資産承継を信託か、他の生前対策方法で活用するか?その選択のポイントとは!?

家族信託や生前対策相談を受けるメインとなる財産は、不動産です。前回の記事では、基本となる不動産相談における売買の税務の基本的な考え方について取り上げました。

今回はその続きです実際にどのような事案に、どんな提案できるのか??具体的な事案をもとに考察してきたいと思います。今回の記事は、下記のとおりです

  • 資産承継に関する各種生前対策の比較のポイントを押さえておく
  • 生前対策の手法の一つに親族間売買を課題解決の選択肢に加えておく
  • 親族間売買を検討する際に注意すべきポイントは、「売買代金の設定」、「譲渡に伴う税務関係」「資金調達」、それぞれの対応策を検討しておくことが大切

士業・専門家が取り組む一般のお客様に対する不動産提案のポイントについて解説します。それでは、どうぞ(^^)/

資産承継に関する生前対策の比較のポイント

審査基準

家族信託・民事信託を活用すると、ご存知のように生前の財産管理と資産承継対策について、カバーができます。但し、管理の対象は遺言や成年後見制度と異なり、信託した財産の範囲のみですそうです、特定財産だけが対象財産でした。
しかしながら、資産承継の方法で考えていくと、「生前贈与」「売買」「家族信託」「生命保険」「遺言」の対策がそれぞれ検討できます。お客様の相談に際して、それぞれのメリットデメリットを検討しながら、スキームの設計と提案をしていく必要があります

生前贈与(一括又は分割)

メリット
生前に所有権を移動でき、相続財産を減らすことができる
================
デメリット
贈与税、登記費用、不動産取得が高い
相続の際に特別受益による持戻しの対象となる

売買(親族間or第三者)

メリット
売る側は売買代金(現金)を得ることができ、
特別受益などの問題がなく、確実に所有権を移転できる
================
デメリット
購入する側は購入資金の調達と
諸費用(取得税、登記費用等の不動産流通税)、
売る側は譲渡所得税が必要

家族信託、民事信託

メリット
生前から財産管理を託すことで、
認知症対策と確実に財産を
承継できる道筋をつくることができる
================

デメリット
家族の理解と手間と時間がかかる(根回し必要)
遺留分など判例、通達などが確立されていない
全財産を対象とすることはできない

生命保険

メリット
死亡時に確実に保険金を受取り、非課税枠がある
原則、遺留分の対象とならない
================
デメリット
現金のみが対象
途中解約や受取人変更される場合がある

遺言

メリット
全財産を対象とすることができる
付言事項、遺言執行者の指定ができる
================
デメリット
認知症対策にはならない
遺言を撤回される可能性がある

上記のようなメリット・デメリットを頭に思い浮かべながら、具体的なお客様の相談に対応していく必要があります

とある相談~ヒアリングを通じた課題の模索~

相談内容

夫は既に他界した妻からの相談でした子供が3名で、自身が亡き後は同居する次女家族に自宅を相続させたいという想いです

メインとなる財産は自宅(5000万円)です。その他に預貯金が1000万円程度あります

ただし、自宅を遺言等で次女に相続させてしまうと3等分に平等に相続させることができず、ほかの子供との関係で、不公平になってしまうということを気にされていました

当初は信託も検討していたため、専門家として他の子2名にも会いましたが、母や次女本人には直接言えないものの、次女は母と同居しており、住居のほか、親から諸々援助を受けており、その不満をもっていると感じられました

遺言や信託で次女に財産を承継させる道筋はつくれますしかし、いくら遺言・信託を活用しても、自宅の不動産の評価を平等にすることはできません
また、母の今後の生活のことも考えると母の生活費を捻出する必要があります

親族間売買を課題解決の選択肢に加える

信託以外にも遺言や生前贈与の方法も検討しましたが、3等分にするために次女以外の子2名に渡す財産がありません

例え、信託や遺言を活用しても、遺留分の問題がでてきます特に信託については遺留分の判例がなく、最悪、揉めたときに、裁判が長期化するリスクもあります。それはある意味、問題の先送りです
こういったときに何を重視として考えていくのか、僕自身の想いは生前で親が健在の元、将来の道筋を“今”つくること

せっかく、相談にいらっしゃていただいた機会を無駄にしないため“今”解決する、その方策として、“親族間売買”を提案しました。次女夫婦は共働きで、現在収入があるため、次女夫婦に自宅を親族間売買で買い取ってもらい、売却後のお金を、母の生活費として使い、残った金銭を子供に3等分に相続させることを提案しました

金銭であれば、分割ができるので、公平な相続が実現できるからです。

親族間売買を検討する際に注意すべきポイントとは?

売買を行うにあたって注意すべきはその税務です。その際に注意すべきポイントとして、①売買代金の設定、②譲渡に伴う税務関係、③資金調達などがあります。特に①と②については不動産コンサルタント、税理士などと連携して代金の設定、税務関係を確認していく必要があります。

①売買代金の設定

売買契約は当事者間の契約のため、売買代金は当事者間で自由に設定できます相場より、高い金額、安い金額など設定可能です。

ただし、民法ではなく、税務上の考え方として、相続税法第7条と9条の「みなし贈与」の規定に注意する必要があります。たとえ売買であったとしても、時価よりも著しく低い金額で取引を行った場合には、時価よりも低い金額について税務上は贈与があったと判断されかねません。

時価のどの程度の金額によるかは明確な基準はないのです。

参考となる事案として、東京地裁の平成19年8月23日(行ウ)第562号の判決があり、“相続税評価(時価の80%程度)”の水準以上であれば、「著しく低い価額」での譲渡にはあたらないというものがありますが、
これを参考に、具体的な実際の事案をもとに個別判断を税理士や不動産コンサルタントなどの専門家と進めていく必要があります

②譲渡に伴う税務関係

譲渡所得税や不動産取得税、各種特例がつかえるのかなど検討します。譲渡所得税の考え方については 前回のブログを参照してみてください。

なお、親族間売買の場合には、母が実家に居住していても居住用の3000万円特別控除がつかえないため、購入時の価額を確認するということが大切です。本件の場合は、購入時がバブル前であり、現在、物件の価格が値下がりしていることから、譲渡所得税が発生する見込みはありませんでした。
ここも、お客様がちゃんと売買時の売買契約書や領収書をもっているか、確認が必要です

③資金調達

購入する側が、自己資金を用意できるのか、用意できない場合は、融資など資金調達を活用するのか(親族間売買だと通常の住宅ローンを活用の要件を満たさないことが多いので、プロパーで融資ができる金融機関を探すなどが必要があります)。場合によっては、母からの分割弁済で代金を支払う、場合によっては、その保全のため抵当権(仮登記)を利用する、そういったことも検討していきます。

まとめ

  • 資産承継に関する各種生前対策の比較のポイントを押さえておく
  • 生前対策の手法の一つに親族間売買を課題解決の選択肢に加えておく
  • 親族間売買を検討する際に注意すべきポイントは、「売買代金の設定」、「譲渡に伴う税務関係」「資金調達」、それぞれの対応策を検討しておくことが大切

顧客の課題解決に向き合うためには、信託ありき、遺言ありきではなく、様々な選択肢の概要を押さえておくことが必要です。すべて自分でできるようになる必要あはありません。自分でできない分野は適切な専門家につなげてればいい、まず、相談の窓口になるという意識が必要です。

相続・生前対策にとどまらず、顧客のLTV(ライフタイムバリュー)を考えた、継続的な関係をつくるよう、少しずつ仕事を変えていきましょう!
次回の記事もお楽しみに!

家族信託応用編「受益権分離型信託(複層化信託)」を知る!

高齢者の財産管理・財産承継の問題の課題解決として有効な手段の一つ「家族信託・民事信託」
使い方は非常に様々ですが、応用編というべき「受益権分離型信託(複層化信託)」は、「元本受益権」と「収益受益権」から構成される受益権を分離して活用するスキームです
複層型信託の仕組みを理解しておくことは顧客の選択肢を増やすという意味でも必要不可欠です
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