相続や家族信託など同じようなサービスを士業のみならず、金融機関をはじめ民間会社が提供している中、業種を超えた競争が激しくなってきています。そのような中、重要となってくるのが、新規顧客開拓ではなく既存顧客との関係性づくりです。新規顧客開拓をするためには、広告費などマーケティング費用がかかってきます。
売り上げをつくろうと思うと、どうしても新規開拓ばかりイメージしがちですが、右肩上がりの時代ではそれでよかったものの、少子高齢化の供給が需要を上回る時代においては、少ないパイを多数の競合と奪い合う、より低価格で仕事を受託する、、、そんな悪循環になりかねません。特に、今すぐ仕事を依頼する必要がない家族信託、遺言などの生前対策や思い当たる対象がいる場合に発生する紹介案件などは、顧客との関係性がなにより重要です。
価格ではなく正規の料金で仕事を受注していく、そうなってくると、既存顧客関係性づくり、そして、事務所のファンづくりが重要となってきます。同じような仕事を誰でもできるようになって来ている時代だからこそ、価格ではなく、関係性や信頼がある〇〇先生、〇〇さんに依頼するという人で選ばれることが多くなるからです。
ファンをどれだけつくるのか、そしてファンがいるスタッフをどうやって採用していくのかというような”個”が重要になってきます。私自身も最近は、SNS経由で直接ダイレクトメッセージがきて仕事を受託するということが多くなってきています。
今回の記事のポイントは下記のとおりです。
- 新規開拓では頭打ちが見える中、 既存客との関係性をつくるためには顧客名簿を育てるという考え方が必要
- オフラインでの顧客名簿は、まず既存の顧客との名刺、事件簿から作成し、定期的な事務所通信の発送やメルマガの配信に繋げる
- 各種 SNSでは情報が届くフォロワーを増やし、定期的な投稿をしていくことが必要
- オフラインとオンライン、いずれも自分の顧客を設定し、その顧客に必要な情報を届けファンを作っていく
今回の記事では、顧客名簿の考え方についてお伝えしていきます。
目次
なぜ、士業・専門家において顧客名簿が必要なのか?
新規集客の基本としては、士業側から情報を発信して認知してもらうということが必要です。
例えば、SEO施策としてブログを書き定期的に更新し、Google等で上位に表示させる、YouTubeで動画を配信する、このような無料で情報を配信する方法があります。また、広告宣伝費はかかりますが、広告を配信するといった方法も考えられます。しかし、GoogleやYouTubeなどのプラットフォームを利用した配信は、定期的にアルゴリズムがアップデートされ検索順位が変動し、これまで上位表示されていたものがいきなり10位以下に落とされるといったことが起こり、私も何度もアップデートのたびに検索順位が上下するといった状況に遭遇しています。
しかし、士業側で顧客のメールアドレス、住所、電話番号、LINEの友だち登録などの情報をもっていると士業側のタイミングで定期的なメルマガなどによる情報配信や新規サービスやセミナー情報を公開したタイミングで告知できます。この顧客名簿があるか、ないかではビジネスをおこなっていくにあたって大きな差が生まれます。例えば、あなたがセミナーを開催するため集客することを思いつき、いざ集客しようと動いた姿を思い描いてください。見込み客の連絡先をもっていれば、一斉にメール、ダイレクトメール(DM)などを送れます。SNSでのフォロワーを有していればSNSを通じて開催するセミナーを告知して、費用をかけず集客できます。逆に見込み客のリストを有していなければ、広告費を費やして告知しなければなりません。顧客名簿を数多く持っているのと持っていないのとでは、どちらが多くの見込み客に自分のセミナーを告知できるでしょうか?
当然、顧客名簿を持っている方が、多くの参加者にアプローチすることが可能となります。このように自分のビジネスに関係性のある見込み客のリスト、すなわち顧客名簿を大量に保有することが、ビジネスを進める上で優位なのです。顧客名簿があれば、Googleなどのプラットフォームのアップデートなどによる外部環境の変化に左右されず、安定的に士業側の情報を告知できるのです。
値段ではなく適正対価で仕事を受注していく、そのためには既存顧客との関係性づくりが重要となってきます。
同じような仕事を誰でもできるようになってきている時代だからこそ、値段ではない、関係性や信頼がある〇〇先生、〇〇さんに依頼するという人で選ばれることが多くなるからです。少子高齢化、人口減少に伴いサービスを利用する顧客が減少していく中、1人の顧客との長期にわたる関係性づくりが重要となってきます。一度関わった顧客と事務所通信、メルマガ、LINEなど、自社のお客様がよく使うツールでつながることで一度きりで忘れられない関係をつくれるのです。継続顧客、つまり事務所のファンをどれだけつくるのか、そしてファンがいるスタッフをどうやって採用していくのかというような”個”が重要になってきます。
士業・専門家における顧客名簿とは?
実際に関係性をつくるにあたって、まず用意すべきもの、それは”顧客名簿”です。
顧客名簿がないと、情報発信する相手先がいない、つまり誰も読まない読まない名簿となってしまいます。
顧客名簿には大きく分けて、2つのリストがあります。
・オフラインでの顧客名簿(名刺、事件簿)
・オンラインでの顧客名簿(SNSなど)
この顧客名簿を育て、継続的な事務所のファンをつくっていくという発想が必要です。
以下、二つの名簿の考え方についてお伝えします。
オンラインでの顧客名簿
住所、氏名、連絡先は事務所通信の郵送やメルマガを配信する際に必要なものであり、当然顧客情報と理解できると思います。顧客の連絡先がわからないと送信しようとしても送信できません。では、どのように管理していけばよいのでしょうか?その方法をまずお伝えします。
名刺
事務所を開業して5、6年もすれば多くの取引先とかかわっていることが多いと思います。僕も一番最初にやった取り組みですが、その名刺を整理することが始める第一歩です。
名刺管理ソフトとして無料で使えるEightでまずは、名刺をクラウドで管理するのがおすすめです。
アップロードも名刺を写真で撮る、またはスキャンしたうえアップすれば、自動的に名刺から読み取った情報をリスト化してくれます。有料版を利用するとデータをCSVでダウンロードできるので集めた名刺データを他のメルマガリストや年賀状ソフトなどに取り込む際便利です。また、Eight内でタグをつけることができるので、一般顧客、取引先、不動産業者などに区分けすることで業種ごとの名簿をつくることもできます。
オフラインでの面談から入手した名刺から顧客名簿作成をすることができます。
オフラインでの営業方法については別の記事に詳しく解説していますので、こちらを確認してみてみださい。
一般顧客の事件簿
今まで相談や事件として携わってきた顧客情報もすべて名簿データとして活用できます。今までデータとして管理していなかった情報もリストとして整理することで活用できます。
上記の名刺や事件簿などの情報の中には、今までその事務所で顧客と直に案件としてかかわり信頼関係を構築してきた人が少なからず含まれているはずです。そのリストを継続的な仕事の関係があるSから、A、B、Cと関係性が低い順にランク付けすることにより、DMなどコストをかけて送付するかの判断材料にもなっていくるので一度、整理してみることをお勧めします。
この後に、SNSでの顧客名簿の考え方をお伝えしますが、オフラインで実際に仕事などを通じて信用を築いた名簿の方が先生、事務所のファンになりやすく、メルマガを見るなど開封率も高い傾向にあります。関係性が薄い連絡先では、その名簿をつかっても反応は低いですが、関係性が高い名簿では同じ情報でも反響が変わってきます。
まずは、事務所内で既存の名簿をつくることからはじめていきましょう。
オンラインの名簿
note、アメブロ、Facebook、Twitter、Instagram、YouTube、LINEなど各種SNSでは、友達、フォロワー、読者、チャンネル登録数(以下、フォロワーといいます)などのフォロー機能があります。オフラインでは、連絡先などの個人情報の名簿を増やすことがポイントだとお伝えしましたが、オンラインでは、このフォロワーを増やすことがポイントです。
このフォロワー数が多くなければ、いくら情報を発信しても誰も読んでくれない、、、ということになりかねません。手っ取り早く、自社のセミナーや無料相談などの情報を告知したければ広告費をかける方法もあります。
でも、それでは広告費などマーケティングコストがかかり続けます。
でも、このフォロワーを増やすことにより、更に、自身が投稿した情報がフォロワーとして届く先が増えます。また、その記事の内容がよけれは、シェアやリツイートなどにより、シェアをしてくれた人の周りの人にも情報が無料で届くようになります。
つまり、名刺などではあくまで直に関与したアナログの名簿となりますが、オンラインを活用することにより、フォロワーに無料で情報を配信することができ、定期的に自分の情報を届けることができます。
フォロワー数≒オンラインでの名簿と考えて運用していく発想が必要です。
ただし、こちらも注意しなければいけないのは、オフラインの名簿と同じく関係性が弱い名簿だと相手に届かない可能性があること、そして、届いたとしても読んでくれない可能性があるということは意識しておく必要があります。
時々、FacebookやTwitter、ブログなどで日記風の投稿、記事が届くことがありますが、先生の日常として時折であれば人間性をアピールできるのでいいですが、そもそもの最終的な目的を考えていく必要があります。趣味で活用しているのであればすべて日記風で構いませんが、無料相談や個別相談、自身のサービスの提供を目的としているのであれば、投稿の内容も考えて運用する必要があるのです。
イメージで言うと日常4、仕事(専門性)1くらいの割合で、1は有益な情報を提供する感じです。
自分のお客さんを常にイメージしてそのお客さんが役に立つ投稿、喜ぶ投稿、共感を持つような投稿を定期的に届けることによって、自分の事務所、そして個人のファンとなり何かあった時の相談の窓口というポジションを作ることができます。
この”誰に”どんな情報を届けるのか?という顧客設定については、下記の記事で詳しく解説していますので、確認してみてください。
当初はフォロワーがいなくてもオフラインの関係性の名刺や連絡先の情報は得ているはずです。オフラインの名簿からS、Aランクなど確度が高い顧客とFacebookやTwitterなどでまずは友達申請やフォローをし、以後は、メルマガや事務所通信、SNSなど定期的に発信するコンテンツを届けて、顧客を育成するということを心がけてみてください。
まとめ
- 新規開拓では頭打ちが見える中、 既存客との関係性をつくるためには顧客名簿を育てるという考え方が必要
- オフラインでの顧客名簿は、まず既存の顧客との名刺、事件簿から作成し、定期的な事務所通信の発送やメルマガの配信に繋げる
- 各種 SNSでは情報が届くフォロワーを増やし、定期的な投稿をしていくことが必要
- オフラインとオンライン、いずれも自分の顧客を設定し、その顧客に必要な情報を届けファンを作っていく
士業や専門家のビジネスは、顧客との関係づくりが何より大事です。特に、これからの時代は、新規開拓のみならず、既存客との関係性づくりをつくっていく意識しておく必要があります。
SNS の活用によって事務所・会社ではなく、個人にファンを作ることができるようになってきました。今はその事務所の所長が中心にオフラインとオンラインの顧客名簿作りを行っていくということになってきますが、今後は自分の事務所のスタッフそれぞれがファンを作っていきファンが多いスタッフを何人採用できるのか、というような発想に切り替わってくる可能性があるのです。
そもそも事業の業務は昔からオフラインで信頼関係を作るということが多くお客さんに好かれているスタッフが独立離職すると同時にそのお客さんもそのスタッフについてってしまい離脱してしまうということがよくありました。これが今後はオンラインでも起こる可能性があるのです。
まずは、オフラインの顧客名簿の整理からはじめ、オンラインへとできる範囲から進めていきましょう。
次の士業・専門家のビジネスモデルを構築するには!?
士業は、資格という安定した肩書があるからこそ、国民に広く信頼されており今の士業という仕事があります。
その反面、どうしても資格という枠に捉われ過ぎがちな面があり、本当は色々できるのに、チャレンジできる土台があるのに、〇〇士は〇〇いう業務しかできないという、自分の枠を狭めてしまっていがちです。そして、ある程度、地域の信用を得て仕事を受注できるようになると、「こんなものでいいかも・・・」と思い込んでしまい、小さくまとまってしまいがちです。でも、本当は先人たちがゼロから築きあげた資格、その信用があるから今があり、次の時代の士業につないでいく責任があります。
インターネットが普及し、民間会社がリーガルテックの分野に参入してくるなか、士業はそのまま何もしないでやられっぱなしでいいのか??そんな訳はありません。
なによりも危険なのは変化をしないこと、新たなチャレンジに勇気をもって踏み出せなくなることです。
チャレンジするということは、当然、失敗する可能性も含まれます。
でも、失敗して失うものなど、たかが知れています。
今後、我々は時代の流れを受けてチャットツールやZoomなどオンラインの仕事の進め方を本格的に学んでいく必要性があります。
そんな中、下記のような悩みはありませんか?
・新規顧客開拓をし続けるのが苦しい
・手続きビジネスから脱したい
・高額コンサル販売方法がわからない
・WEB・IT活用に苦手意識がある
どのように士業・専門家業務をオンラインに変えて、手続き代行ビジネスからコンサル型ビジネスへと変えていき、継続的な顧客獲得と育成の仕組みを構築していけばいいのか、斎藤が取り組んできた事例を元にWEBセミナーにてお伝えします。
家族信託・生前対策集客・受任力アップセミナー
セミナーでは下記の内容を伝えています。
- 相続・家族信託のマーケットの状況
- 士業・専門家業の時代の流れと高収益生前対策案件受任の発想方法
- 家族信託、任意後見、遺言など生前対策提案の活用方法
- 生前対策・家族信託コンサル業務における商品設計のコツとは
- 生前対策・家族信託相談からの不動産提案のポイント
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