士業・専門家が生産緑地で見落としがちな税務のポイントとは!?

生産緑地

相続・生前対策の相談を受ける際に、所有する不動産のなかに農地がある場合には、法務・税務上の注意が別途必要です。

税務上の論点としては、当該農地が生産緑地に該当するのか該当しないのかとうことを判断する必要があります。特に市街地で農地を持っている際に気をつけるべきポイントとして、その農地が生産緑地に該当するかという確認が必要です。

今回の記事のポイントは下記のとおりです。

  • 生産緑地の税務上の特典は①固定資産税・都市計画税の減免と②相続税・贈与税の納税猶予制度の2つ
  • 生産緑地の指定により、固定資産税・都市計画税の減免措置を受けれるが、農地としての肥培管理義務や建築売却制限などを指定を受けた日から30年(30年経過後は10年ごと延長)又は主たる従事者死亡時まで拘束を受ける
  • 生産緑地においては、相続税の納税猶予制度を活用し農地の相続人が終身営農することにより、猶予された相続税の免除を受けることができる
  • 納税猶予を相続税は営農継続ができない事情が発生した場合には猶予されていた税額に加えて、相続発生時に遡り猶予期間の利子税を支払わなければならない
  • 生産緑地かどうか見分ける際は、納税通知書の評価額、納税猶予の抵当権登記、標識から判断する

今回の記事では相続生前対策に取り組む専門家が注意すべき生産緑地のポイントについて解説していきます。

生産緑地の要件と2つの税務上の特典

生産緑地

市街化区域内で農地を所有している場合、当該農地は宅地並み課税(近傍宅地の評価)が適用されてしまいがちです。そうすると、農業を経営するにあたって、毎年課税される高額な固定資産税・都市計画税の負担ができない、相続時に相続税の納税資金が用意できないといった問題が発生します。

そこで、一定の要件を満たす農地を都市計画に定め、建築行為等を許可制により規制し、都市農地の計画的な保全を図る制度として認められたのが生産緑地制度です。

生産緑地指定の要件
① 市街化区域内の農地であること
② 500㎡以上の一団の農地であること 
 ※市町村の条例により300㎡以上と定めることも可
③ 現在農地として適正に管理し、農業の継続が可能であること 
④ 良好な生活環境の確保に効用があり、公共施設等の敷地として適している など

上記の生産緑地の指定を受けることで下記の特典を受けることができます。

・土地の評価が農地として課税され固定資産税、都市計画税が安くなる
・相続税、贈与税の納税猶予を受けることができる

生産緑地の場合には上記2つの税金上の特典があり、これから生前対策や家族信託などを取り組む士業・専門家が落としてはいけないポイントでもあります。

勘違いしやすい点なのですが、この2つの制度は別の異なる制度であるということを頭に入れておく必要があります。固定資産税・都市計画税の減免措置の適用だけを受けて、相続税・贈与税の納税猶予制度は利用しないという選択をすることもできます。

法務上のポイントとしても、生産緑地(農地)の相続については農業委員会の許可は不要ですが相続人以外への特定遺贈に該当する場合には 農業委員会の許可等の手続きが必要だったり、信託契約を行うに際しても前提として宅地転用が前提となるなど法務上検討すべき課題が多々あります。

上記については別の記事でも詳しく紹介してますのでこちらを確認してみてください。

農地を信託財産とする際に検討すべきポイントとは!?

生産緑地を信託したいという相談の対応方法とは!?

士業・専門家が農地を遺言・信託契約する際に注意すべき4つのポイント

固定資産税・都市計画税の減免措置

生産緑地の指定により、農地評価を宅地評価から農地評価へと変えることができる結果、評価額が安くなることにより当然毎年継続的にかかってくる固定資産税及び都市計画税が大幅に軽減が受けられ、そして評価額が下がることにより不動産の名義変更に伴う登録免許税等の税額が安くなるという特典があります 。

減免措置

これが1つ目の特典である、固定資産税・都市計画税の減免措置です。
減免措置を利用することにより、農地をそのままの状態で保有し続けたいというニーズにおいては生産緑地の継続を検討できます。

ただし、生産緑地の指定を受けている間は、農地として管理する義務(耕作する義務)があり、建築物の建築や宅地造成等を行うに際に市町村長の許可が必要(原則:売れない、貸せない、建てられない、お金を借りられないとなり、生産緑地の指定の日から30年間を経過したとき(30年経過後は10年ごと延長)又は農業の主たる従事者が死亡・故障(※農業を営むことができない不可能な状態)時などでないと指定を解除する手続(買い取り申出)をとることができないといった拘束を受けます。

※農業従事者の故障
農業に従事することが不可能な故障は以下のとおりです(生産緑地法施行規則第 5 条)
一 次に掲げる障害により農林漁業に従事することができなくなる故障として市町村長が認定したもの
イ 両眼の失明
ロ 精神の著しい障害
ハ 神経系統の機能の著しい障害
ニ 胸腹部臓器の機能の著しい障害
ホ 上肢若しくは下肢の全部若しくは一部の喪失又はその機能の著しい障害
ヘ 両手の手指若しくは両足の足指の全部若しくは一部の喪失又はその機能の著しい障害
ト イからヘまでに掲げる障害に準ずる障害
二 一年以上の期間を要する入院その他の事由により農林漁業に従事することができなくなる故障として市町村長が認定したもの

なお、生産緑地制度における固定資産税・都市計画税の減免措置は、生産緑地の指定の解除を受けた場合でも相続税の納税猶予制度と異なり遡り課税はなく、解除を受けた翌年から宅地並みの課税を受けることになります。

相続税・贈与税の納税猶予

相続においては土地の評価額は固定資産税評価額ではなく、財産評価基本通達に基づく土地評価を行います。そのため、生産緑地の適用を受けて固定資産評価額軽減の適用を受けたとしては、当然には相続税評価額は安くはならないのです。

特に市街化農地である場合には評価額が高くなるため、相続税を支払うことができないという問題が発生します。そこで、生産緑地の指定を受けた農地については相続時に納税猶予を受けることができるという選択肢があります。

猶予

生産緑地であることの2つ目の特典である、相続税・贈与税の納税猶予制度です。

この納税猶予制度の利用は、生産緑地の相続人の判断で行うことができ、生産緑地のままで農地を相続し、納税猶予制度を受けず相続税を払うという選択肢も行うことができますし、そうではなく農地を今後も継続して終生営むという意向あれば相続税の納税猶予制度を活用し、農地の相続人が終身営農する(死ぬまで農業を営む)ことにより、猶予された相続税の免除を受けるという選択肢もあります。

注意をしなければならないのは、猶予を受けた農地の相続税は、あくまで猶予されただけであるという点です。営農継続ができない事情が発生した場合には、猶予されていた税額に加えて、相続発生時に遡り猶予期間の利子税を支払わなければならないというデメリットがあります。

相続税・贈与税の納税猶予制度を利用するか検討する際には、その相続人が生涯農業を営むのかという点も併せて確認したうえで遺産分割案・資産承継対策を検討することになります。

高齢の配偶者が相続するということであれば、終身営農も検討できるので選択肢の一つですが、子が相続する際には、長期にわたる終身営農を課せられることになるので慎重な判断が必要です。

生産緑地を見分けるべきポイント

相談時に相談者が所有している農地が生産緑地かどうか、見当する際のポイントは次の通りです。

・固定資産税の納税通知書(名寄せ)に記載されている評価額が周辺の宅地評価と比べて明らかに安い
・農地の不動産登記簿に財務省の抵当権登記が設定される
・生産緑地の指定を受けた農地には標識が設置される

固定資産税の納税通知書(名寄せ)に記載されている評価額が周辺の宅地評価と比べて明らかに安い

顧客から預かった固定資産税納税通知書(名寄せ)に記載されている農地の評価額が明らかに他の土地より安くなっているような場合には当該農地が生産緑地の指定を受けている可能性が高いです。

農地の不動産登記簿に財務省の抵当権登記が設定される

生産緑地について相続税の「農地の納税猶予の特例」の適用を受ける場合には、納税猶予税額および利子税の額に見合う担保の提供が必要であり、納税猶予を利用する場合には財務省が相続税と利子税を担保するため農地に抵当権を設定するため、登記簿から納税猶予制度を受けているかどうか判断することができます。

納税猶予登記簿

国土交通省北陸地方整備局HP:相続税納税猶予の適用を受けた農地所有者との交渉事例より引用

生産緑地の指定を受けた農地には標識が設置される

生産緑地の指定を受けると農地所有者に農地の適正管理が義務づけられ、農地には標識が設置されるため現地確認することにより判断することもできます。

生産緑地標識

横浜市HP:生産緑地地区についてより引用

上記を元に生産緑地かどうか見当をつけて、相談者にヒアリングしたうえで生産緑地かどうか最終的に判断してみてください。

まとめ

  • 生産緑地の税務上の特典は①固定資産税・都市計画税の減免と②相続税・贈与税の納税猶予制度の2つ
  • 生産緑地の指定により、固定資産税・都市計画税の減免措置を受けれるが、農地としての肥培管理義務や建築売却制限などを指定を受けた日から30年(30年経過後は10年ごと延長)又は主たる従事者死亡時まで拘束を受ける
  • 生産緑地においては、相続税の納税猶予制度を活用し農地の相続人が終身営農することにより、猶予された相続税の免除を受けることができる
  • 納税猶予を相続税は営農継続ができない事情が発生した場合には猶予されていた税額に加えて、相続発生時に遡り猶予期間の利子税を支払わなければならない
  • 生産緑地かどうか見分ける際は、納税通知書の評価額、納税猶予の抵当権登記、標識から判断する

生産緑地については、固定資産税・都市計画税減免措置の他、相続税の納税猶予を受けるのかなど、その子供世代等のライフスタイルにも関わるので慎重な判断が必要です。場合によっては生産緑地は継続し固定資産税は減免措置を受けるものの、納税猶予制度は利用せずに相続税を支払い、状況の変化に応じて生産緑地の指定解除後に売却をするというような動きも検討する必要があります。

1991年に生産緑地法が改正され、1992年に都市部の多くの農地が生産緑地に指定されました。相続税の納税猶予を受けている生産緑地(農地)については、営農義務・遡り課税(猶予税額+利子税)があるため売却はできないものの、納税猶予を受けていない生産緑地については売却ができるという状況になるのです。

農地については法務・税務の他、生産緑地の解除の不動産活用など横断的な判断が必要となってきます。各専門家と連携しながら顧客の問題解決にあたっていく必要ことが肝要です。

「2022年の生産緑地問題」が不動産に与える影響とその対策手法とは?

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地方圏に限らず大都市圏でも空き家問題が年々問題となるなかで、新たに多くの住宅用地が生まることによって地価が暴落する「2022年問題」として不動産業界に大きな影響を与えると取リ沙汰されています。見方を変えるとビジネスチャンスになりえるポイントになります。

私たち士業、専門家は、この「2022年問題」に対し、どのように準備し対応すべきなのか。不動産コンサルタントから見るビジネスチャンスとそれに伴う士業・専門家が行うべき不動産対策を交えた生前対策提案手法をプロサーチ株式会社 代表取締役社長 松尾企晴氏 に解説していただきます。

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待ったなし「生産緑地」2022年問題に向けて、どういう提案をすべきか?

三大都市圏(首都圏・近畿圏・中部圏)の生産緑地の総面積は1万ha以上あります。
2022年には、生産緑地の約8割が指定期間である30年の期限を迎え、相続対策の一環として多くの生産緑地が指定解除して宅地等へ転用することが予想されています。

しかし、都市農家の多くは高齢化・後継者不足の問題を抱えていることから、生産緑地の過半数が指定解除するでしょう。そんな中で、生前対策を行う士業・専門家はどのような取り組みをしていけばいいのか、士業・専門家が理解しておくべき生産緑地の考え方、営農義務など生産緑地制度の基礎から詳しく、税理士法人レディング 木下先生に解説していただいたセミナーです。

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