文知識・国際業務」の場合は、労働者としての就労ビザであるため、業務の範囲として代表取締役や取締役などの役員になれるかどうかの確認が必要です。特に役員の活動が「経営・管理」に該当すると判断された場合は、次回のビザの更新時までに、「経営・管理」の在留資格への変更が必要となる可能性があるため、注意が必要です。

司法書士として、これらの手続きを適切にサポートし、スムーズな登記申請を進めることが求められます。

2. 外国人が取締役・役員に就任した際の登記

取締役、監査役、執行役などの役員に就任した場合、役員変更登記が必要です。必要書類を準備し、期限内に管轄の法務局で手続きを行いましょう。

2-1. 登記に必要な書類

外国人が取締役に就任する際には、以下の書類が必要となります。

取締役会を設置した株式会社

・株主総会議事録
・株主リスト
・就任承諾書
・本人確認書類

取締役会のない株式会社

・株主総会議事録
・株主リスト
・就任承諾書
・本人確認書類
・印鑑証明書もしくはサイン証明書

なお、代表取締役に就任する場合は、取締役会のある法人でも印鑑証明書またはサイン証明書が必要になります。

2-2. 登記の期限

役員変更登記は、就任した日から本店所在地において2週間以内に行う必要があります。期限を過ぎると、100万円以下の過料に処される可能性があるため注意が必要です。

一方、外国会社の役員変更登記については、3週間以内が期限とされています。日本法人の役員変更登記と同様に、期限を過ぎると100万円以下の過料に処される可能性があります。

2-3. 登記費用(登録免許税額)

役員変更登記(代表取締役・取締役・役員の変更)は本店所在地の法務局で登記します。その費用は、申請件数1件あたり30,000円です。ただし、資本金が1億円以下の会社に関しては、申請件数1件あたり10,000円の費用が必要になります。

3. 外国人が役員変更の登記申請時に提出できる本人確認書類

役員変更登記申請時には、役員に就任する外国人の氏名及び住所が記載された本人確認書類が必要です。具体的には、下記が該当します。

3-1. 日本国内に居住する外国人

・住民票
・在留カード
・運転免許証
・マイナンバーカード
・印鑑証明書(登記申請書に提出する場合)

3-2. 海外に居住する外国人

・本国の官憲・公証人が作成した宣誓供述書
・在日大使館の領事が作成した宣誓供述書
・本国発行の身分証明書のコピー(住所記載必須)

外国語で作成された書類は日本語訳文が必要です。

4. 外国人が役員変更の登記時に提出するその他の書類

取締役会のない株式会社の取締役に就任するときや、取締役会設置会社において代表取締役に就任するときは、就任承諾書に押印した印鑑について印鑑証明書または印鑑証明書に代わる書類が必要です。

また、代表取締役選定をした議事録、代表取締役辞任における辞任届にも、書類に押印した印鑑についての印鑑証明書または印鑑証明書に代わる書類が必要です。ただし、前代表取締役が会社の届出印を押印した場合は印鑑証明書は不要です。

4-1. 印鑑証明書

日本国内に居住している外国人は、印鑑登録を行うことで印鑑証明書を取得可能です。

4-2. サイン証明書+日本語訳

海外居住者で印鑑証明書が取得できない場合、サイン証明書で代替可能です。例えば、アメリカ国籍の場合、アメリカ大使館や公証人によるサイン証明書を取得し、日本語訳を添付して提出します。

司法書士として、これらの書類の確認と適切なアドバイスを提供し、依頼者の登記手続きを円滑に進めることが重要です。

5. まとめ

本記事では、外国人が法人の取締役・役員に就任するときの登記・在留資格について簡潔に解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。

  • 居住地に関係なく、外国籍の方も日本の会社の役員に就任可能
  • 取締役、監査役、執行役などの役員に就任した場合、原則として2週間以内に登記手続きが必要
  • 役員変更登記時に添付する本人確認書類として、住所・氏名が記載された住民票、運転免許証、マイナンバーカード等を提出。ただし、これらがない場合は自国の宣誓供述書等で代用可能
  • 印鑑証明書がない場合、サイン証明書と日本語訳を提出することで代用可能

通常の役員変更登記は問題なく行える先生でも、時折、外国籍の方が役員となる登記の場合には、必要書類を再度確認し直す先生もいらっしゃるかと思います。今回解説した内容が少しでも先生方の知識の整理に繋がればと思います。

また、登記とは直接関係のない在留資格についても、概要を知っていると、ふとした質問を受けた時に「専門外なので分からない」という回答をぜずに、相手からより深い信頼を得ることができます。日頃の業務で手一杯になりがちかとは思いますが、少しずつ周辺業務の知識をつけることで、手続き業務+α以上の報酬を受け取ることが可能となります。一緒に勉強していきましょう。

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