行政書士の独立開業するための資金や流れは?成功のためのポイントも解説

行政書士の資格があれば、独立して行政書士事務所を開業できます。未経験でも独立開業できるので、自分のペースで働きたいと考えている方にも行政書士は有用な資格といえるでしょう。

今回の記事のポイントは以下のとおりです。

  • 行政書士は未経験でも独立開業できるが、実務をある程度積んでからの独立が望ましい
  • 独立開業すると定年退職がなくなるため、年齢を気にせずキャリアを積める
  • 独立開業すると収入が下がるケースもある
  • 得意とする業務を絞り、SNSなどを使って積極的に広告活動することが成功のコツ

本記事では、行政書士が独立開業するために知っておきたいことをまとめて解説します。独立開業するメリットやデメリット、開業時に必要な費用の目安、成功のためのコツなどについても具体的に紹介します。ぜひご覧ください。

1.行政書士の独立は難しい?未経験からの独立について

行政書士とは、他人の依頼を受けて官公署に提出する書類を作成したり、遺言書などの権利義務や事実証明に関わる契約書を作成したりすることで報酬を得る仕事です。国民の生活に根付いた業務が多いため、必要性の高い職業といえます。

また、仕事柄、行政関連の手続きに熟知しているため、コンサルティング業務も担当することがあります。大手事務所や一般企業に勤務する行政書士も多いですが、独立開業して自営業者として働く行政書士も少なくありません。

1-1.行政書士は未経験からでも独立できる仕事

行政書士は資格取得後すぐに独立する例も多くあります。しかし、独立したからといって、必ずしも成功が約束されているわけではありません。

実際のところ、行政書士の収入は依頼者が支払う報酬で成り立っているため、依頼がなければ経営を維持することは不可能です。また、依頼者がコンスタントに仕事を依頼するとは限りません。一度だけ相談して関係は途切れてしまうことが多い場合、行政書士としての業務よりも宣伝活動に力を入れなくてはならなくなります。

このように、独立後の顧客開拓の難しさや失敗のリスクを考えるならば、未経験で独立開業するより、勤務を通じて実務経験を積み、独立したほうがリスクが少なく開業ができます。

1-2.独立行政書士に向いている人の特徴

実務経験を積んだとしても、独立開業に適した状態になるとは限りません。行政書士として独立するのであれば、独立に適した資質を備えていることが求められます。

独立開業に適している資質や特徴としては、次のものが挙げられます。

  • コミュニケーションスキルが高い
  • 失敗してもすぐに切り替えられる
  • 物事を実行するときに常に複数の道筋を考える
  • 自分で解決策を見つけられる
  • 1年以上は無収入でも耐えられる財力がある

独立開業して軌道に乗るまでは、事務員を置かずに1人で運営するケースも多いでしょう。実際の業務は当然のこと、問合せへの対応などもすべて1人で実施しなくてはいけません。コミュニケーションスキルが低いと、依頼者と話が続かず、次の案件につながらない可能性が高まります。

どれほど熟練した行政書士でも、対応を誤ることは想定されます。いつまでも失敗を引きずっていると、事務所の運営にも影響が及んでしまうでしょう。失敗してもすぐに切り替えられる性格で、なおかつ物事を実行するときに常に複数の道筋を考えておく用意周到さがあるならば、事務所の運営もうまくいきやすいと予想されます。

自分で解決策を見つける能力も不可欠です。独立開業した場合、事務作業などの細々とした業務はスタッフに代わってもらえることはありますが、報酬が発生する行政関連の業務は基本的には自分1人で対応しなくてはいけません。

また、すぐに顧客がついて経営が軌道に乗るケースは、それほど多くはないと考えられます。1年以上は無収入でも耐えられるほどの財力を蓄えてから、行政書士事務所を開業するようにしましょう。

2.行政書士の開業4つのメリット

行政書士としての実績をある程度積み、なおかつ紹介した資質・特徴を有している方なら、独立開業を検討してみてはいかがでしょうか。行政書士事務所を開業することには、次のメリットがあります。

  • 働き方を自分で選択できる
  • 扱える業務領域が広く、仕事を受注しやすい
  • 活躍の場が広がる可能性がある
  • 定年退職の心配がない

それぞれのメリットを説明します。

2-1.働き方を自分で選択できる

大手事務所や一般企業に勤務する場合、働き方を自分で選ぶことはできません。決められた時間に出社し、決められた場所で決められた仕事を行います。苦手な分野の仕事を任されても、余程のことがない限り、対応しなくてはいけません。

しかし、独立開業すれば、就業ルールはすべて自分で決められます。夜型の方であれば、11時~20時をビジネスアワーにしても問題ありません。また、残業は絶対にしない、平日を定休日にするなどのルールも可能です。

気分転換にカフェで仕事をしたり、引き受けたくない案件は断ったりするのも自由です。自分で働き方を決めたい方は、独立開業を視野に入れましょう。

2-2.扱える業務領域が広く、仕事を受注しやすい

行政書士は官公署に提出する書類の作成業務、手続きに対する相談業務、官公署への書類提出の代理業務など、幅広い業務に対応します。実際に、行政書士が扱える業務は1万種類以上あるともいわれており、仕事を受注しやすい状況です。

例えば、次の書類の作成や相談も、行政書士が対応できます。

  • 遺産分割協議書
  • 贈与契約書、売買契約書、賃貸借契約書、消費貸借契約書
  • 示談書、協議書、内容証明
  • 告訴状、告発状、上申書、定款
  • 各種議事録、会計帳簿、貸借対照表 など

2-3.活躍の場が広がる可能性がある

行政書士としてさまざまな案件に対応する中で、経験や知識を蓄積し、特定の分野における専門性を高められます。その経験・知識を書籍としてまとめたり、事務所ホームページのコラム記事として発表したりすることで、特定分野の専門家として社会的な認識を得られるようになるかもしれません。

また、セミナー開催の依頼を受けることや、書籍やウェブサイトの監修を任せられることもあるでしょう。このように活躍の場が広がり、実務以外においてキャリアが広がる可能性があります。

2-4.定年退職の心配がない

行政書士の仕事自体には、定年はありません。しかし、事務所や企業の「社員」として働く限り、定められた年齢になったら退職し、仕事を継続したい場合は別の仕事を探すことが必要です。

一方、自分で事務所を開業している場合なら、定年退職はありません。健康に問題がなければ、何歳でも働くことができます。実際に、行政書士としての実績は年齢を重ねるほど積み重なるため、若いとき以上に顧客に高いスキルと信用を提供できます。

3.行政書士の開業3つのデメリット

行政書士として独立開業することにはデメリットもあります。特に次の4つのポイントには注意が必要です。

  • 通常業務のほか事務所経営が必要になる
  • 業務領域が広すぎるため、全分野の専門知識の習得が難しい
  • 新規開拓が難しい
  • 収入ダウンの可能性がある

各ポイントがデメリットになる理由や、対処策について説明します。

3-1.通常業務のほか事務所経営が必要になる

社員として働く場合なら、与えられた業務だけをしていれば問題ありません。行政書士としての書類作成業務や相談業務などに専念すれば一定の評価を得られます。

しかし、独立して行政書士事務所を開業する場合、行政書士としての業務だけでなく、事務所の経営もしなくてはいけません。経理や事務、広告活動なども、すべて一挙に引き受ける必要が生じます。

経理や事務などに苦手意識がある方なら、専門のスタッフを雇うという方法も検討できます。ただし、人を雇用すると人件費がかかるため、広告活動に力を入れてさらに案件を多く獲得することが必要になるでしょう。

3-2.業務領域が広すぎるため、全分野の専門知識の習得が難しい

行政書士が扱う業務領域は広く、すべての業務において完璧に知識を習得するのはあまり現実的ではありません。そのため、依頼を受けても業務領域によっては、うまく対応できない可能性があります。

すでに得意とする領域が決まっている方であれば、その領域専門の行政書士事務所として打ち出すことがおすすめです。苦手とする業務をせずに済むだけでなく、特定分野の専門家として、依頼を受けやすくなります。

ただし、得意とする領域がニーズの高い分野ではない場合、依頼数が減り、経営維持が難しくなる可能性もあります。専門分野を打ち出すときは、ニーズの高さもチェックしておくことが必要です。

3-3.新規開拓が難しい

行政書士の仕事はニーズが高いとはいえ、誰もがいつでも必要としているわけではありません。また、すでに行政書士に仕事を依頼したことがある方なら、特に問題がない限り、継続して同じ行政書士に依頼すると考えられます。

そのため、新しく開業した行政書士が案件を獲得するのは容易ではありません。実際に案件獲得が難しく、経営を維持できずに廃業する行政書士事務所も多くあります。

3-4.収入ダウンの可能性がある

安定した給与を受け取れる会社員とは異なり、独立開業した行政書士の収入は、獲得した案件数の影響をダイレクトに受けます。最初のうちは収入がダウンする可能性もありますが、1年経っても、2年経っても事態が好転しない可能性もあるため注意が必要です。

なお、広告活動や営業活動は、すぐに効果が出るものではありません。効果が出るまで耐えられるように、1年ほどの活動資金と生活資金を貯めてから開業するようにしましょう。

4.いくら必要?行政書士の独立開業費用

行政書士として独立開業するときは、次の費用がかかります。

  • 行政書士登録料
  • 事務所の賃貸料
  • 備品代

それぞれの目安について見ていきましょう。

4-1.行政書士の登録料はおよそ30万円

行政書士として働くためには、行政書士試験合格後、行政書士名簿に登録することが必要です。登録料は都道府県ごとにある行政書士会を通して支払います。

なお、行政書士会ごとに登録料は異なりますが、30万円前後になることが一般的です。開業する都道府県の登録料については、行政書士会のホームページで確認しておきましょう。

4-2.備品代や賃貸料が必要

事務所を借りる場合は、賃貸料がかかります。最初は家賃と前家賃に加え、敷金、礼金、保証金などもかかるため、思わぬ高額になる可能性もあります。支払いが難しいときは、自宅で開業できないか検討してみましょう。

パソコンやコピー機、FAX、机、ソファーなどの備品代も必要です。また、行政書士は顧客の機密事項も扱うため、カギのついた書庫も用意しておきましょう。

5.行政書士、開業までの3ステップ

行政書士として開業するときは、次の手順で準備を進めていきましょう。

  1. 行政書士資格を取得し名簿登録する
  2. 実務でスキルを磨く
  3. 物件を探し備品を揃える

各手順を説明します。

5-1.行政書士資格を取得し名簿登録する

行政書士として独立するためには、行政書士資格が不可欠です。行政書士は学ぶ範囲が広く、しかも合格率が低い(令和4年度は12.13%)資格であるため、かなりの勉強量が必要になります。

行政書士資格を取得したら、次は名簿登録です。次の書類を準備して登録申請しましょう。

  • 行政書士登録申請書
  • 履歴書
  • 誓約書
  • 本籍地の記載された住民票の写し
  • 身分証明書

5-2.実務でスキルを磨く

未経験でも独立開業は可能ですが、独立後の安定を考えると実務でスキルを磨いておくことをおすすめします。行政書士事務所などに就職し、実務をできるだけ多く担当できる環境に身を置きましょう。

5-3.物件を探し備品を揃える

実務経験を積み、開業資金や運転資金、生活費などを貯めます。

充分に準備ができたうえで、事務所の物件探しです。事務所の立地は、専門的に行う予定の業務内容に合っているか吟味してください。賃貸契約を締結したら、備品を備え、開業日を決めましょう。

6.行政書士の独立開業、成功のための3つのポイント

行政書士事務所を成功させるためのポイントを3つ紹介します。

  • メインとして取り扱う業務を決める
  • Web広告やホームページ、SNSを活用する
  • セミナーなどを通し人脈を広げる

各ポイントを説明します。

6-1.メインとして取り扱う業務を決める

対応範囲が広いと顧客のニーズを取りこぼさないというメリットはありますが、他の行政書士事務所と差別化が図りにくい点が気がかりです。メインとなる業務を決め、専門家として打ち出すようにしましょう。

ただし、得意とする業務の顧客ニーズが低いときは、専門家として打ち出さず、オールラウンドな行政書士として宣伝するほうが良いでしょう。

6-2.Web広告やホームページ、SNSを活用する

すぐに集客効果を得られるとは限りませんが、オンラインで宣伝することにより長期的な集客を実現できます。まずは事務所のホームページを作成し、業務内容やアクセスなどの基本情報を公開しましょう。コストはかかりますがWeb広告を行うことで、ホームページが人目に触れやすくなります。

また、SNSでアカウントを作成し、役立つ情報を流すこともおすすめです。ホームページとも連携すれば、ホームページの流入経路を増やす効果も期待できます。

6-3.セミナーなどを通し人脈を広げる

地域の集まりやセミナーなどに参加し、人脈を広げることも必要です。行政書士の仕事は地域の人々との関わりで成り立ちます。時間はかかりますが、地道な活動を積み重ねて人脈を広げていきましょう。

7.まとめ

本記事では、行政書士の独立開業について解説しました。内容をまとめると、以下のとおりです。

  • 行政書士は未経験でも独立開業できるが、実務をある程度積んでからの独立が望ましい
  • 独立開業すると定年退職がなくなるため、年齢を気にせずキャリアを積める
  • 独立開業すると収入が下がるケースもある
  • 得意とする業務を絞り、SNSなどを使って積極的に広告活動することが成功のコツ

独立することによって、より自由度の高い働き方を実現できます。プライベートを充実させたい方も、独立開業という選択肢を検討してみましょう。

しかし、独立して働く行政書士は多く、地域によっては飽和状態にあり、新規案件の獲得が困難なケースも多いです。事務所を開くときは、周囲に競合となる事務所がどの程度あるのか、個人・法人のどちらの依頼が多そうなのかなど、丁寧にエリアをリサーチしておきましょう。

また、ホームページやSNSを使って宣伝することも必要です。専門性を打ち出し、独自性のある行政書士として差別化を図っていきましょう。

次の士業・専門家のビジネスモデルを構築するには!?

士業は、資格という安定した肩書があるからこそ、国民に広く信頼されており今の士業という仕事があります。

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