信託しても不動産を売却できない!?押さえておくべき3つの境界とは

自宅やアパートなどの不動産を遺言や信託契約書で管理させる仕組みや資産承継する対策を取っている司法書士、行政書士、税理士等であっても意外と不動産について確認するのは登記簿や公図、固定資産税農政通知書など役所から得られる情報だけで現地を確認していないということがよくあります。

せっかく契約書や遺言で物件を特定したいとしても登記簿の表示と現地の状況が異なるのであれば物件が特定されていないと言った状況になる可能性があるのです。

今回の記事のポイントは次のとおりです。

  • 信託契約や遺言をつくったとしても、境界問題の解決にはならない
  • 境界には、筆界、所有権界、占有界の3つがある
  • 筆界と所有権界は一致することは通常だが、土地の一部譲渡や時効取得、境界標の亡失などの理由により一致しない状況が発生する
  • 境界を確定させるためには、その土地が接する隣接地所有者全員の協力が必要
  • 筆界と所有権が一致しない場合には、境界確定測量を経て、分筆及び所有権移転登記を経て一致させる

今回の記事では、境界と境界確定測量の基本的な考え方についてお伝えしていきます。

信託をしても不動産を売却できない ~とある相談事例~

家族信託契約で自宅の財産管理ができる仕組みをつくった子からの相談です。
当初は金融資産と親が住む自宅を信託財産として設定し、子供が管理できるような仕組みを組みました。

信託契約締結し、2年後、自宅も空き家となり親の生活費の捻出の為に信託財産である自宅を売却する必要がでてきました。
居住用財産の3,000万円特別控除は利用できる状況だったので売却しても譲渡所得税はかかる見込みはありません。自宅は売却するにあたって老朽化していること、解体費用などの負担の問題から不動産業者に売却する事になりました。ここで問題になったのか隣地との間にある境界標がないということです。そこで不動産業者から確定測量を求められ、土地家屋調査士を介して境界を復元する作業を要求されました。

境界確定作業の中で隣地所有者との交渉が難航しました。
そこで言われた言葉は次のとおりです。

「自分の境界は、おたくが言ってきた線より5センチ先にあるはずだ」と。

受託者である子供では状況がわからず、購入時の経緯を父に確認しようにも、親も今は施設で住んでおり、物忘れが進み昔のことを覚えている状況ではありません。

ここで、注意をしておきたいのは、たとえ、信託契約を結んだとしても、あくまで不動産の登記簿の表示にもとづいて物件を特定するだけでであり、不動産売却をするために前提条件として必要な境界を確定することができず、受託者である子が境界確定を行う必要があること、そして売却ができないという問題が発生したということです。

信託や遺言でも境界問題は解決できません。
別途、受託者や相続人が個別に対応する必要があります。

専門家が押さえておくべき3つの境界とは?

境界の種類は、次の3つが存在します。

・公法上の境界→筆界
・私法上の境界→所有権界
・事実上の境界→占有界

筆界とは?

不動産登記法上の地番と地番の境界をさします。つまり、不動産登記法上での境界です。

不動産登記法
第百二十三条 この章において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 筆界 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。

条文上「土地が登記された時」と規定されていますが、すなわち、明治6年の地租改正によりできたときの筆界(原始的筆界)です。この筆界は固定され、隣地の所有者との合意(土地を一部譲渡など)のみで自由に変更することができません。その後、不動産登記法の手続きにそって分筆や合筆を行うことにより新たな筆界(後発的筆界)ができていきます。

筆界は、法務局にある公図や地積測量図等を参考に調べていきます。

所有権界とは?

その土地の所有権の範囲が所有権界です。隣地所有者の所有権との境目をさします。
ブロック塀や境界標などで現地で物理的に表示されており、通常は筆界と所有権界は一致していますが、常に一致しているとは限りません。

たとえば、先代の所有者間の合意により土地の一部譲渡を行った、土地を一部越境して利用してしまい時効が完成し、土地の一部を時効取得したといった事情があるにも関わらず分筆登記と所有権移転登記をしていない、事前災害により境界標を亡失した、人為的に境界標を動かした、などの理由により、筆界と所有権界が一致していないという状態が発生してしまう可能性があるのです。

占有界とは?

土地の実際の占有状態の堺です。
時効取得にまでは至らないものの、隣地を越境して使用してしまっているという状況です。仮に他人に自分の土地の一部を利用(占有)されている場合には、その後の時効取得などの問題も発生する可能性があるので注意が必要です。

相続を手がける専門家は、将来的に遺言や信託契約で保全した不動産が売却される可能性がある場合には、筆界と所有権界公図や地積測量図、現在の利用状況を現地やGoogleマップなどを参考に確認しておく癖をつけおく必要があります。

登記簿(筆界)とその所有権(所有権界)が一致していない以上、その土地が特定されておらず、資産価値として保全されておらず、将来的に隣接地所有者との間で境界紛争が生じる可能性があります。そのような土地を高値で買う買主はいません。

そのため、不動産を(安値ではなく)適正価格で売却を予定している場合には、境界を確定させる必要があるということは頭の中にいれておいてください。

境界確定を行うには

境界を確定させるには、境界確定測量を行います。

境界確定測量は、原則、隣接地所有者全員と行います。
隣接地とはその土地が接する土地のすべての土地を指し、隣接地が共有地であれば共有者全員、被相続人名義であれば相続人全員との間で境界を確定させる必要があります。

特に、隣接地との関係が元々こじれているという問題があったり、代替わりがあった場合には要注意です。その境界確定のための円滑に協力を得られない可能性があるということは注意をしておく必要があります。信託で受託者が財産管理を行っていたとしても、受託者である子と隣地所有者の人間関係が円滑でない場合には、協力を得られない可能性もあるのです。

協力が得られない場合は、境界確定訴訟や筆界特定制度の利用が必要となり、期間と費用の問題も発生します。

所有権界と筆界を一致させるには?

確定測量を通じて、所有権界と筆界が異なっていることが判明した場合には、所有権界と筆界を一致させるために分筆及び所有権移転登記を行い一致させます。

まとめ

  • 信託契約や遺言をつくったとしても、境界問題の解決にはならない
  • 境界には、筆界、所有権界、占有界の3つがある
  • 筆界と所有権界は一致することは通常だが、土地の一部譲渡や時効取得、境界標の亡失などの理由により一致しない状況が発生する
  • 境界を確定させるためには、その土地が接する隣接地所有者全員の協力が必要
  • 筆界と所有権が一致しない場合には、境界確定測量を経て、分筆及び所有権移転登記を経て一致させる

境界問題対策は、信頼できる当事者間で円滑に事前におこなっていくことが大切です。士業や専門家が生前対策の相談をうける時点では、親(先代)との会話の機会があります。将来的な土地の売却を想定できる事案においては、隣地との人間関係がある親(先代)から売却予定の不動産の状況などを確認することもできます。

境界確定は合意が必要なため、隣地所有者との関係がある、ないといった事情でその協力をえられるのか、得られないのかという問題にもつながります。不動産は相続対策の事案で考慮しなければならない重要な要素です。意外と重要な境界の問題を頭に入れながら、相談を進めてみてくださいね。

相続専門家が知っておくべき境界・測量のポイントとは!?

相続の際に大きな割合を占める土地。土地という財産は、非常に分けづらい、換価しにくい、また価値がわかりにくい特徴があります。遺言、信託契約、遺産分割協議で物件を特定する際には、登記簿の表示から特定しますが、現地の境界が正しくなければ、物件を正しく特定することはできません。物件が特定できなければ、その手続きの効力も生じないという問題が発生します。

実際に土地を測量し、境界を確定し分筆をするには、どのような手続きが必要か、どれくらいの期間がかかるのか、どの範囲までの土地所有者の協力が必要なのか、ということを知っておかなければ生前対策、相続後の相続税の納税資金捻出のための土地売却といったスケジュールも組むことができません。

なぜ、境界画定測量が必要なのか、土地や道路の境界についての基本的な知識から、相続税の延納・物納など相続対策として押さえておくべき測量、境界の基本から、境界紛争を予防する方法について、株式会社測量舎 髙橋 一雄 氏をゲスト講師にお招きして解説いただきたいと思います。

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