近年、ChatGPTに代表される生成AI(人工知能)ツールが急速に発展し、話題になっています。士業の先生方の中には「AIに仕事を奪われるのでは?」と不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際には、AIは上手に活用すれば業務効率化の強い味方になり得ます。
私自身も最初は半信半疑でしたが、現場で試してみると単純作業の時間が短縮され、お客様対応や専門的な判断により多くの時間を割けるようになりました(正直、もっと早く使ってみれば良かったです…笑)。なお、今回の記事のトップ(アイキャッチ)画像もAIで作成しています(笑)。
本記事では、司法書士をメインに行政書士・税理士などの士業の先生方に向けて、AIを活用した現実的かつ前向きな業務効率化策を具体的に紹介します。AI導入の第一歩として役立つ活用例を5つ取り上げます。
今回の記事のポイントは下記のとおりです。
- 文章作成やリサーチ業務の効率化 – ChatGPT・Gemini・Perplexity などAIチャットボットを使って書類作成の下書き作成や法律調査をスピーディーに行う
- 国際業務・翻訳対応の強化 – DeepLを活用し、在日外国人クライアントとのコミュニケーションや海外資産に関する書類の翻訳をスムーズに行う
- 紙資料のデジタル整理 – PDF・画像ファイルをOCRで読み取り、契約書や登記関連書類をデジタル化・分類して情報検索を容易にする
- 契約書等のレビュー支援 – AIに契約書等のチェックを補助させ、見落とし防止やリスク条項の洗い出しに活用する
- 専門知識のデータベース化 – 家族信託など専門性の高い分野の知識をAIで蓄積・共有し、チーム内の迅速な情報提供や提案力向上に役立てる
それぞれのポイントについて弊社の現場目線で詳しく解説していきます。
目次
AIで文章作成・調査業務を効率化する(ChatGPT・Gemini・Perplexity)
業務で作成する書類や調べ物に要する時間を、AIで大幅に短縮できます。ChatGPTをはじめ、GoogleのGeminiやPerplexity AIなど高性能なチャットボットを使うと、文章の下書き作成から情報収集までスピーディーにこなせます。例えば、以下のような活用法があります。
書類やメールのドラフト作成
遺産分割協議書、遺言書、任意後見契約書や信託契約書のひな型、顧客への説明資料、業務報告書、メールなどの下書きをChatGPTに作成させます。口語調で入力すればビジネス文書らしい文体に整えてくれるため、ゼロから書く手間が省けます。キーボードで手打ち入力しなくても、今はスマホのマイクによる音声入力でかなりの精度で文字入力ができます。
実際に、ある税理士事務所ではChatGPTを使って月次報告書の作成時間を約60%削減できたという声もあります。下書きをAIに任せて、細かな調整や専門的な内容の確認に注力できるイメージです。
法律や手続のリサーチ
新しい法改正のポイントをまとめたり、過去の判例や事例を調べたりするときにもAIが便利です。Perplexityのようなツールはインターネット上の情報を引用付きで提示してくれるため、信頼性の確認もしやすくなります。
例えば、「成年後見人 報酬 相場」「家族信託 税務 留意点」といったキーワードを入力すれば、関連する情報を短時間で整理できます。調査にかかる時間を減らし、その分をクライアントへの提案資料作成など付加価値の高い業務に充てられるでしょう。
もちろん機密情報の取り扱いには注意が必要です。公開型のChatGPTに機密性の高い案件詳細を入力するのは避け、要点を抽象化して質問する、あるいは企業向けのセキュリティに配慮したサービスを利用するなどの工夫が大切です。AIの回答も鵜呑みにせず、最終確認・判断は先生方ご自身で行うようにしましょう。
AI翻訳で語学の壁を越え、国際業務・外国人対応に活かす
国際業務や外国人クライアントを扱う機会がある士業の先生方にとって、DeepL、Google翻訳などのAI翻訳は心強いツールです。専門用語が多い法律・税務分野でも、DeepLは高精度な翻訳結果を出せることで定評があります。英語はもちろん、中国語や韓国語など多言語に対応しているため、国際業務対応の幅が広がります。
契約書や証明書類の翻訳
外国人が日本の不動産を所有するなどの相続案件や国際取引に関する業務で、現地の証明書や宣誓供述書を預かった場合でも、DeepLに文章を入力もしくはファイルを登録すれば短時間で日本語訳を得られます。人手で一から翻訳するより格段に早く、内容の概要把握がスピーディーにできます。逆に日本語から英語への翻訳もワンクリックですので、英文契約書のドラフト作成にも活用できます。
細かなニュアンスについては専門家によるチェックが必要ですが、下訳として非常に優秀です。
外国人とのコミュニケーション
行政書士の先生であれば在留資格(ビザ)申請のサポートなどで外国人クライアントとやり取りする場面があります。DeepLを使えば、相談メールの英文への返答や外国語書類の読解がスムーズになります。「母国語ではないので対応に時間がかかる…」と敬遠しがちだった案件も、自信を持って引き受けられるようになるでしょう。
語学力に自信がない場合でも、AI翻訳を下支えにすることで国際業務へのハードルがぐっと下がります。今まで対応できなかった層の顧客開拓にもつながるかもしれません。
AIでPDF・画像をOCRで読み取り、契約書・登記関連書類を効率的に整理する
紙ベースの資料が多い士業の業務では、OCR(光学文字認識)技術を使ったAIによるデジタル化が有効です。これまで手入力していた情報も、AIに読み取らせれば一瞬でテキスト化でき、書類管理や内容整理の工数を減らせます。
契約書や登記情報等のデジタル化
紙の契約書、役所から取り寄せた登記事項証明書、評価証明書、宣誓供述書など、スキャンしたPDFやスマホ撮影からの画像ファイルをAIチャットボットに登録することで読み取ってテキストデータ化します。
例えば、登記事項証明書の情報をOCRで読み出し、そのまま財産目録の素案に転記するといったことも可能です。書類を山積みにして睨めっこしながら入力する作業から解放されます。
文書内容の検索と要約
OCRで文字データに起こしてしまえば、後からキーワード検索で該当箇所を瞬時に見つけることができます。多数の契約書から特定の契約条項や日付を探す場合でも、人手でめくる必要はありません。また、抽出したテキストをChatGPTのような生成AIに読み込ませて要約させたり、重要事項のリストアップを依頼したりすれば、大量の書類も短時間でポイントを把握できます。「膨大な紙資料に埋もれて必要な情報を見逃す」というリスクも減らせるでしょう。
このようにAIを使ったデジタル整理を進めれば、事務作業の負担が減り、紙資料中心の働き方から脱却できます。電子データ化しておけば在宅や出先からでも資料を確認できるため、業務の柔軟性も高まります。
契約書等レビューにAIの力を借りる
契約書等のチェック業務にもAIを取り入れることで、ヒューマンエラー防止と作業時間短縮が期待できます。近年は法律事務所向けの本格的なAI契約書レビューサービス(例えばLegalForceなど)も登場していますが、中小規模の事務所や個人の士業でも、まずはChatGPTなどで気軽に試せる範囲から活用してみると良いでしょう。
リスク条項の洗い出し
契約書において不利になりかねない条項や抜け漏れている可能性がある項目を、AIにチェックしてもらいます。契約書全文をコピーしてChatGPTに入力し、「重要なポイントやリスクになりそうな条項を指摘してください」と指示すれば、いくつか問題点を列挙してくれるでしょう。自分では見落としていた視点を提示してくれることもあり、ダブルチェックとして有用です。
条文の要約と平易化
通達や文書回答事例など、お客様に説明する際に難解な法律用語が並ぶ文書については、AIにわかりやすい要約を作ってもらう方法もあります。弊社の業務では頻繁に司法書士会から新しい法務局通達などのPDFがメール等で届きます。これをいちいち読み取るのではなく、ファイルをAIに読み込ませ「専門外の人にも理解できるように要約してください」と依頼すれば、ポイントをかみ砕いた説明文が得られます。士業の先生が内容を把握する上でも、新人スタッフの教育用資料としても役立つでしょう。
AIのレビュー結果をそのまま鵜呑みにするのは危険ですが、「見落としがないか再確認する補助者」としてAIを位置付けると安心です。ChatGPTでできあがったものを再度、他のGemini、PerplexityなどのAIでダブルチェックする、最後は必ず自分の目でチェックする前提で使えば、品質を担保しつつ時短が可能になります。
専門分野の知識ベース構築にAIを活用する(家族信託の事例)
業務分野によっては高度な専門知識が要求されますが、そうした知識の社内共有・蓄積にもAIが役立ちます。例えば近年注目されている家族信託の分野では、新しいスキームや法律の解釈など覚えることが多く、体系的に知識を整理するのが大変です。
AIを使って独自の「知識ベース」を構築しておけば、必要な情報にすぐアクセスでき、提案資料作成や顧客対応のスピードアップにつながります。
Q&Aデータベースの構築
過去の相談事例や蓄積したノウハウをAIが参照できるようにデータ化します。
具体的には、家族信託に関するよくある質問と回答集、関連法令や判例の要約、自社で作成した提案書や契約書のひな型などを一つのデータベースにまとめます。弊社の場合は、私が書いた書籍、ブログ、そのほか講演資料などすべて社内用のデータをまとめ、社内向けにそのデータベースを質問できるチャットボットを用意しています。例えば「不動産融資つきのアパートを信託財産とする受益者連続型信託で留意すべき点は?」「〇〇のようなケースで家族信託と遺言を併用するメリットは?」といった問いかけに対し、蓄積データをもとにAIが回答を返すようにしておくイメージです。新人スタッフでもAI経由で先人の知恵にアクセスでき、業務知識の底上げになります。これにより部下から私への質問も私の経営者として判断すべき事項に絞られるなど質問時間も大幅に削減でき、業務効率化に寄与しています。
最新情報の自動アップデート
関連するニュースサイトや官公庁の情報源をAIに定期チェックさせ、自動で要約レポートを作成することも可能です。家族信託に限らず、税制改正やビザ制度の変更など、専門分野の最新動向をキャッチアップするのは時間がかかりますが、AIにモニタリングと要点整理を任せれば漏れが減ります。定期的に届くAIレポートを読めば、大事な情報を見逃さずにすみ、常にアップデートされた知識をクライアントに提供できます。
このようにAIを知識インフラとして活用することで、個人の頭の中にあった知見を組織全体で共有しやすくなります。属人的になりがちな専門サービスに厚みを持たせ、誰でも一定水準のサービス提供ができる体制づくりにも寄与するでしょう。
まとめ
AI活用による業務効率化のポイントを5つ紹介しました。改めて内容を振り返ってみましょう。
- 文章作成やリサーチ業務の効率化 – ChatGPT・Gemini・Perplexity などAIチャットボットを使って書類作成の下書き作成や法律調査をスピーディーに行う
- 国際業務・翻訳対応の強化 – DeepLを活用し、在日外国人クライアントとのコミュニケーションや海外資産に関する書類の翻訳をスムーズに行う
- 紙資料のデジタル整理 – PDF・画像ファイルをOCRで読み取り、契約書や登記関連書類をデジタル化・分類して情報検索を容易にする
- 契約書等のレビュー支援 – AIに契約書等のチェックを補助させ、見落とし防止やリスク条項の洗い出しに活用する
- 専門知識のデータベース化 – 家族信託など専門性の高い分野の知識をAIで蓄積・共有し、チーム内の迅速な情報提供や提案力向上に役立てる
どの取り組みも、AIを『先生方のアシスタント』に据える発想がポイントです。最終的な判断や創造的な業務は人間ならではの役割ですが、その前提となる情報整理や下調べをAIに任せることで、より専門家としての本領を発揮できる時間を生み出すことができます。
まずはできる範囲で構いませんので、ChatGPTで明日の業務メールの下書きを作ってみる、DeepLで手持ちの英文契約書を翻訳して概要を掴んでみる、といった小さな一歩を踏み出してみてください。最初は戸惑うかもしれませんが、使っていくうちに「これは便利だ」と実感できるはずです。【現実的かつ前向きなAI導入】が、先生方の事務所の生産性向上と新たなサービス機会の創出につながることを願っています。
家族信託・生前対策相談を継続的に獲得するには?
コロナになってからオンライン事業が拡大し、仕事の仕方や家での過ごし方など、さまざまな点で変化が訪れています。こういう大きな過渡期に自分のビジネスを見直すということ。どの経営者でもビジネスマンでも必ずやっていることだと思います。
リーガルエステートも今この転換期にどのように時代に合わせたサービスやビジネスを構築しているのか。それを日々考えているところです。士業・専門家はこれまで手続き代行業務で生計を立ててきました。しかし、今、時代は情報社会。手続き的なものは一瞬にしてWEBメディアで調べ、少し難しい物でもできてしまいます。
では、なぜ顧客は士業・専門家に相談するのでしょうか?
士業・専門家へ依頼するその価値を私達は常に考えなければなりません。
高齢化社会がさらに加速する日本において、多くの人が直面する「認知症問題」や「少子化問題」。
ご家族ごとに状況や家族構成、ご要望が違うことに対し「私はどうやってやればいいのか」というコンサルティングを考えていく。その中でどのように「家族信託」や「成年後見」など生前対策のご提案を提供していくのか、です。
求められているものは、「ご家族円満」。家族信託は一手法です。そのお客様への一つひとつの考え方が家族信託400件の受任につながっている。僕はそう考えています。
見つめ直すきっかけとして、是非本セミナーをご活用ください。
下記のような方にお勧めです。
・税金や不動産は専門外で、何が問題となるのか、どのようにお客様に伝えたらいいのか分からない…
・遺言や家族信託はしたが、不動産や税金対策までは見ておらず問題ないのだろうか?
・家族信託など生前対策の実務は学んだが、集客ができない…
家族信託・生前対策受任力アップセミナー
セミナーでは下記の内容を伝えています。
- 相続・家族信託のマーケットの状況
- 士業・専門家業の時代の流れと高収益生前対策案件受任の発想方法
- 家族信託、任意後見、遺言など生前対策提案の活用方法
- 生前対策・家族信託コンサル業務における商品設計のコツとは
- 生前対策・家族信託相談からの不動産提案のポイント
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