長期にわたる受益者連続型信託で考慮すべきポイントとは!?

2020年3月出版にむけて、現在、拙書「士業・専門家のためのゼロから始める家族信託活用術」の改訂版を執筆中です

今回は、現在執筆中の原稿の中から、最近、専門家の先生からも相談を受けることが多い、長期にわたる受益者連続型信託のポイントについて公開します

メルマガやブログだったりすると、普段のフラットな感じで記載すればいいのですが、やっぱり書籍になってくるとかしこまったりしする必要もあり、出版後は訂正が聞かないので、より間違ったことは書けなかったりで、緊張感があります(^^)

ネットだと試してみて、書籍と違って改善ができるので、先行公開の上、試してみて、実際の書籍ではブラッシュアップしたいと思っています。

そんな意味でも興味ある方は見てみてください。それでは、どうぞ!

受益者連続型信託のスキームの設計

基本的な信託の設計のスキームは第2編でお伝えした通りですが、受益者連続型信託においては、一代限りの信託よりも長期にわたるケースを想定して設計を検討していく必要があります。そのため、信託スキームを見直し、監督できるよう第二受益者のほか、後継受託者の選定、受益者代理人、受益者監督人などの設置など、委託者、受託者、受益者以外の信託関係者の検討も別途必要です。ここでは、受益者連続型信託の設計における第二受益者など後順位受益者の設定のポイントを中心に解説していくため、信託関係者の設定についての説明は割愛しますが、実際の設計においては、依頼者の状況に応じて検討をしてください。

先ほど紹介した事例から、設計方法を考察していきます。一代限りの信託では下記4つの方法があると説明しました。
(1)基本型
(2)遺言代用型
(3)協議型
(4)契約複数型

上記に加えて、本人、その配偶者、子、孫など長期にわたる信託スキームにおいては当初受益者死亡後の第二受益者など後順位受益者の取り扱いを検討していく必要があります。

信託契約の定めにより、当初委託者兼受益者の死亡を信託終了事由とし、帰属権利者に帰属するといういわゆる一代限り信託や当初受益者以降の第二受益者等の指定条項がある受益者連続型信託(信託法91)に該当しない場合には、受益者の死亡によりその相続人が受益権を法定相続し、受益権は法定相続割合にて準共有となります。受益者死亡後は、一般原則通り、受益権の相続について、遺言、遺産分割で対応しますが、これでは、民法上の所有権を信託法上の受益権に置き換えただけであり、通常の相続手続きと何ら変わりがありません。

本編で紹介した、第二受益者、第三受益者と後順位受益者を信託契約において事前に定める受益者連続型信託では、当初受益者死亡に伴い、受益権が消滅し、次順位受益者が受益権を新たに取得するため相続財産の中に受益権が含まれず、遺産分割の対象とならず、信託契約で定めた次順位受益者が受益権を取得することになります。

受益権1名型と受益者複数名型(受益権準共有型)とは?

長期にわたる受益者連続型信託の当初受益者以降の第二受益者等の指定において信託終了時の出口戦略を見据えて留意すべきポイントとして下記があります。

(1)受益者1名型

第二受益者以降の受益者を1名とし受益権を単独で取得させるスキームです。受益者が1名のため、信託終了時においては、信託財産全てを取得することになります。そのため、第二受益者以降も1名のため、信託不動産からの賃料収入に基づく信託配当も信託契約の定めにより、当初受益者同様に柔軟に行うことができます。

(2)受益者複数名型(受益権準共有型)

当初受益者死亡後、受益権を複数名の準共有で取得させる方法です。受益者が2人以上いる信託においては、受託者は受益者のために公平にその職務を行わなければなりません(信託法33)。受託者は1名のため、信託財産の管理・運用・処分は受託者のみで決定できますが、第二受益者以降は複数名いるため、その有する受益権割合に応じて賃料収入からの信託配当などを行う必要があり、受益者1名の場合のように、受益者のうち1名からの要望に従い柔軟に信託財産から給付することはできず、税務・会計上の面からも、その有する受益権割合にも基づき各受益者に対して信託配当、その他財産管理を行う必要があります。また、受益者が有する信託変更(信託法149)や信託終了(信託164)に関する権利なども信託契約の定めがなければ、すべての受益者の一致によらなければ意思決定することができません。

そのため、受益者複数名型(受益権準共有型)スキームにおいては、受益権持分割合の過半数で決定するなど別段の定めを設けることを検討する必要があります。

上記のように後順位受益者を1名とするスキームにおいては、受益権(≒受益権)が1名のみに帰属するため、信託期間中、信託終了時ともにシンプルに考え設計することができます。しかしながら、受益者複数名型(受益権準共有型)においては、今の問題である認知症対策、資産承継対策については解決できますが、将来の共有問題を先送りにしている面もあるため、信託期間中の信託財産の管理、そして後述する信託終了時の出口戦略を想定して設計していく必要があります。

受益者複数名型(受益権準共有型)の出口戦略

受益者1名型と受益者複数名型の違いは、第二受益者以降を1名にするか、複数名(準共有)にするかという点です。

依頼者の相談内容も多様化しており、自宅アパートを所有権として共有で相続させると揉めてしまうので、受託者として長男に管理させ、信託受益権として長男及び長女の準共有で相続させたいといった相談を受けることがあります。上記の事例もそうですが、受益権が準共有となったとしても受託者が単独で管理・活用・処分をすることができるので、当面の解決方法としてはこれで対応できるのですが、出口戦略として信託終了時点を想定すると受益権の準共有をどのように解決するのかという問題が発生してきます。受益権の準共有を解消する方法としては下記の4つの方法が検討できます。

①長男・長女どちらか他界時に一方に受益権を移動させる

信託契約の定めに、父死亡後に長男又は長女のうちどちらかが死亡した場合には、生存する受益者が死亡者の受益権を取得するという信託条項で受益者を単独とする方法です。この内容だと、例えば父、長女の順に死亡が発生した場合、最終的に長男が単独で受益権者となり、単独名義とすることができます。ただし、今回の依頼者の要望としては、長女の子にも財産を承継させたいことから上記スキームでは対応できません。

信託スキーム
委託者    父
受託者    一般社団法人
受益者    父
第二受益者  受益権割合 2分の1 長男
受益権割合 2分の1 長女
第三受益者  長男又は長女のうちどちらか生存する者
信託終了事由 受託者及び受益者の合意
帰属権利者  信託終了時の受益者

②受益者連続型信託とはせず、一代限りの信託とする

受益権準共有の問題を避けるため一代限りの信託とする方法です。実家と貸しビル、金融資産ではそれぞれの財産評価額が大きく異なり、貸しビルに評価額が偏っていることから、それぞれの財産を長男、長女の単独所有とすることは難しく、一代限りの信託において信託終了時、長男及び長女の共有財産とせざるを得ません。

信託スキーム
委託者    父
受託者    一般社団法人
受益者    父
信託終了事由 父の死亡
帰属権利者  長男・長女

③信託終了時点で解決する

受益権の準共有後、信託終了時点で清算する方法です。受益権を細分化して取得させる仕組みだと、依頼者の子、孫へと承継させていきたいという要望に応えることができ、信託期間中は受益権割合に応じて信託財産からの賃料収入などを原資として信託配当を行うことができますが、信託終了時において、信託不動産を最終的に帰属させる際には、受益権割合・受益者数に応じた共有物件化してしまいます。仮に受益者間の協議で誰がどの財産を取得するか決めるとする内容としたとしても、それぞれの物件間で評価額が異なることから、各受益者が有する受益権割合と取得する物件の評価額の差額については、贈与税など税務上の問題点が発生する可能性があります。

また、共有財産として交付後においては、各財産を単独所有とするために、共有者間の持分譲渡等を行う必要がありますが、贈与税、譲渡所得税、登録免許税、不動産取得税など全ての税務コストがかかるので、より慎重な判断が必要となります。

全ての信託財産を換価処分して、信託終了時に現金を交付するのであれば、複数名の準共有状態でも問題ないのですが、先祖伝来の信託不動産をそのままの形で維持管理していきたいという要望においては、受益権の複数名の準共有で当面の問題は解決できますが、将来における信託終了時点での共有問題が発生してしまうのです。

信託スキーム
委託者    父
受託者    一般社団法人
受益者    父
第二受益者  受益権割合 2分の1 長男
受益権割合 2分の1 長女
第三受益者  長男→長男の子
長女→長女の子
※子が複数名いる場合は、均等割合
信託終了事由 受託者及び受益者の合意
帰属権利者  信託終了時の受益者

④受益権準共有で取得後、受益者間で受益権譲渡を行う

上記③の信託スキームにおいて信託終了後に共有問題を解決するのではなく、信託期間中に受益権準共有の問題を解決するという方法です。信託期間中に、一部の信託財産を換価処分し、受益権割合により受益者に金銭を信託配当するなどを行い、信託財産を減らし受益権評価を下げたうえで、将来残していきたい信託不動産を受益者間の協議で決めた特定の受益者に、残りの受益者から受益権持分を譲渡(売却・贈与など)し、特定の受益者の単独所有としたのち、その者に信託財産を交付したうえで信託を終了させる方法です。当然、受益権持分譲渡に伴い、譲渡所得税、贈与税などを検討する必要がありますが、受益権持分のため、登録免許税は不動産1つにつき1,000円であり、譲渡に伴う不動産取得税は課税されません。受益権を単独所有にした後であれば、信託終了時の共有化の問題は発生しません。

このように、長期にわたる受益者連続型信託においては、信託終了時の信託財産をどのように交付するのかというところまで考慮して信託設計を行っていくことは必要です。受益権を細分化して受託者に信託財産を管理させ、受益権は準共有で第二受益者に取得させるなど、家族信託を活用して将来の共有問題対策で活用できる事例は多いですが、信託設計時点だけではなく、信託終了時における出口戦略を考えていく必要があります。


受益者が複数になった場合に、どのように信託を終了させるのかを考えておかないと、ここまで説明してきたように信託終了時に多数の共有者の物件となるよりややこしい状況をつくってしまう可能性もあるわけです。そのリスクも含めて、本当に受益者連続型信託でいくのか、それとも一代限りでいくのか、そもそも信託を使わないのかという選択肢も依頼者に提示していかなければなりません。そして、死亡の順序も当初想定していた場合と異なること場合も当然発生することを想定し、予備の受益者を設定する、場合によっては、第二受益者以降の受益権を複数名での準共有とするのではなく、受益者ごとに複数の信託契約にするなど、将来の信託終了時の出口戦略を見越した設計を心がけるようにしてください。

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