経営管理ビザを士業・専門家がビジネスチャンスとして使うためには?ビザの条件、手続きの流れについて解説

外国人が日本で会社を作ったり、経営者として働くために必要な経営管理ビザ。経営管理ビザの手続きは会社設立登記等、周辺業務とも親和性があり、この手続きを理解しておくと、会社設立登記にプラスしてコンサル業務を受注でき、報酬単価も上げることが見込めます。

本記事では、この経営管理ビザがどのような場面で必要となるのか、取得要件や手続きの流れ、必要書類、注意点について、わかりやすく解説します。

今回の記事のポイントは下記の通りです。

  • 経営管理ビザは、日本国内で起業するときやその事業の経営者や管理者として中長期滞在する活動が必要な場合に必要
  • 「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の外国人であれば、経営管理ビザを取得しなくても会社を経営することができる
  • 経営者として経営管理ビザを取得するための要件は4つ:①事業所が日本国内に確保されていること②一定以上の事業規模(常勤職員2名以上または資本金500万円以上)を満たすこと③事業の適正性・安定性・継続性を示せること④事業の経営に実際に取り組むこと
  • 管理者として経営管理ビザを取得するための条件は3つ:会社の事業所確保、資産規模、事業の適正性・安定性・継続性要件に加えて、①事業の経営又は管理について3年以上の経験(大学院で当該科目を専攻した期間も含む)②日本人が従事する場合と同程度以上の報酬の設定③事業の管理に実際に従事させる
  • 経営・管理ビザの在留期間は最初は1年、在留期間更新の際に要件を満たせば3年、5年などの期間延長も見られる

1.経営管理ビザとは?

経営管理ビザは、日本で会社を経営する外国人が必要な在留資格です。このビザを取得することで、以下の活動が可能になります。

1-1. このビザでできること

・新たに会社を作って経営を行う
・既存の会社で管理者として活動する
・他の経営者の代理として事業を管理する

日本国籍を有する人や永住者などは、日本国内で会社経営するために代表取締役や取締役などに就任し活動できますが、外国人は在留資格の種類によっては役員に就任できても、日本国内で報酬をもらって活動できません。

しかし、経営・管理ビザを取得すると、日本国内に中長期滞在し、代表取締役や取締役、支店長、工場長、部長などの会社の管理者として活動ができます。

1-2. 他のビザとの違い

例えば、短期滞在や留学ビザでは経営活動は認められません。一方で、永住者や日本人の配偶者ビザを持っている場合は、このビザがなくても経営活動が可能です。

2. 経営管理ビザを取得するための要件

経営管理ビザを取得するための要件を簡潔にまとめてみました。

2-1. 事業所を持つ

日本国内に事業所が必要です。事業所は実際の活動場所で、バーチャルオフィスなどは認められません。

また、事業所の賃貸借契約では、必ず法人名義で契約を行う必要があります。使用目的を事業用、店舗、事務所等の事業目的とすることが求められます。

2-2. 会社の規模

以下の条件のいずれかを満たす必要があります。

・常勤の従業員を2人以上雇用
・資本金が500万円以上
・常勤1人でも、500万円に準ずる規模の事業を示す

2-2-1.500万円以上の投資だけではなく、外国人本人が事業経営又は管理に従事する必要がある

経営管理ビザの取得要件として、事業の経営又は管理に従事する必要があります。資金を投資するだけではだけでは経営管理ビザを認められません。また、事業内容には制限はありません。日本で適法におこなわれる事業であれば、制限なく事業を行うことができます。

2-3. 安定した事業であること

事業計画書を作成し、事業の安定性や継続性を証明します。

2-4. 経営に関わること

申請者が経営に積極的に関与することが必要です。ただお金を出すだけでは認められません。

2-5. 資本金の準備方法

資本金500万円を合法的に準備したことを示す書類が求められます。給与、貯金、送金などの証拠を揃える必要があります。経営管理ビザの申請に際しては、500万円の資本金の準備の経緯についての厳しい審査があります。形式的な資金準備、いわゆる「見せ金」は受け入れられません。

3.経営管理ビザ取得の流れ

会社設立(起業)後に経営・管理ビザを取得する場合は、以下の流れで手続きをします。

1.会社の基本事項を決める
2.会社実印を作成する
3.定款作成・公証人による定款認証
4.出資金を払い込む
5.会社設立登記の申請・開業届の提出
6.経営管理ビザを申請する

起業せずに、既存会社の役員として経営・管理ビザを取得する場合は、以下の流れで手続きをします。

1.経営・管理ビザの取得申請のための書類作成
2.経営管理ビザを申請する

4. 経営管理ビザ申請の必要書類

次に、経営管理ビザを申請するための主な必要書類を主に見ていきましょう。

4-1. 新しく会社を作る場合

経営管理ビザを申請する際は、各種書類を作成し収集する必要があります。

新設会社(新規)の経営管理ビザ取得時の必要書類

下記は海外に居住する外国人個人が、新規で日本で起業をする場合の必要書類です。

・在留資格認定証明書交付申請書
・個人に関するもの
・写真(縦・4㎝、横3㎝)
・パスポート
・学歴を証明する資料(大学以上の学歴があれば)
・実務経験を証明する資料(開業する事業の経験があれば在職証明書など)
・日本語試験合格票(あれば)
・資本金の出所を証明できる書類
・返信用封筒など

以下は、会社に関する必要書類です。

・設立した会社の登記事項証明書(経営管理ビザ取得前に設立登記が必要)
・事業計画書(3年間の収支計画、取引先、販売方法などを記載)
・役員報酬を決議した株主総会議事録(役員報酬目安:月20万円以上)
・会社概要案内書(会社名、遠隔、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む))※ホームページの会社概要ページを印刷したものでも代用可
・事業所(事務所)に関する書類(賃貸借契約書、事務所の平面図、写真、自社物件の場合は登記事項証明書など)
・従業員の雇用契約書又は内定通知書(雇用予定があれば)
・給与支払事務所の開設届(税務署の受付印があるもの)
・法人設立届出関係の資料(税務署の受付印があるもの)など

その他、新設会社(変更)の経営管理ビザ取得時の必要書類の詳細については

下記を確認してみてください。

経営管理ビザとは?取得要件や流れ・必要書類・更新時のコツを解説

5.経営・管理ビザの在留期間

経営・管理ビザの在留期間には、3か月・4か月・6か月・1年・3年・5年の種類がありますが、1年に設定されることが一般的です。また、経営管理ビザの更新期間も通常1年ごとが基本です。

4か月の経営管理ビザ(スタートアップビザ)は海外居住の外国人起業家向けに、来日してからの開業準備行為をするためのビザです。来日後4か月以内に、事業所の確保、会社設立登記などを完了させ、その後更新を行うこともできます。

下記で経営管理ビザの在留期間について詳しく記載していますので、確認してみてください。

経営管理ビザの在留期間は何年?初回、更新申請時の目安と長期期間取得の要件を解説

6. 士業が提供するサポート業務について

ビジネスとして士業が行うべき業務について、ここでは簡潔に紹介します。自分が専門外であれば、ビザを専門とする行政書士や弁護士と共同してサポートできます。

6-1. スキーム設計

経営管理ビザ申請で最も時間がかかるのが書類の準備です。士業は、ビザや会社設立のための書類作成から収集、入管への提出までをサポートできます。

6-2. 事業計画書のサポート

事業計画書は審査で非常に重要です。士業が計画書の作成を支援することで、より具体的で現実的な内容に仕上げます。

6-3. 更新手続きのサポート

更新時に必要な書類や経営の手続きでは、新たな書類の準備や過去の収益状況の見直しを支援が必要です。士業はこれらを効率的に行い、依頼者の負担を軽減します。

いずれにしても、お客様自身が行う手続き負担を軽減し、依頼内容をお伺いする中で、手続き業務以外にも困っていることを聞き取り、専門家として何か手伝うことが出来ないかどうかを常にアンテナを張って対応することが肝要です。

6-4. トラブル対応

不許可通知が届いた場合の再申請や追加資料の準備など申請が不許可となった場合や、追加資料が求められた場合、迅速に対応し問題を解決するためのアドバイスを提供します。士業の専門知識を活用することで、申請や更新の成功率を大幅に向上させることができます。

具体的には、「ビザ保証制度」のように、初回のビザの新規申請・更新時に、こちら側(士業)のミスでビザの申請が不許可となった場合は、無償で再申請や必要に応じて再々申請をサポートする、といった制度(商品)を用意すると、お客様からのビザ申請の手続きを受任しやすくなるでしょう。

7. 他のビザとの比較

経営管理ビザの他に、主なビザについて、大雑把ではありますが紹介していきたいと思います。

7-1. 技術ビザとの違い

技術ビザでは経営活動に制限がありますが、経営管理ビザでは制限なく事業が行えます。

7-2. スタートアップビザ

スタートアップビザは短期間のビザで、事業準備をサポートします。その後、経営管理ビザへの移行を目指します。

8. まとめ

今回は経営管理ビザの取得要件等を見ていきました。

  • 経営管理ビザは、日本国内で起業するときやその事業の経営者や管理者として中長期滞在する活動が必要な場合に必要
  • 「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の外国人であれば、経営管理ビザを取得しなくても会社を経営することができる
  • 経営者として経営管理ビザを取得するための要件は4つ:①事業所が日本国内に確保されていること②一定以上の事業規模(常勤職員2名以上または資本金500万円以上)を満たすこと③事業の適正性・安定性・継続性を示せること④事業の経営に実際に取り組むこと
  • 管理者として経営管理ビザを取得するための条件は3つ:会社の事業所確保、資産規模、事業の適正性・安定性・継続性要件に加えて、①事業の経営又は管理について3年以上の経験(大学院で当該科目を専攻した期間も含む)②日本人が従事する場合と同程度以上の報酬の設定③事業の管理に実際に従事させる
  • 経営・管理ビザの在留期間は最初は1年、在留期間更新の際に要件を満たせば3年、5年などの期間延長も見られる

経営管理ビザは、外国人が日本で会社を経営するために必要な重要な資格です。外国人のお客様から依頼を受けることについて、どうしてもハードルが高いと感じる先生もいらっしゃると思います。

しかし、ハードルが高く感じる分野は裏を返せば、コンサル業務で開拓がしやすい分野とも言えます。

現在は無料でインターネットで翻訳をしてくれるサービスも数多くあります。ITツールなどをフルに活用して、ぜひ経営管理ビザに関わる関連業務、コンサル業務に挑戦してみてください。

参考:Deep L

【2月12日開催】国際相続の税務基礎と士業が押さえておくべき留意点

グローバル化の進展に伴い、国際相続の案件は年々増加傾向にあります。海外在住の親族がいる場合や、海外に資産を保有するケースなど、国際相続は今や特殊なものではなく、士業専門家として日常的に直面する課題となっています。特に、各国の相続税制の違いや二重課税の問題、国際間での相続手続きなど、国内相続以上に複雑な対応が求められます。

しかし、国際相続の実務では、準拠法の決定から相続税の納税義務判定まで、多岐にわたる専門知識が必要です。各国の法制度や税務上の取り扱いが異なるため、誤った判断は予期せぬ税負担やトラブルを招く可能性があります。

本セミナーでは、国際相続の実務に精通している中山史子氏をお迎えし、相続税の無制限納税義務者と制限納税義務者の判定から国際間での二重課税の調整方法まで、専門家として押さえるべき重要なポイントを体系的に解説していただきます。中山氏は、相続税申告業務から事業承継、国際間相続・贈与といったコンサルティング業務まで幅広く従事されており、豊富な実務経験に基づいた実践的な知識を提供していただけます。

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