デジタル手続法案、その影響と士業・専門家やるべきこととは!?

生前対策・家族信託コンサルタント、司法書士の斎藤です。

今国会で、行政手続きを「原則、電子申請に統一していく」というデジタル手続法案が閣議決定され、今国会での成立を目指すというニュースがありました。
行政手続きネットで完結 政府、法案を閣議決定

また、最近もニュースで、オンラインで不動産の相続手続きを効率化するというサービスも登場してきています。
Open Network Labが第18期プログラムのデモデイを開催、オンラインで不動産の相続手続を効率化する「e-相続」が最優秀賞を獲得

行政手続きのオンライン化、今後どんな形で進んでいくのか、イメージをしておき、自分たちの今の仕事をどう変えていくのか考えておくことが必要です。それでは、どうぞ(^^)/

デジタル手続法案の概要とは!?

2019年3月15日に、行政手続きを原則、電子申請に統一するというデジタル手続法案が閣議決定されました。会社設立、その後税務、社会保険手続き、引っ越し、その後の電気やガス、水道の契約変更、要介護、要支援認定の申請手続きなどの行政手続きをPC・スマホなどを利用してネットを経由し申請し完結するという内容です。

この法案は、デジタル化にあたって必要なマイナンバー法、公的個人認証法、住民基本台帳法などを一括して改正します。また、この法案とは別に健康保険法改正案で、2021年3月からはマイナンバーカードを健康保険証代わりに利用できるようになるということも進められています

この法案の概要を理解するにあたって、重要な基本原則を理解する必要があります。それは下記のとおりです

(1) デジタルファースト
(2) ワンスオンリー
(3) コネクテッド・ワンストップ

法案の概要は、2019年3月5日付「第11回行政手続部会 議事次第」の中でも公開されています。この原則については、海外で進んでおり、このデジタル手続き法案のモデルとしているエストニアの事例と比較して考えていくとわかりやすいです。

ここから先は、実際に僕がおととし、先月と見てきた実際に見てきたエストニアの事例を交えながら紹介していきたいと思います

原則1:デジタルファーストとは!?

個々の手続き・サービスを一貫してデジタルで完結するという原則です。行政手続についてオンライン実施を原則化し、(地方公共団体等は努力義務とされています。
財源の問題から先送りにしているのでしょう)オンライン実施を原則化しています

電子証明等、電子納付などを用いて、本人確認や、手数料納付もオンラインで実施します。日本の現状について、日経新聞では下記の記事がありました。

国内で行政が関わる手続きは2016年度時点で住民票の移転や児童手当の申請など約4万6000種類ある。そのうち電子化されているのは1割強。手続き件数でみると年間48億件のうち7割超が電子化されている。

政府の調査では法律で規定されている約3300の民間手続きのうち、電子化済みは6%程度。政府が旗を振れば大幅に高まる可能性がある。例えば処方薬の場合、ネット販売が解禁されれば、消費者は薬局に出向かずに購入できる。住宅の売買では、宅建業法が対面での重要事項説明を義務付けているが、規制を緩和すれば契約のために遠方に行かなくて済む。

2019年3月15日経経済新聞電子版記事から引用

これから国は行政手続きのデジタル化を推進していきます。ここで、将来の姿をイメージするために、エストニアの事例を紹介します。

エストニアでは、現在、行政手続き、公的サービスの99%が電子化され、24時間年中無休で利用でき、行政の窓口に行く必要がありません。毎日デジタルのサービスを提供しており、国民、行政に関する職員、官僚全てが活用しています。
デジタルの活用により、時間とお金を節約しており、お金に換算するとGDPの約2%を節約できたとのことです

住民票の変更、確定申告、会社設立、選挙の投票も、交通違反の罰金の支払い、学校の手続きもデジタルで行い、全てデジタルIDひとつで済ますことができます。日本ではマイナンバーに相当します

ここまでは申請のイメージでしたが、もっとサービスが進むことも想定していきます。エストニアでは、子供が生まれると病院側がオンラインで登録手続きが行われるそうです。そうすると、自動的に出生のタイミングでデジタルIDが付与され、その後、国民側から申請しなくても適切なタイミングで子育てなど申請しなくても、福祉に関する制度への申込がされ、自動で支援金が受けられる。

年金、失業などの申請も自動的に行われるそんなイメージです。

日本だと、いちいち複雑な支援金、助成金、その他出生、健康保険に関する申請がその都度異なったフォーマットであり、申請しなければ、必要な支援を受けることができない(ここに手続き代行のニーズはありますが、、、)。

そういったものがいらなくなるこんな将来もでてくることが想定されます。

原則2:ワンスオンリーとは?

一度提出した情報は、二度提出しないという原則です。
僕自身の仕事を鑑みても、不動産・商業登記手続き、成年後見など家庭裁判所提出書類の作成など、多くの書式でお客様の氏名・住所などの情報を何度も何度も記入しています。上記以外の行政手続きを鑑みるとその数は膨大です(笑)

この情報入力作業を何度もさせない、これがデジタル手続法案の第二の原則です。日経新聞では下記の記事がありました

今回の法案が成立すれば、さらに行政手続きでは電子化が進む。19年度からは引っ越しに関わる手続きをネットで一括で終えられるようにする。住民票を移転する際にネットで名前や住所を入力すれば、その情報が電気やガス、水道の契約にも転用される。

2019年3月15日経経済新聞電子版記事から引用

エストニアでも同じく、電子政府制度の中の原則として、データを求めるのは1度きり、二度同じことを聞かないという原則があります。住所変更届を一度したら、自動ですべての住所変更手続きが済みます。

データが重複して登録されないことから、役所ごとに手続きが必要となる、そしてデータベースの齟齬からミスが発生することも防げ、国民、行政共にメリットがありまた、そういった申請・変更手続きのコストが下がりますす

原則3:コネクテッド・ワンストップとは!?

民間サービスを含め、複数の手続き・サービスをワンストップで実現するという原則です。日経新聞には下記の記事がありました。

今回の法案は民間の手続きの電子化も視野に入れている。情報管理など通信の安全性の確保を前提に条文には「民間手続きのオンライン化を可能とする法制上の措置を講じる」と明記した。

2019年3月15日経経済新聞電子版記事から引用

ここについてもエストニアの事例から見ていくとわかりやすいので紹介します。
エストニアでは電子行政を運営するにあたって国が提供する「エックスロード(X-Road)」という基盤をつくり、運営しています。この「エックスロード(X-Road)」は異なる行政機関の他、民間も利用できます。

 

つまり国のデータベースを民間も利用できるのです。国としては当然、セキュリティの問題から誰がデータを利用してるかなど、追跡・管理はできる仕組みを構築しています。
たとえでいうと、appleやGoogleのOSがプラットホームとして公開され、

その中でサードパーティと呼ばれる周辺のソフトウェアメーカーがゲームや動画などサービスを提供しているというイメージです。国がプラットホームをつくり、国としてのセキュリティー、信用を担保したうえで、行政機関のみならず、民間にも開放しているということです。

僕らもスマホやPCで様々なオンラインサービスを利用していますが、いちいち利用するたびに、ID・パスワードを利用するのって面倒ですよね、、、

でも、そのサービスで、ID・パスワードの登録以外の方法でFacebook、Twitterなどの認証方法が用意されている。

オンラインサービスだったら、いちいちその情報登録がいらなくなるので、便利だからついつい使ってしまいますよね
そのイメージの延長戦で国の本人確認の認証サービスをFacebookやTwitterなど民間ではなく、国が用意している「エックスロード(X-Road)」を活用して、国のデータを利用できるというイメージで考えるとわかりやすいです。
この国としての信頼性があるデジタルIDで本人確認をするという電子政府の仕組みを民間が利用できるので、民間企業が提供します。

例えば電子契約や税金の手続きなどのオンラインサービスにデジタルIDの電子署名などの本人確認サービスを組み込み、金融や不動産、税金、社会保険サービスなどを組み込むことが可能となります。
電子政府の仕組みを民間も相互利用できるそんなことが将来始まるかもしれないそんなイメージを持っておくといいと思います

まとめ ~デジタル化に対してどう向き合うか?~

いずれにしても方向性として、行政手続きはデジタル化の方向で進んでいきます。
デジタル化の恩恵を最も受けるのは、本当は少子高齢化が進んでいる地方で、先週の自動運転バスの事例など、進んでしまっている地方の少子高齢化の課題から地方自治体が導入していくのが本当はいいのでしょうが、財源などの問題があるため、地方では一部の自治体からしか進まないのでしょうね。

まずは、進めやすい法人設立関係から2020年度から進んでいきます。今後、どのように仕事に取り組んでいけばいいかなど士業や専門家の方から相談を受けることが最近増えてきました

前回の記事でもお伝えしましたが、今までは「人」がメインで、「システム・設備」はサポートだった。しかし、人口減少、高齢化、人の採用も難しくなる、、、
この最近の動きを見ていると「システム・設備」がメインで、「人」がサポートに置き換わっていきます

士業・専門家として顧客によりそって、コミュニケーションをとっていきたいという人にとっては、単純作業はなくなっていき、人・場所など、事務処理コストがかからなくなってくるのでむしろ、リスクが少なくなり、やりたいことで働くことがができやすくなってきています

これからの時代に必要になってくるのは、時代の変化にともなって、その時代にとって必要なスキルを学び、自らの能力を磨く、学習力、そして対応力が必要になってくるのかなと思っています

今までの経験だけで今後生きていきたい、新しいことを学ぶことが嫌いな人にはきついと思うのですが、法律は日々改正される、そしてテクノロジーも変わってくる、その時に求められる能力も変わってきます。
その能力は、法律・税務知識だけではなく、マーケティングだったり、WEBだったりと自分がやりたいことと併せる形で学ぶべき分野も変わってきます。僕ら自身が変わること、そして変わるために必要なことを学ぶ姿勢を持ち続けることが必要です常にアップデートしていきましょう(^^)/

信託を組んできた事例や失敗事例からの実務対応についてお話します

まだまだ、法務税務が確定していない家族信託・民事信託、、、常に最新の法務・実務を学び続けることが必要です。
自分自身もこれまで100件超の信託を組んできて信託終了した事案もでてきました。
そのなかで、想定外の事情が発生し、信託設計時にこうしておけばもっとよかったなというような事例もでてきました
その事例をまとめ上げ、ようやく先日、レジュメが完成!

メルマガでは伝えきれない
・信託の組成方法
・実際の融資の取り扱い、
・契約の組み立て方
・出口戦略の考え方
などが盛り込まれています。

実は、この内容のセミナーを僕が主催する「家族支度・生前対策コミュニティー~LFT~」の毎月の定例会で時間が許す限りお話しする予定です。【5月8日13時半から東京八重洲ホール(東京駅より徒歩3分)】で、見落としがちな信託法務・税務に関するセミナーです。

LFT定例会では、LIVE形式で参加者同士ディスカッションしながら家族信託をはじめ、実際に生前対策スキームを構築します。LFTってどんなところ??実際にどのように多くの人はスキーム設計しているの??ということを実際に生で体験できます

※なお、参加希望の方は、同日9時半から開催する家族信託・生前対策提案力アップセミナーから参加したほうがお得です(^^)/
8名限定で会場参加にご招待します

詳細はコチラ
http://s-legalestate.com/lp/

ただ、当日は足を運べない、遠方の方等のために「WEB参加」というのもご用意しました!
ZOOMを活用した、動画配信になります。

参加者同士の討論はできないのですが、オンラインで参加できます当日参加できない方にもテキストの他、後日、動画視聴ができます
僕が主催する「家族支度・生前対策コミュニティー~LFT~」って何だろう??と思っている方も多いと思いますが、今回興味ある方は是非参加してみてください。
セミナーでは、実際の事例をもとに斎藤が考える家族信託・生前対策スキームの設計方法などどのように行っていくのか、最新の信託実務などが学べます

LIVE参加、WEB参加ともにご興味ある方は、下記リンクより確認、お申込みください (^^)/
https://lft2019-05.peatix.com/

次回をお楽しみに。


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