個別相談で受任できなかった顧客への対応方法とは?

集客、紹介を受け個別相談を受けた顧客でも、残念ながら仕事につながらない、ということは当然発生します。今すぐに手続きをしなければならない、相続税申告や相続放棄など期限があるサービスについては受任率が高い傾向にあります。しかし、遺言、家族信託など生前対策については今すぐ手続きをしなくてもよいサービスのため、受任率が低い傾向があります。そこで、大切なのは受任できなかった顧客に対して、その後どのようなアプローチをするかです。

今回の記事のポイントは、下記の通りです。

  • クロージングは「手続きを依頼するか?」を確認するだけ、顧客に決断を促せばよい
  • 即断できないお客様に対して、低額のフロントサービスを提案する
  • 受任のタイミングでない顧客に対しては継続的な情報発信をして関係性を構築し、顧客のタイミングで相談できる状態をつくる
  • 関係性を持った後は追客が意外に重要、お客さんは何度も自分のことを専門家に開示することは面倒
  • 一対一の関係づくりでは、アナログ的なコミュニケーションが必要、あとは心理的なハードルを乗り越えるだけ。愚直さが、仕事の成果につながる

個別相談でのクロージングの方法と、受任に至らなかった顧客への対応方法について解説します。

個別相談のクロージングは「手続きを依頼するか?」を確認するだけ

個別相談を通じて顧客の現状とあるべき理想の状態、問題が明確になり解決方法がわかれば顧客は自分の置かれた問題を解決したいと考えます。Webなどの情報発信、セミナー、無料相談を通じて士業の人間性がわかり解決できるノウハウを持っていることが理解できれば士業に依頼することを検討しているはずです。それではどのようにクロージングにもっていけばいいのでしょうか?ここまでの状態に持ち込めれば、こちらから売り込む必要はありません。顧客に”依頼する”という決断をしてもらうだけです。
顧客に「手続きを依頼しますか?」の一言を質問するだけです。顧客の決断を促しましょう。顧客が今手続きが必要だと認識していれば自分の意思で依頼の決断をするはずです。

個別相談で士業がどのように対応すべきかについては下記の記事で詳しく開設しています。

個別相談で顧客側から”お願いしますと言われるには?

バックエンドサービスを受任出来なかった場合どうする?

士業側が利益につながるサービスのことをバックエンドサービスと言います。

例えば、家族信託、遺産整理、相続税申告、補助金申請など事務所の収益に直接貢献できる手続き、サービスのことです。
バックエンドサービスは、収益につながるものの、士業側の作業工程も必要なため高単価になりがちです。そのため、残念ながら顧客一人では決められない、今の段階で手続きするタイミングではない、などの理由で顧客が決断できず受任に至らないケースがあります。それでも、顧客に個別相談を通じて士業の知識と人間性を認識してもらえれば、将来の紹介やその顧客が士業サービスが必要なタイミングになったときに再度の問い合わせにつながるはずです。

将来的なバックエンドサービス受注につなげるためには?

将来的なバックエンドサービスへつなげるためのアプローチ方法としては、下記の3つが考えられます。

・低額のフロントエンドサービスを提案する
・継続的な定期的なメルマガ、LINEなどによる情報発信
・適宜のタイミングで追客する

以下、それぞれ解説します。

低額のフロントエンドサービスを提案する

今すぐ決断ができない顧客に対しては、フロントエンドサービスを提案することも方法の一つです。

フロントエンドサービスとは、顧客にとって手が届きやすい低額のサービスのことです。期限があるなど緊急性がない限り、高額になりがちな士業サービスを個別相談で申し込むことに抵抗を感じる顧客は一定程度います。そのような場合には、個別相談を通じて得た情報を元に分析した診断書、提案書など低額サービスを提案してみてください。サービスもバックエンドとなる士業のサービスを依頼いただいた場合には、バックエンドサービスに充当する(実質無料)ということを伝えてみましょう。本気で問題解決をしたいと考えている顧客であれば、低額で申込しやすいためフロントエンドサービスの受任に繋がりますし、受任できなければ受任見込みが低い顧客という判断を士業側でできます。

定期的なメルマガ、LINEなどによる情報発信する

顧客の中には課題があるが、現時点では解決すべきタイミングではない方もいます。その場合に無理に仕事につなげる必要はありません。
それでも、個別相談において、顧客の課題に誠実に向き合い、解決策を提示できていれば顧客との信頼関係を作れているはずです。今がタイミングでなかったとしても、時期が来れば再度相談を受けるタイミングがきます。また、紹介も発生する可能性もあります。そのため、個別相談した顧客については”そのうち客”として顧客名簿に残しておき、その後定期的なメルマガや LINE 事務所通信の発送など忘れられない仕組みづくりを作ってください。継続的な情報発信をし、再度顧客のタイミングで相談を受けるポジションを作っておきましょう。

この顧客名簿の考え方については、下記の記事でも詳しく解説しています。

家族信託・生前対策案件を定期的に受注するには顧客名簿づくりがカギ。顧客名簿の作り方とは?

適宜のタイミングで追客する

私もそうですが、何度も家族関係や財産関係など同じことを複数の会社に相談するのには、自分の時間もかかるし手間もかかります。そうであれば、一度相談していて自分のことを理解している士業に依頼したいというのが本音だと思います。自社が提供するサービスにもよりますが、例えば私が扱う相続や信託などのサービスは、子世代からの相談が多いこと、そして顧客である子が直接費用を支払うことではないことから(言い方を悪く言うと自分の懐が痛まないのです)、時間と手間をかけてまで何度も複数の事務所に相談するなどそこまで価格比較する顧客が少ない場合もあります。

それよりも、大切なのは相手の置かれた状況を照らし合わせてメールや電話などで追客することが重要です。メッセージも面談時にヒアリングした顧客ごとに内容を変えて送信します。私も、基本的な送信するテンプレートはありますが、顧客の状況に応じてメッセージを加筆修正します。たとえば、他のご家族にも話してみてから進めたいということで受任に至らなかったお客様について、面談1週間後に下記のようなメールを送っています。

〇〇様
先日は事務所にご来所いただきありがとうございました。
お父様とその後お話しされるとのことでしたが、その後話し合いはいかかでしたでしょうか?なかなか説明が難しい部分も多々あるかと思います。
先日のご案内でもお伝えいたしましたが、私どもでは、ご家族との説明にあたり、ご家族の状況を踏まえ、どのような対策が必要か、生前対策の提案書を作成いたします。
まずは、こちらをつくり、お父様と現段階の課題を共有から始めることも一つの方法かと思います。もし、進めるようであれば、お手伝いいたしますので、ご連絡いただければ幸いです。

このように、〇〇さんとの話はどうなりましたか?と促し、家族との説明が必要なお客様については説明するための資料、提案書をこちらでおつくりすることからお手伝いできますよなど、動くきっかけをつくることを促します。まず、メールやお客様のLINEなどチャットでメッセージを送信する、送信する際も相談時の記録を見直して一律に同じメッセージを送るのではなく内容をそのお客様の状況に置き換え、送信しています。

そして、メールを送信しても返信がなければ、時間をおいて電話する、こういったことを、私も含めスタッフにもやってもらうことだけで、受注につながります。個別相談での顧客の人間関係と信頼関係構築は必須です。最初の人間関係がしっかりできていれば、その後の追客後の受任率も上がります。

最後は愚直にやり続けられるかどうかだけ

デジタル化、IT化と言われますがあくまでツールを使って業務効率を上げるという目的で使うものです。ネットやSNS、動画を使って集客しようと思ってそこに取り組んだとしても、顧客目線だと広告、SNSや動画などのコンテンツを見ても、自分の事とはなかなか認識できないので、士業と顧客との一対一の関係になりません。一対一の関係づくりでは、アナログ的なコミュニケーション、顧客に決断を促す、背中を押す作業がどうしても必要なのです。この追客は、行わなければならないという意識から心理的な負担を負いがちです。追客して嫌がられたらどうしよう、断られるのが嫌だという気持ちです。

しかし、考えてみると、顧客から見るとスケジュールやタイミングがたまたま合わない、自分にはそのサービスが必要なかったという事情から断るだけで、別に追客をしたその人そのものの人格を嫌いなわけじゃないのです。無理やりサービスを売るのでは押し売りになってしまいますが、客観的に見て本当にそのサービスが必要な人に対して、追客・案内することで、顧客に再考してもらえる大事な機会ができます。追客する方法は今までは電話などしかなかったのが、今はメール、チャットでメッセージを送ることもできるようになったので格段に楽になりました。後はやるだけです。自分の心理的なハードルだけが問題なんです。この愚直さは、インターネット対策も、訪問や紹介先開拓など全ての営業活動に通じることです。

私も以前、zoomでブレイクアウトルームを活用したゲーム感覚の新しいセミナーを企画しました。zoomを使った新しい切り口になると思って企画したのですが、顧客目線からみるとセミナーの内容が斬新しすぎてイメージができないものだったのです。一般のセミナーと同じく事務所スタッフに集客を任せていたら10日前になって現在の参加者が4名と気づき、セミナーの魅力を顧客に全然伝えられていないことに気づきました。人は初めて見るサービス、イメージができないサービスには申込をなかなかできません。そこで、焦ってセミナーの魅力を徹底的にメルマガや私のSNSで告知し、見込み客に対してはSNSを使って個別メッセージを送るということをやった結果、なんとか募集人員を満席近くまでカバーできました。このような顧客ごとに送る個別ダイレクトメッセージは、こちらからの熱意を伝え、顧客に再考する機会をつくれる強い営業方法だと改めて感じました。

多くの士業の相談を受けていると、不受任になった顧客に対して愚直に追客、ダイレクトメッセージできないとよく感じています。結局は、この愚直になって、同じことをやり切れるか、続けられるかどうか、そこに尽きるんです。こういったことをやり続けられる人が少ないからこそ、やり続ける人に成果が出てきます。

まとめ

  • クロージングは「手続きを依頼するか?」を確認するだけ、顧客に決断を促せばよい
  • 即断できないお客様に対して、低額のフロントサービスを提案する
  • 受任のタイミングでない顧客に対しては継続的な情報発信をして関係性を構築し、顧客のタイミングで相談できる状態をつくる
  • 関係性を持った後は追客が意外に重要、お客さんは何度も自分のことを専門家に開示することは面倒
  • 一対一の関係づくりでは、アナログ的なコミュニケーションが必要、あとは心理的なハードルを乗り越えるだけ。愚直さが、仕事の成果につながる

個別相談でクロージングできない顧客でも、再度アプローチする仕組みをつくることで、顧客のタイミングで再度問い合わせを得る機会をつくれます。一つの問い合わせを得るために使ったコストを無駄にせず、次の機会に繋げる仕組みが必要です。自分の事務所でどんな仕組みがつくれるか、一度考えてみてください。

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