家族信託で信託報酬を設定する際に注意すべき3つのポイント

信託報酬

預貯金や自宅など、子が管理できるようにするために信託をしたいといった相談をよく受けることが多いと思います。

家族間の管理型信託なので、受託者の報酬は設定せず、報酬は無償で設定していることが多いと思います。ですが、受託者となる家族の負担を勘案し、敢えて、受託者報酬を設定するということも選択肢の一つとして入れておくべきです。

受託者となる方は概ね、両親を介護する、その後の施設などの契約手続きを代わりに行う、そして、信託財産や預金通帳、帳簿の管理など、多くの負担を負うことになります。そのため、成年後見制度と異なり、家庭裁判所等への報告は軽減されたとしても、それなりの負担は負うことになります。

揉めてしまった家族の特徴として、介護等の負担を他の家族が理解してくれない、特定の家族のみが負担になってしまっており、親の相続を契機に今まで他の家族に言えなかった負担について、つい口に出してしまうことで争続問題となることも多くあります。

そこで、敢えて受託者報酬を設定し、受託者の負担を負う、家族に報いるという方法を活用するのです。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

  • 受託者責任の負担を受ける家族と受けない家族とではお互いの負担を理解するのは難しい
  • 士業、専門家から信託報酬の話題を切り出すことにより、争族対策となる
  • 信託報酬を設定することで、信託ではできない生前贈与の代わりに相続対策ができる
  • 受託者の報酬は、税務上“雑所得”になり、雑所得として給与所得者が20万円以上受領すると、受託者個人として確定申告する必要がある

受託者報酬の設定の考え方についてお伝えします。

士業・専門家から信託報酬の話題を切り出すことが争族対策回避のポイント

受託者を担う人と受託者でない人とはその責任と業務負担が異なります。
受託者は財産管理を担う責任を負いますが、成年後見制度の代用として家族信託を活用していることが多く、法律上の責任はなくても、実質上は、身上監護の負担を負っていることがほとんどです。

介護

しかしながら、受託者ではない他の家族は介護のことなど、その負担が見えません。こういう負担は実際にその立場に置かれた当事者しか理解できないことがほとんどです。

だからこそ、士業・専門家はあえて、信託報酬を設定するかしないかということを家族会議の議題で提案すべきです。

最終的な結論として、報酬を設定しないという判断になっても構いません。
それよりも重要なことは、受託者の負担を受けている人はそれなりに負担受けているということ、そして、その負担はあったとしても、あえて報酬を辞退する、そのステップを経ることで、受託者の負担を受けない家族も、受託者となる方が譲ってくれているということを理解するという、受託者側の承認欲求を満た、責任を負わない人もその負担を理解できるきっかけともなるわけです。

介護や責任を負っていることが認められない、そういう部分で争族問題へとつながることがあります。報酬を最終的に設定する家族は、僕が手掛けている案件で3割程度しかありませんが、それでも士業・専門家から敢えて提案する意義があると考えています。

信託報酬を設定する際に検討すべき3つのポイント

信託報酬を設定する際には下記の3つを検討します。

・信託報酬はいくらにすべきか?
・暦年贈与スキームとの比較
・受託者報酬は税務上雑所得となる

以下、各項目を解説します。

信託報酬額はいくらにすべきか?

信託報酬を設定することで、受託者は信託財産の中から信託報酬を受領できます。
報酬の定め方としては、信託法上は報酬の制限の定めはないため、家庭裁判所が定める成年後見報酬の目安を参考に、毎月定額と定め、月1~2万円など設定しても構いません。

【信託報酬を定額制として設定した場合の契約条項例】
受託者は、本契約に基づく信託事務につき、本契約の効力発生日の属する月より本件信託終了日の属する月まで、信託報酬として月額最大金6万円を上限に受託者が相当と認める金額を信託金融資産より受領することができる。

収益物件を信託財産とする場合によっては、管理会社を参考に賃料報酬の〇%という定め方もできます。

【信託報酬を賃料報酬からの一定割合として設定した場合の契約条項例】
受託者は、信託報酬を受け取ることができる。なお、当該信託報酬の額は、信託不動産から得られる一月あたりの賃料の10%を毎月の上限額とする。

この場合において、外部の管理会社に不動産管理を外部委託している場合には、受託者が管理会社と改めて管理委託契約することになります。その場合には、信託報酬の額が受託者の信託不動産の管理業務と管理会社へ支払う管理手数料の二重取りにならないか、税務上の問題について税理士と協議が必要です。ただし、報酬の額をあまりに大きくすると税務上みなし贈与などのリスクがあるため、多額の報酬を設定とならないよう、報酬設定については税務上の論点について税理士と税相談しながら定めてください。

ただし、報酬の額をあまりに大きくすると税務上みなし贈与などのリスクがあるため、多額の報酬を設定する際は、税理士と相談しながら報酬を定めてください。

暦年贈与スキームとの比較

家族信託・民事信託のスキームを活用して、生前贈与を継続できるようなスキームをつくりたいということを士業・専門家の方から受けることが多くあります。生前贈与は信託財産を無償で譲渡する行為であるため、受益者の信託財産を減少させてしまうため、信託法上の受託者の管理責任の問題が生じるため、家族信託・民事信託スキームで生前贈与ができないと考えられます。

信託報酬については、信託契約の中で信託報酬を設定することはできるため、受託者に信託財産から信託報酬として支払うことで、結果、信託財産を合法的に減らせます。その結果、生前贈与と同じように相続財産を減らし、相続税対策として活用できるのです。

相続税対策

つまり、贈与という方法ととらずに、受益者が判断能力を喪失した場合でも信託財産を減少させ、親から子へ財産を移動させる効果があることか相続税対策としても利用できます。そのため、暦年贈与と併用するスキームでは、暦年贈与による相続税対策と受託者報酬による節税効果(後述する受託者個人の雑所得は考慮)を税理士と協議しながら節税対策を立案できます。

受託者報酬は税務上雑所得となる

信託報酬を設定した場合に受領する受託者の報酬は、税務上“雑所得”になると考えられています。そのため、所得として給与所得者が20万円以上受領すると、受託者個人として確定申告する必要がでてきます。

雑所得

>>国税庁HP:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人

そのため、信託報酬を設定するときは、雑所得、そして確定申告のことを顧客に伝えておく必要がある点注意してください。

まとめ

  • 受託者責任の負担を受ける家族と受けない家族とではお互いの負担を理解するのは難しい
  • 士業、専門家から信託報酬の話題を切り出すことにより、争族対策となる
  • 信託報酬を設定することで、信託ではできない生前贈与の代わりに相続対策ができる
  • 受託者の報酬は、税務上“雑所得”になり、雑所得として給与所得者が20万円以上受領すると、受託者個人として確定申告する必要がある

将来の家族の介護や財産の管理を設計していく家族会議の場に士業・専門家は立ち会うことにあります。中立な立場で参加するからこそ、将来の問題を想定して適切なアドバイスができます。
特に当事者ではいいづらい、介護や財産管理の負担、そのことを中立な立場にある人間がいうことで初めて当事者に気付いてもらう、負担を認めてもらえます。

今後、士業・専門家の仕事が情報を提供する、処理するという手続きの仕事中心から、顧客を理解し、アドバイスしていくという仕事に付加価値がついていきます。士業・専門家、そして、中立な立場だからこそできる仕事とは何かを模索しながら仕事をしていきましょう。

家族信託契約書を作成する際にどのように設計・起案していますか?

家族信託というのは、士業・専門家にとって遺言や成年後見では対応できなかった範囲をカバーできる「一手法」です。自由度が高い分、お客様のニーズにあわせた対策を設計できます。しかし、一方で、オーダーメイドの契約書というのは経験も必要。そして、制度の歴史も浅く十分な判例もない状況も重なって、なかなかハードルが高く感じる方もいらっしゃるでしょう。

特に、家族信託契約書作成になると士業・専門家の技術が問われます。
もし、間違った信託契約書を作成してしまうと、本来支払う必要がない税金が課税されてしまう、金銭を管理する信託口口座が開設できない、一つの条項がないだけで不動産の売却処分等ができないといったリスクが発生してしまいます。
ここができるのとできないのとでは、士業・専門家にとっては大きな差でもあります。
今回、家族信託組成数200件を超える信託サポート件数TOPクラスのリーガルエステートがその信託契約書の最新情報とともに、作成手法について解説します。

こんな方にオススメです

・これから家族信託をやっていきたいと思っている方
・家族信託契約書を起案する方
・顧問先や顧客に家族信託を提案し、他の士業につなぐ方

セミナーでは、家族信託契約の内容と法務、税務の中でも特に重要なことをダイジェストでお伝えします。

【士業・専門家のためのゼロから始める家族信託契約書解説セミナー】

今回のセミナーでは、主に以下のようなことをお伝えしようと思っています。

  • 間違った信託契約書を作成した場合の3つのリスク
  • 無駄な税金を払わず、預金口座凍結を防ぐための家族信託契約スキームの徹底解説
  • 契約書で要注意!自益信託と他益信託。契約時に想定外の税金がかかることも!?
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