士業ビジネスのDX化って何から始めればいい?改善できる4つのポイント

コロナ禍の影響で、今までオンライン・デジタルを利用していなかった方が利用するようになってきました。ビデオ会議やチャットツールなど、企業での活用の他、家族での連絡においても高齢者がスマホを利用し、子や孫とのやりとりにLINEでビデオ会議やチャットでコミュニケーションをとるようになっています。

最近は、私の事務所でも電話での受電対応も電話代行会社を利用し、チャットで伝言内容を送ってもらうことで、業務効率も格段に上がりました。

便利なオンラインツールの利用が一般にも普及し始め、顧客がデジタルツールを使い出しているので今こそ、事務所のデジタル化を進めるべきタイミングです。デジタル化をすすめることで、箱としての大きな事務所の用意や書類管理や作業などの事務所家賃、人件費などを経費削減できるメリットがあります。

今回の記事のポイントは下記の通りです。

  • コロナウィルスの影響から、顧客がチャットサービスなどデジタルツールを使い始めている今こそ、事務所デジタル化のチャンス
  • 事務所のデジタル化のポイントは、①リモートワークに対応できるデバイスの準備、②コミュニケーション、③資料管理、④クラウド化されていない業務ソフトの対応方法の4つ
  • 仕事を仕分けして、社内で行う仕事、外部で出来る仕事にわける
  • 経営者から始めなければ、リモート化は進まない

今回の記事では、士業がどのように事務所経営でデジタル化を取り組んでいくのか、その方法について解説します。

士業が事務所・オフィスをDX化できる4つのポイントとは?

従来の事務所としての場所に求められてきた機能は、概ね下記のようなものです。

・事務所での面談などコミュニケーション
・事務所で郵送受領
・事務所の固定電話で電話
・事務所のOA機器でFAX送受信
・事務所のPCでメール送受信

これらは、全て事務所という場所が前提となる話です。この方法を採用し続けると事務所での勤務が前提となり、リモートワーク、そして在宅勤務へと移行することはできません。

私は上記に掲げた「事務所での面談」「事務所で郵送受領」については、士業事務所特有の重要な書類の取り扱いなど公的書類管理の制約から公的書類がデジタル化されない限りなくならないし、個別面談も顧客との初回の信頼関係構築の場としてこれからも必要な要素となるでしょう。しかし、それ以外の部分については事務所という場所がなくても十分成立します。

そこで、私はデジタル化するためにおいて検討できる士業ビジネスのポイントは下記の4つと考えています。

・リモートワークに対応できるデバイスの準備
・コミュニケーションをアナログからデジタルに変える
・資料管理
・クラウド化されていない業務ソフトへの対応

私の事務所のスタッフには女性の子供がいるスタッフが多くおり、自宅で勤務するスタッフもいます。そのため事務所に常時いるのは、4名前後です。フレックスタイム制度を導入し、社員、パートを含め各スタッフが、午前出勤し午後は在宅、午前在宅から午後出勤、月曜日は出勤・火曜日は在宅などなど、持ち回りで出勤しています。

特にこれからの時代は少子高齢化の影響から人材採用などが難しくなってきます。働きやすい勤務体制の整備が求められるなか、事務所のデジタル化は避けてはいけない事務所経営のポイントです。

デジタル化を目指すにあたって何から取り組んでいくべきか、具体的にどのように置き換えられるか?私の事務所の事例を踏まえてお伝えします。

(1)リモートワークに対応できるデバイスの準備

リモートワークを実現するためには、スタッフが利用するPCをデスクトップからセキュリティ対策導入済みのノートPCに切り替えることが前提です。そして、各種書類をクラウドで管理、個人情報漏洩の防止のために、ダウンロードにも制限をかけるなど必要な対策は施した上で、ノートPC,スマホ、タブレットなどを活用してどこでも働ける環境をつくることが必要です。

 

スマホなどを入退社のたびに用意するのが負担であれば、スタッフ個人のスマホを代用する方法もあります。スタッフ個人のスマホにビジネス用の電話番号を付与し、電話代を事務所負担でできるサービスもあるので、そういったサービスを利用すればデバイスにかなコストを削減できます。

いざ、実際にデバイスの準備をすすめ環境設定しても、リモートワークを運用する際にスタッフ側からWi-Fiなどの通信費や自宅の電気代などの負担などの反対意見がでてしまいデジタル化を進められないことがあります。私の事務所では、毎月一定額の通信手当をスタッフに一律支給しています。通信手当として支給し、スタッフの判断において自宅でリモートワークする環境整備してもらっています。リモートワークができる環境をつくることで顧客との面談などビデオ会議がどこからでもできるようになることで確実に交通費や移動時間が削減でき、結果的に経費削減できます。トータルで考えると、通信手当の方が絶対安いので、手当を別途支給するほうがベストだと思います。

(2)コミュニケーションをアナログからデジタルに変える

事務所でなければできなかった、電話・メール・FAX・スケジュール管理などもデジタル化を進めることでどこからで対応できる環境を作れます。

電話問い合わせ→電話代行会社

自社の顧客がエンドユーザー(BtoC)がメインなのか、それとも紹介先からの案件開拓(BtoB)なのかによって判断が迷う部分です。顧客ごとにきめ細かい応対を提供したいという経営者の意向は私も過去そうだったので理解できます。

ですが、契約書を起案する、生前対策スキームを考えるなど”考える仕事”をやるためには仕事に集中できる時間が必要です。どうしても電話によって集中力を妨げることになり、また、作業も一度リセットして戻るといったように効率性が下がります。

コールセンターを自社でつくれるような大規模事務所であれば問題ありませんが、中小規模の事務所の場合には、電話対応の務所に在籍するスタッフの人数を用意することは難しい状況です。そこで、電話対応も電話代行会社を利用して、初期受付と事務所担当者からの折り返しを顧客に伝え、伝言内容を直接事務所担当者にチャットで伝える仕組をつくれば、事務所担当者のタイミングで連絡を顧客と取れます。私の事務所でも導入して1週間様子をみましたが、電話代行という理由での顧客からのクレームはありませんでした。

電話代行のメリットとしてすべての伝言内容が見える化できるため、どんな電話問い合わせ内容が多いのかという内容と問い合わせが多い時間帯、件数などが全て可視化され、経営者が分析できるようになります。

電話での継続相談、メール→チャットツール、電話代行

LINE、Messenger、Chatwork、slackなどのチャットツールを使いこなすことにより、下記メリットが得られます。

・お互いに時間を合わせないと連絡がつかない 
 →気軽に連絡がつく
・移動経費・時間がかかる 
 →どこでも相談できる
・情報が共有できない 
 →グループで共有できる
・言った言わないになる 
 →ログが残る
・面談のアポがとれない 
 →ビデオ会議ができる

ビジネス利用では、Chatworkやslackなどビジネス用チャットツールを使い始めている企業が増えており、エンドユーザーも高齢者も含め多数の方がLINEなどの利用しています。そのため、チャットツールを使ったコミュニケーションができる環境ができているのです。

私の事務所では有料版のChatworkを活用しており、顧客との初回個別面談後は、LINEやChatworkを活用してグループチャットを事務所スタッフ(私を含む)と顧客間で開設しています。グループチャットを活用してコミュニケーションをとることで電話やメール、FAX、書類送付などの時間を削減でき、顧客との間でスタッフがどのように対応しているのか、進捗把握しています。多くの方がLINEをはじめチャットツールを使い始めているので、顧客に今後の連絡や面談方法をチャットツールで対応したいとお願いすれば導入できます。

チャットツールが利用できない顧客に対してメールで対応する際も、Gmai、Yahoo!メールなどクラウド環境で送受信できるようにしておけば、ノートPC、スマホ、タブレットなど各種デバイスでチェックできるようになります。

FAX→メール転送

FAXについても、複合機や各種ツール設定により、会社の共通メールアドレスに転送可能です。また、今はインターネットを通じたFAX送受信サービスもあります。全てのFAX送受信メール転送、デジタル化することにより、どこからでもFAXの受信内容を見られます。

スケジュール管理 →Googleカレンダー

事務所全体のスケジュール管理などは、Googleカレンダーなどで十分対応できます。
スタッフの勤務予定や顧客との面談予定などすべて事務所スタッフ全員が共有できるGoogleカレンダーに登録することで事務所全体のスケジュールを管理できます。

(3)資料管理をデジタル化する

事務所PCの共有フォルダ、書庫での資料保管からbox、Dropbox、Googleドライブなどオンラインでのクラウドストレージサービスァイル保管サービスへ資料保管方法を変えることで下記のようなメリットが得られます。

・書類を作成・取得したら、事務所のPC・サーバに保管
 →外出先からでも資料の閲覧・ダウンロードができる
 →メンバー間で共有・共同編集ができる
・外部作業はUSBに入れるか個人アドレスにメール添付
 →PC・USBの紛失による情報漏洩の心配がない
・印刷してファイリングし、事務所の棚に保管
 →そもそも印刷する必要がない
・顧客とはメールの添付ファイルで共有
 →URLを送るだけで顧客がダウンロード・閲覧できる。
・履歴管理(どれが最新版か)が混乱する
 →最新のバージョン管理ができる

クラウドストレージサービスを利用することで事務所内だけでなく、自宅や外出先、顧客先からでも資料を見られます。

士業サービスは顧客の問い合わせに対して過去扱った案件資料を確認する機会がよくあります。事務所内の書庫に保管するとなると保管するスペースの用意、資料の捜索などのコストと時間がかかります。過去取り扱った資料をPDF化し、クラウドストレージサービス内で保管しておけば、顧客名や事件番号など検索できるため、今まで資料探しに数十分かかっていたことも、数分で資料を探せるようになります。

このように資料作成や管理、検索などに関して大きな業務効率化が図れるため現物資料の保管からクラウドストレージサービスへの移行は早めに行うべき施策です。

(4)業務ソフトをリモート化する

普段、業務使用しているソフトがクラウド化していれば問題ないのですが、士業が使用する業務ソフトがクラウド化されていないため、在宅勤務ができないという場合があります。

クラウド化していない業務ソフトを使用するためには、業務ソフトをインストールしている事務所PCを操作するためにVPN接続できる環境を構築する、外部からリモートコントロールする環境設定が必要です。リモートコントロールできるように設定すれば、外部から業務ソフトを使用できます。

TeamViewerなどリモートデスクトップの接続ができるソフトを利用するなど初月無料から試せる各種ツールもあるので、自分の事務所にあったリモートデスクトップ接続を検討してみてください。

これまで、デジタル化するためのコツをお伝えしましたが、一つのツールだけで設定することはできません。自分の事務所にとって使いやすい複数のツールを“組み合わせる”ことで、低コストで自社にあった仕組みを構築できます。

事務所と外部で行う仕事の仕分けする

士業の仕事の中でも事務所内で行わなければばできないものとしてらないものとして公的書類の管理があります。

例えば、私のビジネスである司法書士業務では、戸籍や登記識別情報の管理など、どうしても事務所でないとできない仕事というのがあります。戸籍を集めるために、職務上請求書を活用して請求するということも個人情報等の取り扱い、各種業務規制から、事務所外に持ち出しできません。

特に事務所のデジタル化をすすめる、その中でもリモートワークを制度化する際には、事務所内で行う仕事と事務所外で行える仕事の2つに仕事の仕分けが必要です。事務所作業は事務所のみ、外部作業でできる仕事については、事務所内、外部どちらでも働くことも認めています。仕事の仕分けについては下記のようなイメージです。

【事務所作業】
・郵便局から送られてくる書類対応
・識別情報などお客様への返却
・戸籍、残高証明などの請求、管理
・書類の組み立てなど書類ベースで行う仕事

【外部作業】
・HPなどの編集
・提案書、信託契約書、遺言書案の起案
・顧客対応(訪問、ビデオ会議、メール、チャット、電話など)
・セミナー運営の準備
・申請書など業務ソフトの使用(書類の組み立て除く)

書類対応と顧客対応は事務所内で行い、それ以外の作業は外部で行うことを認めています。その結果、スタッフが自分の抱えている仕事と優先順位を考慮し、事務所内、自宅など外部と環境を変えて仕事をしています。特に士業サービスは個人情報を多く取り扱うなどの特性があります。どこまでが外部でできるのか、その判断基準をつくり運用していくことが必要です。

デジタル化は経営者から始めることが重要

どんなにいい制度、環境をつくったとしても、実際に仕組みが動くかどうかは、結局のところ、経営者の決断と行動、次第です。経営者がやらなければ誰もやりません。まず、自らが行動して手本を見せ、その方が効率的だと感じた一部リーダー、スタッフが後に続いて行動する、そうすることで他のスタッフも動くようになります。まず、自らの環境をリモート化し、一週間のうち、数時間、数日と試してみて下さい。やっているうちに、これまで無駄な移動時間、電話対応などしている時間がこんなにあったのかとわかるはずです。事務所のデジタル化のメリットを感じることで、事務所全体に導入が進んでくるはずです。

まとめ

  • コロナウィルスの影響から、顧客がチャットサービスなどデジタルツールを使い始めている今こそ、事務所デジタル化のチャンス
  • 事務所のデジタル化のポイントは、①リモートワークに対応できるデバイスの準備、②コミュニケーション、③資料管理、④クラウド化されていない業務ソフトの対応方法の4つ
  • 仕事を仕分けして、社内で行う仕事、外部で出来る仕事にわける
  • 経営者から始めなければ、リモート化は進まない

私も土日しか相談対応できない顧客も初回面談は信頼関係を構築するために面談しますが、2回目以降は、ビデオ会議を利用して、自宅から相談対応するなど、土日の事務所出社やお客様宅訪問から解放されるようになりました。

そういった意味でも、事務所の場所としての役割が信頼関係構築の場へと変わったと実感しています。

冒頭にも述べたように、各種ツールを活用することで、事務所に残る機能は顧客との信頼関係をつくる面談と郵便物の受領だけになると私は考えます。そうすると、人が働くスペースを確保するという意味での大きな場所を借りる必要がなくなっていきます。

特に、士業は業務の性質上、店舗、設備や在庫などを保管するという場所の制約が他の業界に比較すると少ないので、デジタル化しやすい環境が整っています。いまあるやり方を変えるというのは勇気があることだし、慣れ親しんできた仕組みを変えるのに抵抗を覚える、オンライン化に抵抗があるという気持ちは理解できます。

デジタル化を導入できない理由として、社内のスタッフの反発を恐れると導入できないという経営者の心理が考えられます。デジタル化できれば、電話の取次、面談のための移動時間、資料管理など、多くの時間と人手を削減でき少ない人員でも、空いた時間でどの場所でも働けるようになります。しかも、顧客も受け入れてもらえる素地も整いつつあります。皆さんのビジネスの全てを一気に変えることはできなくても、少しずつ変えていくことを是非検討してみてください。

次の士業・専門家のビジネスモデルを構築するには!?

士業は、資格という安定した肩書があるからこそ、国民に広く信頼されており今の士業という仕事があります。

その反面、どうしても資格という枠に捉われ過ぎがちな面があり、本当は色々できるのに、チャレンジできる土台があるのに、〇〇士は〇〇いう業務しかできないという、自分の枠を狭めてしまっていがちです。そして、ある程度、地域の信用を得て仕事を受注できるようになると、「こんなものでいいかも・・・」と思い込んでしまい、小さくまとまってしまいがちです。でも、本当は先人たちがゼロから築きあげた資格、その信用があるから今があり、次の時代の士業につないでいく責任があります。

インターネットが普及し、民間会社がリーガルテックの分野に参入してくるなか、士業はそのまま何もしないでやられっぱなしでいいのか??そんな訳はありません。

なによりも危険なのは変化をしないこと、新たなチャレンジに勇気をもって踏み出せなくなることです。

チャレンジするということは、当然、失敗する可能性も含まれます。
でも、失敗して失うものなど、たかが知れています。

今後、我々は時代の流れを受けてチャットツールやZoomなどオンラインの仕事の進め方を本格的に学んでいく必要性があります。

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