あなたはできている?士業・専門家事務所経営の3つのポイント

マネジメント

コロナが冬に向かい気温、気候の変化に伴い感染者数が増えているとマスコミの報道が連日されています。

相続や生前対策を取り組む専門家の仕事はどうしても高齢者に対するコンサルティングが伴うので、僕もそうですが信託契約を一旦止めたいと言ったようなお客様の声も出てきており、ここからしばらくは5,6月と同様に問い合わせが一旦止まることも想定されます。

そこでこういった時期だからこそ考えておきたいのが、事務所のマネジメントです。
士業・専門家サービスはどうしても原価がないからこそ、どんぶり勘定になりやすい側面があります。僕もそうでしたが、例えば忙しくなってきたから人を雇う、OA機器や業務ソフトなど、設備投資をその場の雰囲気でしてしまいがちです。

でも、本当はその時点でどれくらい利益が出る見込みがありどのように経費を活用していくのか、そして、人を採用し事務所を拡大していくのか、といったことをちゃんと計算して計画を立ててやっていく必要があるのです。

今回の記事のポイントは下記の通りです。

  • 士業・専門家事務所で押さえておくべき会計の要素は、平均単価、販売個数、変動費、売上総利益、固定費、経常利益の6つ
  • 士業・専門家事務所では、仕入(原価)がないため、売上高(平均単価×販売数量)がそのまま売上総利益になる
  • 仕入がない士業・専門家サービスは固定費=損益分岐点と考えて経営をすればよい
  • 利益を出すには、平均単価、販売個数、固定費の3つを意識してマネジメントを行うべき

今回の記事では士業事務所のビジネスにおける経費の考え方と利益の作り方についてお伝えします。

士業事務所を経営する際に押さえておくべき会計の6つの要素

ファイナンス

士業・専門家事務所で会計を考える際の要素とすると、次の6つがあります。

・平均単価
・販売個数
・変動費
・売上総利益
・固定費
・経常利益

以下、それぞれを解説します。

平均単価

平均単価とはその事務所が提供するサービスの単価の平均価格を指します。例えば遺言や家族信託、相続手続きなど諸々のサービスがあると思いますがそれらのサービス単価の平均値です。

販売個数

販売個数は、1ヶ月または1年などの期間内にその事務所が顧客に対して、各種サービスを提供した数です。

平均単価×販売個数=売上高という関係になります。

変動費・売上総利益

一般的な会社では、変動費という構成要素があり、売上に対する原価などの割合を指します。具体的にどういったものが該当するかというと、売上の増加に伴って増える仕入などの原材料費、輸送費、外注費などの費用などが代表的です。ですが、我々士業・専門家サービスは形のあるモノを提供するサービスではないので、原材料費や外注費といったものはあまり発生しません。

そのため、基本的には、売上高(平均単価×販売数量)がそのまま売上総利益という形になります。原価がないので売上高≒売上総利益というイメージです。

固定費

例えば、事務所家賃や人件費、広告費。研修費、諸会費などが固定費に該当します。

このなかで、固定費として削減できるもの、削減できないものがあり、後ほどお伝えしますが、基本的には定期的に事務所運営においてかかる費用を指します。

経常利益

売上総利益から固定費を差し引いて算出した額が経常利益(≒営業利益)です。

細かく会計の用語で伝えると、 営業利益とは会社が本業で稼いだ利益のことを指します。そして経常利益とは本業と本業外で獲得した利益のことを指します。

本業外で収入や費用となるものを営業外収益・営業外費用と呼び、具体的には貸付金や借入金などの利息、有価証券の評価益損、売却益損、助成金収入などが該当しますが、士業事務所ではあまり営業外収益等についてはそこまで深く考えなくていいので、 ここでの説明は分かりやすくするために、経常利益(≒営業利益)で考えていきます。

事例から考える損益計算

開業

田中司法書士は念願が叶い、来月1日により司法書士事務所を開業することにしました。

サービスの平均単価が10万円、田中司法書士の給料が30万円(1ヵ月)、アルバイトで補助者1名を採用し、その給料が10万円(1ヵ月)です。事務所の家賃及び水道光熱費など諸経費が23万円(1ヵ月)かかる見込です。

この田中事務所の事例から考えていきます。 

サービスの平均単価:10万円
田中司法書士の給料:30万円(1ヵ月)
アルバイトで補助者1名:10万円(1ヵ月)
事務所の家賃及び水道光熱費:23万円(1ヵ月)

固定費は、人件費40万円及び諸経費23万円で63万円かかかっています。つまり、63万円が損益分岐点です。

たとえば、ある月のサービス販売提供数が8件だとすると、売上総利益は、10万円(平均単価)×8件(販売個数)=80万円です。80万円から固定費63万円を差し引いた17万円がこの事務所の月間の経常利益となります。最低限稼ぐ必要がある固定費は63万円なので、平均単価10万円だとすると、7件以上受任する必要があります。

ここまで見てくるとよくわかりますが、意外と士業事務所の経営はシンプルです。変動費(原価)がないため、売上高が固定費を越えれば単純な話なのですが、利益が出るという仕組みになってます。

つまり固定費に相当する金額を売上で回収すれば、利益が出るのです。 仕入がない我々のようなサービスでは固定費=損益分岐点と考えて経営をしていけば十分です。

士業事務所で利益を出すには?

では具体的に利益を出すにはどうすればいいか、次の2つに着目をしていきます。

・売上総利益(≒売上高)を増やす
・固定費を削減する

たった、この二つを考えていけばいいのです。

利益を出す

売上総利益(≒売上高)を増やす方法

売上総利益(≒売上高)の構成要素は下記のとおりです。

平均単価×販売数量=売上総利益(≒売上高)

平均単価と販売個数、これらを上げていく増やしていくにはどうすればいいのか、ということを考えていく必要があります。

平均単価を上げる

基本的に士業のサービスは最終的には手続きサービスです。そのため手続代行でサービスを提供しようとするとなるとどうしても単価が安くなりがちです。

・サービスの魅力で差をつけるには?
・販売方法で差をつけるには?

自分の事務所でどのように上記二つで差をつけることができるのかといったことを考えて対策を実行していきます。 単価を上げるためには、お客さんに対する見せ方としてコンサルティング要素を付加する、他者とサービスの内容での見せ方を変える、この先生にお願いしたいというようなブランディングを構築する、などを行っていく必要があります。

平均単価と販売個数、これらを上げていく増やしていくにはどうすればいいのか、ということを考えていく必要があります。新たなサービスを事取り入れ付加価値を上げるには、一般の会社では研究開発費が必要です。士業事務所では、新サービス展開のための社外での研修費や書籍代など固定費が増えます。

新たなサービスづくりの考え方については別の記事で詳しく解説していますので、興味ある方は確認してみてください。

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販売数量を増やす

販売数量を増やすために値引きをする、販促活動を行うために所長が営業活動を行い、その代わりに面談・処理をしてくれるスタッフを増やす、もしくは営業マンを採用する、広告宣伝費(固定費)をかけるといったことを検討します。

販売数量を増やすという方法で注意をしなければならないことは、販売数量を増やすという施策の過程で自分の代わりに、面談、処理、営業をしてくれるスタッフを採用する必要が必要が出てくる可能性があるということです。士業・専門家事務所で最もコストがかかるのが人件費です。人件費は雇用主側の方で簡単に削減することができません。

例えば、田中司法書士がより自分の営業時間を増やすために、処理をするアルバイトを1名増やした場合、先ほどの田中事務所の事例で言うと、固定費が月10万円増えることになります。

サービスの平均単価:10万円
田中司法書士の給料:30万円(1ヵ月)
アルバイトで補助者2名:20万円(1ヵ月)
事務所の家賃及び水道光熱費:23万円(1ヵ月)
固定費(損益分岐点):73万円

固定費が73万円と損益分岐点が10万円上がりましたが、平均単価が10万円のため8件受任すれば利益は出る計算になります。販促強化以前では7件受任すれば良い計算でしたが、自分が営業時間に割く時間を捻出すれば、1件以上多く受任できる見込があれば採用すべきという計算になります。

このように、販売単価と販売数量を増やすために、固定費は将来の投資として増やす必要がでてくるということをまずは知っておきましょう。

固定費を削減する

事務所の収益性を上げるには、売上総利益を増やすという方法以外に、損益分岐点を引き下げることもポイントとなります。損益分岐点を引き下げるには、固定費を削減する必要があります。

固定費削減

固定費の割合が大きいと、利益が出ないときも一定の費用が出ていくことになり、損益分岐点に達するまでの売上のハードルが上がります。

事務所経費では、長期的にかかってくる経費(定期経費)とスポットでかかる経費(スポット経費)の2つに分類していく必要があります。定期経費を業務量に応じて柔軟に切り替えることができるスポット経費に切り替えていくことがポイントです。

長期経費としては、事務所家賃と人件費が挙げられます。
例えば、長期入居を考えている物件なら、そのことを条件に家主と家賃の減額交渉をすることも検討の一つです。また、通信費、光熱費や水道などの契約プランを見直すことも、地味ではありますが、費用の削減につながります。書類のペーパーレス化をすることで書庫スペースを減らす、自社スタッフだけでなくスポット経費としてアウトソーシングを行うことにより定期的ににかかる人件費を減らすという方法も固定費の見直しになります。

また、 事務所の販促活動も自社のスタッフを活用して行うのであれば定期経費が必要ですが、営業代行やチラシ Web などの広告宣伝費であればスポット経費で業務量に応じて対応できるので、どこまでが自社で定期経費として支払うのかということも頭に入れて経営をしていく必要があります。採用したスタッフも処理、面談として硬直的に配置するのではなく、機動的に、処理に回す、面談に回す、 営業や広報に回すといった配置転換を行うことも必要です。

他に削れる固定費はないかということに意識を置いて事務所固定費を削減していってください。

僕自身も面談や受任、処理するスタッフについては自社で直接作業を行ってますが、 Web など都度のメンテナンスなどはクラウドソーシングを活用してスポット経費で対応してます。

平均単価、販売個数、固定費の3つが事務所経営のポイント

ポイント

経常利益を出すには、平均単価、販売個数、固定費の3つを意識してマネジメントを行っていく必要があります。

例えば、田中司法書士が事務所拡大を目指し、販促活動を強化するために、サービスの平均単価を7万円に下げ、処理をするアルバイトを更に1名増員、広告宣伝費として30万円支出やした場合どうなるのでしょうか?

サービスの平均単価:7万円
田中司法書士の給料:30万円(1ヵ月)
アルバイトで補助者3名:30万円(1ヵ月)
事務所の家賃及び水道光熱費:23万円(1ヵ月)
広告宣伝費:30万円
固定費(損益分岐点):113万円

固定費(損益分岐点)が113万円に上がりましたが、平均単価が7万円のため17件受任する必要がでてきます。値下げと広告の結果、17件以上の受任ができれば元はとれるという計算です。

このように、販売単価と販売数量、固定費は利益を出すために密接に関連していく、つまり、平均単価、販売個数、固定費の3つで経常利益が生まれるという意識を持ちましょう。

まとめ

  • 士業・専門家事務所で押さえておくべき会計の要素は、平均単価、販売個数、変動費、売上総利益、固定費、経常利益の6つ
  • 士業・専門家事務所では、仕入(原価)がないため、売上高(平均単価×販売数量)がそのまま売上総利益になる
  • 仕入がない士業・専門家サービスは固定費=損益分岐点と考えて経営をすればよい
  • 利益を出すには、平均単価、販売個数、固定費の3つを意識してマネジメントを行うべき

平均単価を上げるには、サービスづくりための研修費や書籍代がかかりますし、販売数量を増やすには広告宣伝費や人件費など、固定費が増えることになります。それらは事務所運営に必要な投資経費でもあるのです。

これまで見てきたことからもわかるとおり、販売数量を上げるためには、人件費や広告宣伝費などの経費が大きくかかわってきます。平均単価を上げるには多大なコストはそれほどかかりませんが、情報発信など時間をかけた取り組みや新サービスの開発、サービスの見せ方などを変えるなどの工夫や時間が必要です。

事務所経営は、それぞれにどれだけ時間をかけ、投資をしてきたのかという経営者のマネジメント能力が試されます。自分の事務所で何に対して取り組みができるのか、どういう施策ができるのかということを、本記事を読んで考えていただくきっかけになれば幸いです。

士業・専門家のための経営の仕組みがった1日でわかる戦略的マネジメントゲーム研修

難しいマネジメントをゲーム感覚で経営を体験し、学ぶことができるセミナーを開催します。1年間かけて、この開催の準備をしてきました。士業・専門家の方に是非学んで欲しいと思い企画をしてきた研修です。

マネジメントゲーム(MG:Management Game)は、経営層から管理職、若手・中堅社員の方々を対象としたマネジメントの実践教育プログラムです。既に1万社以上の企業にも導入されており、企業経営の概略、利益・コスト構造を学び、活きた会計学を身につけることができ、若かりしソフトバンク孫社長が学んだことでも有名です。

参加者一人ひとりが「社長」となって、会社を設立するところから始まり、商品の製造・販売、決算という企業活動を行いますが、その時々で、意思決定(=判断)を要し、また予期せぬリスクが発生するなど、実際のマーケットでビジネスを展開する感覚を体験できるゲームです。

士業専門家は、仕入がなく売上・人件費・広告宣伝費をどのようにまかなうかが非常に重要ですが、こういったマネジメントは、資格試験の範囲にこういった内容はないので、どうやっていいのかわからず「どんぶり勘定」になりがちです。
自分の事務所のスタッフの人件費を賄いながら、いかに売上をたてていくのか、経営者ご自身のご参加も経営者の右腕になるスタッフが参加しても成果が得られる研修になっています。

士業・専門家のための経営の仕組みが1日でわかる戦略的マネジメントゲーム研修

【日   程】:2020年12月9日(水)
【時   間】:10:00 ~ 17:00
【参加方法】:オンライン参加 Web配信(Zoom)
【参 加 費】:お一人様 22,000円(税込)
※システム調整の関係で、申込の締め切りがございます。12月4日(金)までにお申し込みをお願いします。

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