金銭を管理する家族信託と商事信託の使い方とは?!

最近の一般のお客様から多く聞かれるのが、高齢の親の金銭の管理方法です。認知症対策として、家族信託・民事信託以外に、金融機関で、独自の信託商品を販売したり、保険会社も認知症対策の保険を販売しはじめたりしてます。

》みずほ信託銀行の家族信託「安心の贈りもの」
》はまぎん・おかねの信託
》第一生命の認知症保険

そのため、お客さまの方も、情報を金融機関や保険会社など、多くの会社から、商品の情報や広告を受け取り過ぎていて、家族信託・民事信託や金融機関の提供する商品の違いがわからず、どの商品が自分にとって最適なのかわかりづらくなってきています。ですから、サービスを提供する中立的な専門家サイドからの助言を行う必要があります。

今回の記事では、金銭を管理する方法としての金融機関の提供するサービスを利用した対策方法と家族で契約を行う家族信託・民事信託の違いと、使い分け方法についてお伝えします。
それでは、どうぞ(^^)/

金融機関の代理人届けとは

まだ認知症になっていない、または認知症の診断を受けていても判断能力の著しい低下がない場合、事前に口座を凍結させないために採れる有効な手段があります。一番簡単なのは、金融機関に代理人届を提出してもらい、代理人用のキャッシュカードを発行して利用する方法です。

 

ですが、代理人となれる範囲に制限があり、金融機関によっては生計を共にし、同居する家族など、範囲が狭く設定される場合があり、ひとり暮らしの親の財産管理では使えない場合があります。

また、あくまで代理人届であるため、資産承継機能はなく、本人の相続後は、遺言又は遺産分割で資産承継先を定めることになります。代理人制度を利用することにより、代理人が取引を行うことができますが、金融機関において、口座名義人である本人の判断能力が喪失したことと判断された場合には、代理人制度での取引ができなくなる可能性もあるので、注意してください。

金融機関が提供する信託商品、保険の特徴

金銭を管理するための認知症対策型信託商品を金融機関にて提供していますが、家族信託のセミナーなどを受けたお客様が良く間違いがちなのが、“家族”や“信託”という商品名を名乗っているので、家族で柔軟に管理できる口座と思っていることです。

 

金融機関が提供するサービスはあくまで“受託者が金融機関”であり、「委託者 親 /受託者 金融機関 /受益者 親」の商事信託のサービスであります。指図権者や受益者代理人として子がつくことで、施設の入所費用など一時的な支払いが必要な時に、委託者兼受益者の親が判断能力を喪失していても払い戻しを受けることができるという商品です。つまり、子の名義の信託管理金銭とし柔軟に利用できるサービスではないということです。

認知症対策保険も認知症等と判断されたときに、一時金を保険金として、指定代理人等と届けてた子が受け取ることができる商品であり、あくまで金融機関名義で管理する商品です。認知症対策型の商事信託も生命保険も帰属権利者、受取人を定めることで遺言代用機能を果たすことはできますが、あくまで対象財産は金銭のみです。

いずれも金銭を管理するのは、受託者である金融機関や保険会社なので、中立的な立場で金銭を管理してもらえます。ですから、信頼して任せられる家族がいない場合の定期的な金銭の給付、管理、そして、資産承継という面では、金融機関としての信頼性という面で活用できます。

しかし、柔軟な財産管理という面では、一定の手続きを経た上での支払い、払い戻しになること、そして、家族に応じた柔軟な設計はできず、商品内容のひな形にそった設定しかできないこと、信託報酬がかかることなどを考慮して利用する必要があります。

そのため、家族だけで金銭管理を継続する方法は、やはり、代理人届又は家族信託といった方法がベストです。

事例から考える金銭を管理するための信託スキーム

 

父の所有財産 預金・株式・実家・年金
家族構成 父、長女、長男
※父は施設に入所中であり、長女が父の介護を担当する予定

上記のような家族における金銭の財産管理の仕組みを考えます。家族信託・民事信託を考えていく際には、委託者個人名義口座で管理する金銭と受託者名義の信託口口座で管理する金銭を考えていく必要があります。
信託で効力が及ぶ範囲は、あくまで信託財産のみであり、信託していない財産には及ばないからです。

信託口口座は、受託者名義の口座であるため、受託者判断で管理を継続することができますが、年金は本人の名義にしか入金できないため、委託者の個人口座で管理を継続する必要があります

そのため、金銭を管理する際は、信託口口座と委託者個人口座の活用を併用する必要があります。その他、水道光熱費などの生活にかかる引落口座も受託者名義の信託口口座で引落ができるか確認が必要です。

金融機関によっては対応できない場合もあるので、その場合は、委託者個人口座からの口座振替を考えていく必要があります。そして、上場株式の管理も同様に証券会社を通じて信託口口座で管理するのか、代理人届を提出して子が代理人として管理するのか方針を決めていきます。

財産管理という面だけで考えるのであれば代理人届で十分です。そうではなく、特定人の相続人に信託財産として承継させ、相続ギリギリまで積極的に株式運用を行い、株式投資を行い資産を組み替えていきたいということであれば、株式は信託財産として家族信託で行うことも検討します。

今回の事例では、積極的な株式投資は考えておらず、配当金を生活費として考えていくことから代理人届で証券会社は対応することにしました。実家も今後空家になる可能性があるため、信託財産は自宅とまとまった金銭を管理します。

委託者の個人口座には、年金と配当金が振り込まれるため、年金がある程度溜まった段階で、信託口口座へ追加信託するというスキームをつくりました。

■委託者個人口座
→年金、生活費の口座振替
→株の配当金
■信託口口座
→まとまった金銭の管理
→一部生活費の口座振替
→追加信託・実家売却後の金銭

初めて信託案件を手掛けた専門家が忘れがちなのが、お金の流れのデザインです。信託して金銭を信託口口座に入金して完了ではなく、その後の管理方法、そして、お金の流れまでわかるようにして設計することが必要です。

まとめ

  • 金銭を管理する方法として、代理人届、金融機関の信託商品・保険、家族信託がある
  • 代理人届では一定の要件を満たした代理人が管理できるものの、資産承継機能はない
  • 認知症対策型の商事信託、保険は管理の主体者が金融機関・保険会社であり、家族が直接管理できるサービスではない
  • 金銭を管理する信託スキームにおいては、委託者名義の個人口座と信託口口座をどのように活用していくか目的から考えてお金の流れを設計する

多くの会社が認知症対策型の商品・サービスを提供してきている中、我々専門家もどの商品がお客様に最適なのか、どのサービスで代替できるのか、情報収集しておき、比較検討のアドバイスを行えるようにしておく必要があります。

今後、同じようなサービスが溢れる中、”誰が”その商品を提供するのか、情報を届けるのか、という”個”の時代に突入しています。信頼できる士業・専門家だからこそ、その提案に耳を聞いてくれる顧客がいるのです。

同じような商品・情報でも、信用・信頼がなければその情報はお客さんに届かないし受け入れてもらえません。だからこそ、その期待に応えるよう知識・サービスを磨いていかなくてはいけません。

そして、実際の提案においても、信託契約書をつくる、遺言書を作成するだけにとどまらず、実際のお金の流れ、その後と運用方法まで、アドバイスできる仕組みを作り、継続相談型のサービスの提供へと変えていく。それが、一つのサービス提供で終わらず、継続型へのサービスへと自分のサービスを変えていくことができる一歩です。

今回の記事は、ここまで(^^)/ 次回をお楽しみに。

拙著「ゼロから始める家族信託活用術“改訂版”」が4月6日に発売します

Amazonレビュー90超のゼロから始める家族信託活用術の改訂版がおかげさまで2020年4月6日発売します。
内容は、従前のものを大幅加筆して家族信託の一代限り、連続型スキームの設計方法の考え方、家族信託融資など新規コンテンツを追加しています。

ご興味ある方は、是非お買い求めください。

家族信託・民事信託設計のポイントとは?

書籍セミナー基礎動画販売用-3

家族信託は資産承継における認知症対策として、また成年後見制度でサポートしきれない部分を補う財産管理の手法の一つとして注目されています。
リーガルエステート代表斎藤竜が執筆した<士業・専門家のためのゼロからはじめる「家族信託活用術」>を題材にし、家族信託の理解度を深め、法務面・税務面からその制度のメリット、デメリット、リスクなど押さえておくべきポイントをつかみ、最終的に家族信託の専門家として顧客に説明・提案・設計ができるよう活用事例を解説したセミナーを動画コンテンツにしました。

セミナーの中では今回の記事の中で紹介した家族信託の基礎から金融実務など実務の対応方法や具体的な提案方法、そして、提案書の雛形など実際に使っているツールも公開しています。ご興味のある方は、下記ページで詳しい内容を紹介しているので、是非確認してみてください。

家族信託の基礎から応用、そして提案・受任までのポイントをつかめる
ゼロからはじめる「家族信託」活用術【基礎編・応用編】

★セミナー内容★

  • 法務・税務面で必ず押さえなければならない家族信託の活用ポイントとは
  • 顧客が望む家族信託の設計と活用方法について書籍を元に事例形式で解説!
  • 出口戦略を考えた信託の終了事由の設定方法を考える

詳細はコチラ


無料メールセミナーはこちららから

無料相談はこちら

関連記事

  1. ”ゼロから始める「家族信託」活用術”の書籍原稿(ゲラ)その3

  2. ”ゼロから始める「家族信託」活用術”の書籍原稿(ゲラ)を公開編その2

  3. 農地を信託財産とする際に検討すべきポイントとは!?

  4. 信託登記漏れ物件!?その対応方法と顧客との接点づくりを考える

  5. 長期にわたる受益者連続型信託で考慮すべきポイントとは!?

  6. 連続型信託を設計するのあたって注意すべき、本人他界した後の手続きとは!…

家族信託コンサルビジネス構築講座

プレセミナー案内

生前対策・家族信託コミュニティー~LFT~

LFT案内

最近の記事

  1. 配偶者居住権登記
  2. 設計
  3. 公証役場
  4. 紹介営業

サービス一覧

各種セミナー